忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/04/30 05:14 |
四海の詩1~季節の幕開け~/狛楼櫻華(生物)
PC:狛楼櫻華 ノクテュルヌ・ウィンデッシュグレーツ ソアラ・シャルダ

場所:ソフィニア
NPC:魔術学院農学部の面々 サクラバ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 間が抜けたほどの青い空に、ふらふらふわふわと白い雲が流れていく。その
下を飛ぶ鳥もどことなくゆったりと飛んでいるようだ。周りを見れば畑に囲ま
れ、農作業に精を出す人がのんびりと働いている。
 そんなのどかな風景の中をソフィニアから徒歩で半日ほどの距離を乗り合い
馬車が走っていた。走るといっても全力疾走する人間には軽く追い抜いていか
れそうな速度だが。
「むー、櫻華ちゃん」
 ノクテュルヌが不満そうな声を上げる。金髪に赤い瞳、空の青さをそのまま
切り取ったような紺碧の服をまとったノクテュルヌはなかなかの美人なのだ
が、馬車を待っている間に買ったりんご飴やら駄菓子がいっぱいに詰め込まれ
た袋を抱えた姿は実際よりも幼く見える。
「のくてぃ、人前で名前を呼ぶのは止めろと言っただろう」
 表情を変えず、視線も窓の外に固定したまま櫻華は言葉を返す。闇夜に舞う
桜吹雪を思わせる着物に身を包み、静かに外を見つめる表情は、その外見より
もずっと大人びた雰囲気を感じさせる。
「いーじゃん、どうせ二人しかいないんだし。櫻華ちゃんは気にしすぎなんだ
よ」
 袋から取り出したりんご飴を器用にくるくると回すノクテュルヌ。櫻華はた
め息を一つついて視線をノクテュルヌに向けた。
「まあ、いい。で、なんだ?」
「むあ? つあんあーい」
「食べながら喋るな」
 櫻華はノクテュルヌががぶりついているりんご飴を引き抜く。引き抜いたり
んご飴にはノクテュルヌの歯形がしっかりと残っている。
「つまらないなら歩くか?」
「……我慢する」
 両手いっぱいの駄菓子を持って歩くのはさすがにノクテュルヌも嫌だったら
しい。櫻華からりんご飴を取り戻すと再びかじりついて視線を外に向ける。
 この後も何度かノクテュルヌがぐずりはしたが、ゆったりと馬車は走り続け
ソフィニアの手前で停車する。
「お嬢ちゃん達。ついたよ」
 御者の老人が小窓を開けて報せてくる。待ってましたとばかりにノクテュル
ヌが飛び出していく。ちなみに袋いっぱいの駄菓子はすべてノクテュルヌが食
べて馬車の中に袋が丸まって捨てられている。
 袋を拾って、櫻華は馬車を降りた。御者に料金を払い、短く礼を言うとノク
テュルヌの後を追った。やや小高い丘の上に作られた待合所の後ろにはレンガ
造りの円筒状をした小さな建物があった。
「櫻華ちゃん、こっちこっち。早く」
 丸まった駄菓子の袋をゴミ箱に入れ、円筒状の建物のドアを開けると地下へ
と続く階段が伸びていた。両脇には魔法灯が等間隔に設置され、十分な明かり
が空間内を包んでいる。
「楽しみだねぇ、魔法列車って乗るの初めてだよ」
 階段を軽やかに下りていきながらノクテュルヌがはしゃぐ。ソフィニアには
大陸唯一の地下を走る魔法列車が整備されている。わざわざ街の手前で馬車を
降りたのはこれに乗るためである。
「あまりはしゃぐと転ぶぞ」
「大丈夫だよ」
 階段を下りたところで視界が開ける。俗にホームと呼ばれている場所だ。地
下のせいか閑散としているにも関わらず空気が淀んでいる。向かい側の壁には
「市営ソフィニア線:魔術学院東市外施設前」と書かれた看板が貼り付けられ
ている。
「わー、ひろーい」
「お嬢さん、ホームで走ると危ないよ」
 興味津々であちこち駆け回るノクテュルヌに初老の男性が声をかけてきた。
年は六十前だろうか、白髪頭に平べったい帽子をかぶっている。濃紺の制服の
胸元には市営ソフィニア線と書かれたエンブレムが貼り付けてあった。両手に
ほうきとちりとりを持っているところをみると掃除をしていたらしい。
「ああ、すまない。魔法列車に乗るのは初めてで少し興奮しているんだ。のく
てぃ、少し落ち着け」
「はーい」
「お嬢さん達は地下鉄に乗るのは初めてかい? ならこっちの窓口で切符を買
っておくれよ、今開けるから」
 人好きしそうな笑顔で駅員は先ほど降りてきた階段の横にあるドアを開け
て、その横の小窓から顔を出す。
「大人二人で銅貨四枚だよ」
 櫻華は着物の裾から出した銅貨を駅員に渡し、代わりに小さな紙切れを二枚
渡された。
「それが切符だよ。なくすとまたお金かかるからね、なくさないようにね」
 そう言って駅員は再び掃除に精を出し始めた。切符を袖に入れ――ノクテュ
ルヌに渡すとなくしそうなので二枚とも――櫻華は備え付けのベンチに腰をお
ろす。ホームには駅員のほうきが床を掃く音とわーきゃー騒ぐノクテュルヌの
声が響く。しばらくすると地上のドアが開く音と共に大勢の足音と賑やかな話
し声が響いてきた。
「おや、農学部の子達。今日は早いね」
 一人つぶやいて駅員の老人は窓口に駆け込みいそいそと切符の準備を始め
た。いつものことなのか、その手つきには手馴れた感じが見て取れる。
「見てみて、櫻華ちゃん。すごい。シマシマの馬だ」
 櫻華の隣に座ってノクテュルヌが話しかけてくる。
 何を馬鹿な、櫻華はため息をついた。ここは地下だ、しかもこれから列車に
乗ろうというのに馬を連れてくる者などいないだろう、ましてシマシマの馬な
ど櫻華は見たことがなかった。たしかにカッポカッポという蹄のような音が聞
こえなくもないが。
「のくてぃ、そう言う事はせめて……」
 宿屋についてから、と言いかけた櫻華の目映ったのは馬だった。たしかに馬
だった。馬には違いない、そう違いないのだが……。
「は、花柄ぁ!?」
 絶叫して、立ち上がった櫻華の前には馬がいた。普通の馬に比べるとやや小
ぶりだが、その容姿は間違いなく普通の馬だった。ただ一つ、模様が花柄だと
いうことを除けば。
「あ、こんにちは」
 花柄馬の顔がこちら向き、もごもごと口を動かす。一瞬この馬が喋ったのか
と思ったが、その影から一人の少女が笑顔で姿をみせた。

