--------------------------------------------------------------------------------
パーティ リング・ギゼー
場所 白の遺跡内部
NPC なし
___________________________________
ゆっくりと、リングは目を開いた。
「う・・・ん・・」
ここはどこなのだろう。意識を取り戻したリングは、一瞬、今いる所がわから
なくなり躊躇した。しかし、起き上がるため手を触れた床の冷たさに、はっと
気がついた。急いで近くに落ちていた眼鏡を拾い、掛けなおす。
(そうでした・・・、ここは遺跡の中です・・・)
眼鏡をかけて辺りを見回すと、少し今までの状況が整理できてきた。周りにあ
る鏡は全て、大きな亀裂が入っていたり、あるいは粉々に壊されていたり、全
てひどく破壊されている。あたりには鏡のかけらが散らばり、きらきらと輝く
さまは少し雪に似ていた。
(そうでした・・・私、このお部屋で不思議な声を聞いて、私がたくさん出て
きて・・・)
ん?とリングは首をかしげた。その先を覚えていない。不思議な声の挑発に、
思わず頭に血が上って、<私>のうちの一人の胸倉を掴んで・・・。
その先を思い出そうとすると、ずきずきと頭が痛んだ。
オモイダスナ
誰かが囁いているように。
オモイダシタラ オマエハコワレルゾ
びくっとリングは体を痙攣させた。そして、ごく自然に、その記憶をデリート
させる道を選んだ。無意識のうちに。逃げるように。
思い出すことをやめ、意識を辺りの風景に向けたリングは、ふいに、散らば
る鏡の破片の中に、鏡の破片ではない物体を見つけた。
「何でしょう・・・?」
きらきらと輝く破片の中で、それだけ、微妙に輝き具合が違う。と、いっても
普通の人間なら見落としてしまうほどの微妙な光の屈折の違いだったが。かし
ゃかしゃと、破片を踏みしだいて歩き、リングはそれを手に取った。
「鍵・・・ですか・・・?」
それは、一見ガラスで出来た鍵だった。
「鍵・・・、何故ここにあるのでしょう・・?」
その鍵の表面は研磨剤で磨いたようにつるつるしていた。どう見ても人工的に
作られたものだ。ふいに、リングの頭に唄の一節がよぎった。
一つとなりたる 二つの鍵・・・。
リングはそれを持っていくことに決めた。なぜだか、その鍵はこの遺跡にと
ても関係のあるものに思えたからだ。それにしても、この鍵はリングの手の中
でつるつると光り輝き、その透明さは、リングに何故か涙をイメージさせた。
その<涙>と、何故か、さっき、自分が胸倉を掴んだ<自分>の姿がダブ
る。
(これは、『私』の涙・・・)
その考えにリングは自分で考えたことにもかかわらずドキッとした。
(何故ですか、私は泣いてなどいません。悲しくなんか、ないんです)
その言葉に、心の底で<チガウ>と反応する自分がいたが、リングはその反応
も無視した。
(違いません!私は幸せです。私は・・・)
ガラスの鍵は、そんなリングを否定するように、現実を象徴するように、少
し意地悪くきらきらと光り輝いていた。
パーティ リング・ギゼー
場所 白の遺跡内部
NPC なし
___________________________________
ゆっくりと、リングは目を開いた。
「う・・・ん・・」
ここはどこなのだろう。意識を取り戻したリングは、一瞬、今いる所がわから
なくなり躊躇した。しかし、起き上がるため手を触れた床の冷たさに、はっと
気がついた。急いで近くに落ちていた眼鏡を拾い、掛けなおす。
(そうでした・・・、ここは遺跡の中です・・・)
眼鏡をかけて辺りを見回すと、少し今までの状況が整理できてきた。周りにあ
る鏡は全て、大きな亀裂が入っていたり、あるいは粉々に壊されていたり、全
てひどく破壊されている。あたりには鏡のかけらが散らばり、きらきらと輝く
さまは少し雪に似ていた。
(そうでした・・・私、このお部屋で不思議な声を聞いて、私がたくさん出て
きて・・・)
ん?とリングは首をかしげた。その先を覚えていない。不思議な声の挑発に、
思わず頭に血が上って、<私>のうちの一人の胸倉を掴んで・・・。
その先を思い出そうとすると、ずきずきと頭が痛んだ。
オモイダスナ
誰かが囁いているように。
オモイダシタラ オマエハコワレルゾ
びくっとリングは体を痙攣させた。そして、ごく自然に、その記憶をデリート
させる道を選んだ。無意識のうちに。逃げるように。
思い出すことをやめ、意識を辺りの風景に向けたリングは、ふいに、散らば
る鏡の破片の中に、鏡の破片ではない物体を見つけた。
「何でしょう・・・?」
きらきらと輝く破片の中で、それだけ、微妙に輝き具合が違う。と、いっても
普通の人間なら見落としてしまうほどの微妙な光の屈折の違いだったが。かし
ゃかしゃと、破片を踏みしだいて歩き、リングはそれを手に取った。
「鍵・・・ですか・・・?」
それは、一見ガラスで出来た鍵だった。
「鍵・・・、何故ここにあるのでしょう・・?」
その鍵の表面は研磨剤で磨いたようにつるつるしていた。どう見ても人工的に
作られたものだ。ふいに、リングの頭に唄の一節がよぎった。
一つとなりたる 二つの鍵・・・。
リングはそれを持っていくことに決めた。なぜだか、その鍵はこの遺跡にと
ても関係のあるものに思えたからだ。それにしても、この鍵はリングの手の中
でつるつると光り輝き、その透明さは、リングに何故か涙をイメージさせた。
その<涙>と、何故か、さっき、自分が胸倉を掴んだ<自分>の姿がダブ
る。
(これは、『私』の涙・・・)
