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2024/04/30 08:04 |
1.ハニーイエロー Honey Yellow/リタ(遠夏)
PC:リタルード
NPC:重要キャラは特になし(たぶん
場所:成り行きに任せるので今は未定
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大きく窓をとったつくりのため明るい室内。
平均的な成人男性よりも頭ひとつ分ほど高い本棚。

今日も晴れていてよかった、と店主は思う。

天気の悪い日は客の入りが悪いし、なにより本が湿気ってかわいそうだ。
身体が重たくて、おまけに誰にも手にとってもらえないなんて、気の毒で仕方ない。


あくびをかみ殺しながら、新しく入ってきた客にカウンター越しに声をかけようとし
て、
読みかけの本をばさりとひざの上に落とした。

その客は狭苦しい棚の間を通って、次々と本を抜きとっていく。
その姿を見たほかの客たちの反応は、
店主と似たり寄ったりで、あんぐりと口をあけたり、
中にはちらりと見ただけで無視を決め込んだものもいる。

その中で例外がひとり。

「あ、くまさんだー」

店内で、ほかより背の低い棚の並ぶ区域。
母親の驚愕と焦りを無視して、無邪気な声をあげた子どもに、
その客----大きな頭にガラス玉の眼の、濃い茶色のもこもこした毛皮の
客は注意をむける。

「くまさんおっきいねー。マリーのおうちにもくまさんあるけど
くまさんみたいにおおきくないよー」

「こらっ、マリー」

躊躇いも無く問い掛ける子どもの腕をつかんで、母親が子どもを
引き寄せる。
子どもは抗議の声を上げたが、くまが自分に手を振ったのを見て、笑って「また
ねー」と言った。

「あ、どうも」

カウンターに本が置かれて、反射的にそう言って、
店主はその冊数に目を丸くする。

「カバーおつけしましょうか…?」

その問いにくまは首を振って----ガコガコと音がした---- 、
壁に貼られた紙を指差す。

”10冊以上のお買い上げで布製の手提げ袋おつけします”

なるほど、そのもこもこした手では本を運ぶのはしんどいだろう。

「…まいど」

代金を受け取って、商品を渡す。
店を出るとき、客が軽く会釈したのがなんだか好印象だった。

「あぁ」

店主はつぶやく。

----今日はいい天気だなぁ。




「あっちぃ」

着ぐるみの頭部をはずして、ベッドに腰掛ける。

窓の外はもう暗い。
今夜は新月のはずだから星がさえて見えるだろうとリタルードは思う。

汗で額に張り付いた金髪を指でつまんでもてあそぶ。
一時は腰に届くほど長くしていた髪だけど、今はある程度短くしてひとつにまとめて
いることが多い。

今日買った本はこの街を出るまでに読んで売らなきゃならない。
荷物を増やしたくないし、財産になるものでもないからだ。

着ぐるみを着て、外で出歩くことの難点は、暑さのほかにはしゃべれないことだ。
買い物の時にはそれほど支障は無いが、宿を借りるときが大変だった。

打開策としては首から黒板をさげることだろうか。それならその状態でうまくチョー
クで
字を書けるように練習しないと。

そこまで考えて、ふと気づいた。

僕、もしかしてすごく変な人になってる?

「なんかものすごくそんな気がするなぁ…」

つぶやいて、目線の先の机の上につまれた本の山を見やる。
数えたら十冊は優にこえていた。うん、変な人になってる。

「最近ずっとひとりだったしな」

そういえば独り言も増えた。

ぽろぽろと口から思考回路に流れる情報の一部がこぼれるのは、
あまり気持ちのよいものではないけれど、ついでてしまう。

よし、ナンパでもしにいこう。

決意して、自分の首から下がまだ着ぐるみをきたままだったことを思い出す。
むくむくのもこもこ。指なんかいつもよりぶっとくて愛らしい。

これ、明日には返却しないといけないんだよね。

足元に転がっていたくまの頭を手にとる。
何事も第一印象が重要なのだ。

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2007/02/11 14:23 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
2.ワイルドファイア/フレア(熊猫)
キャスト:(クマ)リタルード・フレア
NPC:なし
場所:街道
―――――――――――――――

