PC:ギゼー (リング
NPC:影の男
場所:白の遺跡
*++-----------++**++-----------++**++-----------++*
「ごくりっ」
マグマの煮え滾る音だけが響く空間に、唯一無二の生物であるギゼーの生唾
を飲み込む音だけがいやに大きく聞こえる。思った以上に大きかったその音に
、ギゼーは一瞬背中に悪寒が走るのを覚えた。
最悪、自分は死ぬだろう。直ぐ下に広がるマグマの海にダイブして。その恐
怖にギゼーの心は囚われていた。
そして、ギゼーは恐怖と共に焦りに似た感情もまた、抱いていた。
自分は兎も角、リングやジュヴィアにもしもの事があったら…。未だ年端も
いかない少女達が危険な目に遭っているとしたらと、考えただけでゾッとする
。それにあの黒い紳士の言葉も重なって、早く此処を突破して二人を助けに行
かなければと考えれば、焦りも生じて来るというものだ。
「フッ……、俺、死ぬかもな……」
予感がギゼーの背に走った。でも、何時までもこうしていても仕方が無いと
言うことも、彼は知っている。
「ええいっ!どうせ死ぬなら……ままよっ!!」
意を決して、ギゼーは思い切り良く跳躍した。
見えない未来に向かって―。
『勇気を示せば、道は開かれる』
「えっ!?」
ギゼーは、ふと誰かの声が聞こえたような気がした。いや、彼の脳裏に“声
”が響いたのだ。
「……!?誰だ!誰か、其処に居るのか!?」
辺りを見回してみても、誰も居ない。
錯覚か?そう思い始めた時、異変が起こった。
道が浮かび上がったのだ。マグマの上、足場が無い筈の空間に。
“道”は硝子で出来ているかのようだった。透明で、光の加減で見えなくな
る。足を踏み出せば、脆く崩れ去りそうな。今まで目を凝らしても、注意深く
凝視しても、何も見えなかった部分に突如何者かが硝子の破片を塗したかのよ
うに、“それ”は無数の光の欠片に彩られていた。
「……?どういうことだ??」
不意に出現した足場に着地して、誰へとも無くそう問い質すギゼー。
しかし、兎にも角にもこれですんなりと鍵を取りに行けるのだから、こんな
所で一人で余計な詮索をしていても仕方が無い。それに、脆い足場なのでそれ
程時間を掛けていられないだろう。ギゼーは瞬時にそう判断し、最新の注意を
払って足幅と同じだけしか無い、細くて脆い足場を渡って行った。
不思議と、その足場の存在感だけで恐怖は薄らいでいた。地に足が付いてい
る、と言う事の安堵感を改めて実感したギゼーであった。
◆◇◆
漸くの思いで、台座の元へと辿り着いたギゼー。己の中の恐怖と長時間に渡
り戦って来た為であろう、額には玉のような汗が無数に光り、肩を上下させ息
を弾ませていた。
ギゼーは今、疲労困憊の局地にいた。極度の緊張状態の上で、自分の足幅し
か幅が無い一本道を熱く滾る熱気に当てられながら歩いて来たのである。ギゼ
ーは時間の流れが止っているように感じた。永遠と思える一瞬を体感したので
ある。疲労も蓄積すると言うものだ。
ギゼーの目の前にある台座には、氷で出来た“鍵”が静かに横たわっていた
。
「鍵……氷で出来ているのか?……?こんなに熱い部屋の中にあって、溶けて
いる様子も無い…。魔法の氷か。……ま、どうでも良いか。兎も角これさえあ
れば、先へ進めるからな」
手にした“鍵”は冷たく、心地よかった。
「!?」
ギゼーが“鍵”を手にした途端、辺りの風景が一変した。
今まであった炎の色に彩られた室内から、突如として本来の室内―白一色に
塗り込められた室内に変化したのだ。やがて、何処からとも無く含み笑いが響
いてくる。
「クククッ。おめでとう、ギゼー君」
先程の“影の男”が黒い染みが広がるように沸き出て言った。
「……!?お前はっ!なんのつもりだっっ!」
ギゼーは“影の男”に向かって、叫び返す。恐怖の色を隠そうとして、隠し
切れていないと言うのは皮肉か。
「どうもこうも……ねぇ」