その考えにリングは自分で考えたことにもかかわらずドキッとした。
(何故ですか、私は泣いてなどいません。悲しくなんか、ないんです)
その言葉に、心の底で<チガウ>と反応する自分がいたが、リングはその反応
も無視した。
(違いません!私は幸せです。私は・・・)
ガラスの鍵は、そんなリングを否定するように、現実を象徴するように、少
し意地悪くきらきらと光り輝いていた。
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PC:ギゼー (リング
NPC:影の男
場所:白の遺跡
*++-----------++**++-----------++**++-----------++*
「ごくりっ」
マグマの煮え滾る音だけが響く空間に、唯一無二の生物であるギゼーの生唾
を飲み込む音だけがいやに大きく聞こえる。思った以上に大きかったその音に
、ギゼーは一瞬背中に悪寒が走るのを覚えた。
最悪、自分は死ぬだろう。直ぐ下に広がるマグマの海にダイブして。その恐
怖にギゼーの心は囚われていた。
そして、ギゼーは恐怖と共に焦りに似た感情もまた、抱いていた。
自分は兎も角、リングやジュヴィアにもしもの事があったら…。未だ年端も
いかない少女達が危険な目に遭っているとしたらと、考えただけでゾッとする
。それにあの黒い紳士の言葉も重なって、早く此処を突破して二人を助けに行
かなければと考えれば、焦りも生じて来るというものだ。
「フッ……、俺、死ぬかもな……」
予感がギゼーの背に走った。でも、何時までもこうしていても仕方が無いと
言うことも、彼は知っている。
「ええいっ!どうせ死ぬなら……ままよっ!!」
意を決して、ギゼーは思い切り良く跳躍した。
見えない未来に向かって―。
『勇気を示せば、道は開かれる』
「えっ!?」
ギゼーは、ふと誰かの声が聞こえたような気がした。いや、彼の脳裏に“声
”が響いたのだ。
「……!?誰だ!誰か、其処に居るのか!?」
辺りを見回してみても、誰も居ない。
錯覚か?そう思い始めた時、異変が起こった。
道が浮かび上がったのだ。マグマの上、足場が無い筈の空間に。
“道”は硝子で出来ているかのようだった。透明で、光の加減で見えなくな
る。足を踏み出せば、脆く崩れ去りそうな。今まで目を凝らしても、注意深く
凝視しても、何も見えなかった部分に突如何者かが硝子の破片を塗したかのよ
うに、“それ”は無数の光の欠片に彩られていた。
「……?どういうことだ??」
不意に出現した足場に着地して、誰へとも無くそう問い質すギゼー。
しかし、兎にも角にもこれですんなりと鍵を取りに行けるのだから、こんな
所で一人で余計な詮索をしていても仕方が無い。それに、脆い足場なのでそれ
程時間を掛けていられないだろう。ギゼーは瞬時にそう判断し、最新の注意を
払って足幅と同じだけしか無い、細くて脆い足場を渡って行った。
不思議と、その足場の存在感だけで恐怖は薄らいでいた。地に足が付いてい
る、と言う事の安堵感を改めて実感したギゼーであった。
◆◇◆
漸くの思いで、台座の元へと辿り着いたギゼー。己の中の恐怖と長時間に渡
り戦って来た為であろう、額には玉のような汗が無数に光り、肩を上下させ息
を弾ませていた。
ギゼーは今、疲労困憊の局地にいた。極度の緊張状態の上で、自分の足幅し
か幅が無い一本道を熱く滾る熱気に当てられながら歩いて来たのである。ギゼ
ーは時間の流れが止っているように感じた。永遠と思える一瞬を体感したので
ある。疲労も蓄積すると言うものだ。
ギゼーの目の前にある台座には、氷で出来た“鍵”が静かに横たわっていた
。
「鍵……氷で出来ているのか?……?こんなに熱い部屋の中にあって、溶けて
いる様子も無い…。魔法の氷か。……ま、どうでも良いか。兎も角これさえあ
れば、先へ進めるからな」
手にした“鍵”は冷たく、心地よかった。
「!?」
ギゼーが“鍵”を手にした途端、辺りの風景が一変した。
今まであった炎の色に彩られた室内から、突如として本来の室内―白一色に
塗り込められた室内に変化したのだ。やがて、何処からとも無く含み笑いが響
いてくる。
「クククッ。おめでとう、ギゼー君」
先程の“影の男”が黒い染みが広がるように沸き出て言った。
「……!?お前はっ!なんのつもりだっっ!」
ギゼーは“影の男”に向かって、叫び返す。恐怖の色を隠そうとして、隠し
切れていないと言うのは皮肉か。
「どうもこうも……ねぇ」
“影の男”は大仰に肩を竦めて見せる。まるで、ギゼーのことを馬鹿にして
いるようにしか見えない。そう思われても仕方が無い行動を、彼は解ってやっ
ているのだ。
「どうもこうも………って、俺達に何か用があって、ちょっかい出しているん
だろう?何の用があるんだよ。それとも……、戦闘するならするでハッキリし
て欲しいんだけどな……」
そのようなことを言っても、ハッキリ言ってギゼーには戦闘をして勝つだけ
の自信は無かった。だが、相手の真意がわからない今、挑発して相手に手持ち
のカードを切らせようとしているのだ。
「………フフンッ。そんなことを言って、この私を、挑発しても無駄だよ。君
達とは戦わない。今は未だ…ね。……それに、君としても此処で戦いたくは、
無いようだしね。フフフ」
図星を付かれたギゼーは、更に焦りの色を濃くする。自分は、本当にこいつ
から逃げられるのか。此処から無事に抜け出し、リングと合流することが出来
るのか。
暫く逡巡した結果、ギゼーは賭けに出ることにした。
「…………へぇ、じゃあ、今は戦うことはないって事か。それじゃ、俺がこう
