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パーティ リング・ギゼー
場所 白の遺跡内部
NPC なし
___________________________________
ゆっくりと、リングは目を開いた。
「う・・・ん・・」
ここはどこなのだろう。意識を取り戻したリングは、一瞬、今いる所がわから
なくなり躊躇した。しかし、起き上がるため手を触れた床の冷たさに、はっと
気がついた。急いで近くに落ちていた眼鏡を拾い、掛けなおす。
(そうでした・・・、ここは遺跡の中です・・・)
眼鏡をかけて辺りを見回すと、少し今までの状況が整理できてきた。周りにあ
る鏡は全て、大きな亀裂が入っていたり、あるいは粉々に壊されていたり、全
てひどく破壊されている。あたりには鏡のかけらが散らばり、きらきらと輝く
さまは少し雪に似ていた。
(そうでした・・・私、このお部屋で不思議な声を聞いて、私がたくさん出て
きて・・・)
ん?とリングは首をかしげた。その先を覚えていない。不思議な声の挑発に、
思わず頭に血が上って、<私>のうちの一人の胸倉を掴んで・・・。
その先を思い出そうとすると、ずきずきと頭が痛んだ。
オモイダスナ
誰かが囁いているように。
オモイダシタラ オマエハコワレルゾ
びくっとリングは体を痙攣させた。そして、ごく自然に、その記憶をデリート
させる道を選んだ。無意識のうちに。逃げるように。
思い出すことをやめ、意識を辺りの風景に向けたリングは、ふいに、散らば
る鏡の破片の中に、鏡の破片ではない物体を見つけた。
「何でしょう・・・?」
きらきらと輝く破片の中で、それだけ、微妙に輝き具合が違う。と、いっても
普通の人間なら見落としてしまうほどの微妙な光の屈折の違いだったが。かし
ゃかしゃと、破片を踏みしだいて歩き、リングはそれを手に取った。
「鍵・・・ですか・・・?」
それは、一見ガラスで出来た鍵だった。
「鍵・・・、何故ここにあるのでしょう・・?」
その鍵の表面は研磨剤で磨いたようにつるつるしていた。どう見ても人工的に
作られたものだ。ふいに、リングの頭に唄の一節がよぎった。
一つとなりたる 二つの鍵・・・。
リングはそれを持っていくことに決めた。なぜだか、その鍵はこの遺跡にと
ても関係のあるものに思えたからだ。それにしても、この鍵はリングの手の中
でつるつると光り輝き、その透明さは、リングに何故か涙をイメージさせた。
その<涙>と、何故か、さっき、自分が胸倉を掴んだ<自分>の姿がダブ
る。
(これは、『私』の涙・・・)
その考えにリングは自分で考えたことにもかかわらずドキッとした。
(何故ですか、私は泣いてなどいません。悲しくなんか、ないんです)
その言葉に、心の底で<チガウ>と反応する自分がいたが、リングはその反応
も無視した。
(違いません!私は幸せです。私は・・・)
ガラスの鍵は、そんなリングを否定するように、現実を象徴するように、少
し意地悪くきらきらと光り輝いていた。
パーティ リング・ギゼー
場所 白の遺跡内部
NPC なし
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ゆっくりと、リングは目を開いた。
「う・・・ん・・」
ここはどこなのだろう。意識を取り戻したリングは、一瞬、今いる所がわから
なくなり躊躇した。しかし、起き上がるため手を触れた床の冷たさに、はっと
気がついた。急いで近くに落ちていた眼鏡を拾い、掛けなおす。
(そうでした・・・、ここは遺跡の中です・・・)
眼鏡をかけて辺りを見回すと、少し今までの状況が整理できてきた。周りにあ
る鏡は全て、大きな亀裂が入っていたり、あるいは粉々に壊されていたり、全
てひどく破壊されている。あたりには鏡のかけらが散らばり、きらきらと輝く
さまは少し雪に似ていた。
(そうでした・・・私、このお部屋で不思議な声を聞いて、私がたくさん出て
きて・・・)
ん?とリングは首をかしげた。その先を覚えていない。不思議な声の挑発に、
思わず頭に血が上って、<私>のうちの一人の胸倉を掴んで・・・。
その先を思い出そうとすると、ずきずきと頭が痛んだ。
オモイダスナ
誰かが囁いているように。
オモイダシタラ オマエハコワレルゾ
びくっとリングは体を痙攣させた。そして、ごく自然に、その記憶をデリート
させる道を選んだ。無意識のうちに。逃げるように。
思い出すことをやめ、意識を辺りの風景に向けたリングは、ふいに、散らば
る鏡の破片の中に、鏡の破片ではない物体を見つけた。
「何でしょう・・・?」
きらきらと輝く破片の中で、それだけ、微妙に輝き具合が違う。と、いっても
普通の人間なら見落としてしまうほどの微妙な光の屈折の違いだったが。かし
ゃかしゃと、破片を踏みしだいて歩き、リングはそれを手に取った。
「鍵・・・ですか・・・?」
それは、一見ガラスで出来た鍵だった。
「鍵・・・、何故ここにあるのでしょう・・?」
その鍵の表面は研磨剤で磨いたようにつるつるしていた。どう見ても人工的に
作られたものだ。ふいに、リングの頭に唄の一節がよぎった。
一つとなりたる 二つの鍵・・・。
リングはそれを持っていくことに決めた。なぜだか、その鍵はこの遺跡にと
ても関係のあるものに思えたからだ。それにしても、この鍵はリングの手の中
でつるつると光り輝き、その透明さは、リングに何故か涙をイメージさせた。
その<涙>と、何故か、さっき、自分が胸倉を掴んだ<自分>の姿がダブ
る。
(これは、『私』の涙・・・)
その考えにリングは自分で考えたことにもかかわらずドキッとした。
(何故ですか、私は泣いてなどいません。悲しくなんか、ないんです)
その言葉に、心の底で<チガウ>と反応する自分がいたが、リングはその反応
も無視した。
(違いません!私は幸せです。私は・・・)
ガラスの鍵は、そんなリングを否定するように、現実を象徴するように、少
し意地悪くきらきらと光り輝いていた。
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