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2024/05/16 22:46 |
蒼の皇女に深緑の鵺 06 /ザンクード(根尾太)
PC:セラフィナ ザンクード
NPC:イナゴ軍団リーダー、“六つ眼の奇術師”
場所:カフール国境近辺
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
─後頭部に手を当て…90度に往復に回転させてゴキりと首を鳴らし、
自身の顔面を片手で覆って片膝をつくと、まさにこれ以上無い災難を食らった様子を
見せたザンクードは、苛立って嘆くように呟き始める。

「俺に…お前の身を“守る戦いをしろ”と…言っているのか?」

「それは違います。私はあなたをカフールに連れて行くのと引き替えで…」

─刹那……、セラフィナの頬すれすれを投擲小鎌が空を斬って、彼女の背後の直ぐ付
近にある木に刃が突き刺さる。

「いささか…口が過ぎたな…」

“計画外の面倒事”
それは彼にとってこの上ない障害でしか無い。ましてやセラフィナが口にしたのは…
人間という“最悪の多種族”の国家上層部内の骨肉争いの臭いを漂わせる話である。
想定通り、標的となるのはカフールという国そのもの…。
しかし…
最もそれなら“連中”は
国家の上層部などに手をつけなくても、いとも容易く壊滅状態に追い込める程に
残虐な武力を有するという事も頭にあった。

第一…ましてや人間の政府内の事情を、奴らが易々請け負うという事は絶対に無
い…。
人間共との因縁深き連中の集まりであるはずが、協力関係を築く理屈など“断じて”
有りはしない…。

今まさに…“厄介事”に巻き込まれそうなこの状況を腹立たしく思うよりも、その戦
場に自分を雇うにしたとして…
そんな中で“守る戦い”という注文に対する理不尽さが癪に障った…。

「─お前の察する通り、連中はお前を“捕獲”するために“交渉”を持ちかけた
“死んでも治らん大マヌケ共”だ…」

声色に…怒りの色が混じり始めるのを察知し、セラフィナは目を細め尋ねる。

「断ると…?」

「違う…。しかし…俺から見た今のお前は、道案内役に“極上の釣り餌”という特典
がついた程度の価値しかない。
そんなお前が出した条件は…“守る為の戦い”で、生憎俺はそんな生ヌルい“殺戮”
など求めていない。
滅ぶなら勝手に自滅すれば良い。
必要あらばお前と国の民もろとも斬り刻む事すら、俺は何も思う事など無い。
いずれにせよお前の国は“俺達の戦場”になるのだからな。
“守るという正義”だけで…俺が奴らを狩る事を望んでいると思うな。」

修羅場をくぐり抜けてきたか、それとも王女としての育てられた風格故か…
まばたき一つしない彼女の態度ですら、ザンクードにはこれ以上無い目障りだった。

何故なら相手が国家の重要な人間である以上…あらゆる立場上…
彼女は己の敵になりうる可能性を充分なまでに有していたからである。

溢れ出る殺気と憎悪
彼は“連中”にぶつけるはずの感情を…その全てを投げつけていた。

が……

「それでも構わない…」
放った投擲小鎌を抜き、柄を向けて差し出すセラフィナは…
沈黙を引き裂くように言い放つ。

言葉は、彼の禍々しい激情のダムを崩した…。

鎖付き二丁鎌“スピリストマーダー”が彼の手によって引き抜かれ…、セラフィナの
喉へと牙をむく。

───


─────「……“あなたは彼らとは違う”…」


─その間、零コンマ零数ミリ………
彼の激情の刃は…彼女の絹のような肌に、既に触れているかも分からぬ程の極小単位
の間で、ピタリと動きを停めた。

「フザケるな」

「確かに憶測ですがフザケてなどいません。あなたが彼等を執拗に追う理由も分から
ない。
けど私は、その“違い”だけは信じられます…。
いずれにせよ事が起こるなら私は…あなたを止める」