いうことをしても、お前は追撃してこないって事…だよな」
ギゼーは“影の男”にそう断言すると、先程手に取った“氷の鍵”をポケッ
トに大事そうに仕舞い、徐に出口に向かって全力疾走した。
◆◇◆
結局、“影の男”は何もしてこなかった。
何も。
ただ、ギゼーが出入り口から擦り抜けて行くのを黙って見ているだけだった
。ギゼーの方も、納得ずくの行動だったから、そんな“影の男”を目の当たり
にしても動揺することは無かった。
再び果てしなく続く白い空間を、疾駆するギゼー。
目指すはリングとの合流だ。
(恐らくリングちゃんも“鍵”を手にしている筈だから…それと合わせて…)
――一つとなりたる二つの“鍵”
再び詩の一節が蘇る。
(……?同時に使うということか?それとも……)
NPC:影の男
場所:白の遺跡
*++-----------++**++-----------++**++-----------++*
「ごくりっ」
マグマの煮え滾る音だけが響く空間に、唯一無二の生物であるギゼーの生唾
を飲み込む音だけがいやに大きく聞こえる。思った以上に大きかったその音に
、ギゼーは一瞬背中に悪寒が走るのを覚えた。
最悪、自分は死ぬだろう。直ぐ下に広がるマグマの海にダイブして。その恐
怖にギゼーの心は囚われていた。
そして、ギゼーは恐怖と共に焦りに似た感情もまた、抱いていた。
自分は兎も角、リングやジュヴィアにもしもの事があったら…。未だ年端も
いかない少女達が危険な目に遭っているとしたらと、考えただけでゾッとする
。それにあの黒い紳士の言葉も重なって、早く此処を突破して二人を助けに行
かなければと考えれば、焦りも生じて来るというものだ。
「フッ……、俺、死ぬかもな……」
予感がギゼーの背に走った。でも、何時までもこうしていても仕方が無いと
言うことも、彼は知っている。
「ええいっ!どうせ死ぬなら……ままよっ!!」
意を決して、ギゼーは思い切り良く跳躍した。
見えない未来に向かって―。
『勇気を示せば、道は開かれる』
「えっ!?」
ギゼーは、ふと誰かの声が聞こえたような気がした。いや、彼の脳裏に“声
”が響いたのだ。
「……!?誰だ!誰か、其処に居るのか!?」
辺りを見回してみても、誰も居ない。
錯覚か?そう思い始めた時、異変が起こった。
道が浮かび上がったのだ。マグマの上、足場が無い筈の空間に。
“道”は硝子で出来ているかのようだった。透明で、光の加減で見えなくな
る。足を踏み出せば、脆く崩れ去りそうな。今まで目を凝らしても、注意深く
凝視しても、何も見えなかった部分に突如何者かが硝子の破片を塗したかのよ
うに、“それ”は無数の光の欠片に彩られていた。
「……?どういうことだ??」
不意に出現した足場に着地して、誰へとも無くそう問い質すギゼー。
しかし、兎にも角にもこれですんなりと鍵を取りに行けるのだから、こんな
所で一人で余計な詮索をしていても仕方が無い。それに、脆い足場なのでそれ
程時間を掛けていられないだろう。ギゼーは瞬時にそう判断し、最新の注意を
払って足幅と同じだけしか無い、細くて脆い足場を渡って行った。
不思議と、その足場の存在感だけで恐怖は薄らいでいた。地に足が付いてい
る、と言う事の安堵感を改めて実感したギゼーであった。
◆◇◆
漸くの思いで、台座の元へと辿り着いたギゼー。己の中の恐怖と長時間に渡
り戦って来た為であろう、額には玉のような汗が無数に光り、肩を上下させ息
を弾ませていた。
ギゼーは今、疲労困憊の局地にいた。極度の緊張状態の上で、自分の足幅し
か幅が無い一本道を熱く滾る熱気に当てられながら歩いて来たのである。ギゼ
ーは時間の流れが止っているように感じた。永遠と思える一瞬を体感したので
ある。疲労も蓄積すると言うものだ。
ギゼーの目の前にある台座には、氷で出来た“鍵”が静かに横たわっていた
。
「鍵……氷で出来ているのか?……?こんなに熱い部屋の中にあって、溶けて
いる様子も無い…。魔法の氷か。……ま、どうでも良いか。兎も角これさえあ
れば、先へ進めるからな」
手にした“鍵”は冷たく、心地よかった。
「!?」
ギゼーが“鍵”を手にした途端、辺りの風景が一変した。
今まであった炎の色に彩られた室内から、突如として本来の室内―白一色に
塗り込められた室内に変化したのだ。やがて、何処からとも無く含み笑いが響
いてくる。
「クククッ。おめでとう、ギゼー君」
先程の“影の男”が黒い染みが広がるように沸き出て言った。
「……!?お前はっ!なんのつもりだっっ!」
ギゼーは“影の男”に向かって、叫び返す。恐怖の色を隠そうとして、隠し
切れていないと言うのは皮肉か。
「どうもこうも……ねぇ」
“影の男”は大仰に肩を竦めて見せる。まるで、ギゼーのことを馬鹿にして
いるようにしか見えない。そう思われても仕方が無い行動を、彼は解ってやっ
ているのだ。
「どうもこうも………って、俺達に何か用があって、ちょっかい出しているん
だろう?何の用があるんだよ。それとも……、戦闘するならするでハッキリし
て欲しいんだけどな……」
そのようなことを言っても、ハッキリ言ってギゼーには戦闘をして勝つだけ
の自信は無かった。だが、相手の真意がわからない今、挑発して相手に手持ち
のカードを切らせようとしているのだ。
「………フフンッ。そんなことを言って、この私を、挑発しても無駄だよ。君
達とは戦わない。今は未だ…ね。……それに、君としても此処で戦いたくは、
無いようだしね。フフフ」
図星を付かれたギゼーは、更に焦りの色を濃くする。自分は、本当にこいつ
から逃げられるのか。此処から無事に抜け出し、リングと合流することが出来
