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2024/04/30 03:04 |
MT「01.アルス・モンディの書」/ライアヒルト(Caku)
PC.ライアヒルト.アーシェリー
NPC.声だけの使者、赤い髪の吸血姫、胡散臭い髭面の男
Place.プロピア盆地の街リオン・ドール→ルバイバ・キエーロ通り三番街
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「なんですとぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」




絶叫は真夜中の大聖堂の礼拝堂に響き渡った。
その悲痛さと音量は、殉教した聖者も柩から飛び上がって驚くかといわんばか
りの絶叫だった。

「だってその”本”を運ぶ旅団が通るっていうからっ!三日三晩山道で張って
たんですよっ!!」

深夜の静寂を切り裂く絹、というかガラスを引っかいたような金切り声をあげ
たのは一人の神父。へなへなと床に座り込み、がっくりと両手を床について土
下座のような姿勢に崩れる。周囲にリアクションをする人物の影は見当たらな
い…と、思いきや、礼拝堂の十字架の裏手から声が聞こえた。

「”向こう”も予想外だったらしい、なにせ翌日には今までの巧妙さなんて欠
片もない混乱っぷりだ。おかげで組織を丸ごと潰せたんだが、肝心の”本”の
行方がわからない という事だ」

モルフ地方で最も大きいイムヌス教大聖堂、ボルド山の麓に広がるプロピア盆
地の街リオン・ドール。イムヌス教が色濃く根付くこの街の守護聖人は「金獅
子」と呼ばれる巨漢で、その身体で千人の民を救い出したとされ、街のシンボ
ルとして大聖堂でも威風堂々とした屈強な男の像が祭られている。その屈強な
男の像の下で、女々しく声を震わせながら泣く男に声は同情したのか、続けて
事情を説明しはじめた。

「その組織なんだが、一人取り逃がしたらしい。というか、よりによって一番
面倒な男を取り逃がした…召喚術士のエストイって奴だ」

リオン・ドール大聖堂、七十七悪魔第十四番・魔術師シズが封印されているこ
の大聖堂は順位が高い悪魔が封印されているとあり、聖堂というよりも要塞と
いったほうが相応しい外観をしている。窓枠は全て鉄格子で塞がれており、開
いている鉄扉ごしに見える廊下には物々しい武器ばかりが飾られていた。

「召喚術士……?召喚師ではないんですかぁ?」

「師じゃない、士だ。数年前まで魔術学院に在籍してたらしいが異端の悪魔召
喚集団に手を貸していた、ってことで学院から即時退学されてる。事実は手を
貸すどころか主催者だったらしい。その後、悪魔召喚集団のカリスマに身を落
として…」

「つまり屑ね、まるで第十四番のような男」

今までの会話にない、ソプラノヴォイス。

「そのとおり」

礼拝堂の角、長椅子に座っていた一人の淑女の答えに神父以外の男が答える。
先ほどから冷静に神父に返答していた声だ。

「その屑なんだが、おそらく盗まれた”本”を取り戻しに夜盗の足を追ったん
だろう。盗賊ギルドの情報を買いに来たとこまではこっちも掴んだ、もちろ
ん”本”の足取りもだ」

「なんでそれで捕まらないのかしら?”本”の足取りが掴めたなら、先回りし
て回収してしまえばいいじゃない」

淑女の髪は血よりも鮮やかに赤くて、宝石のように透き通っていた。月の曖昧
な光ですら反射して、きらきらと輝いている。人にはありえない艶だ。神父と
の会話が果てしなく無駄だと気が付いたのか、声だけの相手は淑女の方に気配
を向ける。

「…足取りは掴んだが行方が分からない。その阿呆な夜盗はその旅団がどんな
組織か、奪い盗んだ”本”がどんなものかも知らずに見知らぬ商人に転売した
らしい。場所は大陸南のルバイバという街の手前で、四日後にはある市が開か
れるということでかなりの商人が入り込んでいるらしい。商人個人の特定は掴
めていない」

「…あら、ルバイバ?あそこは美味しい料理店があったのよ。八十五年前ぐら
いだけれどまだあるかしら?」

ふと回想に入る淑女の口元が薄く笑った。異様な八重歯を除かせて、うっとり
と呟く。

「…それは知らんが。とにかく四日後からルバイバをあげて開催される”魔道
書市”のために各地から本屋らが詰め掛けてる。ルバイバ手前でその夜盗、ど
この馬の骨にそれを売ったらしく何百もいる商人一人一人潰していくしかな
い」

「それで行方が分からない?と」

「おおよそ三万冊、本という本が揃い集うらしい。魔術者、魔法使いには垂涎
ものらしいな。面倒な事になった、興味本位の輩に売られると事は大きくなる
ぞ」

「あのぉ……」

二人の会話の間に、間抜けな声が邪魔をした。いささか冷たい沈黙の後、おず
おずと崩れていた男…四角眼鏡のひょろんとした男が立ち上がる。神父服だ
が、胸元に下がったロザリオはイムヌス教で有名な金十字架ではなく、真っ白
な十字架だ。中央には右目が異様な開き方をしている天使と竜の精緻な彫り物
が刻まれている。

