忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/04/30 04:25 |
白金の鮪/デコ(さるぞう)
PC   デコ

場所 北西部辺り(X50Y130)の小さな町チヌタナ

**************************************************************************

「チヌタナクア」
大陸の北西に位置する離島郡の一つにある小さな町
山吹鮪と呼ばれる黒い魚体の背中に黄金色のラインが走る巨大鮪の漁を主産業とする。

山吹鮪の群れの先頭を泳ぐ白金の魚体を見た者は幸福を約束されるという眉唾の伝説
そして伝説から生まれた白金鮪タナクアを奉る町でもある。


**************************************************************************





「ったく、俺を便利屋位にしか思ってないのかね、くそったれ・・・」
白髪の多少混じった無精髭をボリボリと掻きながらタナクア(土着の現地神)
に対し毒づき遥か水平線をにらみつける。

桟橋に座り込んで船を待つ彼の名はデコ-バルディッシュ
司祭位を持つタナクアに仕える神官である。

司祭位を持つことが不思議なほどに不精な見た目。
猛禽類を思わせるような鋭い眼光と歯に衣着せぬ言動は聖職者を名乗るには全く持って似つかわしくない
そんな彼がその地位に居るのは単に「神託」を得る事が出来るためだ。

もっとも、小さな町の小さな小さな神殿の司祭でしかないのだが・・・

4年に一度彼に下される神託に従い彼はこの町を発つ。
山吹鮪は4年で成体と言える2M付近まで育ち新たな群れを形成し旅立ち
それに合わせたかのように神託を受けた4人の司祭達は、毎年旅立つ。

「毎度の事とは言え、世話焼きな神だ・・・人間の事は人間に任せればいいんだ。」
苦虫を噛み潰したように目をきつく瞑る。
島を取り囲むように寒流が流れ氷の上位精霊が住むと言われる永久氷窟存在するチヌタナは
1年の半分を雪と氷に覆われ大きな産業が育たない。
そして氷に覆われた大地はその大地に眠る鉱石を採取する事を許さない。
ゆえに漁業が発展し、タナクアの導きにより生きる糧を得ることが出来るのだ。


タナクアの導き無しではこの町に住む者に幸は少なく貧しい暮らしが待つだけ。
なのに彼がなぜ自分の仕える神に対し不遜な態度を取るのかは彼にしか分からない事件があり
そしてタナクアがなぜこの不遜な男を見捨てないのか、
それもタナクアだけが知る彼の本質と資質。


「デコ様、支度が整いました・・・道中お気をつけて・・・」
手漕ぎのボートを桟橋に付けると見習い神官が恭しい挨拶をする。
遠目に見える帆船に乗り込む時間が来たらしい。

「んっ、留守は頼んだ、すまんが今回は帰るまでかなりかかりそうだ」
ボートに乗り込みながら神官に向かって一言告げる。

「何かまた御神託でもあったのでございますか?」
心配そうな視線をデコに投げかけ問う。

「ただの勘だ、神託の行き先も曖昧な表現だったからな、何か意味があるんだろう。」

今までの神託は、そう、町に必要な何かを司祭に伝えるいわば「お使い」のようなものだった。
が、今回は違う。




-------この大海、この大地、この大空、お前の望む「何か」を持ち帰るが良い-------






デコはタナクアに託された言葉を脳裏に刻み込み反芻すると「行って来る」とチヌタナの大地に向かって呟いた。



*************************************************************************************
PR

2010/02/04 00:10 | Comments(0) | TrackBack() | ソロ
鳴らない三味線/ストック(さるぞう)
PC   ストック
NPC   カミヤ オオタニ フルイケ メメコ 婆ちゃん
場所  今じゃない時と場所


------------------------------------------------


ガヤつく雑踏、今じゃない時、此処ではない場所、コンクリートとガラスで出来た街
陽炎を上らせるアスファルト、排気ガスとクラクションの騒音。





此処は今じゃない時と場所の世界・・・・・・




「おーい、ストック~、今度のライブ準備良いか?」
五尺程の四角いケースを肩に掛け隣を歩く黒髪の少年が声をかけてくる。

「うん、大丈夫だよカミヤ、僕のほうは完璧」
にっこりと小首を傾げながらストックと呼ばれた少年は
同じく肩に掛けてあるケースを軽く持ち上げて見せた。

皮製のスリムなパンツに和をモチーフにしたであろう黒いジャケット。
そして端正だがちょっと印象に乏しい顔立ちと纏っている空気は
ライブという言葉があまり似合いそうに無い。