さらさらと音さえ聞こえてきそうな、見事な銀砂が天空に埋め込んであった。

月は無い――が、広い街道を歩くには、街の明かりと
綺羅星(きらぼし)の瞬きだけで十分だった。

道中急いだが、とうとう日が暮れた。
しかしまだ宵の口だ。ここは宿場町ではないものの、宿を探すのは
深夜にならない限り、そう難しくないだろう。

ところどころ飲み屋から溢れる光が、路に人影を落としている。
流れてくる陽気な笑いと、温かそうな湯気を受けながら、フレア・フィフスは
肩のザックを背負いなおした。

まだ少女と言っていいだろう。16歳になるが、小柄な体つきのせいか、
よく年下に見られることが多いようだ。

細身の剣を腰に佩いている。鞘は白い陶器のような、あまり見ない素材だ。
だが、それを扱うであろう身体は、あまりにも華奢である。
剣を持ってはいるものの、軽装であり、防具らしい防具もほとんど身につけていな
い。

腰まで伸びた黒髪をひとつに束ねていて、それが歩くリズムに乗って跳ねる。
瞳は赤。火のように明るい色で、濁りもない。

ふと、その瞳が前方へと向いた。
そこだけちょうど街灯が切れていてよくわからないが、どうやら宿屋のようである。

空室があれば、あそこに泊ろう。

と、その見当をつけていた宿屋から人影が現れ、こちらに向かって歩いてきた。
うす暗く、相手がどんな人相をしているのかはよく見えない。
それでも、少し異様であるということははっきりわかった。

やたら頭が大きい。背が高いわけではないが、とにかく頭が大きい。

だが、宿屋は目の前なのだ。このまま疑問を振り払って通り過ぎ、
受付を済ませてしまえば、あとは好きなだけ眠れる。

無視を決め込んで、フレアは早足でそれとすれ違った。

「……え!?」

無視できなかった。
慌てて振り返る。そこにいたのは、どうみてもクマだった。
とはいえ、本物のではない。むっくりとした生地でできた、着ぐるみである。
例えるならば、カーニバルの時に子供達に風船を配っていそうな。

すれ違ってからすぐに振り向いたのか、クマもこちらを向いており、
ガラス製の黒い瞳に見つめられて戸惑う。
『中身』がどこを向いているのかは知れないが。

「なに、か…?」

ひたすら平静を装い、話しかけてみる。
クマは、がこん、と音を立てて首を縦に振ると、左右を探るように見渡して、
ぼすばすぼす、と、変な足音をたてながら向かいのアパートに向かった。
アパートの一階は道に面しており、バルコニーなど手を伸ばせばすぐに届く。

クマ――というより、クマの着ぐるみを着た『何か』は、そこにあった早咲きの
チューリップの鉢植えを手に取るり、くるりと振り返ってそれを差し出してくる。

「…私に?」

がこん。

「…」

とりあえず受取るが、「人様のものだろう?」と、もとにあった場所に戻す。
見ると、クマは少し頭を傾かせて突っ立っていた。

見ようによれば、落ち込んでいるようにも見えなくもない。


2007/02/11 14:25 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
3.Cement/ヴィルフリード(フンヅワーラー)
キャスト:ヴィルフリード・フレア・(クマ)リタルード
NPC:なし
場所:宿屋とその宿屋前
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 なんとなく、気分が落ち込む日というのは誰しも体験するものであろう。
 そして、今日が彼にとってその日であった。

 ある宿屋の一室。ベッドに倒れこむようにして寝転がっている壮年の男性がいた。
 この街での仕事を終えたばかりであるヴィルフリードは、ベッドに顔をうずめなが
らため息をついた。
 昔なら、仕事終わりの日は稼いだばかりの金を握りしめ、ぱぁっとバカなことに注
ぎ込んでいたのに、なんだこのザマは。
 そう心の中で毒づく。