「僕、不眠不休で山道を見張ってたんです…そりゃあもう大変で大変で…蚊に
さされるわ、狸に出くわすわ、雨が降ってくるわ、鴉にめがねを持ってかれる
わ…!!」

必死に今までの経緯を熱心に説明する男。熱弁が上がるほどに二人(一人+声)
の視線が冷たくなっていくのに気が付かないらしい。

「だからその」

「…ラーヒィが行きたくないなら、私も行かないわ。でも、このままじゃ無辜
の人々の手に”アルス・モンディの書”が渡るかもしれないわね。あら大変、
悪魔召喚なんて一度呼び出すと帰すのにどれだけちと肉が必要かしら?」

「さりげに貴女の目的が分かってしまった僕はなんて不幸なんでしょう、あぁ
聖女アグネス様、僕の愛する人はルバイバのご飯が食べたいだけに僕を死地へ
と向かうよう圧力をかけてきますぅぅぅ」

二人の男女の会話がどこかネジがずれていることも声は百も承知のようだっ
た。その中身には触れずに、今回の任務の題名を言葉にした。

「……”アルス・モンディの書”、七十七悪魔第二十九番・不死人オーエンハ
イムの「死」が宿るとされる禁書だ。エストイの狙いはそれだ、その本を回収
し、可能ならば消し去れ。これは聖命である」

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ルバイバの街は、怪しげな人々が所狭しとひしめき合っている。
今、街を見渡せば人、人、人。良く見ればエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、
獣人、思いつき限りの人種がひしめき合っていて、中には複眼をそなえた昆虫
の外見をした人型もいる。まったく共通性のない人々だが、総じて胸にめいっ
ぱい抱えているのは大量の本、本、本。

ルバイバの街が、年に一度怪しく活気付くのがこの”魔道書市”だ。本自体は
まだまだ希少価値が高く、保存にかなりの気遣いが必要とされる。ただでさえ
紙という素材は消耗しやすい。そんな、普段は棚や箱にしまって表に出ない”
本”、しかも「魔法」「魔術」果ては「誰にでもはじめられる錬金術」から
「魔女の料理本」まで…魔法を中心にした様々な蔵書が一挙に出揃うこの市
は、大陸各国から多くの魔術者、魔法使い、研究者を呼び寄せる。

ルバイバで一番広い、ルバイバのキエーロ通り3番街。
ルバイバの街は上から見ると十字の通りに区分されており、さらに運河が枝分
かれして街の中を血管のようにめぐっている。北の通りは1番街、東の通りは2
番街…というふうになっていて、ここは南側の大通りなので「3番街」と呼ばれ
ている。

そんな妙におどろおどろしく、なぜかわくわくする人々の群れの中に、やや低
い身長の女性が苦労して歩いている。まるで人の波が壁のように、しかも動く
ので背が低い者にとってはあまり歩きやすいとはいえないのだろう。黒髪のセ
ミロングを揺らして群れのなかを泳いでいく。

キエーロ通り三番街の通りにかかる川は三つ。その石橋のうえには、この時期
に国内から国外から来た本の売り手のために用意されている建物があった。窓
から落ちそうなほどに乗り出した本の商人が声高に「惚薬の作り方」の本を片
手に宣言をしている。その隣では背の曲がった老婆が口の中の金歯を(全部が
金歯らしい)光らせながら、自身の伝記だというガマガエル表紙の本を法外な
値段で客に押し付けている。

黒髪の女性、はようやく人並みから少し外れてほっとしたらしく。人並みで乱
れたマントを直す。

「そこのお嬢さん、ルバイバの魔道書市に来たなら最低、二冊は買って帰らに
ゃ死ねないぜ?」

と、男の声に女性が振り向く。
そこには胡散臭い髭面の男が、真っ青な装丁の二冊の本を差し出しながら笑っ
ていた。

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2007/06/19 02:16 | Comments(0) | TrackBack() | ○まじかる★たっぷ
MT「02.橋上の戦い」/アンシェリー(いずる)
PC.アンシェリー
NPC.買取屋,胡散臭い髭面の男
Place.ルバイバキエーロ通り三番街

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 「嬢ちゃん、あんた知っているかい?もうすぐルバイバで“魔道書市”が開かれるんだ」

 その情報を耳にしたとき、普段から「削るなら食費だ」と言って本の海に埋没しているのに
も関わらず、アンシェリーは単純に心躍るといった気持ちに浸ることが出来なかった。それ
は過去の苦い想い出がフラッシュバックしたからであった。

