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2024/04/30 03:39 |
Get up! 14/フェイ(ひろ)
場所 :会議室 暗闇
PC :フェイ コズン
NPC:レベッカ クラッド 男 亜神




 翌日、昼になる前に呼び出された会議室。
 フェイの説明と、適時コズンとレベッカから示される資料、すべてを聞き終え
たクラッドは唸るように嘆息した。

 まず召喚術師に焦点を当てることにした三人はあらかじめ集めていた事件の資
料の中から、現地に生息していないモンスターがかかわった事

件や、フェイの過去のように眷属などが襲われた事件の中からも同様にモンス
ターを目印に選別した。

「なるほど、一見同じ多種族廃絶主義者の過激派の事件に巧くまぎれているが、
こうしてみると別の事件だな」

 前回のような拉致事件と例えば眷属の村襲撃事件などは一定の範囲内で重なる
地域に起きていた。
 今までは其の範囲がそれなりの広さにわたっていたため気に止められることは
なかったが、こうして一見別物の事件が巧く重なるところを見

ればいやおうなく目に付く要素だった。
 
「ふむ、で、これがその召喚術師絡みとして、どうする気だ?」

「エルガー達が出てるのは、またどこかが襲われるという情報が入ったからです
ね?」

 フェイは義父の質問に答得る前に、確認しておくことを聞いた。

「ん? ああ、今回は武器の密輸のほうを追っていた城のほうからの情報でな」

 城とはそのまま王城を指し、それはエドランスの行政機関をあらわしている。
 一度戻ったエルガーが、手助けの必要がないとわかるとすぐさま引き返したの
も、この襲撃の情報が国というかなり精度の高いところから得

られたものだったため、用がないのにゆっくりしていられる時間はないからだった。
 逆に言えば、フェイの手助けをすることは、エルガーをはじめ仲間たちにとっ
ては大事なことの一つだったのだが、クラッドは養い子に其の

説明をあえてせずに、聞かれたことに答えるにとどめた。

「だったら条件はそろってるんじゃない?」

 レベッカがコズンの肩の上からフェイを見上げる。

「なにかするつもりかね?」

「はい、この地図を見てください――」

 フェイは先の資料の中から地図を抜き出して広げると、三人で話し合ってまと
めた考えを説明した。
 抽出した事件が一定範囲でくくれるのは前述のとおりだが、この謎の召喚術師
の事件には細々とした拉致事件と過激派たちの事件にまぎれる

大規模な襲撃事件――いやひょっとすると過激派となんらかの協力関係にあるよう
で、たんなる偽装とは思えないほど同調して起きている。―

ーの特徴から考えると、エルガーたちの仕事が過激派がらみなら、宿場の拉致が
失敗してる分、ここで事を起こす可能性は高い。

「しかし過激派の事件と必ず同期してるわけではないし、大まかには絞れても襲
撃場所が特定できるわけでもない」

「はい、そこでエルガー達だけじゃなく、他のPTにも襲撃されそうなところを警
戒してもらいます」

 国のつかんだ過激派の情報はかなり精度が高いが、当然フェイ達の追う召喚術
師、またはその組織の情報ではない、あくまで過激派に同期す

るようにして事件を起こしている可能性が高い、というだけである。
 そこで三人はまず場所を限定するためにエルガー達の警戒している地区以外の
可能性のあるところをすべて抑え、一つ隙を作りそこにさそう

という、ある意味常道中の常道でいくことにした。

「過去の案件から考えるに過激派と同じどころを襲撃はしないが、必ず同一事件
とおもえる程度の範囲内に限定できる、が――」

 アカデミーには情報分析の研究をする教室もあり、範囲を限定し効率的な配置
をするのは可能だが、相手が行動を起こすかどうかまでは断定

しようもない。
 そもそも、なんらかの手段で向こうも情報を足つめてから行動を起こしてるの
は当たり前で、そうなれば配置関係から、自分たちへの罠の気

配を察知して、予定を変えることもありうるのだ。
 私的の養い親は公的の教師として問題点を指摘した。

「はい、ですから私がえさになります」

 先の宿場でのモンスターによる事件に偽装していた拉致事件、アニスの証言
と、無目的だったりはした金欲しさの誘拐に手を出すとは思えない熟練の術師の
存在、層考えると、普通の人間は偽装か数を稼いでるだけなのか、とにかく本当
の目的は「力を持つ血」であろうと思われることから、それの確保に一度失敗し
てる今、この謎の敵はそれほど待てないのではないかと推測できた。
 もしそこに、完全体ではないとはいえ、あのアニスより強い血をもつ獲物がい
たら……。

「さらに、それが前回邪魔をしたやつなら食いつく可能性は高いと思われます」

「……その召喚師がまたあらわれると?」

「いえ、あの者は雇われの様なことを言っていたので、別のものが来るかもしれ
ませんしそもそも人とも限りませんが、同じ一味のものが来ると思われます」

 クラッドはまたフェイの割る癖が出たのかと注意しかけたが、其の気配を察し
たのかどうか、それまで珍しくおとなしかったコズンが、両手のこぶしを打ち合
わせながら、独り言のように言った。

「今度は足手まといにはならねぇ!」

 言いかけた言葉を呑みこみ、クラッドはコズンの肩の辺りに目を見やる。
 そこでは妖精が、その普段の様子を知るものには意外な大人びた笑顔でこちら
を見返して頷いた。

「餌は、私たち三人です」


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


「日にちが決まったようだ」

 獣の気配が充満する暗闇の中に、落ち着いた男の声がする。

「――そうか」
 
 人語では在るが、まるで獣の唸り声を無理やり人語にしたような声が答える。
 その声は闇の中の獣の気配に囲まれた皿に向こうからだったが、不思議とよく
届いた。

「自らを至上と信ずる狂信者度もが、愚かにも神々に連なるモノたちをまた襲うか」

「……あんたの仲間じゃないのか?」

 男はここ最近の付き合いで、そもそもこの国の生まれでもないため、この地に
住まう異形とのモノ達については良くわかってはいなかった。

「同位の神格を持つものならともかく、導き手を失った眷族どもが仲間なものかよ」

 独特の唸り声が感情の読めないまま男の耳に届く。

「導き手……あんたはその導くべき眷族を失ってるわけか」

「それでもあがく我を愚かと思うか?」

「いや……ここにいる俺に嗤う資格はないだろう」

「そうだ、我らは同じ定めを越えんと抗うものだ」

 声の主が始めて勘定をにじませる。
 刺激されたように闇の中の獣たちがざわめくように唸り始める。

「……俺が行くか?」

「いや、愚か者との約定でな、わが子らが行く」

 神聖なる地の盟約に導くものたちではなく、その力によって従える獣のわが子
たち。
 むしろ血を求める今の自分は失った民よりも、この魔獣どものほうが近しいか
もしれない。
 神ごとき力を持ちながら神ならざるもの――亜神とエドランスに伝えられるその
存在は命令を待つ獣たちを見ながら層思った。

「お前は獲物を選んで先導してくれれば良い、情報は愚かもたちがくれるだろう」

「承知した」

 男は再び闇に溶け込み姿をした。

 後は、闇の中に獣の咆哮だけが残されていた



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2010/06/13 02:11 | Comments(0) | TrackBack() | ○Get up!!

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