るのか。
暫く逡巡した結果、ギゼーは賭けに出ることにした。
「…………へぇ、じゃあ、今は戦うことはないって事か。それじゃ、俺がこう
いうことをしても、お前は追撃してこないって事…だよな」
ギゼーは“影の男”にそう断言すると、先程手に取った“氷の鍵”をポケッ
トに大事そうに仕舞い、徐に出口に向かって全力疾走した。
◆◇◆
結局、“影の男”は何もしてこなかった。
何も。
ただ、ギゼーが出入り口から擦り抜けて行くのを黙って見ているだけだった
。ギゼーの方も、納得ずくの行動だったから、そんな“影の男”を目の当たり
にしても動揺することは無かった。
再び果てしなく続く白い空間を、疾駆するギゼー。
目指すはリングとの合流だ。
(恐らくリングちゃんも“鍵”を手にしている筈だから…それと合わせて…)
――一つとなりたる二つの“鍵”
再び詩の一節が蘇る。
(……?同時に使うということか?それとも……)
PC リング・ギゼー NPC 影の男・ちびちびギゼー君 場所 白の遺跡
___________________________________
リングが次の部屋へと続くドアを開けると、そこは広間になっていた。一面
真っ白で、何もない空間が目に痛い。
「ギゼーさん!!」
広間の真ん中に見知った顔を見つけ、リングはぱあっと顔を輝かせると、ギ
ゼーのそばに駆け寄った。
「ギゼーさんっ、よかったです・・・、ご無事だったんですね!」
「リングちゃん!」
ギゼーのほうも、顔いっぱいに安堵の表情を表して喜ぶ。
「ギゼーさん、お怪我はありませんか?」
「おう、ま、怪我はないけどさ、全く、大変な目にあっちまったぜ・・・。気
持ちわりぃ変な男にはあっちまうしな・・・。リングちゃんは?」
「私は・・・」
リングの表情が微かに翳った。あの出来事を、ギゼーに話すのにはやはり抵抗
があるらしい。しかし、話すことを促すように見つめるギゼーに、仕方なくリ
ングが微かに口を開こうとした、その時、
「くくくっ、オメデトウ、二人とも。みごと<二つの鍵>を手に入れたねぇ」
二人の目の前に、ぼわーんと、まるで黒い煙がゆっくり立ち昇るように、例の
「影の男」が現れた。
「なっ・・・!お前っ・・・!」
「ギゼーさん、この人が例の・・・!」
ギゼーは腰のナイフに手を伸ばし、リングはすっと体を後ろに引き、反射的
に二人とも身構える。
「おいおいおい、そりゃないんじゃないか?私は次の部屋に続く道を教えてあ
げたいだけなのに」
影の男はオーバーに目の前で手を振ってみせる。
「どういうことだ?」
「こういうことさ。<一つとなりたる、二つの鍵>・・・」
これは例の詩の一説・・・!と、ギゼーが感じた直後、
「うわっ!!」
ギゼーは唖然として目を見開いた。ポケットがびっしょりだ。と、いうこと
は・・・
「鍵が・・・」
ギゼーがポケットに入れておいた鍵は、跡形もなく消えていた。大方、あの
男の仕業で、解けて液体になってしまったのだ。そうすると、今、ギゼーのポ
ケットから滴っている水、それが元「鍵」の姿ということになる。
「てめぇっ!何を!!」
「まあそう怒る前に、液体を良く見てもらいたいね。私は、その鍵の封印をと
いただけだよ」
「なっ・・・封印・・・?」
男の言葉に、ギゼーはポケットから流れて、床に滴った水を見つめた。
(何だ、別に、何も・・・)
と、床に滴った水がさらっと波打ったように見えた。
「!!」
「あ、もしかしてこれが<アメーバ>という生き物ですか?けれど鍵から生ま
れるなんて初めて知りました~」
「フフッ、残念ながらもっと高度な生き物だよ」
ギゼーの目の前で、その水はぐらぐらと動き始めると、むくむくと何かの生
き物の姿を模り始めた。そして出来上がった姿は・・・
「わあ、可愛らしいですね~」
リングはその場にちょこんとかがむと、嬉しそうにその生き物を見つめた。
ギゼーは唖然として見つめている。
「なっ・・・、俺っ!?」
それは、水で出来た、体長約十センチの<ギゼー>だった。姿かたちも本人
そのままだ。
「あのっ、このギゼーさんはお話は出来るんですか?」
「にゅー」
「残念ながらそれしか話せないよ」
にゅーにゅー、といいながらちびちび<ギゼー君>はぴょんぴょこ飛び跳ね
ている。
「その水は<形状記憶水>と言ってね、触った者の姿と性質をコピーするん
だ。どうだい、君そっくりだろう?」
影の男は、にやにやしながらそう言ってギゼーに話しかける。
「なっ・・・!」
思わずギゼーは赤面する。
「なっ・・・、そんな俺を作って一体何しようって言うんだよ!!」
「いいじゃないですか、すごく可愛らしいですよ?特にその話し方・・・」
「リングちゃん!!」
ギゼーに怒られ、リングはしゅんと下を向いた。
「すみません・・・」
「とにかく、どうするんだよ、コレ、何か意味があってしたことなのか?」
「大アリだよ、その子にはここを抜けてもらう」
男がそういうと、ふわっと、目の前の壁が透明になった。そこには一面にア
スレチック・・・ただしミニチュアサイズ・・・が、広がっていた。アスレチ
ックの向こうには、一枚の大きな扉がある。そしてその扉には鍵穴が。
「なるほど、分かりました。つまりこの<ギゼーさん>に私の鍵をもたせて、
向こうの扉を開けるんですね」
リングが自分も、ポケットからガラスの鍵を取り出して言う。
「フフッ、そういうことだ。じゃあ、がんばりたまえ、<ギゼー君>」
「にゅー!」
ちびちびギゼー君は、元気よく返事をした。
___________________________________
リングが次の部屋へと続くドアを開けると、そこは広間になっていた。一面