 去る年の十二月、要塞都市カールスベルグでは年末恒例である古書市が催されていた。
古代より戦火が絶えなかった都市とあって、魔道書は勿論、先述指南書等が多く目立つの
が特徴である。噂を聞きつけやってきていたアンシェリーは持ち前の審美眼を光らせながら
魔道書の品定めをしていたのだが、その最中、突然ぼろを纏った乞食の少女に体当たりを
食らわされ財布を盗まれたのであった。アンシェリーは決死の追走を敢行したが、複雑に入
り組んだ迷路のような要塞都市においては少女に地の利があった。魔力をフルに使用して
やっとのことで財布を取り戻すものの、市へ戻ったころには目星を付けていたものたちは既
に新たな主人の下へと奉公に出ていた。思いあまったアンシェリーは『財布の紐が堅くなる
本』などという理解に苦しむ本を買ってしまい泣くに泣けなくなった。

 そんなことがあったためどうにも素直に喜べないアンシェリーであったが、気付くと船の搭
乗手続きを済ませていたのだから体は嘘を付けないようだ。あまずっぱいとでも言えば可愛
がってもらえるだろうか。期待と焦りが混ざったような感情がアンシェリーの空に雲となって
広がっていた。

 魔道書を求めて旅をするアンシェリーは、各地で仕事をして生計を立てているのだが、そ
の傍ら、もう一つ生業としているものがあった。魔道書の転売である。これがなかなか儲か
るらしく、お金持ちとまでは言えないものの、アンシェリーが路銀に困るといったことは終生
なかったと言われる。しかしその反面、面倒事に巻き込まれやすいらしく、魔術学校の客員
教授に迎え入れられたり、地方宗教の神の使いに祭り上げられたりしたまではまだいいも
のの、邪教の徒として迫害を被ったり、魔女裁判にかけられ危うく極刑を言い渡されそうに
なったことまでもあった。

 そんな小金持ちアンシェリーが航海の旅を終え、ルバイバの街に到着して、魔道書市へ
の逸る思いを抑え、真っ先に行ったのが手持ちの魔道書の売却であった。

 ルバイバキエーロ通り三番街にて催されている魔道書市は、通りに架かる大小三本の橋
によって出店傾向が異なる。先ず、三番街の最も北に架かるのはソプラノ橋。名前に似合
わず三本橋の中で最も太く長い。がっしりとした造りのこの橋を叩いて渡るなど杞憂中の杞
憂である。面積の広いこの橋では、今回の目玉商品や有名魔道書、広範囲に使用されて
いる大系魔法を取り扱ったものや、魔法を使えない人にも楽しめる本が並んでいる。正統
派の魔術師であればこの橋を見て回るだけで用を済ませることが出来るであろう。実際来
客の殆どはこの橋に集中しており大変な賑わいを見せている。次に、ソプラノ橋の南、三番
街のほぼ中央に位置するのがアルト橋である。三本の橋では一番歴史が古く、施された彫
刻も非常に価値が高い。ここには一般にはあまり普及していない珍しい魔道書や、地方的
なものや、古代魔術の書等が並んでいる。ソプラノ橋と比べてしまうと客足は寂しいのだ
が、まあまあといった盛況ぶりである。そしてアルト橋を渡り更に南下し、しばらく歩くと三番
街の最後の橋に辿り着く。テナー橋。退廃的なアーチを描くこの橋上では、魔道書市の裏
の顔を見ることが出来る。元々治安が良くない地域に架かるこの橋に広がるのは、黒魔
法、呪術、屍霊魔法といった外道の類である。店を出す者も訪れる者も他の橋とは明らか
に雰囲気が違い、目が合っただけで殺されてしまいそうな気さえ起こる。

 そしてアンシェリーが今いるのはソプラノ橋の最南端にある、買い取り専門の店である。最
初アンシェリーが店を訪れるとまん丸の顔にちょび髭をのせた店主は迷子の仔猫を見つめ
るようないぶかしげな顔をし、手持ちの本を差し出すと、にっと嫌らしい笑顔を浮かべ良心的
な雰囲気を装いつつも、露骨に足元を見てきた。本の価値も解らない小娘だと思われること
は全く快くなかったが、アンシェリーは冷静を保って交渉に臨み、多少赤字ではあるが購入
金額とほぼ同額で売却することに成功した。

 思いがけず時間も体力も消費してしまったが何とか資金繰りが出来た。ここでへばってい
ては意味がない。アンシェリーは本を売りに来たのではない。買いに来たのだ。本番はここ
からである。

 通常レベルでは潤沢と言っていい程の資金を得たものの、魔道書を買い漁るという夢のよ
うな行為には程遠かった。アンシェリーには限られた資金の中で効用を最大化する為の作
戦立案が要求された。良い物を、安く、速く、手に入れなければならないのだ。手当たり次
第欲しい物を買っていては一つの橋を回りきる前に資金が尽きてしまうし、一つ一つ吟味し
ていると良い物はどんどん買われていってしまう。用意するのは正確な観察眼と素速い決
断力、出来ることなら運も欲しいところだ。前述の三つのうち始めの二つをアンシェリーは持
っていた。しかし、三つ目に関してはあったともなかったとも言い難いものであった。後にア
ンシェリー本人に聞くと、「なかった」と即答されることだけは間違いないのだが。