「楽しみだな、今度のライブ。
チケも全部捌けたし、あと心配は新しく作ったあの曲だけだけど。」
カミヤと呼ばれた少年はニコニコとこの週末に行われる箱での演奏を想像しているらしい。

夏休みはもうすぐ、彼等の夏の始まり・・・・・・


そしてストックの永遠の始まり・・・・・・



ストック・ミュー・カワモトは高校2年生。
癖の無い茶色の髪、茶色い目、多少色白の少年。
身長も高いとは言えない、体格も太っていないだけで、筋肉質というわけでもない。
穏やかで静かな性格は敵も作らず
積極的とは言えない行動力は多くの友達を作ることも無かった。

所謂、”影の薄い少年”と言えるかも知れない。






「ねぇ、婆ちゃん、ここ、もっと強く弾く様な方で行きたいんだけど・・・」
ストックが構えた撥(ばち)をシャンと弾きながら尋ねたのは
早くに両親を失った彼を育てたのは今の彼に”三味線”と呼ばれる弦楽器を教えた彼女。

「お前の好きな様にお弾き、御三味(おしゃみ)が全て語ってくれますよ。」
ニコニコと、彼の紡ぎ出す音を聴きながら、そう答える。
ストックが穏やかに育ったのは、彼女のそんな気質からかもしれない。

そして対面に座った彼女は背筋を伸ばし撥を握り
ストックが奏でた旋律と同じ旋律を紡ぎ出す。
同じ旋律なのに、違う音楽に聞こえる・・・
ストックは聴き惚れる。




           御三味にはね



     今迄過ごした時間と思い出が乗るの



           それを紡ぐの



           いつか解るわ




遥か昔に聞いた様な声は、幻なのか、現実なのか、それすら解らない。






「おい!おいったら!ストック?」
揺り起こされる。
自分が今どこに居るのか解らない。

「大丈夫か?もうすぐ時間だぜ?」
赤毛の大きな体格の男が太鼓の撥を片手に肩を揺する。

「ああ、オオタニ君、平気ボーっとしちゃってた。」
読み取ろうとしなければ判り辛い”作った笑顔”。
自分でも誤魔化せたかどうか解らない。

「気合が足りない・・・あと1時間でリハ・・・」
ショルダーキーボードを確認しながら茶髪の小柄な女の子が眼鏡をクイッと上げる。

「そこまで言うなよメメコ、リハーサル前で緊張してんのさ」
カミヤも調弦を確認しながら爽やかに笑う。
彼の場所を制する空気は天性のものなのだろう。

「あーーん?ストックの寝ぼけは今に始った事ぢゃねーじゃん?」
巻き舌&スキンヘッドに鶴と亀のペーパータトゥを貼り付けたフルイケはカラカラ笑う。
自称”小節の回るロックシンガー”らしいが
誰も突っ込まないのは優しさか。




(なんだろう、音が・・・音楽がわからない)
そして、リハーサルが終わった後ストックは違和感を感じていた。

昨日まで、いや、さっき起される前までは”音”が絡み合って”音楽”
を作り出していた。

(でも、違う・・・今迄沢山練習したのに・・・なんだろう、この違和感・・・)
ストックは違和感を感じたまま地下鉄に乗り込んでいった・・・



********************************************************

2010/03/12 20:00 | Comments(0) | TrackBack() | ソロ
鳴らない三味線 2/ストック(さるぞう)
PC   ストック
NPC   カミヤ (オオタニ フルイケ メメコ) 婆ちゃん
場所  今じゃない時と場所

----------------------------------------------------------------


電車に乗り込んだ後も、違和感は続く。
つり革に手を掛け、ゴトンゴトンとレールが奏でる音に耳を預ける。
そして何度目かの違和感。

(街が・・・歌っていない?)