真っ白で、何もない空間が目に痛い。
「ギゼーさん!!」
広間の真ん中に見知った顔を見つけ、リングはぱあっと顔を輝かせると、ギ
ゼーのそばに駆け寄った。
「ギゼーさんっ、よかったです・・・、ご無事だったんですね!」
「リングちゃん!」
ギゼーのほうも、顔いっぱいに安堵の表情を表して喜ぶ。
「ギゼーさん、お怪我はありませんか?」
「おう、ま、怪我はないけどさ、全く、大変な目にあっちまったぜ・・・。気
持ちわりぃ変な男にはあっちまうしな・・・。リングちゃんは?」
「私は・・・」
リングの表情が微かに翳った。あの出来事を、ギゼーに話すのにはやはり抵抗
があるらしい。しかし、話すことを促すように見つめるギゼーに、仕方なくリ
ングが微かに口を開こうとした、その時、
「くくくっ、オメデトウ、二人とも。みごと<二つの鍵>を手に入れたねぇ」
二人の目の前に、ぼわーんと、まるで黒い煙がゆっくり立ち昇るように、例の
「影の男」が現れた。
「なっ・・・!お前っ・・・!」
「ギゼーさん、この人が例の・・・!」
ギゼーは腰のナイフに手を伸ばし、リングはすっと体を後ろに引き、反射的
に二人とも身構える。
「おいおいおい、そりゃないんじゃないか?私は次の部屋に続く道を教えてあ
げたいだけなのに」
影の男はオーバーに目の前で手を振ってみせる。
「どういうことだ?」
「こういうことさ。<一つとなりたる、二つの鍵>・・・」
これは例の詩の一説・・・!と、ギゼーが感じた直後、
「うわっ!!」
ギゼーは唖然として目を見開いた。ポケットがびっしょりだ。と、いうこと
は・・・
「鍵が・・・」
ギゼーがポケットに入れておいた鍵は、跡形もなく消えていた。大方、あの
男の仕業で、解けて液体になってしまったのだ。そうすると、今、ギゼーのポ
ケットから滴っている水、それが元「鍵」の姿ということになる。
「てめぇっ!何を!!」
「まあそう怒る前に、液体を良く見てもらいたいね。私は、その鍵の封印をと
いただけだよ」
「なっ・・・封印・・・?」
男の言葉に、ギゼーはポケットから流れて、床に滴った水を見つめた。
(何だ、別に、何も・・・)
と、床に滴った水がさらっと波打ったように見えた。
「!!」
「あ、もしかしてこれが<アメーバ>という生き物ですか?けれど鍵から生ま
れるなんて初めて知りました~」
「フフッ、残念ながらもっと高度な生き物だよ」
ギゼーの目の前で、その水はぐらぐらと動き始めると、むくむくと何かの生
き物の姿を模り始めた。そして出来上がった姿は・・・
「わあ、可愛らしいですね~」
リングはその場にちょこんとかがむと、嬉しそうにその生き物を見つめた。
ギゼーは唖然として見つめている。
「なっ・・・、俺っ!?」
それは、水で出来た、体長約十センチの<ギゼー>だった。姿かたちも本人
そのままだ。
「あのっ、このギゼーさんはお話は出来るんですか?」
「にゅー」
「残念ながらそれしか話せないよ」
にゅーにゅー、といいながらちびちび<ギゼー君>はぴょんぴょこ飛び跳ね
ている。
「その水は<形状記憶水>と言ってね、触った者の姿と性質をコピーするん
だ。どうだい、君そっくりだろう?」
影の男は、にやにやしながらそう言ってギゼーに話しかける。
「なっ・・・!」
思わずギゼーは赤面する。
「なっ・・・、そんな俺を作って一体何しようって言うんだよ!!」
「いいじゃないですか、すごく可愛らしいですよ?特にその話し方・・・」
「リングちゃん!!」
ギゼーに怒られ、リングはしゅんと下を向いた。
「すみません・・・」
「とにかく、どうするんだよ、コレ、何か意味があってしたことなのか?」
「大アリだよ、その子にはここを抜けてもらう」
男がそういうと、ふわっと、目の前の壁が透明になった。そこには一面にア
スレチック・・・ただしミニチュアサイズ・・・が、広がっていた。アスレチ
ックの向こうには、一枚の大きな扉がある。そしてその扉には鍵穴が。
「なるほど、分かりました。つまりこの<ギゼーさん>に私の鍵をもたせて、
向こうの扉を開けるんですね」
リングが自分も、ポケットからガラスの鍵を取り出して言う。
「フフッ、そういうことだ。じゃあ、がんばりたまえ、<ギゼー君>」
「にゅー!」
ちびちびギゼー君は、元気よく返事をした。
PC:ギゼー リング
NPC:影の男 水の鍵(ちびちびギゼー君)
場所:白の遺跡
*++――――――――++**++――――――――++**++――――――――++*
「…………ど~でもいいけどよ、俺の名前で呼ぶなよ…。そのチビ助の事」
ギゼーは呆れ顔のまま、自分の名前をしきりと繰り返す影の男を半眼で睨ん
だ。
「まあ、そう連れなくするなって。ギゼー君。僕と君の仲じゃあないか」
「人に聞かれたら誤解されるようなことを、言うんじゃない!」
影の男のおどけに、突っ込みで返すギゼー。まるで双方共に楽しんでいるよ
うだ。
その不可思議な二人の様子をおどけた顔で見遣っていたリングであったが、
突然何を思ったか顔を綻ばせ、手を一つ叩いて言った。
「まあ!お二人とも、仲が宜しいんですねv」
違うぞリングちゃん、ギゼーはそうリングに対して突っ込みを入れたい衝動
に駆られたが、必死の思いで言葉を飲み込んだ。
◆◇◆
水の鍵(ちびちびギゼー君)が正面にある壁の隙間を柔軟に抜けると、そこ
には大冒険の舞台が待っていた。彼にとっての。
ミニチュアアスレチックは通常の人間には脱け出せない仕掛けになっている。
かてて加えて、壁の隙間をすり抜けないとそこに辿り着くことさえも出来ない
のである。言うなれば、此処は水の鍵(ちびちびギゼー君)の独壇場であった。
