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2024/05/21 13:23 |
3.Cement/ヴィルフリード(フンヅワーラー)
キャスト:ヴィルフリード・フレア・(クマ)リタルード
NPC:なし
場所:宿屋とその宿屋前
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 なんとなく、気分が落ち込む日というのは誰しも体験するものであろう。
 そして、今日が彼にとってその日であった。

 ある宿屋の一室。ベッドに倒れこむようにして寝転がっている壮年の男性がいた。
 この街での仕事を終えたばかりであるヴィルフリードは、ベッドに顔をうずめなが
らため息をついた。
 昔なら、仕事終わりの日は稼いだばかりの金を握りしめ、ぱぁっとバカなことに注
ぎ込んでいたのに、なんだこのザマは。
 そう心の中で毒づく。

 窓から見える空を見る。もう外は暗く、ヴィルフリードは今更ながら時間の認識を
する。
 しばらく、その空の色を眺めていたが、突如、むくりと起き上がる。

「こんなこと、やっててもラチがあかねぇか……」

 なにかを振り切るようにつぶやき、簡単な身支度を始めた。


「おや、どちらにお出かけで?」

 宿屋の主人が、ずらした眼鏡を少し上げ、声をかける。

「外で酒でも、かっくらってくるよ。
 ついでにカワイコちゃんでもひっかけてくるさ。」

 ヴィルフリードは笑いながら鍵を渡す。

「ハハ、旦那もお盛んなこって。
 いってらっしゃい」

 ヴィルフリードは、片手をヒラヒラと振りながら、玄関へ向かった。
 実際には、酒場という場所に行くこと事態が目的だった。酒場の、あのごった返し
た雰囲気に身を置きたかったのだ。
 あの、訳も無く浮かれた空気にいれば、この身体に溜まった腐った空気が抜けるの
ではないか。そんな、ことを期待しての行動だった。
 まぁ……カワイコちゃんがひっかかってくれれば儲けものだが。

 宿屋から出る。
 すると、ヴィルフリードは異変に気づいた。
 通行人が、わざわざ密集したところを選んで歩いている。
 ……いや、違う。宿の周りを避けるように、人々が通行しているのだ。
 ある人はなにかに視線を向け、ある人は早足にその場を通過していく。

 なんだ……?

 そんなふうに、余所見をしながら歩いていたのがまずかったらしい。

 トン

 何かにぶつかった。

「おっ…と。すまない」

 ぶつかったのは、華奢な少女だった。
 その少女の、こちらを見上げる瞳にヴィルフリードは心の中で少し感嘆した。
 どんな上等な宝石でもこんな色は出せまい。
 ぶつかった拍子か、まとめている髪の毛が少し乱れてしまっている。
 他に被害は……と見るが、特にないようだった。
 ついでに、胸はまだ発展途上であることを、ヴィルフリードは確認した。
 流石に、少女に対してそのような対象として見る気は無いのだが……それは男の悲
しい性(サガ)であるとでも思っていただきたい。

「あ……いや……」

 少女の声には困惑の色が混ざっていた。少女の視線の先がヴィルフリードから離れ
る。
 ヴィルフリードもそれにつられるように、少女の視線の先をたどる。
 そこには。

 巨大なクマのぬいぐるみ。

 クマは、何かを言いたげに片腕を中途半端にこちらに伸ばし、少しだけ首をかし
げ、突っ立っていた。
 簡単に言ってしまえば、その様は「寂しそう」であった。

 そのクマのぬいぐるみから、小さくではあったが、言葉が漏れた。

「横取り……」

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2007/02/11 14:25 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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