「黙れ」

「では何故…あなたは私を…」


“人間風情に何が分かる?”
そんな思想を過剰に掲げ…今も狂ったように虐殺を繰り広げる“奴ら”に
自分は全てを奪われた……───

──忌まわしい記憶はフラッシュバックのように…再び眼前のセラフィナの姿をかつ
ての師へと変える。
─『あんたがあたしから…この技の全てを会得したその時……』─

───そんな古き教えさえも思い出した時…
…手の震えを伝って、自分の武器がカタカタと鳴るのにやっと気が付き…

即座に握るその手を退き静かに刃を収納して、差し出された投擲小鎌を受け取った。

─やりにくくなったようにまた頭を抱えるザンクードに…セラフィナは気まずそうに
尋ねた…。

「あなたは何故…そこまで彼らを…」

悲痛すぎる問いかけだった…
一方では同情だったのかもしれないが…それでも彼には口にするには酷過ぎる話であ
った…

「…“知りすぎると…死を招く”と言っただろう。頼む…その事には触れるな…」

再び訪れた嫌な沈黙……
別になんら問題とも思わない…が…

彼女が毛布にくるまり…深刻に悩んでそうな様子が彼の複眼に映る度……──
嫌な同情を誘う……。


「…良いだろう…」

「え…?」
「……報酬は…お前の案内でチャラにしてやる。
そういう事なら、お前が向こうに着くまでなら…良いだろう」

“不意”に言ってしまった一言。どういう訳か…
とんだやりにくい相手に出くわしてしまった事に苦渋もしていたが…、
それ以上に彼女が憎めなかった…
「………良いんですか?本当に…」


再確認を求める彼女に…
彼はそれ以上の質問に
「二度も言わすな」とだけ言って
とそっぽを向いて、耳を傾けようとはしなかった…


──同刻

二人からかなり離れた距離から、こちらも河川をそって苦し紛れに移動する者がい
た…

あらゆる箇所に深手を負い、地を這う…

あの蝗衆のリーダー格だった。

あの攻撃の嵐からなんとか生き延びたとは言え………

胸から下は既に持っていかれ、片腕だけでその血みどろの半身を引きずり…彼は、タ
ーゲットと脅威たるあの怪物が手を組んだ事を知らせる為…

“目的と大義”の為に捧げた最後の生命を振り絞る。

と、自分の触角に…
一瞬…何か違和感を感じ…

ふと進んできた血痕の道を振り返った…──

その時だった──

「ドコへ行くンだよォ~?…」

品のない不気味な声が聞こえたと同時に…

急にリーダー格は呼吸困難に陥った瞬間、急に自分の体が宙へと浮き上がり…

彼はもがくが…闇に見えぬ“拘束具”は次第に彼の運動能力を奪い…

気がつけば河川の真上で停まる。
彼は最初…魔術師にとらえられたのかとも思った…しかし…

ふと振り返った時、

側頭部のすぐ近くにいつの間にか闇から現れた六つの複眼を見ると…

彼は驚愕した。


<あんたは…>

まるで…闇の空に逆さまに浮く、けむくじゃらの影…

そこから生えるように自分に伸びてくる四本腕に捕らえられ、六つ眼の影が尋ねる。


<セラフィナ・カフューは…ドコだ?>


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
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2007/06/04 22:09 | Comments(0) | TrackBack() | ○蒼の皇女に深緑の鵺
蒼の皇女に深緑の鵺 07/セラフィナ(マリムラ)
件  名 :
差出人 : マリムラ
送信日時 : 2007/05/23 15:02


PC:セラフィナ ザンクード
NPC:
場所:カフール国境近辺
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 生きてやらねばならない事がある。
 理由はそれだけではなかった。
 彼に勝手に動いてもらうわけにはいかない。
 少なくとも、今は、まだ。



「……森を、北へ進みましょう」

 セラフィナは朝日と共に目を覚ますと、なにやら考えながら口にした。

「色々考えましたが、国内を移動するより山道の方が利点があります」
「おい、もう少し東へ向かえば近いんじゃなかったのか」
「国内へは入れますが、あなたの傷が癒えるまでそれは出来ません」
「……昨日の話はなかったことにして別行動をとった方がよさそうだな」

 ザンクードはセラフィナに聞こえるように大きく舌打ちをした。
 しかし、セラフィナはこの反応を予想していたようだった。

「駄目ですよ。あなたには治療が必要です」
「理由にならんな」
「それに、国内へ入ることよりも首都を目指すべきです」

 セラフィナはきっぱりと言い切った。
 ザンクードの触覚がぴくんと跳ねる。

「首都は北寄りにあります。敵はおそらく知っていますよ」
「敵に近寄るのは自殺行為じゃないのか」
「目的地が同じなら、近付くのもやむをえないでしょう」

 セラフィナのペースで話が進むのは面白くないのだろう。ザンクードは刃物
をちらつかせながらなにやら葛藤している。昨日のように投げつけられること
を覚悟しながらも、セラフィナは話を続けた。

「カフールには霊山と称される結界の張られた山が幾つもあります。彼らの進
軍も、迂回などをせざるを得なくなるのではないでしょうか」

 ザンクードは首を左右に倒すようなしぐさをして肩を回す。そして、改めて
刃物をしまった。

「お前はおしゃべりが過ぎる」

 そして。

「急ぐぞ。やつらに気付かれる前に少しでも進んでおかないとな」
「はい」

 セラフィナは穏やかに微笑んだ。


  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 時を遡ること数日前。
 カフール国内のある邸宅で、人払いをした女は独り言のように呟いた。