PR

2007/02/12 21:24 | Comments(0) | TrackBack() | ○四海の詩
四海の詩2~幕開けの大合唱~/ノクテュルヌ(Caku)
PC:狛楼櫻華 ノクテュルヌ・ウィンデッシュグレーツ ソアラ・シャルダ

場所:ソフィニア
NPC:ベンツ&サクラバ&おじいちゃん&にんじん
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「花柄かわいいーいいなぁ花柄ー」

わくわくどきどきをボディランゲージで120%表示しているノクテュルヌと違
い、櫻華は冷静に考えてみる。花柄の模様の動物はわずかながらいると聞いて
いる。確か大陸の北・ライラン地方には額に愛らしい花柄をもつ珍しい白熊が
いるという。そう考えれば、花柄だろうが縞柄だろうが…

「って縞柄っ!?さっきまで花!」

つい、目を離した隙に模様が様変わりしている動物に、長年生きていて初めて
出会った櫻華である。ノクテュルヌにいたっては驚くという行為を超えたらし
く、感極まって感動していた。
その謎の生命体の主人らしい少女がぺこりとおじぎをする。全体的に淡いカラ
ーと服装の趣味で外見はまるで十代前半に見える。手にしている召喚杖でソフ
ィニアの学生であるだろうことが伺える。

「珍しいですね、国立神学校の方が魔法列車に乗ろうだなんて」

ノクテュルヌの服装で、出身校がわかったらしい。今日の空同様、腰抜けする
ほどに青い染料で染め上げられた制服に、灰色の瞳をちょっとだけ見開いてい
る。

「そうなのか、ノクテュルヌ?」

「あははーうちの校風化石時代並だからねー!」

「なるほど、確かに化石時代には魔法はないだろうな」

納得したらしい櫻華は、肩をとんとんと叩かれた。振り返ってみると、目の前
に壁が…とついでに鼻が。とりあえず鼻が肩を叩いたのだと気がついたのは、
五秒後にノクテュルヌが真っ赤な瞳を輝かせて叫んでからである。

「しろいー!おおきいー!ほしいー!!」

「………」

とりあえず、ノクテュルヌのように本能で喋ることをよしとしない櫻華は、ま
ず理性がその大きさにちょっと拍子抜けして、知性が「っていうかこの場所に
これはないだろう」とつぶやいていたので、とっさに言葉が出てこないのであ
る。
魔法列車以上の巨大な物体が真後ろにたたずんでいた。その巨体は家屋を軽く
超えている。青空をくりぬいたような真っ白な体皮をもつ動物…確か櫻華の知
識の中では「象」と呼ばれる動物だ。
その後ろで、さきほどの老人が大慌てで叫んでいる。

「ソアラちゃんまずいよーその子は駄目だって言ったでしょー」

「ごめんなさーい、なんか繊細な年頃だから言うこと聞いてくれなくって」

ぱおーん、と繊細というか豪快な泣声をあげて足踏みをはじめた象。まるで地
震か雷が目の前に直撃したように感じる。櫻華は喜び勇んで飛び込みそうなノ
クテュルヌの首根っこをひっつかみ、象に駆け寄って潰されないように掴んで
おいた。
ソアラが一言、二言宥めるように何事か呟くと象は瞬時に消えた。召喚術の使
い手のようだ。さすがソフィニア、こんな幼く見える少女でも立派な教育を…
と、思考が正常に向こうとしたまさにそのとき。
今度は足に何かがぶつかった、と何か予感めいた感じもしたのだが、とりあえ
ず確認しようとして