 買い取り屋を後にしたアンシェリーは思案していた。無情にもここでも性急な決断が迫ら
れていた。楽しいお買い物という訳にはいかない。一国の命運を賭すにも値する、これは聖
戦なのだ。負けることなど決して許されない、玉砕覚悟の全面抗争である。その戦いの指揮
をとるのは弱冠18歳の将、アンシェリー・チェレスタである。彼女は今回のルバイバへの壮
大な遠征に際し、自軍を2:4:3:1に分割することを決断した。自国の防衛に当たる第一部
隊は全軍の二割にしか満たないが、これは決して少ない数ではない。通常の生活を送るに
は十分すぎる程の兵力をアンシェリーは残したのである。そして全軍の四割の兵力を保有
する第二部隊が先陣を切り、三番街ソプラノ橋への攻撃を開始する。文字通りその身を削
り、敵の大将を討ち取るのが使命である。その後、第二部隊の残存兵は全軍の三割の兵
力を持つ第三部隊に合流しアルト橋へと時間差攻撃を仕掛ける。最後に全軍最小の第四
部隊は終始遊撃に徹し各部隊の全滅を防ぐことを任務とした。

 かくしてアンシェリー・チェレスタ提督指揮の下、ルバイバキエーロ通り三番街魔道書市に
於ける戦いが幕を開けたのだが、提督の作戦は開始から三時間後、第二部隊がその兵力
の四分の三を消耗したところで脆くも破綻したのである。思いもよらない敵の、それもとんで
もない大物の、奇襲を受けたのである。

 それまで第二部隊は順調に作戦を遂行し、三つの手柄を立てていた。『聖魔法~Holy Vi
olence~』、『魔法の三分料理レシピ』、『桃色キノコ大全』。いずれも今日まで数々の武勲
あげてきた歴戦の名将であった。当然一筋縄では行かず、各々の討伐に当たった兵で生き
残った者は一人たりともいなかった。そして本作戦の最高責任者アンシェリー・チェレスタ元
帥はポーカーフェイスを貫きながらも心の内では満面の笑みを浮かべることを禁じ得なか
った。何もかもが上手く行っていたのである。アンシェリーは全能の神にでもなったような感
覚に溺れかけていた。そう、その瞬間までは。

 「そこのお嬢さん、ルバイバの魔道書市に来たなら最低、二冊は買って帰らにゃ死ねない
ぜ?」

 振り向き様に一瞬視線が交差した。目に入る髭面に何か感想を持つよりも、既に三冊買っ
ているというつっこみを入れるよりも早く、アンシェリーは敵の総大将のゼロ距離からの砲撃
を被った。それは余りに不意打ちすぎた。最早認識外となった男の持っていた青い装丁の
二冊の本。空の青と、海の青。曖昧な境界線。アンシェリーは眼前に広がる世界へと吸い
込まれていった。四角い二つの窓に映る世界こそが真の世界で、今自分たちのいる世界は
この広大な海と空の上にのった薄っぺらな贋の世界のように思えた。一度は総崩れになり
かけたが、アンシェリーは素早く部隊を再編し、吹き荒れる嵐と荒れる波の中、勇敢にも敵
の総大将に立ち向かった。雌雄が決したとき、アンシェリー軍の犠牲はついに7割に達し
た。

 アンシェリーが代金を差し出すと、ヒゲ面の男は所有権を体で主張するように乱暴に受け
取り足早に去っていった。アンシェリーの腕の中に穏やかに落ち着いた空と海だけが残っ
た。神は世界を手にした。 この二つの本が災いの種でしかなかったことなどは、このとき
神ですらも知るところでなかった。

 日は傾き、空は茜に染まる。紅い魔王が遠く聳えるストンビ山脈へと消えていく。各所で店
じまいの支度が始まるが、人々の往来は止まることを知らないかのようであった。家路へつ
く者、未だ書物を求める者、それぞれの目的を持った跫音が幾重にも重なり合う。そんな無
意識的な雑音の中から一つの音がアンシェリーの頭上に響いた。石畳を叩くような、鋭い跫
音。得体の知れない目的。第二音を奏でない旋律はすぐに無意識へと散っていった。アン
シェリーは五人にも上る将軍の首を重そうに抱えながら、ふらふらと雑踏の中へと消えてい
った。