壁が透き通っていて、ギゼーたちの方からも見渡せるとは言え、所詮指示を与
える程度しか出来ない。つまり、このエリアを抜けるには、水の鍵(ちびちび
ギゼー君)に掛かっていると言っても過言ではないのだ。
「にゅー!」
必然的に、水の鍵(ちびちびギゼー君)に気合が入る。……気合が入ってい
るのかいないのか良く分からない上に、余り意味の無い気合であったが。
最初の難関は、動くプレートだった。
底なしの穴の上を二つのプレートが時間差で動いている。一つ目は上下運動、
もう一つ目は床と平行な高さで前後運動をしていた。
普通の人間でも突破するのが難しい難関に挑もうとしているのは、水で出来
たお惚けキャラ、ちびちびギゼー君なのだ。問題が無いはずは無い。
「にゅー!」
気合も新に、水の鍵(ちびちびギゼー君)は早速手前のプレートとの距離を
計る。
「にゅーー!」
計る。
「にゅっ」
…計る。
「にゅにゅっ?」
……計り過ぎて、逆にタイミングを逃してしまった様だ。
「ああっ!なにやってんだ!そこぉっ!!」
ギゼーはそんな水の鍵(ちびちびギゼー君)の間抜けな行動を、指を差して
指摘する。
野次馬達が気を揉むのも無理は無い。それほど、ちびちびギゼー君の行動に
は、無駄が多過ぎるのだ。
「さあっ!どぉする!?ちびちびギゼー君!…彼は、無事にアスレチックを抜
けることが出来るのかっ!??以下、後編へ続くっ!!!」
「続くかあぁぁっ!!!」
「突っ込みも板についてきましたね。ギゼーさん」
◆◇◆
ちびちびギゼーは今度こそ、タイミングを計って飛んだ。
そして、上下運動をしているプレートに着地すると同時に転んで、身体をプ
レートに打ち付けてしまった。当然プレートは、水浸しになった。だが、何と
かそのぶちまけてしまった水(からだ)を集め、元の形を取り戻すちびちびギ
ゼー君。
観客達は、観ていられないとばかりに目を覆う。
「ああっ!ちびちびギゼーさんっ!危ないですっっ!硝子の鍵は、落とさない
でくださいねぇっ!!」
「……あんた、どっちの心配してんだよ…」
リングのちょっとずれた心配に、ギゼーは半眼で突込みともつかない突っ込
みを入れる。その二人の様子を、少々離れた場所から眺めやる“影の男”。楽
しんでいるようでいて、何処か冷めたようなその雰囲気からは、陰謀めいたも
のを感じる。だが、二人はその男の様子など知る由も無く、ただただちびちび
ギゼー君を応援することに集中するのみであった―。
ちびちびギゼー君は、先程の上下運動プレートでコツを会得したのか、前後
運動プレートに飛び移るときは左程気を揉まずにすんだ。
ちびちびギゼー君は上下運動プレートと、前後運動プレートが交錯する瞬間
に跳躍したのだ。着地の仕方は前例のようだったが、どうやら無事に済んだよ
うである。思い切りの良いことをして、なぜかちびちびギゼー君は胸を張って
いた。
「ほほぉう。やれば出来るじゃん。あいつにも、学習能力があったんだぁ」
ギゼーは妙な関心の仕方を、周囲に披露した。
動くプレートにおいて、一番の難関を突破したちびちびギゼー君に敵は無か
った。アクロバットを披露した後、すんなりとインターバルへと飛び移ること
が出来たからだ。
NPC:影の男 水の鍵(ちびちびギゼー君)
場所:白の遺跡
*++――――――――++**++――――――――++**++――――――――++*
「…………ど~でもいいけどよ、俺の名前で呼ぶなよ…。そのチビ助の事」
ギゼーは呆れ顔のまま、自分の名前をしきりと繰り返す影の男を半眼で睨ん
だ。
「まあ、そう連れなくするなって。ギゼー君。僕と君の仲じゃあないか」
「人に聞かれたら誤解されるようなことを、言うんじゃない!」
影の男のおどけに、突っ込みで返すギゼー。まるで双方共に楽しんでいるよ
うだ。
その不可思議な二人の様子をおどけた顔で見遣っていたリングであったが、
突然何を思ったか顔を綻ばせ、手を一つ叩いて言った。
「まあ!お二人とも、仲が宜しいんですねv」
違うぞリングちゃん、ギゼーはそうリングに対して突っ込みを入れたい衝動
に駆られたが、必死の思いで言葉を飲み込んだ。
◆◇◆
水の鍵(ちびちびギゼー君)が正面にある壁の隙間を柔軟に抜けると、そこ
には大冒険の舞台が待っていた。彼にとっての。
ミニチュアアスレチックは通常の人間には脱け出せない仕掛けになっている。
かてて加えて、壁の隙間をすり抜けないとそこに辿り着くことさえも出来ない
のである。言うなれば、此処は水の鍵(ちびちびギゼー君)の独壇場であった。
壁が透き通っていて、ギゼーたちの方からも見渡せるとは言え、所詮指示を与
える程度しか出来ない。つまり、このエリアを抜けるには、水の鍵(ちびちび
ギゼー君)に掛かっていると言っても過言ではないのだ。
「にゅー!」
必然的に、水の鍵(ちびちびギゼー君)に気合が入る。……気合が入ってい
るのかいないのか良く分からない上に、余り意味の無い気合であったが。
最初の難関は、動くプレートだった。
底なしの穴の上を二つのプレートが時間差で動いている。一つ目は上下運動、
もう一つ目は床と平行な高さで前後運動をしていた。
普通の人間でも突破するのが難しい難関に挑もうとしているのは、水で出来
たお惚けキャラ、ちびちびギゼー君なのだ。問題が無いはずは無い。
「にゅー!」
気合も新に、水の鍵(ちびちびギゼー君)は早速手前のプレートとの距離を
計る。
「にゅーー!」
計る。
「にゅっ」
…計る。
「にゅにゅっ?」
……計り過ぎて、逆にタイミングを逃してしまった様だ。
「ああっ!なにやってんだ!そこぉっ!!」
