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2024/05/18 00:09 |
2.ワイルドファイア/フレア(熊猫)
キャスト:(クマ)リタルード・フレア
NPC:なし
場所:街道
―――――――――――――――

さらさらと音さえ聞こえてきそうな、見事な銀砂が天空に埋め込んであった。

月は無い――が、広い街道を歩くには、街の明かりと
綺羅星(きらぼし)の瞬きだけで十分だった。

道中急いだが、とうとう日が暮れた。
しかしまだ宵の口だ。ここは宿場町ではないものの、宿を探すのは
深夜にならない限り、そう難しくないだろう。

ところどころ飲み屋から溢れる光が、路に人影を落としている。
流れてくる陽気な笑いと、温かそうな湯気を受けながら、フレア・フィフスは
肩のザックを背負いなおした。

まだ少女と言っていいだろう。16歳になるが、小柄な体つきのせいか、
よく年下に見られることが多いようだ。

細身の剣を腰に佩いている。鞘は白い陶器のような、あまり見ない素材だ。
だが、それを扱うであろう身体は、あまりにも華奢である。
剣を持ってはいるものの、軽装であり、防具らしい防具もほとんど身につけていな
い。

腰まで伸びた黒髪をひとつに束ねていて、それが歩くリズムに乗って跳ねる。
瞳は赤。火のように明るい色で、濁りもない。

ふと、その瞳が前方へと向いた。
そこだけちょうど街灯が切れていてよくわからないが、どうやら宿屋のようである。

空室があれば、あそこに泊ろう。

と、その見当をつけていた宿屋から人影が現れ、こちらに向かって歩いてきた。
うす暗く、相手がどんな人相をしているのかはよく見えない。
それでも、少し異様であるということははっきりわかった。

やたら頭が大きい。背が高いわけではないが、とにかく頭が大きい。

だが、宿屋は目の前なのだ。このまま疑問を振り払って通り過ぎ、
受付を済ませてしまえば、あとは好きなだけ眠れる。

無視を決め込んで、フレアは早足でそれとすれ違った。

「……え!?」

無視できなかった。
慌てて振り返る。そこにいたのは、どうみてもクマだった。
とはいえ、本物のではない。むっくりとした生地でできた、着ぐるみである。
例えるならば、カーニバルの時に子供達に風船を配っていそうな。

すれ違ってからすぐに振り向いたのか、クマもこちらを向いており、
ガラス製の黒い瞳に見つめられて戸惑う。
『中身』がどこを向いているのかは知れないが。

「なに、か…?」

ひたすら平静を装い、話しかけてみる。
クマは、がこん、と音を立てて首を縦に振ると、左右を探るように見渡して、
ぼすばすぼす、と、変な足音をたてながら向かいのアパートに向かった。
アパートの一階は道に面しており、バルコニーなど手を伸ばせばすぐに届く。

クマ――というより、クマの着ぐるみを着た『何か』は、そこにあった早咲きの
チューリップの鉢植えを手に取るり、くるりと振り返ってそれを差し出してくる。

「…私に?」

がこん。

「…」

とりあえず受取るが、「人様のものだろう?」と、もとにあった場所に戻す。
見ると、クマは少し頭を傾かせて突っ立っていた。

見ようによれば、落ち込んでいるようにも見えなくもない。

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2007/02/11 14:25 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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