直感的にそう思う。
普段なら、音が連なりリズムを奏で、自然と音楽が生まれる。
だけど、違った・・・
ストックの体を流れるリズムが音楽として伝わってこないのだ。

自然と周りを見渡す。

いつもならどこかに一人位ヘッドホンを耳にする若者が居る筈。
しかし、一人もいない。

鼻歌を口ずさむ人も居ない。

車掌のアナウンスすら歪に聞こえてくるような感覚。


酸素が薄くなっていく様な奇妙さに思わず息を大きく吸い込みたくなる。


「×○○~×○○~、御降りの際は~」

ストックは自らが降りる駅名に、ハッと我を取り戻す。
車掌の調子っぱずれのアナウンスに顔をしかめてホームに降り立つ。

ガヤつくホームのベンチに座ると、バックからヘッドホンを取り出し耳に掛け
再生ボタンに手を掛ける。
このボタンを押せば、いつも聞いている”音”が”音楽”となって耳に流れ込むはず。


願いにも近い想いでボタンを押す。


(どうなってるんだろ、買ったばかりだぞこれ)


願い叶わず、”音”はするが”音楽”ではない。
音は飛び、旋律も無く、雑音だけがヘッドホンを通し耳に流れ込む。

故障を願うような思考に自らが傾く事を感じる。
直感はすでに故障などではない事を告げている。
それでも・・・である。

そして
じっとしている訳にもいかず、家路に向う事を決め駅を出た時に
絶望感にも似た確信を得た。



”音楽”が”消えた”のだと・・・




街からは何一つとして音楽が聞こえてこない。

店頭から流れてくるはずの音楽は乱れ。

歩む人々は空ろな目でその音すら耳に入らない様子で。

いつも楽しそうに噴水の前でギターを引いてた男は
街角でギターを抱えたまま座り込んでいる。


(どうなってる?何が起きた?)


焦燥感だけがストックを襲い、ヨロつきながらも自然と駆け出した。


(悪い夢でも見てるのか・・・)

目が回るような感覚、目の前がぼやけ、思考が出来なくなってくる。




!"#$%&''()!"$%&''()(''&%$"#$%&=~|)(''&

思考を呼び覚ますかのような”異音”が携帯電話から響いた事に気が付けたのは
バイブレーター機能が妙な振動をしたおかげか。
電話の表示名は「カミヤ」だった。

「もしもし?」
いくらかの平常心を取り戻しカミヤであろう電話に返事を返す。

「なぁ、気付いたよな?俺だけじゃないよな?」
上擦り、怯えた様な声でカミヤは開口一番問い掛ける。

「うん、変だよ、”音楽”が消えた。」
ストックはなんと表現して良いのか解らなく、そう言った。

「お前は弾いて見たか?・・・俺は・・・・・もういやだよっ!」
かなり取り乱しながら最後は叫ぶカミヤ、普段の明るい彼の様子は全く感じられない。

弾いて見たか?とは無論二人の共通の楽器である三味線の事だろう。

「まだ、ケースに・・・・・」
そう答えたときには携帯電話の向こうの声は途絶え、聞こえるはずのツーツーと言う音

すら只の異音と化している。

「カミヤ?どうしたのカミヤっ?」
切れた電話に向って問いかけても返事が無い事はわかっていても
そうせずにいられなかった。
再びカミヤに繋ごうとしても繋がらない。
他のメンバーにも
登録されてる他の人たちにも・・・


(携帯電話が使えなく?音楽と関連のあるものが全部使えなくなってる?)
あまりにも適当な仮説を立てる。
それに対し殆ど意味の無い確信を持ちながら再び家を目指す。


ガチャリとドアを開け、祖母の居るはずの部屋へ急ぐ。
「婆ちゃん!?」
奇妙な焦燥感にあおられる。
そして、奥にある居間の襖を返事を待たずに開けると
「どうしたんだい?まぁまぁ慌てて・・・今御茶でも淹れるから」
などと、呑気な返事が返ってくる。

ホッと息をついた、なぜか解らないが安心できた。
気を抜いたときにシャランと三味線の音が鳴った様な気がした。

途端に目の前がぼやける。
目の前にいた筈の祖母の影が薄く消えていく様に見えた。
続いて、家具、テーブル、部屋に存在したはずの全てが消えてゆく。

薄れ行くストックの意識と共に・・・・・・



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

2010/03/12 20:08 | Comments(0) | TrackBack() | ソロ
鳴らない三味線 3/ストック(さるぞう)
PL   さるぞう
PC   ストック
NPC   (カミヤ オオタニ フルイケ メメコ 婆ちゃん)
場所  今じゃない時と場所