「そう、ギルドもあまり使えないものね」

 女の前で跪く男は、何も言わずに黙ったまま彼女の言葉を待っている。
 彼から報告を受けるのは初めてではないが、いずれも芳しい情報ではなかっ
たようだ。

「噂は広まっていても、確信を持つものはいない。面白おかしく語りながら
も、まさかそんな、と思っている。なんて平和な国なの」

 自分の母国であるにもかかわらず、女は憎らしげにそう口にした。

「護衛剣士が先に国境を越えたのね?」
「はい、そのようで」
「じゃあ、準備が出来次第あの子を呼び戻すつもりなのでしょう」
「あの方は東へ向かっているとの情報もございます」
「西の果てでおとなしく殺されてくれればよかったのに」
「同じ神の血を引く者、貴女様のように強運なのでございましょう」
「あの子と一緒にしないで」
「……申し訳ございません」
「国を放り出したあの子なんかに、絶対に渡すものですか」

 女は吐き出すように言葉を投げた。

「私のものになれば、シカラグァの支援も約束されているわ。何故みんな分か
らないの」

 愛する夫を思い浮かべ、ウットリと宙を見つめる。

「やっぱりあの方が正しいのだわ」

 男は再び押し黙る。

「婚儀を急がず、正式にこの国が私のものになるのを待つべきだった……」
「……」
「でも私待てなかったの。早く彼のものになりたかったのですもの」

 どこか酔ったように言葉を並べると、ようやく思い出したという顔で眼前に
跪く男を睨みつけた。

「もう事故や人の手に期待することなどありません。あの子がここへ戻ってく
る前に消し去りなさい」
「はっ」

 小さい返事と共に去る男。
 女は奥の部屋から現れた男に甘えるようにしなだれかかった。


  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 男は鼻と口を布で覆い、眉をしかめながら新しい痕跡を探していた。

「蟲種の残骸……あの方は何をお考えなのだ」

 異臭は日を追う毎に強くなる。粘り気のある体液が行く手を阻む。しかし、
まだ二日と経っていない粘性を確かめると、目で合図し、手下のものに人の痕
跡を探らせた。

「あの方には護衛剣士以外にも強力な味方がいるというのか」

 手下に聞こえないように呟く。だが、彼女にコレだけの数の無視を相手にす
るだけの能力はないはずだった。命を尊ぶ彼女が、敵と知りつつも残虐な死を
与えるとは考えづらい。

(本当に、これは正しいことなのだろうか……)

 神の血筋を守るためだけに育てられ、そう生きてきた彼は、あの方の意見に
は逆らえない。疑問を持ったところで任務を遂行することには変わらないの
だ。

「向こう岸に野営の痕跡らしきものがあります」
「わかった、みなをそこへ集めろ」

 神の血筋を守るために生きてきた自分が、神の子を殺すのだ。
 一度きつく目を閉じると、何事もなかったかのように男は向こう岸へ向かっ
た。

 セラフィナとの距離は、約半日。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

2007/06/04 22:35 | Comments(0) | TrackBack() | ○蒼の皇女に深緑の鵺
蒼の皇女に深緑の鵺 08 /ザンクード(根尾太)
PC:セラフィナ ザンクード
NPC:アラクネ
場所:カフール国境近辺
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
─その外骨格の骸は、大半がその四肢から胴と首まで刻まれてるが…
蟲族という異形の種だという事は明確だった。
血統各々が危険な能力を有し、
一説によれば中でも、人間やえる問わず他の種の居住地を食い荒らした後、その地の
種の内蔵を喰らって皮を被り、
その種の群として紛れまた他の村々を侵攻し殺戮を繰り返す危険な者達だとも、
男は話に聞いていた。

しかし…その蟲種共のこの様な惨殺の有様を見て
そんな知識よりも男は、
標的たる“神の子”に仕えているこの“魔物”の正体の方が気掛かりだった。

原型すら留めているかいないかの状態で、周囲に散らばった甲殻と内蔵。

ここまで惨殺し、ひょっとすれば自分達が追ってる姫君すらも殺害しているかもしれ
ないその脅威の存在が
祖国の近くをさまよい、何らかの目的で国境に入った際の危険性を最も恐れた。


…─…と…追尾の為に移動をする直前…
不意に目に付いたのは一枚の血塗られた布切れ…
刻まれた骨格が重なっていることから、恐らくはこの蟲どもの私物なのだろうと…
興味本意に拾い上げようと手を伸ばす。
乾燥しかかっている粘りが糸を引き
ただならぬ悪臭が吐き気を誘う…。