 窓から見える空を見る。もう外は暗く、ヴィルフリードは今更ながら時間の認識を
する。
 しばらく、その空の色を眺めていたが、突如、むくりと起き上がる。

「こんなこと、やっててもラチがあかねぇか……」

 なにかを振り切るようにつぶやき、簡単な身支度を始めた。


「おや、どちらにお出かけで?」

 宿屋の主人が、ずらした眼鏡を少し上げ、声をかける。

「外で酒でも、かっくらってくるよ。
 ついでにカワイコちゃんでもひっかけてくるさ。」

 ヴィルフリードは笑いながら鍵を渡す。

「ハハ、旦那もお盛んなこって。
 いってらっしゃい」

 ヴィルフリードは、片手をヒラヒラと振りながら、玄関へ向かった。
 実際には、酒場という場所に行くこと事態が目的だった。酒場の、あのごった返し
た雰囲気に身を置きたかったのだ。
 あの、訳も無く浮かれた空気にいれば、この身体に溜まった腐った空気が抜けるの
ではないか。そんな、ことを期待しての行動だった。
 まぁ……カワイコちゃんがひっかかってくれれば儲けものだが。

 宿屋から出る。
 すると、ヴィルフリードは異変に気づいた。
 通行人が、わざわざ密集したところを選んで歩いている。
 ……いや、違う。宿の周りを避けるように、人々が通行しているのだ。
 ある人はなにかに視線を向け、ある人は早足にその場を通過していく。

 なんだ……?

 そんなふうに、余所見をしながら歩いていたのがまずかったらしい。

 トン

 何かにぶつかった。

「おっ…と。すまない」

 ぶつかったのは、華奢な少女だった。
 その少女の、こちらを見上げる瞳にヴィルフリードは心の中で少し感嘆した。
 どんな上等な宝石でもこんな色は出せまい。
 ぶつかった拍子か、まとめている髪の毛が少し乱れてしまっている。
 他に被害は……と見るが、特にないようだった。
 ついでに、胸はまだ発展途上であることを、ヴィルフリードは確認した。
 流石に、少女に対してそのような対象として見る気は無いのだが……それは男の悲
しい性(サガ)であるとでも思っていただきたい。

「あ……いや……」

 少女の声には困惑の色が混ざっていた。少女の視線の先がヴィルフリードから離れ
る。
 ヴィルフリードもそれにつられるように、少女の視線の先をたどる。
 そこには。

 巨大なクマのぬいぐるみ。

 クマは、何かを言いたげに片腕を中途半端にこちらに伸ばし、少しだけ首をかし
げ、突っ立っていた。
 簡単に言ってしまえば、その様は「寂しそう」であった。

 そのクマのぬいぐるみから、小さくではあったが、言葉が漏れた。

「横取り……」


2007/02/11 14:25 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
4.バニラクリーム/リタ(遠夏)
PC:ヴィルフリード、フレア、リタルード
NPC:なし
場所:宿屋前、宿屋
------------------------------------