ギゼーはそんな水の鍵(ちびちびギゼー君)の間抜けな行動を、指を差して
指摘する。
野次馬達が気を揉むのも無理は無い。それほど、ちびちびギゼー君の行動に
は、無駄が多過ぎるのだ。
「さあっ!どぉする!?ちびちびギゼー君!…彼は、無事にアスレチックを抜
けることが出来るのかっ!??以下、後編へ続くっ!!!」
「続くかあぁぁっ!!!」
「突っ込みも板についてきましたね。ギゼーさん」
◆◇◆
ちびちびギゼーは今度こそ、タイミングを計って飛んだ。
そして、上下運動をしているプレートに着地すると同時に転んで、身体をプ
レートに打ち付けてしまった。当然プレートは、水浸しになった。だが、何と
かそのぶちまけてしまった水(からだ)を集め、元の形を取り戻すちびちびギ
ゼー君。
観客達は、観ていられないとばかりに目を覆う。
「ああっ!ちびちびギゼーさんっ!危ないですっっ!硝子の鍵は、落とさない
でくださいねぇっ!!」
「……あんた、どっちの心配してんだよ…」
リングのちょっとずれた心配に、ギゼーは半眼で突込みともつかない突っ込
みを入れる。その二人の様子を、少々離れた場所から眺めやる“影の男”。楽
しんでいるようでいて、何処か冷めたようなその雰囲気からは、陰謀めいたも
のを感じる。だが、二人はその男の様子など知る由も無く、ただただちびちび
ギゼー君を応援することに集中するのみであった―。
ちびちびギゼー君は、先程の上下運動プレートでコツを会得したのか、前後
運動プレートに飛び移るときは左程気を揉まずにすんだ。
ちびちびギゼー君は上下運動プレートと、前後運動プレートが交錯する瞬間
に跳躍したのだ。着地の仕方は前例のようだったが、どうやら無事に済んだよ
うである。思い切りの良いことをして、なぜかちびちびギゼー君は胸を張って
いた。
「ほほぉう。やれば出来るじゃん。あいつにも、学習能力があったんだぁ」
ギゼーは妙な関心の仕方を、周囲に披露した。
動くプレートにおいて、一番の難関を突破したちびちびギゼー君に敵は無か
った。アクロバットを披露した後、すんなりとインターバルへと飛び移ること
が出来たからだ。
PC ギゼー・リング
場所 白の遺跡内部
NPC 水の鍵(ちびちびギゼー君)
___________________________________
インターバルにたどりついたギゼー君の前には、一つの大きなプレートが、何
に支えられるわけでもなく、宙に浮かんでいた。
「にゅ?」
ギゼー君、首をかしげる。
「わかりました!」
リングが声を上げた。
「ギゼーさん、プレートの先を見てください」
言われたとおり、ギゼーはプレートの先…その先は足場のない空間を見た。
うっすらと、黒い玉のようなものが一定の間隔をあけて宙に浮いているのが見
える。そしてそれは、その先に見える次の足場まで点々と並んでいた。
「たぶん、これがこのプレートの通る道なんです。水の鍵さん、聞こえます
か?その場にある、なんでもいいですから、とにかく、何か物をプレートに置
いてみてください」
「にゅー!」
水の鍵にその声は届いたらしく、たぶん、「わかったぜ!」という意味合いの
返事を水の鍵は発すると、きょろきょろと辺りを見回した。
「にゅ~?」
しかし、その足場には石一つなく、床はまるで大理石でも使っているようなつ
るつるさだ。困ったギゼー君、あるものを発見して喜びの声を上げた。
「にゅー!」
それは、たぶんこのアスレチックのオプションと思われる、紫色をした柱だっ
た。ギゼー君、その柱に近寄り、手をかける。
「ふんにゅ~!!」
「おい、アイツ、何する気だ?」
必死でなにかしようとしているギゼー君を見て、心配そうに言うのは、本物の
ギゼーだ。
そしてギゼーとリングが心配そうに見守る中。
「にゅおおおおっ!!」
バキッ
紫色の柱は根元からぼっきりと折れた。
「にゅー」
軽々と、折れた柱を持ち、嬉しそうな声を上げるギゼー君。思わず二人の顔が
青ざめた。
「わあ…、水の鍵さん、力持ち…」
それを見たギゼーも一言呟く。
「…あれって反則じゃないのか?」
とにもかくにも、「乗せるモノ」を自力で獲得したギゼー君は、紫色の柱をプ
レートの上に乗せた。リングの予想通り、プレートは柱を乗せると、宙に浮か
ぶ球にそって、決められたコースを進んでゆく。そして向こう側にたどりつく
と同じコースを元の道をたどって引き返してきた。
「やっぱり、このプレートは何か上に物が載ると動き出す仕組みになっている
んですよ。しかも、ご親切に、一度乗り損ねてもちゃんと元の場所にかえって
きますし」
「何か、いかにも<乗ってくれ>って感じだな」
「そういわれれば確かにそうですね~。水の鍵さん、さあ、そのプレートに飛
び乗ってください!」
「にゅっ!」
リングの指示を受けて、水の鍵はジャンプする構えをとる。そしてプレートが
近寄ってきたところで大きくジャンプ!だいぶプレートに慣れてきたせいか、
すんなりと飛び乗ることができた。
「やったー!」
思わず二人とも歓声を上げる。気分は赤ちゃんの成長を見守るパパとママだ。
しばらくの間、水の鍵が乗ったプレートは何の問題もなくすいすいと進んだ。
上に乗っている水の鍵も暇そうにぶらぶらしている。
「何だ、上に乗っちゃえば何の問題もないな」
「そうでもありませんよ!ほら!」
リングが声を上げたとたん。
「にゅー!」
水の鍵の目の前に、自分と同じぐらいの大きさの岩が迫ってきた。いや、迫っ
てきたというよりは、プレートがその方向に向かって一直線に突き進んでいる
のだから、向かっているという言い方のほうが正しいだろう。