その赤い布の一片には、蟲種の血で大半が付いていたが…男は布に“紋章”らしき気
味の悪い絵柄を見つけた。


──「それに気がついたかィ?」─

瞬間…

男とその部下達はその不気味な枯れ声を耳にし、とっさに振り返った…
その時だった。

―轟く笑い声の直後…男の顔の側面に突如、

棺桶を背負った毛むくじゃらの大きな影が落下し宙で停まる。

「ハァ~…ロォ…~ウ」

男は反射的に振り返ると刀を抜き、同時に抜刀した部下達が斬りかかる。

だが…

その毛だらけの異形の影から片腕が現れ、瞬間的な速さで奇妙な指使いをしたその
時、
まるで一時停止のごとく男と部下達の動作が空中で停止する。

「さァっすが、カフールの隠密兵…。“エテ公”にしては良い動きだ…」

言うと同時に、もう一本の片腕から順に…異形の影から五本の腕が生えるように現
し、…複眼が六つある、気色の悪い毛玉の顔が出現すると、指が動いた瞬間に部下達
の首が締まり宙に高く浮かんでいく。

男は刀を振り上げるが、その寸前で腕が、何かに拘束されたように動かなくなる…。

「オイオイ…待ちなって
話がしたいってのがわからねぇか?座って頭でも冷やせよォ~」
男はもがくが、言葉が放たれて、
またその毛玉の異形が指を動かすと、今度は脚の関節が強靱な力で動かされ、言葉通
り…
あぐらの姿勢に“抑えつけ”られた…

「貴様…」

「ガタガタ言ってねーで刀を鞘に閉まいな、下っ端がタコになるぜ?」

向こう側では部下達の体は首だけでなく、
体中から僅かに骨が軋む音が鳴り始めるの聞き、男は刀を鞘に収めようと腕を動かそ
うとする…。

すると、先程まで腕を凄まじい力で締め付けていた痛みが消え、
部下達は宙から卸されるが、絞首と同時に受けた軽い骨折のショックで失神してい
た。

逆さまに浮く毛の異形…
光と視覚の効果で見えにくくなってるが、よく見ると二本脚から糸状の何かにぶら下
がっており、

それ切断すると反転して着地し、毛の異形はあぐらを掻いて話しかけてきた。

「茶菓子はいるかい?」

またもや宙からゆっくり降りてきたのは、急須とカフール産の宇治金時パフェ2つに
2つの湯呑み茶碗。

降りてくる物体を繋ぐ糸を二本の腕で操作し、宙から茶を注ぎ並べる等…四本の腕で
器用に支度が同時進行し、ちょっとした“茶会”が出来上がってしまう。

「いや…」

「毒なら無ぇんだから~遠慮すんなよォ?。
向こうじゃこーいう珍味食うんじゃねーのかァ?。茶だけでも飲んでけよォ」

“紳士的な”おもてなし打って変わって、パフェをガツガツと食いながら茶を啜るそ
の素振りはやはり野蛮に見える。

恐る恐る湯呑みに手を伸ばし、緑色の色と湯呑みを観察してから…
その端に口を付け、男は啜り飲んだが、
混じりけの無いカフールの緑茶であった。


「・…何故、お前がこんなものを?」

「…いーじゃねぇかァ…蟲族の俺がカフールのお偉方に交流あっちゃ悪ィかよォ
~……?」

盛られたパフェを音を立てて食いながら…答えに対して言葉が無くなる男に
更にこう語った。

「俺ァ…おつむがオメェら“エテ公”共より達者でなァ…。
その紋章の“連中”も…
オメェの追ってる娘の事と…
そいつの“付き人紛い”な事やってる“ボウズ”の居所も…
よォく知ってんのさァ…」

──────
…夜が深くなる頃

山の中腹地点で見つけた廃村で、ザンクードは岩に一人腰を落ち着かせ、スピリスト
マーダーの刃を石で研いでいた。
ボロ小屋の隙間から差し込む朧気な月光に照らされながら…
彼は一人思い詰め反射する刃を眺めていた。

…と…背後に視線を感じ振り返ると、そこにはいつからか・…横になったセラフィナが
知らぬ間に目を覚まし、寝ぼけ眼でこっちをじっと見ていた。

「・…起こしたか?」

「いえ…。あなたは?」

「…暫くは起きている…、
仮にも護衛役だ。それなりの仕事はさせてもらう…」

確かに己の完璧主義による癖でもある…
だがそれとは別に…
こうして次の標的を狩る“爪”や“牙”を整えながら
虎視眈々と“その時”を待つのが…もうある意味“眠るよりも落ち着く”時間の一部
になってしまっていた…。

だから敢えて、心配をかけぬ様に「…当然の“職業病”でお前には関係無い。体なら
心配いらない…・。さっさと寝ておけ」
とだけ後から言葉をかけた…。


・…一匹の異形と一人の少女

蟲族と人間

相反する存在にしてこうして共存するのが、彼にとっては何年ぶりかの“因果”にし
か思えなかった。
そしてそれ故に・…この“爪”と“牙”が研ぎ澄まされている理由がそこにあり、それ
を忘れる事だけは絶対許してはならなかった。