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2007/07/18 22:09 | Comments(0) | TrackBack() | ○まじかる★たっぷ
MT「3. 裏路地と松葉杖」/ライアヒルト(Caku)
PC:アンシェリー、ライアヒルト
NPC:恋人ブランシュー、第五派閥連絡者、宿屋の女将、剣士の一団、ギルドの屈強な親父
Place:ルバイバの裏路地→宿屋→ルバイバのギルドカウンター
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眼下に広がるのは帰り支度を終え、帰路へ向かう人々。
家々の窓には暖かい灯がちらりほらりと灯り始め、一応に帰路を歩む人々の顔には今日一
日を無事に、あるいは円満に過ごしたという安堵と疲れが見える。

「あの少女ですか」

その人々の中の一人に焦点をあてる。重そうに荷物を抱える黒い髪の少女。特徴が分かる
のはそれぐらいで、目深にマントを羽織っているので、そのマントからはみ出た黒髪と、せい
ぜいの背丈程度しか判別できない。
その手の中に不気味なほど青い二冊の本を見つけて目を細める。少女の外見からして、魔
道書市にでかけてきた魔法使いだろう。運が悪いとしかいいようがない。よりによってあの二
冊を同時に購入してしまうなどとは…

「ですが、好都合ですね。せっかくですから”回収”させていただきますよ」

彼女に本を売った露天商はつい先ほどぺらぺらと少女の外見を語った。おそらく彼本人に
も後ろ暗いことがあったのか、あるいはその本を買ったときからマズイ物だと勘付いていた
のか…とにかく、銀貨二枚という高値で仕入れた情報は本物だったらしい。煙突の上にたた
ずみながら、眼鏡の位置を直す。

「"聖なるかな、聖なるかな。かくも深い災いの両足を切り落とせ"」

思わず歌い始めたフレーズ、いつもの神父服ではなく、専用の真っ黒な服装の懐から小さ
な巾着袋を取り出す。中身は劇物としてほとんどの国で指定されている強力な麻薬。主に
脳へ作用するらしく、少量を嗅ぐだけでも大抵の人間は興奮状態になり、我を忘れる。

「"聖なるかな、聖なるかな。かくて欲深き娘の足を削ぎ落とせ"」

最初はツンとする臭いが、徐々に甘い香りに変わっていく。そのまま嗅ぎ続けるのかと思い
きや、いきなり袋を噛み千切って中身ごと摂取してしまう。

「"聖なるかな、聖なるかな。そして悪意より持てるもの全て剥奪せん"」

口元についた葉を拭い取り、笑みを浮かべる。
少女は裏路地に入った。残念ながらそこは”当たり”で、先ほど神父が魔術で作った魔力に
よる回廊が待ち受けている場所だ。他者が引っかからないように特定の要素を持つものだ
けに反応し、生成されるようになっている

「…ははは、はははははははははははははははははは!!」

そういえば、と狂っていく脳内である事を思い出す。もう時間は夜半、なにか約束があったよ
うな気がする。とてもとても大事で恐ろしい約束だ、なんだろうか…?だけれど、なんだか楽
しくなってきたので些細な記憶を放り投げる。楽しみが目の前のワナに引っかかったのだか
ら、そろそろ相手をしてあげないと。
のちにそれが、このルバイバでの任務に悪影響を与える悪因だとは思いもよらなかったラ
イアヒルトであった。
---------------------------------------------------------------------------

「…」

眼下の少女は絶句している。そりゃそうだ、真上に逆立ちして笑顔で笑ってる眼鏡の黒ずく
めがいたら誰だって絶句する。あははははははははは、反応が可愛いね。そう思ってたら
本気で笑ってる自分がいた。さらにそれに大爆笑する。あははは、あはははははは。

「あの、通りたいんですけど…」

声は意外と落ち着き払っている。だけど真性の変態や異常者に出くわした経験は少ないの
か、語尾がちょい震えてる。

「はは…はははははは!OKよしわかったどいてあげようか?でもここは魔術で出入り口が
誤魔化されてるから簡単には出れないよ。はははははは!どうしよう困ったねぇ!!」

ほら神様の名の下なら、罪と罰もそこそこ軽減される。残りは働き分でカバーしてくださるだ
ろう。なんたって自分ほら、神様の奴隷だし。奴隷の責任は主人の責任だし?ふざけなが
らも狂信は揺ぎなく足に呪いを寿ぐ。さっきから逆立ちしてるのは、足を床につけないため、
実にわかりやすい!