“影の男”は大仰に肩を竦めて見せる。まるで、ギゼーのことを馬鹿にして
いるようにしか見えない。そう思われても仕方が無い行動を、彼は解ってやっ
ているのだ。
「どうもこうも………って、俺達に何か用があって、ちょっかい出しているん
だろう?何の用があるんだよ。それとも……、戦闘するならするでハッキリし
て欲しいんだけどな……」
そのようなことを言っても、ハッキリ言ってギゼーには戦闘をして勝つだけ
の自信は無かった。だが、相手の真意がわからない今、挑発して相手に手持ち
のカードを切らせようとしているのだ。
「………フフンッ。そんなことを言って、この私を、挑発しても無駄だよ。君
達とは戦わない。今は未だ…ね。……それに、君としても此処で戦いたくは、
無いようだしね。フフフ」
図星を付かれたギゼーは、更に焦りの色を濃くする。自分は、本当にこいつ
から逃げられるのか。此処から無事に抜け出し、リングと合流することが出来
るのか。
暫く逡巡した結果、ギゼーは賭けに出ることにした。
「…………へぇ、じゃあ、今は戦うことはないって事か。それじゃ、俺がこう
いうことをしても、お前は追撃してこないって事…だよな」
ギゼーは“影の男”にそう断言すると、先程手に取った“氷の鍵”をポケッ
トに大事そうに仕舞い、徐に出口に向かって全力疾走した。
◆◇◆
結局、“影の男”は何もしてこなかった。
何も。
ただ、ギゼーが出入り口から擦り抜けて行くのを黙って見ているだけだった
。ギゼーの方も、納得ずくの行動だったから、そんな“影の男”を目の当たり
にしても動揺することは無かった。
再び果てしなく続く白い空間を、疾駆するギゼー。
目指すはリングとの合流だ。
(恐らくリングちゃんも“鍵”を手にしている筈だから…それと合わせて…)
――一つとなりたる二つの“鍵”
再び詩の一節が蘇る。
(……?同時に使うということか?それとも……)
NPC:影の男
場所:白の遺跡
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「ごくりっ」
マグマの煮え滾る音だけが響く空間に、唯一無二の生物であるギゼーの生唾
を飲み込む音だけがいやに大きく聞こえる。思った以上に大きかったその音に
、ギゼーは一瞬背中に悪寒が走るのを覚えた。
最悪、自分は死ぬだろう。直ぐ下に広がるマグマの海にダイブして。その恐
怖にギゼーの心は囚われていた。
そして、ギゼーは恐怖と共に焦りに似た感情もまた、抱いていた。
自分は兎も角、リングやジュヴィアにもしもの事があったら…。未だ年端も
いかない少女達が危険な目に遭っているとしたらと、考えただけでゾッとする
。それにあの黒い紳士の言葉も重なって、早く此処を突破して二人を助けに行
かなければと考えれば、焦りも生じて来るというものだ。
「フッ……、俺、死ぬかもな……」
予感がギゼーの背に走った。でも、何時までもこうしていても仕方が無いと
言うことも、彼は知っている。
「ええいっ!どうせ死ぬなら……ままよっ!!」
意を決して、ギゼーは思い切り良く跳躍した。
見えない未来に向かって―。
『勇気を示せば、道は開かれる』
「えっ!?」
ギゼーは、ふと誰かの声が聞こえたような気がした。いや、彼の脳裏に“声
”が響いたのだ。
「……!?誰だ!誰か、其処に居るのか!?」
辺りを見回してみても、誰も居ない。
錯覚か?そう思い始めた時、異変が起こった。
道が浮かび上がったのだ。マグマの上、足場が無い筈の空間に。
“道”は硝子で出来ているかのようだった。透明で、光の加減で見えなくな
る。足を踏み出せば、脆く崩れ去りそうな。今まで目を凝らしても、注意深く
凝視しても、何も見えなかった部分に突如何者かが硝子の破片を塗したかのよ
うに、“それ”は無数の光の欠片に彩られていた。
「……?どういうことだ??」
不意に出現した足場に着地して、誰へとも無くそう問い質すギゼー。