…やがてその安らかな寝息を聞くさなか、彼は全ての暗器の調整を終えると横にはな
らず、
岩盤にもたれ掛けて地に座り…己の“因果”を呪いながら眠りについた…・。



──────

同刻…案内する六本腕の異形に連れられ、男ら小隊が山へ向かうなか異形は語る。

「お宅らの姫様はピンピンしてるぜ。“護衛”役の蟲種一匹のおかげでなァ…。問題
はそいつだ…」

「今はどこに?」

男は尋ねると異形は木の頂点に停まり小隊を見下ろして、
「この先を北に移動しやがった。奴らは首都に向かってるぜぇ…。俺が案内してやん
のはここまでだ…あとはオメェら自分達で好きにしなァ。」

と答え、
直後に何か小さく光る球体のようなものを取り出し空中から男へ投げ渡した。

「コレは?」
掌で握れるサイズの球体は金に光り、一部に輪が付いてるそれを異形は説明する。

「・…護衛の奴を確実に潰すための“催涙弾”だ。ピンチの時はそのわっかのピンを抜
いて投げるこったな。
殺しなら止めとけよォ。“侵略種”は血の臭いが一番そそるんだからな…。」

ある程度蟲種に関して入れ知恵を仕込まれ…男は思わぬ協力者の、その思惑に恐れ尋
ねた。

「何故お前はそこまでの施しを我々に…。」

「名前なら“怪術師”…アラクネと言っておこうか…。
なァに、“今の所は相棒”なんだから安心しなァ~♪仲良くしようぜェ~…“エテ
公”どもよォ…
あぁそれともう一つ…あの野郎に会ったら…
“ショータイムだ、ボウズ”
とだけ伝えてくれや。健闘祈るぜェカフールの諸君♪」

やがて手を振りながら異形は、六本の腕と二本脚で山岳の森を跳びまわって、
その姿をフェードアウトする品の無い笑い声と共に闇に消した…。


─かくて歯車は動き出す
全てを擦り潰す為のみに─
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

2007/06/12 00:07 | Comments(0) | TrackBack() | ○蒼の皇女に深緑の鵺
蒼の皇女に深緑の鵺 09 /セラフィナ(マリムラ)
PC:セラフィナ ザンクード
NPC:
場所:カフール
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 セラフィナはザンクードに腕を掴まれ目を覚ました。まだ夜明け前だ。
 宙を見たまま静止するザンクードをよく見ると、触覚が小刻みに揺れていた。
 何かを察知したのだろう。おそらくは……追っ手。

「相手が人だろうが手加減する気はない」

 冷たい声が、セラフィナに「今度の敵は同じ人間なのだ」と告げる。
 出来れば殺したくなどはない。避けられるものなら傷つけることすら避けるだろう。
 だが、今その余裕はなかった。全力で戦い、生き残れるかも怪しいのだから。

「分かっています」

 セラフィナは静かに黙祷した。
 素性の知れない命のために、これから失われる命のために。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 廃村に辿り着いたということは、カフール国内に入ったという証しでもあった。
 ザンクードは何も言わないが、道の痕跡を辿れば、もう道案内など必要ない。
 それでもここに留まっているのは、セラフィナとの約束のためだろうか?

 セラフィナは空を仰ぎ見た。じきに日が昇る。
 ザンクードとは別行動をとることになっていた。足手まといが側にいると動きづらいというだけでなく、木々の生い茂る廃村の外で奇襲をかけるためである。
 追っ手の規模を、セラフィナはまだ知らない。ザンクードの手をかいくぐるような別動隊がいたときのために、備えておく必要があった。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 男は、配下の者をばらけさせた。アラクネと名乗る化け物の情報が正しければ、相手は自分達追っ手の存在にいち早く気付いているはずである。おそらく地の利が得られる廃村手前で奇襲してくる……そう予想していた。
 手勢は少ない。アラクネに骨折させられた部下は使い者にならないと判断し、置いてきた。危険を感じてからでは遅い。屋外で催涙弾がどれほどの威力を発揮するかが鍵となるだろう。一瞬の迷いが死を招く……そう感じるのは、経験か。いや、今まで見てきた惨殺体の酷さのせいかもしれない。

 催涙弾のピンに指をかけたまま、男は五感を研ぎ澄ます。

 先に動いたのはザンクードだった。配下の一人の頭上から音もなく降ってくる。想定よりも速い動き。男はピンを抜きながら走った。不気味な複眼がこちらを捕らえているのは分かっている。催涙弾を落としながら、男は一直線に廃村へ向かって駆け抜ける。ザンクードが動くのが分かるが、急所である首、もしくは頭を狙っていることに賭けて、姿勢を低くしながら走り抜けた。頭のすぐ上を鎌状の武器が掠めた感覚がやけにリアルだった。