「…何か用ですか?」

困惑と警戒が最大限に混じった声に、逆立ちしたまま答えてあげる。

「緊張してる?そりゃそうだ!目の前にいるのは逆立ちして笑ってる狩人だからね!それは
そうと、君の持ってる青い本二冊が目的なんだけどどうだろう?本を二冊置いてくか、足を
二本置いていくかセレクトしてくれないか?あぁなんなら腕でも目でもいい、二つが無理なら
一つでも?あははははは!じゃあ首なんてどうだろう?」

少女の気配が警戒から嫌悪に変化。嫌われちゃったけど全然平気、なぜならこう見えても
人類史上稀にみるマゾヒストだから!はははっ、むしろ嫌って嫌ってくれたほうが燃えるで
しょ?
そんな阿呆なことを言っている間にも、どくどくどくどく心臓から下半身に血液が搾取されて
いく。これこそ我がイムヌスの呪いこと代償呪術と呼ばれる超ローカル家系病。真っ赤に発
光する両足を今地面につけるわけにはいかない。逆立ちなので眼鏡がずり落ちそうになる。

「…」

少女はとっさに身を翻してこっちとは反対方向の方向へ走り出す。同じく自分も逆立ちから
跳ね上がって一回着地、と真っ赤に発光する両足が地面に接して、

ゴバァン!!

「!?」

予想だにしなかった衝撃音で思わず少女が振り返る。とそこには路地の横幅まで広がるク
レーター。と、その隙にジャンプしてた自分が少女の前に着地、とまた亀裂音でこちらを振り
向く少女。我知らず後ずさりをする。

「…!!」

「逃げてみる?それとも戦ってみる?好きなほうをセレクトしてくれていい!うむ、僕ら人は
戦うために生まれてきたんだからねぇ。困難にあっては剣を振るい、苦難にあっては盾を掲
げ、破滅にあっては矛を向ける!」

「…」

避けられる戦闘ならば、しかも相手は狂人ーーーー。今まで逃げの基本思考だった少女の
目つきが変わった。フードを被っていて目つきとそこからはみ出た髪色しかわからなかった
が、少女は悪魔に立ち向かう騎士のように自分の前に立ち直った。ぴんと背筋を伸ばし、ハ
の字に開いた足に呼吸を正す。

「どこの誰だが知らないけれど、あなたみたいなわけの分からない奴に今日の成果を渡す
わけにはいかない」

「OK、OK!実に人間らしいセレクトだ!それでこそ人間だ、まっとうな仕事や戦勝にはそうと
うの結果と褒美が必要不可欠!」

「面倒な…」

少女の心底呪わしいとばかりのその一言。麻薬と狂信で身を隠したライアヒルトにとっては
恍惚に近い一言だった。
そして、二人とも互いに沈黙しーーーー…同時に互いに向かって駆け出した。
---------------------------------------------------------------------------
ライアヒルトの疾走に、路地裏の大地は次々と断裂を起こしていく。
そのまま突っ込む、と見せかけて手前で大地に両手をついて両足を跳ね上げた。目前に鎌
首をもたげた蛇のように向かってきた真っ赤な足に、少女はとっさに立ち止まり、短い詠唱
文句を唱え杖を前にかざす。

「!?」

驚きはライアヒルトのもので、とっさに両手を離して空中で回転する。少女のやや離れた後
方に着地し、路面を深々と抉ってしまう。先ほど両手をついていた路面にはぽっかり穴があ
いている。と、足元に自身の足以外の振動。大地を蹴り上げ、建物の壁面を破壊しながら
駆け上がる。次々とライアヒルトが着地する大地が歪な形にーライアヒルトの両足によるも
のではなくー変形していく。さながら粘土のようだ。

「センスがいいね!」

ライアヒルトの戦闘法は純粋な格闘技、それも大きな動作や隙のある足技中心である。格
闘技は全身運動なので足場が重要である、ライアヒルトの攻撃志向を見抜いて、本体を攻
撃よりも足場を崩すことで対応してきた。
建物の壁面を思い切り蹴る。その動作が引き金となって建物が音を立てて崩れていく。

(今だ!)

空中では足場がない。少女はその機会を逃さず電撃を放つ。握り締める杖から青白い数百
の雷の蛇が生まれ、空中に飛んだ男に直撃する!

建物が崩壊し、土煙が立ち込める。轟音に紛れて雷撃を喰らったライアヒルトの姿は見え
ない。油断なく、周囲を見つめて杖を構える。
音は静まり、夜が広がる。崩れた建物は物理法則以上の動きを見せなかった。

「……」

さらに二分。じっと待つが気配はない。どこかでパリン、とガラスが割れるような音が聞こえ
る。実際の音ではない、魔力があるものだけに届く魔力の音だ。
おそらく施行者が倒れたことで、先ほどの男がいっていた”魔術”が解けたのだろう。ここに
長居をしていても良いことはない。少女は最後にちらりと瓦礫の山を見て、来た路地裏を駆
け足で戻っていった。
---------------------------------------------------------------------------

少女は息を切らせて自室に戻った。あの男は一体何者なのか、過去に色々な事件を起こし
たり巻き込んだりしたが、あの手の狂人に付きまとわれるようなことはしていない。恨みを買
われてしまうことはあるかもしれない、と相手の男が本がどうたらこうたらと言っていたのを
思い出す。

