PC:マリエル、アウフタクト
場所:魔術学院(図書館)
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「わかりました。でも、レポートのお手伝いは必要ありません」
マリエルは、青年の申し出に固い口調で答えた。
ベニントン教授の名前なら聞き覚えがあった。講義を受講したことはまだないが、文献
を参照しているときに、見かけた名前だ。
資料を代わりに借りるというのは抵抗を感じたが、青年の申し出を断れるほどの強い理
由をマリエルは持っていなかった。
青年の持っている本の中にはマリエルが必要としているものも混ざっていたが、まだレ
ポートの期日までは時間がある。とやかく言うよりは、あとで代替策を考えたほうが面倒
が少ないだろう。
「ありがとうございます。助かります」
青年が礼を述べ、それにマリエルは少しほっとする。
自分が困っているときに助けを求めた場合ならともかく、自分の力でなんとかできる課
題に対して、助力を申し出られたことに戸惑いがあったのだ。
「私も、借りにいくところだったので、一緒に持っていきますよ」
「いえ、カウンターまで持っていきます。手続きのときは、お願いしますが」
マリエルの抱えている本の量をちらっとみて、青年が言う。
資料を探しているときに見かけた青年の様子からは、よい印象を受けなかったのだが、
基本的には親切な人なのかもしれない、とマリエルは思う。
マリエルが先が貸出カウンターに向かって歩きだすと、青年が後ろについてくる形になる。
青年の話を信じるならば、彼はここの卒業生か何かで、現在は部外者ということになる。
だとしたら、内部の人間のマリエルが案内するような形になるのは当然なのかもしれない。
しかし、年長の人間の前を歩くという慣れない立ち位置に、背中がむずむずするような違和感を覚えた。
「え…」
入口に近づいたところで、マリエルは思わず足をとめた。
いつもなら、本棚の向こうに貸出カウンターが見えてくる場所なのだが、
本来ならば、カウンターがあると思っていた場所には、見慣れない本棚が並んでいた。
場所を勘違いしたのだろうか。
しかし、概論や解説書が納められているこの図書館は、以前から何回も利用している。
貸出カウンターへの行き方も、ほとんど考えずに移動できるくらいだ。
「すみません…本を借りるのはこっちだと思っていたんですけど、勘違いしていたみたい
です。さっきの場所の反対側に行ってみればいいでしょうか?」
マリエルは振り返って青年に話しかけた。
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場所:魔術学院(図書館)
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「わかりました。でも、レポートのお手伝いは必要ありません」
マリエルは、青年の申し出に固い口調で答えた。
ベニントン教授の名前なら聞き覚えがあった。講義を受講したことはまだないが、文献
を参照しているときに、見かけた名前だ。
資料を代わりに借りるというのは抵抗を感じたが、青年の申し出を断れるほどの強い理
由をマリエルは持っていなかった。
青年の持っている本の中にはマリエルが必要としているものも混ざっていたが、まだレ
ポートの期日までは時間がある。とやかく言うよりは、あとで代替策を考えたほうが面倒
が少ないだろう。
「ありがとうございます。助かります」
青年が礼を述べ、それにマリエルは少しほっとする。
自分が困っているときに助けを求めた場合ならともかく、自分の力でなんとかできる課
題に対して、助力を申し出られたことに戸惑いがあったのだ。
「私も、借りにいくところだったので、一緒に持っていきますよ」
「いえ、カウンターまで持っていきます。手続きのときは、お願いしますが」
マリエルの抱えている本の量をちらっとみて、青年が言う。
資料を探しているときに見かけた青年の様子からは、よい印象を受けなかったのだが、
基本的には親切な人なのかもしれない、とマリエルは思う。
マリエルが先が貸出カウンターに向かって歩きだすと、青年が後ろについてくる形になる。
青年の話を信じるならば、彼はここの卒業生か何かで、現在は部外者ということになる。
だとしたら、内部の人間のマリエルが案内するような形になるのは当然なのかもしれない。
しかし、年長の人間の前を歩くという慣れない立ち位置に、背中がむずむずするような違和感を覚えた。
「え…」
入口に近づいたところで、マリエルは思わず足をとめた。
いつもなら、本棚の向こうに貸出カウンターが見えてくる場所なのだが、
本来ならば、カウンターがあると思っていた場所には、見慣れない本棚が並んでいた。
場所を勘違いしたのだろうか。
しかし、概論や解説書が納められているこの図書館は、以前から何回も利用している。
貸出カウンターへの行き方も、ほとんど考えずに移動できるくらいだ。
「すみません…本を借りるのはこっちだと思っていたんですけど、勘違いしていたみたい
です。さっきの場所の反対側に行ってみればいいでしょうか?」
マリエルは振り返って青年に話しかけた。
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