 一気に視界が白く染まる。
 催涙弾が発動したのだ。男の頭によぎったのは、煙の香りが「菊花香」によく似ている、ということだった。

 「菊花香」とは、カフールに古くから伝わるお香で、山神の好きな香りとされている。昔はどこの家でも菊花香を焚いたものだが、最近は国外から入ってきた珍しい香などが好まれたり、家によっては香を焚く習慣自体が無くなってきているという古風な香だ。
 その「菊花香」が、何故。

 男は配下の者に敵の足止めをさせ、独りで「神の子」殺しに挑むつもりであった。自分の仕える姫と違い、一通りの護身術を学んでいるセラフィナはそう侮れる相手ではなかったし、そんな重荷を背負うのは自分一人で充分だったからだ。

 森を抜け、視界に飛び込んだのは紫色の異質な煙。のろしだ。
 古い民家を燃やしながら、煙は高く高く上る。
 男は舌打ちした。こののろしに気付いて援軍が駆けつけるまでに姫を殺し、撤収しなければならない。民家の火を消すのは無駄だと判断、まだ遠くまで逃げてはいないであろうセラフィナ捜索に神経を傾けた。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 昔カイに貰ったお守りを使ってしまった。セラフィナは燃え始めた廃屋を背に走り出した。
 カイが近くにいるのなら駆けつけてもくれよう。だが、カイはいない。日の出とともに空を見上げ、こののろしに気付く者がどれだけいるだろうか?のろしの示す色の意味さえ知らないセラフィナは、人が様子を見に来てくれるかどうかも怪しいと思っていた。だが、誰かへの特定のメッセージだと追っ手が思いこんでくれればソレでいい。焦りは判断を鈍らせる。

 木の陰に隠れ、様子を窺う。突然白い煙が森で広がり、この辺りまで香りを運ぶ。菊花香だ。目くらましの煙幕なら知っている。だが、ソレとはどうも異質なようだ。白い煙から一人の男が走り出てきた。見覚えのある男だった。あれは……姉の護衛剣士。つまり自分を狙う派閥の一つは姉の勢力と確定したわけだ。
 一緒に育った間柄でもなければ、姉妹としての情も希薄だ。それでも命を狙われるほど憎まれているのか。

 男はまだこちらに気付いていない。廃屋の燃える音が自分の気配を消してくれる。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 男はしゃがんで地面の状態を確かめた。大雨の影響が残っている。踏み固められた道なら足跡を見つけるのは難しいだろうが、ここは廃村、永く人の行き来がなかった場所である。
 近くで一度振り返り、炎上する廃屋の方へ走り出した足跡を発見するのは、そう時間がかからなかった。泥地ではないため足跡としては痕跡が薄いものの、歩幅や跡の大きさから女性と分かる。ほぼ確実にターゲットだろう。しかも彼女は「他に護衛を付けていない」。狩りを邪魔するものは他にいないのだ。

 炎上する中を突っ切るわけには行かない。迂回しながら端々に視線を走らせる。追われる側は追っ手の動向を警戒する傾向にある。今もこちらを見ているかも知れない。もし追っ手を振りきるつもりで走り続けているのだとしても、体力ならこっちが上だ。追いつくことなど造作もないだろう。

 何かがキラリと光った。とっさに茂みへ転がり込む。地面に残されたのは、針。一矢報いようとでも言うのだろうか。男は口の端だけで笑った。ターゲットのいる方向は、これで絞れた。
 木を楯に、距離を詰める。針はその後飛んでこない。こちらが視認しにくい場所に入り込んだのだろうか。だとすれば、距離はそう遠くない。

 音が、した。左前方の木の裏だ。男は駆け寄りながら剣を抜き、飛び出してきた何かを切りつけた。
 しまった、罠だ。切ったのは落とされた蜂の巣で、無数の蜂が攻撃してくる。
 少し離れたところで翻る青い布が見えた。ただの箱入り娘ではなく、身を守るための教育を思ったより徹底して受けているらしい。なるほど、今までの追っ手が手を焼いたわけだ。男は蜂の巣を焼き討ちにしながら、追ってくる蜂を無視しつつ、青い布の見えた方へ駆けだした。

 針が再び飛んでくる。視認できたのは三本。急所を狙った二本だけは、何とか剣で打ち落とす。
 が、残りの一本がまずかった。左足に受けた傷は、確実に運動機能を奪う。
 麻痺針もしくは麻酔針と呼ばれる高度な技術。彼女を侮っていたつもりはなかったのに。

 針を抜き、投げ捨てながらも片足で間合いを詰める。蜂蜜にまみれた剣は切れ味が劣るだろうが、首を取ってこいと言われたわけではない。叩きつけることで充分致命傷を与えられる。