「この本?」

空と海の色をした、タイトルなしの青い装丁の本。扉の前で、おそるおそる開けてみようと装
丁に手をかける。

…開けてしまえ

咄嗟に二冊の本を投げ捨てた。声が聞こえたのだ、「開けてしまえ」というメッセージ。暗闇
の中でさえ冴え冴えと青くきらめく二冊の本。それは闇の中で不吉なほど明るく輝くように見
えた。

「面倒な本を買ってしまった…」

これからのことを考えて、どんよりとした気分になる。とりあえず二冊の青い本を見ないよう
に慎重に杖で壁際に寄せる…とパキンと軽快な音を立てて、杖が三分割に割れた。

「あぁ!?」

杖の断面が真っ赤に光っていた。その赤光はあの男…両足が真っ赤に光るあの襲撃者の
ものだ。赤い光は少女を笑うように一際艶やかに輝いて…ふぅっと色を失くした。考えられる
のは最初の一撃、目前に迫った赤い両足の前に杖をかざしたあの時ぐらいしか考えられな
い。あとに残ったのは呆然と立ちすくむ少女と不吉に輝く青い本だけであった。
---------------------------------------------------------------------------

それから八時間後。
ルバイバの一部の建物が崩落したらしい、と朝のニュース程度に噂されているある穏やか
な朝の宿屋。




「最っっ低っ!!ラーヒィなんか知らないっ!!」



どうやら本気で怒らせてしまったらしく、思いっきり部屋から突き飛ばされて廊下にぶん投
げられた。彼を突き飛ばした鉄製の鞄が壁にぶつかる音と自身の肋骨が折れる音が同時
に脳内で火花を散らした。下半身が不自由なので、背中から派手に倒れる。同時に部屋の
扉が強引に閉まる大轟音。

「勝手に一人で大量出血で野垂れ死ねっ!!」

部屋の中から放たれた甲高い少女の怒号と共に、外に放り出された神父は情けない顔で
起き上がる。隣部屋の中年の冒険者がにやにやしながら見ているのに気がつくと、肋骨の
辺りと腰をさすりながらも、のほほんとした顔で会釈する。鼻で笑って部屋に戻る冒険者を
尻目に、周囲を気にせず情けない声で叩き出された扉を叩く。

「そんなに怒らないでください、ってブランシュー?僕です、貴方のライアヒルトですよー?」

「知ってんわよこの馬鹿っ!しばらく帰ってくんな鈍間っ!というか二度と面見せるな屑
っ!」

酷い言いようである。通り過ぎる剣士の一団が好奇と怪訝そうに眺めながら過ぎていく中、
神父はしばらくぐだぐだご機嫌取りをしながら扉を叩くが、一向に扉が開く気配がないと分
かり、盛大にため息をついて、扉にずりずりと寄りかかりながら座り込む。

「あぁ神様ひどいです…僕が何をしたと…!!いえ、したんですけどね…」

”彼女”との今回の原因は、”彼女”の約束を破ったことだった。ルバイバに着いてから、貴
族お抱えの高級料理店の予約を取り付けた”彼女”は、それこそここ数年ぶりになるかと思
うぐらいのはしゃぎようであった。ちなみにライアヒルト・ジュスト神父のような一介の神父給
料ではとてもじゃないが入れない額の金貨が飛ぶ場所である。問題はその約束の前に“仕
事”が始まってしまったことであった。しかも、それに失敗した挙句、その後例の”輩”に嗅ぎ
付けられて一戦を交えていたのだ。

よりによって、いつもこういう時に来るのか、ライアヒルト神父は頭を抱えた。結局“仕事”は
明け方までかかり、ぎりぎり軽傷ながらも宿泊していた宿に戻るなり、最後に重傷(肋骨骨
折)を食らったという、笑えないオチである。

正直、部屋に入るなり旅行用鞄(とある事情により鉄製)で殴られては人間ちょっと終わる。
ただでさえライアヒルト神父は寿命を切り売りして“仕事”をしているというのに、これ以上削
られては本気で”彼女”の同属化を考えねばならない。割と早急に。

一緒に叩き出された松葉杖を泣きながら掴んで、のたのたと宿屋の階段を下りていく…と途
中でこけたらしい。絹を切り裂くような叫び声を上げながら、また轟音。足、というか杖を踏
み外したらしい、先ほどから一部始終見ていた宿屋の女中は、自分の尾っぽを追いかけ続
ける駄犬を見るような、生温い微笑みで、その姿を見守っているのであった。



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「【追跡者】を増員したい?」

同僚ことイムヌス教第五派閥【追跡者】の連絡者はいい加減飽き飽きしたように言った。

「無理を言われても困る。そもそも組織を見ても五十人いるかいないかなんだぜ、そんなこ
とアンタのほうが分かってるだろ?一つの任務でそうそう重複させれる余裕なんてないぐら
いのことは、それにブラザー…あんたには聖女様がついてるじゃねぇか」