ある種の非日常な装いというのは、奇妙に人を冷静にするところがある。

だからリタルードは、本人なりに冷静に判断する。

「横取り……」

されるくらいだったら。

「は?!」

「うわっ!」

少女と男性が同時に狼狽した。

クマが自分たちの腕をつかんでひっぱったのだ。
クマが二人の間に入る形となる。

「みんな仲良し、ね」

くぐもったその声が二人にちゃんと届いたかなんてわからないけど。



「やっぱり人格の歪みって人と触れ合うことで修正するのが
 一番いいと思うんだよね。
 あ、僕リタっていうからよろしく」

半強制的に連行した宿屋の食堂でリタルードは開口一番にこう言った。

クマの頭は、今は四人がけのテーブルの一席を占領している。

「わ、私は、フレア・フィフスだ」

紅い瞳の少女が、生真面目に返す。

その様子が本当にまっすぐで、誰に対しても反感を抱かせないような誠実さが彼女に
はあった。

「おじさんは?」

「ヴィルフリード…お前さんなんでそんな格好してんだ?」

「うわぁ、すごく真っ当な質問だぁ。
 僕、感動して涙でてきそう」

「とりあえず質問に答えてくれ」

「えー、そんなの決まってるじゃん」

頬に指を添えて、「ねっ」と小首をかしげてリタルードは答える。

「せっかく僕可愛いんだから可愛い格好したほうがいいじゃん」

「それ、決定的なところで何かが間違ってるぞ」

「うん、僕もそう思う」

あっさり肯定されて、ヴィルフリードはうめいて頭を抱えた。
今四十数年築いてきた常識が現在の状況と戦ってるかなぁ、と思ってそっとしてお
く。

「と、いうわけだからよろしくね。フレアちゃんって呼んでいいかな?」

「それはいいが、何がよろしくなんだ?」

「えー、だって夜道を女の子一人で歩いてたらナンパしてくださいって
 言ってるようなもんだよ。
 通り魔にあっちゃうよ。遭遇しちゃうよ」

「リタだって女の子だろう?」

あ、やっぱり。

不思議そうに、警戒や不審も入った感じで言われて、リタルードは答えずにへらっと
笑う。

こういう勘違いをされて楽しいと思うのは、
すごく意地が悪くて器が小さいって自分でも思うけれど、
そういう所は消そうと思って消せるものではない。

かみ合わない会話。通じ合わない気持ち。

楽しいと思うのは、それが自分が誰かと一緒にいるって思い知らせてくれるから。

フレアがさらに何かを言おうと口を開いて----真紅の瞳を見開いた。
視線の先は窓の外。

リタルードがそこを見やるときには、彼女は剣を持って飛び出していた。


2007/02/11 14:26 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
5.ハイドラント/フレア(熊猫)
キャスト:ヴィルフリード・リタルード・フレア
NPC:ゼクス
場所:街道
―――――――――――――――

乱暴に扉を開けて通りに出ると、そこには一人の男がいた。

男――と称するより、青年と言ったほうがいいか。自分より年上だろうが、
そう老いてもいない。

黒っぽいコートのようなものを袖に腕を通さず羽織っているだけで、
武装をしている感じでもない。

青年は、フレアが出てきても意に介さない様子で、
この宿屋の窓に片方の手のひらと顔を向けている。

6本の指がある手の平で。

嫌に痩せぎすの腕だけを伸ばし、体はこちらに向けながら、
ゆっくりと流し目のように目を細めて、視線をこちらに這わせてきた。

白に近いベージュの髪。ランプの灯の光ではなく、日の光に当たれば
もっと色は薄いだろう。
口が妙に大きいような気がする。

黙ってそこに立っているだけ、こちらを見ているだけ。
それだけで、意識が張り詰める。

例え、彼の指の数が自分と同じだとしても、纏っている強大な魔力がなくても、
きっと今と同じ事を考えただろう。

彼が今、その魔力を放ったとしたら――
この宿屋は、いやこの一帯は塵と化す。
それは予想ではなく、漠然とした真実。
見えなくても、感じる。肌が痛いほどに濃く、純粋に強い魔力。


その切っ先は、確かにこの宿にむけられている。


と、手は下ろさないまま、青年が口を薄く開いた。

「…何の用かな」

少しかすれたような、甘い声。
なぜかぐっと言葉に詰まるが、なんとか言葉を返す。

「そっちこそ!」

喉が渇いている。気がつけば、拳をきつく握っていた。
青年はこちらの睨みに動じる事なく――少し間をおいて嘆息すると、
やっとそこで腕を下ろした。
コートの中に、細い腕が消える。

同時に、フレアの胸から暗く重い緊張が抜けた。

背後で、なになにー、というリタの軽い声と足音が聞こえた。
続いて、開きっぱなしのはずの扉が軋む音。

振り返ると、いつの間にか様子を伺っていたらしいヴィルフリードが、
半身を扉に隠したまま、渋い顔をして立っている。
さらにその後ろから、ひょいとリタが顔だけを出した。

「フレアちゃん、どうしたの?」

目の覚めるような金髪を振って、リタが首をかしげる。
フレアは口ごもってもう一度青年に顔を向けると、彼は二人を見ているよう
だったが、すぐにこちらを再度見返すと、どうという事もないふうに
口だけで笑って見せた。

「惜しかったね」
「え――」
「…僕の事はゼクスとでも呼んで欲しい…。また会おう」

そう言い切って、ゼクスと名乗った青年はいきなりきびすを返した。
あれ誰?と、リタが言っているのが聞こえる。


フレアは混乱して、ただその後姿を見ていた。


2007/02/11 14:27 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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