 不意に、セラフィナが姿を現した。一見無防備で、しかし片足の利かない現状では迂闊に飛びかかることも出来ず。空気が膠着する。

「神の子を殺めた貴方に残るものは何です?」

 セラフィナの声は、悲しそうに響いた。彼女がそっと目を伏せた瞬間、男は間髪入れずに飛びかかる。
 セラフィナはまるで分かってでもいたように体を引いた。そして正確に針を打つ。
 四肢の自由を奪われ、崩れ落ちる男を見ながら、セラフィナは溜息を付いた。

「貴重な生き証人を、死なせるわけにはいきません」

 ロープで自由を奪い、口に猿ぐつわを噛ませて、セラフィナは静かに男の治療を始めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

2007/09/24 00:36 | Comments(0) | TrackBack() | ○蒼の皇女に深緑の鵺
蒼の皇女に深緑の鵺 10/ザンクード(根尾太)
PC:セラフィナ ザンクード
NPC:刺客、アラクネ
場所:カフール
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──風に揺れる彼の触角が、不穏な気配を察知した瞬間だった。
ザンクードはスピリストマーダーのグリップを握り、臨戦態勢をとった。

「どうしま…」
「喋るな」

数秒遅く目覚めたセラフィナがに背を向けて言い放ち、全感覚を索敵に集中する。

すると、彼は察知した気配に対して怪訝な舌打ちをする……

何処で自分たちの存在を嗅ぎ付けたのかは知らないが、察知した相手は…さっきまで戦っていた蟲族とは違い人間だった。
数は五人以上はおり、武器は刀といったところである。

飛び込んで一人ずつ瞬殺するのは軽く、殲滅するのは容易である。
だが、今自分が護るべき存在は…そんな相手と同郷の者という事実は免れない。

「俺は……相手が人だろうと手加減する気はない」

─「分かってます」─

相手に対して“同情深い奴”とは知っていた……
だが自分には、黙祷する彼女の“武器”でしかなく、同じく“武器”を持って忍び寄る大人数が襲うとなれば、使用者の意志次第で連中の一切を殺める以外…その存在意義は無意味に等しい。

……セラフィナの確立した意志がザンクードに託された瞬間、それのみ己に誓い……忍び寄る相手に向かっていった。

──────────────

突如として落下した相手の姿を…間近で見る一瞬の直後、最初の犠牲者は右肩から左脇腹まで斜めまで断裂される。
他の刺客は標的の側面へ投擲系の短刀を投げつけるが、
ザンクードは全て投擲小鎌で弾き返し、跳ね返る短刀の軌道が、刺客らを付近の木や地面ごと貫通して磔にされ、
直後に刀を抜く間も与えず急接近して、刺客らを瞬時に細切れにする。

振り卸された刃が人間の肉体を…一人、また一人と斬り落として血飛沫をあげる。
擬態するまでもなく、残る刺客らは刀を受け流されると、四肢を断裂され、胴部はあり得ない方向で切断されていった。


─と、部隊の司令塔らしき男が視界に入り…、瞬間的に握りを持ちかえ、その刃が首を狙う。

ほぼ同時に動きだした男は一直線に駆け出し、刃が頭に触れる寸前、男は体の向きを変えて刃を極小単位の間ですり抜け、同時に催涙弾のピンを抜いた。
─その時だった。
─────「!!!!?」

催涙ガスから吹き出た煙が…
その“臭気”によってザンクードの脳裏にある、“忌まわしい記憶を呼び覚まし”、
気管に入る寸前で吸うのを止めた……


ガスの煙に紛れ向こうに消え去る男を追おうとするが見失い……
煙の中で動きがとれなくなる。

────<V08-“ガーベラ”の試作型だ…覚えてるだろう…、あの時お前の感覚能力を奪った毒薬さ>

刹那──しゃがれた品の無い笑い声が突如として森に響き、彼の脳裏に焼き付いたその記憶が危険性を察知し、声を聞くやいなや振り返る。
─だが…今のザンクードの動きではその相手についていけるはずもなく、直後に宙吊りとなって空中を飛び回る声の主の蹴りを食らい吹っ飛ぶ。

直撃の勢いで少し吸ってしまった性で足元がフラつき、二撃目の体当たりは躱しきれず、右脚の外骨格の関節部にかすり傷を負う。

その上容赦なく残存する他の刺客が刀を向けて襲いかかり、ザンクードは残る力で刃を振るい斬り伏せていくが、やっと全て捌ききった時点で方膝を着いた。


<その様子じゃ立てなくなるのは時間の問題だな…>

品の無い声の主はゆっくりと近付き、相手の視界に入る場所にたどり着いて、膝を着くザンクードを見下ろした。

口元にはマスクをしていたが……
その顔には“忌まわしい記憶”として…ザンクードには見覚えがあった
<…ア…ラ…クネェエエエエッ!!!!…>

───はっきりと認知した直後、おびただしい殺気を燃え上がらせ、実に感情的でなまでに超速にして直線的な斬撃を放って襲いかかる。

<会いたかったぜェ“小僧”。何年ぶりだろうなァ…?>
斬撃はアラクネが四本の腕に握るサイのみで軽々と阻まれ、徐々に速度を落とし…、やがて次第に全て弾き落とされていく。