「そんなぁ…困りますよぅ。あんなに怒ってる”彼女”にその単語は、僕の処刑の合図みたい
なもんです。嫌だ!まだ死にたくないっ」

「…いいんじゃね?死ねればアンタの大好きな神様の下にいけそうだし、って無理か、アンタ
どう見ても次期七十八番目だぜ」

すがり付いてくる神父の鼻水と涙が服に付くまえに、相手の松葉杖を蹴る。神父はこれまた
情けない悲鳴をあげてべちゃっと床に落ちた。ちなみに彼の言う「七十八番目」とはイムヌス
教七十七悪魔のことで、現在書に刻まれている数は七十七体である。

「んな冗談止めてくださいっ!僕はまっとうな余生で幸せな家庭と可愛い三つ子希望なんで
すっ!!」

「あのサド吸血鬼でまっとうな余生と幸せな家庭と三つ子は無理だろ…どう考えても未来は
薔薇色だよかったなぁ【ブラザー・タップダンス】」

「薔薇色ってどう見ても真っ赤な血の色ですよね?ねぇーーーー!?」

感極まったのか、あるいは人生に絶望したのか、しまいにはわーんと泣き始める始末の三
十路男に、連絡係はひげを抜きながらうんざりした様子で話しかける。

「…とにかく、生憎近場で動かせる【追跡者】がいないんだ。どんなに最寄の奴を引っ張って
も来るまでに山脈越えで九日はかかる。仕方ねぇならギルドで要員を補充してくれ、くれぐ
れも【追跡者】の名前は出すなよ」

「神様ぁ!僕にどうしろと!!こう見えて思いっきり障害者な僕一人で悪魔なんて狩れるわけな
いじゃないですかっ、ただでさえ僕って内気なのに!」

「はいはい、その前に仕事仕事。"アルス・モンディの書"を回収してこい」

連絡担当の男は、はやくこいつの担当からはずれたいな、と真剣に異動願いを提出しようと
心に誓った。しまいには乙女座りでのの字を書き始める三十路を横目にしながら。

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「あうぅ…えぐえぐ、ひどいです神様聖女アグネス様…ただでさえ安月給で命を張るお仕事
なのに、僕なんか寿命間引いてまでお仕事してます。なのに、どうして報われる気配がまっ
たくもってゼロなんですか、むしろマイナスです…」

ぐすぐすと鼻水を啜りながら、ギルドの門をくぐる。
松葉杖をつきながら歩いているので、人よりも歩みが遅い。ギルドからすれ違った体格の良
い一団にぶつかってまたこける。悪意はないが、さりとて好意もないのか、一団の槍兵や剣
士はこけた神父を笑いながら大またに歩み去っていく。僧衣服の下で、両足をがんじがら
めに締め付ける鎖が露になって、慌てて裾を隠す。乙女の仕草である、三十路の神父がや
ってもあまり可愛くはない。

ようやくギルドのカウンターまで辿り着く。通常生活や一般行動において身体障害者のライ
アヒルトだけでは、“仕事”こと悪魔狩りは難しい。いつもなら恋人兼絶対君主の“彼女”が
付き合ってくれるのだが、今回ばかりはそんな提案をしたら本気で心臓を千切られる。ちな
みに二人の出会いは有刺鉄線の張り巡らされた城跡の拷問部屋であり、初めてのキスは
首筋で(キスと表現して動脈を噛み千切られかけてました)失血死寸前という、ライアヒルト
25歳の血染めの春であった。

やっと辿り着いたカウンターの前で、一息をつく。そして傭兵あがりらしい屈強な腕で酒瓶を
磨いている男主人に声をかける。

「こんにちわ、僕はイムヌス教の巡回神父ことライアヒルト・ジュストといいましてですね…」

「なんだい、神父なんかが来る場所じゃないよ」

ひどいもので、酒場の主人すら相手にしてくれない。ここで食い下がるライアヒルト、根性は
無いが罵詈雑言罵倒拷問調教などのジャンルには驚異的な耐性が身に染み付いている。
これぐらいでは諦めない。

「うぅ、聖書の押し売りとかじゃないんですよぅ。お仕事の募集なんですけど、可愛いくってそ
こそこ腕の立つっぽい美少女とかいませんかね?あ、性格は優しくて思いやりがあって、家
庭料理ができて…」

「神父さんよ…それだったら売春宿か田舎で探してくれねぇか?」

「う、嘘です!えぇちょっとしたお茶目なジョークですっ!!
ランクは問いませんから、あと男女も問いませんからとりあえず最低限自分の身だけは自
分で守れるぐらいの方を一人、紹介していただけませんかね?あ、誰でもいいんですけど、
条件が一つだけ」

ライアヒルトはそこで指を唇に当てて、にこりと笑った。

「足が丈夫な方で、お願いします」


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2007/08/24 01:43 | Comments(0) | TrackBack() | ○まじかる★たっぷ

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