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2024/05/16 23:03 |
四海の詩3 ~春の聲~/ソアラ(熊猫)
キャスト:櫻華・ノクテュルヌ・ソアラ
場所:ソフィニア
NPC:にんじん
――――――――――――――――

ゆるやかに走り出した列車の座席に座り、向かい合う形で正面に座ったのは、
美しく妖艶な雰囲気を纏った、櫻華と名乗った美女。
生真面目な性格なのか、その背筋はまっすぐだ。
そして隣には必要以上に列車の窓から身を乗り出してはしゃいでいる
ノクテュルヌ。

「びっくりさせちゃってごめんなさい…。いつもこうではないのだけれど」
「まぁ…確かに驚いたが、案ずることはない」
「わーすごーい櫻華ちゃん、景色がすごい流れてく!飛んでるみたいー」
「こらっ、危ない!」

まるで姉妹のような二人のやりとりに、ソアラだけでなく一緒に乗っている
学友達までがくすくす笑い出す。彼女らは各々散らばり、話に花を咲かせては
笑い合っていた。

「それで…何から訊いたらいいのか検討もつかないが…」
「さっきの子達は、私が召喚(よ)んだ召喚獣です!
さっきのシマウマはサクラバ、象はクレーンっていいます。
この世界とは違う場所で生まれたので、ちょっと珍しいかもしれませんね?」
「…そうか」

なぜかげんなりとする櫻華。
が、右手はしっかりとノクテュルヌのベルトを掴んで支えている。
放っておけない性質(たち)なのだろう。
気を取り直したのか、車内を改めて眺めてから不思議そうに言葉を続ける。

「…魔術学院の生徒は皆この列車を使うのか?えらく豪勢だな」
「あ、いえ。友達のお父さんが列車の開発に携わった方で、
たまに乗せてもらうんです。 本当はいけないらしいんですけどね」
「ほう」

てへ、と舌の先を出すソアラに相槌を打つ櫻華。

「ねぇねぇソアラちゃんはこれからどこ行くのー?」

ようやく窓から身を引っ込めて、ノクテュルヌが喜びを隠さない素直な笑顔で訊いてくる。
抱いていたにんじんが肩に登ってくるのをさりげなく掴んで膝の上に戻し、
ソアラも笑顔で答えた。

「皆とコレを観にいくんです。今日から春休みに入るから、
 思い切り羽を伸ばそうって」

と、ポケットから四つ折りにした紙を開いてノクテュルヌに渡すと、彼女は
二色刷りのパンフレットの文面を読み上げた。

「クレテージェ交響楽団名曲コンサート…わー、有名だよねここ!
ソフィニアに来てるんだねぇ」
「すっごく楽しみにしているんですよ!なんていったって
生のフェルゼン・パキーニが 見られるなんて!」

思わずにんじんを掴んだまま両手を組んで、頬にくっつける。
耳元でわー、とわめく声は無視した。

「誰だ、それは?」
「ヴァイオリン奏者です!すっごくかっこよくて、わたし彼の大ファンなんです!」

きらきらと目を輝かせるソアラに苦笑いを送る櫻華。

「ねぇねぇ櫻華ちゃん~」

と、パンフレットを手に猫なで声でノクテュルヌが櫻華にのしかかる。
しかし櫻華はきっぱりと首を横に振った。

「駄目だ」
「えー!まだ何も言ってないのにー!」
「言わずともわかる。行きたいのだろう?」

ブーイングの嵐をかいくぐって、櫻華が半眼でノクテュルヌを射抜く。
ノクテュルヌは勢いがそがれるどころか、さらに身を乗り出した。

「行きたい行きたい行きたいー!」

駄々をこねるノクテュルヌ。
櫻華は渋い顔のままだが、二人がかりで説得すればそれも時間の
問題だろう。にんじんを振り回しながら、ソアラも加わる。

「そうですよ!せっかくだしお二人も一緒に行きましょうよ。ね?」

日差しと心地よい列車の揺れが奏でる春の詩を聞きながら、
ソアラは知らない場所からやってきた二人の旅人に
心躍らせる自分をはっきりと自覚していた。

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2007/04/11 00:58 | Comments(0) | TrackBack() | ○四海の詩

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