しかし、兎にも角にもこれですんなりと鍵を取りに行けるのだから、こんな
所で一人で余計な詮索をしていても仕方が無い。それに、脆い足場なのでそれ
程時間を掛けていられないだろう。ギゼーは瞬時にそう判断し、最新の注意を
払って足幅と同じだけしか無い、細くて脆い足場を渡って行った。
不思議と、その足場の存在感だけで恐怖は薄らいでいた。地に足が付いてい
る、と言う事の安堵感を改めて実感したギゼーであった。
◆◇◆
漸くの思いで、台座の元へと辿り着いたギゼー。己の中の恐怖と長時間に渡
り戦って来た為であろう、額には玉のような汗が無数に光り、肩を上下させ息
を弾ませていた。
ギゼーは今、疲労困憊の局地にいた。極度の緊張状態の上で、自分の足幅し
か幅が無い一本道を熱く滾る熱気に当てられながら歩いて来たのである。ギゼ
ーは時間の流れが止っているように感じた。永遠と思える一瞬を体感したので
ある。疲労も蓄積すると言うものだ。
ギゼーの目の前にある台座には、氷で出来た“鍵”が静かに横たわっていた
。
「鍵……氷で出来ているのか?……?こんなに熱い部屋の中にあって、溶けて
いる様子も無い…。魔法の氷か。……ま、どうでも良いか。兎も角これさえあ
れば、先へ進めるからな」
手にした“鍵”は冷たく、心地よかった。
「!?」
ギゼーが“鍵”を手にした途端、辺りの風景が一変した。
今まであった炎の色に彩られた室内から、突如として本来の室内―白一色に
塗り込められた室内に変化したのだ。やがて、何処からとも無く含み笑いが響
いてくる。
「クククッ。おめでとう、ギゼー君」
先程の“影の男”が黒い染みが広がるように沸き出て言った。
「……!?お前はっ!なんのつもりだっっ!」
ギゼーは“影の男”に向かって、叫び返す。恐怖の色を隠そうとして、隠し
切れていないと言うのは皮肉か。
「どうもこうも……ねぇ」
“影の男”は大仰に肩を竦めて見せる。まるで、ギゼーのことを馬鹿にして
いるようにしか見えない。そう思われても仕方が無い行動を、彼は解ってやっ
ているのだ。
「どうもこうも………って、俺達に何か用があって、ちょっかい出しているん
だろう?何の用があるんだよ。それとも……、戦闘するならするでハッキリし
て欲しいんだけどな……」
そのようなことを言っても、ハッキリ言ってギゼーには戦闘をして勝つだけ
の自信は無かった。だが、相手の真意がわからない今、挑発して相手に手持ち
のカードを切らせようとしているのだ。
「………フフンッ。そんなことを言って、この私を、挑発しても無駄だよ。君
達とは戦わない。今は未だ…ね。……それに、君としても此処で戦いたくは、
無いようだしね。フフフ」
図星を付かれたギゼーは、更に焦りの色を濃くする。自分は、本当にこいつ
から逃げられるのか。此処から無事に抜け出し、リングと合流することが出来
るのか。
暫く逡巡した結果、ギゼーは賭けに出ることにした。
「…………へぇ、じゃあ、今は戦うことはないって事か。それじゃ、俺がこう
いうことをしても、お前は追撃してこないって事…だよな」
ギゼーは“影の男”にそう断言すると、先程手に取った“氷の鍵”をポケッ
トに大事そうに仕舞い、徐に出口に向かって全力疾走した。
◆◇◆
結局、“影の男”は何もしてこなかった。
何も。
ただ、ギゼーが出入り口から擦り抜けて行くのを黙って見ているだけだった
。ギゼーの方も、納得ずくの行動だったから、そんな“影の男”を目の当たり
にしても動揺することは無かった。
再び果てしなく続く白い空間を、疾駆するギゼー。
目指すはリングとの合流だ。
(恐らくリングちゃんも“鍵”を手にしている筈だから…それと合わせて…)
――一つとなりたる二つの“鍵”
再び詩の一節が蘇る。
(……?同時に使うということか?それとも……)
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