<この毒で感覚を鈍らせちまったお前は…あの時…、仲間を皆ゴミ屑みてぇに殺らされちまって、テメェの義姉貴と逃げるので手ェ一杯だった…
そしてオメェは生憎お前の死に様は…“態々首を切り落とされに”向かって行ったあの義姉貴にゃ遠く及ばねぇ……残念だなぁ~ヲイ♪>

アラクネの言葉がザンクードの憎悪の業火を煽らせ、体力も精神も確実に磨り減らしていく。

とうとう…速度を完全に失った刃と腕は、二本のサイとアラクネの指から射出される糸に捕らえら、閉まる糸が両腕の関節部を容赦無く破砕する。
<ッ!!!!!………>

射出される糸に捕らえら、閉まる糸が両腕の関節部を容赦無く破砕する。
悲鳴を圧し殺し……腕を引きちぎる程の痛みが伴う中で脚を動かすも、絡み付いた糸の構造がそれさえ許さない。

そんな中だった。アラクネはザンクードを見下げると言い放つ。


<…だがな……それも今俺が言う取引にさえ乗れば。オメェは命を縮めずに済む、厄介な話じゃねぇ…実にシンプルな話だぜ?>

相手が相手だ。よっぽどタチの悪いの話に決まってる事は想像が着いていた。

──が、続けて言われた言葉は、ザンクードがこの時点で考えられる“想像出来る程の趣味の悪さ”を越えていた。

─<なぁに…お前は素直に、あの“死人の小娘”渡せば良いのさ…。
どうせあいつぁ故郷に帰った所でもう“死人”と変わりねぇ…
“奴ら”に狙われた以上それは分かってたはずじゃねぇのかよ?>
<貴様…>
<それともアレか?“罪滅ぼし”ってやつかぃ?
とんだ野郎だなァあ~ヲイ♪
…せっかく“儲けの半分”くれてやろうと思ったのによォ♪>
<何が望みだ…。渡したとして…あいつはどうなる?!!!>
<あの地は……、俺や侵略種にとっちゃまさに“宝の山”だからな……。
そうすりゃ蟲族は一気に統一され、以外の種族の連中とも戦争おっ始められる…。偉大なる“革命”さ…。分かるだろ?偉大なる“革命”にゃ…“それ相応の犠牲”が要るんだよ>


<………何のためにだ!!!一体貴様の腐った企みは何処にある?!!!!答えろッ!!!!!>
──この時既に…彼の中では冗談では済まなかった。
彼の脳裏に焼き付いた記憶が、かつて自分の無力で失った“肉親”との全ての記憶が憎悪を越えた感情呼び起こし、最後の力を与えた。
───ザンクードは力を振り絞り左肩を揺らすとガントレットから両刃の鎖鎌が引き出されされ、牙で鎖を捕らえると振り回して糸を斬り裂く。


<ほォ~………飽くまでもこのアラクネ様に逆らうのかい…。良い度胸じゃねぇか>

<……あぁ……俺から渡ろうと思う時点で間違いだったな。>

毒霧が晴れ始め…ザンクードは再度感覚を取り戻し始める。

すると何処からともなく、斬り裂いたはずの刺客らが現れ襲いかかるが、それらを口の牙から振り回す鎖鎌で、肉体ごと全て弾き飛ばすと、ザンクードは果敢にアラクネに立ち向かって行く。

──しかし…その刃が届く直前、アラクネの指が操作された瞬間だった。
自分が吹っ飛ばしたはずの兵士達が起き上がり空中に浮くと、刀の切っ先を向け、ザンクードの体を地へと串刺しにし、とどめにアラクネが握るサイが腹部の鎧と外骨格を貫通する。

<…………ッ……?!!!!!……>

勢いよく刀は引き抜かれ、倒れ込む瞬時に、兵士らの真上で日の光によって反射する“線”を見てザンクードは悟る。

自分はいつの間にかアラクネの“屍人形”と戦ってたのだと。

<言ったはずだぜ……お前ェは追いつかねぇのさ…あの義姉貴にはなァ…>

こと切れたザンクードが、気を失う直前に聞いた言葉はそれだけであり、
後は見たのはマリオネットの様に崩れ落ちる屍であり…………、そこにあの蜘蛛男は居なかった。

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2008/03/20 12:25 | Comments(0) | TrackBack() | ○蒼の皇女に深緑の鵺

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