「あぶなーい!!」
水の鍵はそれを間一髪、しゃがむことでかわした。岩は水の鍵の体すれすれを
通り過ぎる。リングとギゼーもほっと一息。
しかし、水の鍵が一息ついたのもつかの間、今度は自分の腰ぐらいの高さがあ
る岩が目の前に三つ連続で並んでいるのが見えた。
「にゅっ、にゅっ、にゅっ!」
水の鍵はそれを要領よくジャンプして飛び越えた。しかし、これはかなり体力
を使うらしい。飛び越えた後の水の鍵の表情はかなりしんどそうだ。
そうこうしているうちに向こう側の地面が見えてきた。地面との幅がどんどん
と狭まっていく。
「にゅっ!」
早く向こう岸にたどり着きたかったのだろうか。水の鍵は少し飛ぶタイミング
が早かった。距離が、あと少し、長い。
「ああっ!!」
「水の鍵さん!!」
ガシッ
しかし、水の鍵はぎりぎりのところで地面の端にぶら下がった。
「にゅ~っ」
水の鍵は持ち前の腕力で、いそいそと地面によじ登る。
「全く…、最後までハラハラさせてくれるやつだな。寿命が縮むぜ…」
「本当です…」
そう言って、二人は深いため息をついた。
場所 白の遺跡内部
NPC 水の鍵(ちびちびギゼー君)
___________________________________
インターバルにたどりついたギゼー君の前には、一つの大きなプレートが、何
に支えられるわけでもなく、宙に浮かんでいた。
「にゅ?」
ギゼー君、首をかしげる。
「わかりました!」
リングが声を上げた。
「ギゼーさん、プレートの先を見てください」
言われたとおり、ギゼーはプレートの先…その先は足場のない空間を見た。
うっすらと、黒い玉のようなものが一定の間隔をあけて宙に浮いているのが見
える。そしてそれは、その先に見える次の足場まで点々と並んでいた。
「たぶん、これがこのプレートの通る道なんです。水の鍵さん、聞こえます
か?その場にある、なんでもいいですから、とにかく、何か物をプレートに置
いてみてください」
「にゅー!」
水の鍵にその声は届いたらしく、たぶん、「わかったぜ!」という意味合いの
返事を水の鍵は発すると、きょろきょろと辺りを見回した。
「にゅ~?」
しかし、その足場には石一つなく、床はまるで大理石でも使っているようなつ
るつるさだ。困ったギゼー君、あるものを発見して喜びの声を上げた。
「にゅー!」
それは、たぶんこのアスレチックのオプションと思われる、紫色をした柱だっ
た。ギゼー君、その柱に近寄り、手をかける。
「ふんにゅ~!!」
「おい、アイツ、何する気だ?」
必死でなにかしようとしているギゼー君を見て、心配そうに言うのは、本物の
ギゼーだ。
そしてギゼーとリングが心配そうに見守る中。
「にゅおおおおっ!!」
バキッ
紫色の柱は根元からぼっきりと折れた。
「にゅー」
軽々と、折れた柱を持ち、嬉しそうな声を上げるギゼー君。思わず二人の顔が
青ざめた。
「わあ…、水の鍵さん、力持ち…」
それを見たギゼーも一言呟く。
「…あれって反則じゃないのか?」
とにもかくにも、「乗せるモノ」を自力で獲得したギゼー君は、紫色の柱をプ
レートの上に乗せた。リングの予想通り、プレートは柱を乗せると、宙に浮か
ぶ球にそって、決められたコースを進んでゆく。そして向こう側にたどりつく
と同じコースを元の道をたどって引き返してきた。
「やっぱり、このプレートは何か上に物が載ると動き出す仕組みになっている
んですよ。しかも、ご親切に、一度乗り損ねてもちゃんと元の場所にかえって
きますし」
「何か、いかにも<乗ってくれ>って感じだな」
「そういわれれば確かにそうですね~。水の鍵さん、さあ、そのプレートに飛
び乗ってください!」
「にゅっ!」
リングの指示を受けて、水の鍵はジャンプする構えをとる。そしてプレートが
近寄ってきたところで大きくジャンプ!だいぶプレートに慣れてきたせいか、
すんなりと飛び乗ることができた。
「やったー!」
思わず二人とも歓声を上げる。気分は赤ちゃんの成長を見守るパパとママだ。
しばらくの間、水の鍵が乗ったプレートは何の問題もなくすいすいと進んだ。
上に乗っている水の鍵も暇そうにぶらぶらしている。
「何だ、上に乗っちゃえば何の問題もないな」
「そうでもありませんよ!ほら!」
リングが声を上げたとたん。
「にゅー!」
水の鍵の目の前に、自分と同じぐらいの大きさの岩が迫ってきた。いや、迫っ
てきたというよりは、プレートがその方向に向かって一直線に突き進んでいる
のだから、向かっているという言い方のほうが正しいだろう。
「あぶなーい!!」
水の鍵はそれを間一髪、しゃがむことでかわした。岩は水の鍵の体すれすれを
通り過ぎる。リングとギゼーもほっと一息。
しかし、水の鍵が一息ついたのもつかの間、今度は自分の腰ぐらいの高さがあ
る岩が目の前に三つ連続で並んでいるのが見えた。
「にゅっ、にゅっ、にゅっ!」
水の鍵はそれを要領よくジャンプして飛び越えた。しかし、これはかなり体力
を使うらしい。飛び越えた後の水の鍵の表情はかなりしんどそうだ。
そうこうしているうちに向こう側の地面が見えてきた。地面との幅がどんどん
と狭まっていく。
「にゅっ!」
早く向こう岸にたどり着きたかったのだろうか。水の鍵は少し飛ぶタイミング
が早かった。距離が、あと少し、長い。
「ああっ!!」
「水の鍵さん!!」
ガシッ
しかし、水の鍵はぎりぎりのところで地面の端にぶら下がった。
「にゅ~っ」
水の鍵は持ち前の腕力で、いそいそと地面によじ登る。
「全く…、最後までハラハラさせてくれるやつだな。寿命が縮むぜ…」
「本当です…」
そう言って、二人は深いため息をついた。