----------------------------------------------------------------

「こ、ここは?」
遠退いた意識の先、周りを見渡すが目の前にあるのは何も無い無限に広がる空間。

数回頭を左右に振り、現状を理解しようとする。
おそらくは夢なのだと、ストックには思えた。

ほんの数分・・・いや数秒前に存在した祖母の部屋は、自分が知る場所ではなくなっている。
闇も無い、そしておそらく光すらない、自分だけの意識の世界。



「~~♪ ~~ーー♪  ー~♪」



そんな中、ふと耳に流れてくるものがある。

「音楽?!」
ストックは耳を澄ます。



「~ー~♪ ~~ー~~ー♪  ー~ー♪」


目を閉じ、聞こえる音に集中する。
ほんの数時間前・・・いや

いつから聞こえなくなっていたのだろう・・・・・・・・

失われていた音色は、千歳(ちとせ)にも百歳(ももとせ)にも永く・・・



乾き切った心に響くそれは段々と音量を増す。
心を潤し、染み渡るそれに合わせ、周囲が景色を取り戻す。

そして、取り戻した景色と何も無い部屋に残る三味線が一棹(さお)

「これ・・・ばぁちゃんの・・・」

祖母の愛用する銘細棹「百烏(ももがらす)」。

ストックは導かれるように百烏を手にする。
そして、壱の糸、弐の糸、参の糸と、順番に触れる。
そして流れ続ける音色に合わせる様に弦を爪弾く・・・


湧きいずる音色。


もの凄く心地が良い・・・奏でる音色と喜びが体中を駆け巡る。



同時に脳裏に浮かび上がるのはバンドのメンバーとの演奏の日々・・・
弦が震える・・・憑かれた様に撥を振るう・・・

カミヤと今の学校で初めて出会った時の事。
オオタニ君を騙すように誘ったライブ。
住み着いた猫のようにバンドに居ついたメメコ。
底抜けの明るさでメンバー全部を引っ張るフルイケ君。


すぐ隣で演奏してくれてるかのような錯覚に
ストックのテンションは上がり続け、思わず薄く笑みを浮かべる。


カミヤの爽やかな笑顔と地歌三味線の音色が・・・
オオタニ君の迫力のある陣太鼓の撥捌きが・・・ 
メメコのクールで滑る様なキーボードの鍵盤操作が・・・
フルイケ君の骸骨マイクから響くシャウトが・・・ 


忘れかけていた全てが脳裏に蘇る・・・

ずっと忘れていた演奏を取り戻す。


(そうか、僕は忘れちゃっていたんだ・・・)


「はぁ、はぁ、はぁ」
永遠にも思えた演奏を終え、肩で息をするストック。
心地良い疲労感と共に座り込む。

「これが・・・音楽・・・」
失った何かを取り戻しポツリと口に出た言葉・・・

そしてもう一度「百烏」を構え撥を下ろす。


今度はゆっくり・・・音を噛み締めるように。

自ら奏でた音色が包むかのように、ストックを現実への覚醒へと誘う。



(みんなに逢いたいな・・・・・・)


醒め始めた意識の中にメンバーの顔が脳裏に浮かぶ。



(もう、忘れちゃう位逢ってないのに・・・)



自然と涙が溢れるのを感じながらストックは目覚めた・・・



><><><><><><><><><><><><><><><><><>



ゆっくりと、ゆっくりと目が覚める。

(まぶしい・・・)

自分が泣いていた事に気付き目を擦る。

(懐かしかった・・・・・・な・・・)

木に括り付けたハンモックから荷物を下ろすと
ケースに入った「百烏」を見やる。



(夢だったけど・・・・・・)



自らが纏った希薄な存在感を自覚し、ストックは苦笑する。


今の彼自身は、この世界において一言で言えば”無害”な存在と言えよう。

彼に必要なものは”創造”する事だけ。
その唯一の手段が音楽。

この世界で”創造”を続けなければ消えてしまう希薄な存在が彼”ストック・ミュー”

そして彼は今日も三味線を爪弾く。



いつか戻れる元の世界があること事を信じて・・・



----------------------------------------------------------------

2010/06/13 02:15 | Comments(0) | TrackBack() | ソロ

| HOME |
忍者ブログ[PR]