今度は確実に固まった櫻華であった。


『わーわーわーわー』

「わーわーわーわー、にんじん動いてるー!にんじん喋ってるー!」

ノクテュルヌの声が、わりとにんじんとかぶってるのはおいておいて。(しか
も元国立神学校音楽科出身のノクテュルヌは完璧なコーラスだった)
とりあえず説明を求めようと、半ば助けを求める視線でパステルカラーの少女
に視線を戻したのであった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

2007/04/11 00:57 | Comments(0) | TrackBack() | ○四海の詩
四海の詩3 ~春の聲~/ソアラ(熊猫)
キャスト:櫻華・ノクテュルヌ・ソアラ
場所:ソフィニア
NPC:にんじん
――――――――――――――――

ゆるやかに走り出した列車の座席に座り、向かい合う形で正面に座ったのは、
美しく妖艶な雰囲気を纏った、櫻華と名乗った美女。
生真面目な性格なのか、その背筋はまっすぐだ。
そして隣には必要以上に列車の窓から身を乗り出してはしゃいでいる
ノクテュルヌ。

「びっくりさせちゃってごめんなさい…。いつもこうではないのだけれど」
「まぁ…確かに驚いたが、案ずることはない」
「わーすごーい櫻華ちゃん、景色がすごい流れてく!飛んでるみたいー」
「こらっ、危ない!」

まるで姉妹のような二人のやりとりに、ソアラだけでなく一緒に乗っている
学友達までがくすくす笑い出す。彼女らは各々散らばり、話に花を咲かせては
笑い合っていた。

「それで…何から訊いたらいいのか検討もつかないが…」
「さっきの子達は、私が召喚(よ)んだ召喚獣です!
さっきのシマウマはサクラバ、象はクレーンっていいます。
この世界とは違う場所で生まれたので、ちょっと珍しいかもしれませんね?」
「…そうか」

なぜかげんなりとする櫻華。
が、右手はしっかりとノクテュルヌのベルトを掴んで支えている。
放っておけない性質(たち)なのだろう。
気を取り直したのか、車内を改めて眺めてから不思議そうに言葉を続ける。

「…魔術学院の生徒は皆この列車を使うのか?えらく豪勢だな」
「あ、いえ。友達のお父さんが列車の開発に携わった方で、
たまに乗せてもらうんです。 本当はいけないらしいんですけどね」
「ほう」

てへ、と舌の先を出すソアラに相槌を打つ櫻華。

「ねぇねぇソアラちゃんはこれからどこ行くのー?」

ようやく窓から身を引っ込めて、ノクテュルヌが喜びを隠さない素直な笑顔で訊いてくる。
抱いていたにんじんが肩に登ってくるのをさりげなく掴んで膝の上に戻し、
ソアラも笑顔で答えた。

「皆とコレを観にいくんです。今日から春休みに入るから、
 思い切り羽を伸ばそうって」

と、ポケットから四つ折りにした紙を開いてノクテュルヌに渡すと、彼女は
二色刷りのパンフレットの文面を読み上げた。

「クレテージェ交響楽団名曲コンサート…わー、有名だよねここ!
ソフィニアに来てるんだねぇ」
「すっごく楽しみにしているんですよ!なんていったって
生のフェルゼン・パキーニが 見られるなんて!」

思わずにんじんを掴んだまま両手を組んで、頬にくっつける。
耳元でわー、とわめく声は無視した。

「誰だ、それは?」
「ヴァイオリン奏者です!すっごくかっこよくて、わたし彼の大ファンなんです!」

きらきらと目を輝かせるソアラに苦笑いを送る櫻華。

「ねぇねぇ櫻華ちゃん~」

と、パンフレットを手に猫なで声でノクテュルヌが櫻華にのしかかる。
しかし櫻華はきっぱりと首を横に振った。

「駄目だ」
「えー!まだ何も言ってないのにー!」
「言わずともわかる。行きたいのだろう?」

ブーイングの嵐をかいくぐって、櫻華が半眼でノクテュルヌを射抜く。
ノクテュルヌは勢いがそがれるどころか、さらに身を乗り出した。

「行きたい行きたい行きたいー!」

駄々をこねるノクテュルヌ。
櫻華は渋い顔のままだが、二人がかりで説得すればそれも時間の
問題だろう。にんじんを振り回しながら、ソアラも加わる。

「そうですよ!せっかくだしお二人も一緒に行きましょうよ。ね?」

日差しと心地よい列車の揺れが奏でる春の詩を聞きながら、
ソアラは知らない場所からやってきた二人の旅人に
心躍らせる自分をはっきりと自覚していた。

――――――――――――――――

2007/04/11 00:58 | Comments(0) | TrackBack() | ○四海の詩

| HOME |
忍者ブログ[PR]