◆――――――――――――――――――――――――――――
PC:ジュヴィア、リング、ギゼー
NPC:情報屋セル
場所:ソフィニア“消え行く灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――
何によって構成されているかはそんなに重要なことなのだろうか?
黙りこくってしまった一同の中で、真っ先に口を開いたのは矢張りと言うべきか
セルという男だった。軽くギゼーの背中をポンポン叩くと、笑い飛ばすように言う。
「な~にをそんな勿体つけた事ばっか言ってるんだよ?ほらあんた等もそんな黙っ
てないで。次行くぞ次!」
何の次だ、とリング以外は思ったに違いないが、そんな事にはお構いなしにセル
はその金色の瞳をジュヴィアの方に向けた。咄嗟に思わず身を強張らせたジュヴィ
アを見て、ギゼーが言う。
「何だよセル…人にあんな事言っておいて、お前だって変な目で見たんじゃないの
か?ジュヴィアちゃん今尋常じゃなく驚いたぜ」
――違う、悪いのは私…
声には出せないまま、ジュヴィアは目をぎゅっとつぶった。
「何を言うかコイツ。お前と一緒にするんじゃない…ったく」
セルはギゼーにそんな答えを返して、首を左右に倒しぼきぼきと音を立てた。
さて…と小声でつぶやいたのが聞こえる。さて…何だろう。
「リングちゃんが何で旅してるのか、ってことは解ったが…お嬢ちゃん、あんたが
何故旅をしているのかはまだ聞いてなかったな?」
…余り聞かれたくないことである。ジュヴィアは沈黙を守った。
「おいおい、黙ってちゃ解らんぞ。別に取って食おうって訳じゃない。あんたみた
いなチビ助が旅に出るってんだ。そりゃのっぴきならない事情があるんだろ?」
セルがジュヴィアの肩に手を置いた、刹那。
「――嫌ッ!」
弾かれるようにしてジュヴィアは後ずさった。同時に全員の表情が強張る。
「……どうしました~?」
リングが覗き込むようにしてジュヴィアを伺う。だが、すぐにジュヴィアはいつ
もの表情に戻った。否――戻したようだった。
「何でもありません…ごめんなさい。私のことは…訊かないで頂けますか…」
疑問形である。だが、こう言われて食い下がる者も居ないので、命令形でもある
と言えた。ギゼーもセルも何かを感じ取ったらしく、口をつぐんだ。場に再び重い
空気が淀む。リングは半ば慌てながらギゼーに話を振った。
「そうです、さっきは何をあんなに驚かれていたんです?」
「んん?あ、ああ…」
ギゼーの脳裏に再びあの声が蘇る。
――ガロウズ村の連中が、全滅…
その事を話すと、皆少なからず驚いた。無理もない。村が一晩で…滅びたのだ。
三度場は重苦しい雰囲気に包まれた。どよ~ん、と音がしそうな勢いである。
「もう…寝ようか。あとは明日…」
「そうだな…」
言い出したギゼーに、まだ跳ね除けられたショックが若干残っているらしいセル
が続いた。心中複雑なまま口々にそうだ、もう寝よう、と言いながら、一同は寝支
度を整えようとした。そしてはたと気づいた。
「ベッドが…2つ」
そう、それは極めて重要な問題であった。
PC:ジュヴィア、リング、ギゼー
NPC:情報屋セル
場所:ソフィニア“消え行く灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――
何によって構成されているかはそんなに重要なことなのだろうか?
黙りこくってしまった一同の中で、真っ先に口を開いたのは矢張りと言うべきか
セルという男だった。軽くギゼーの背中をポンポン叩くと、笑い飛ばすように言う。
「な~にをそんな勿体つけた事ばっか言ってるんだよ?ほらあんた等もそんな黙っ
てないで。次行くぞ次!」
何の次だ、とリング以外は思ったに違いないが、そんな事にはお構いなしにセル
はその金色の瞳をジュヴィアの方に向けた。咄嗟に思わず身を強張らせたジュヴィ
アを見て、ギゼーが言う。
「何だよセル…人にあんな事言っておいて、お前だって変な目で見たんじゃないの
か?ジュヴィアちゃん今尋常じゃなく驚いたぜ」
――違う、悪いのは私…
声には出せないまま、ジュヴィアは目をぎゅっとつぶった。
「何を言うかコイツ。お前と一緒にするんじゃない…ったく」
セルはギゼーにそんな答えを返して、首を左右に倒しぼきぼきと音を立てた。
さて…と小声でつぶやいたのが聞こえる。さて…何だろう。
「リングちゃんが何で旅してるのか、ってことは解ったが…お嬢ちゃん、あんたが
何故旅をしているのかはまだ聞いてなかったな?」
…余り聞かれたくないことである。ジュヴィアは沈黙を守った。
「おいおい、黙ってちゃ解らんぞ。別に取って食おうって訳じゃない。あんたみた
いなチビ助が旅に出るってんだ。そりゃのっぴきならない事情があるんだろ?」
セルがジュヴィアの肩に手を置いた、刹那。
「――嫌ッ!」
弾かれるようにしてジュヴィアは後ずさった。同時に全員の表情が強張る。
「……どうしました~?」
リングが覗き込むようにしてジュヴィアを伺う。だが、すぐにジュヴィアはいつ
もの表情に戻った。否――戻したようだった。
「何でもありません…ごめんなさい。私のことは…訊かないで頂けますか…」
疑問形である。だが、こう言われて食い下がる者も居ないので、命令形でもある
と言えた。ギゼーもセルも何かを感じ取ったらしく、口をつぐんだ。場に再び重い
空気が淀む。リングは半ば慌てながらギゼーに話を振った。
「そうです、さっきは何をあんなに驚かれていたんです?」
「んん?あ、ああ…」
ギゼーの脳裏に再びあの声が蘇る。
――ガロウズ村の連中が、全滅…
その事を話すと、皆少なからず驚いた。無理もない。村が一晩で…滅びたのだ。
三度場は重苦しい雰囲気に包まれた。どよ~ん、と音がしそうな勢いである。
「もう…寝ようか。あとは明日…」
「そうだな…」
言い出したギゼーに、まだ跳ね除けられたショックが若干残っているらしいセル
が続いた。心中複雑なまま口々にそうだ、もう寝よう、と言いながら、一同は寝支
度を整えようとした。そしてはたと気づいた。
「ベッドが…2つ」
そう、それは極めて重要な問題であった。
PR
◆――――――――――――――――――――――――――――
メンバー ギゼー・ジュヴィア・リング(五十音順)
場所 <消えゆく灯火>亭二階
NPC セル
◆――――――――――――――――――――――――――――
「これでよかったんでしょうか・・・」
チラッと床を見てリングが言う。そのリングにジュヴィアはきっぱりと言い
切った。
「いいんですよ。・・・女を床で寝かせるほうがどうかしています。地上では
ね」
そういうものなのでしょうか・・・。口の中でつぶやいてリングは再びチラ
ッと床を見た。通常二人で使うはずの小さい部屋。その部屋のベッドは、半ば
強引に仲間入りしてきた二人の女性に占領されていた。常識しらずのムスメ、
リングと、謎の銀髪美少女、ジュヴィアに、である。したがって、この部屋を
本来、正当に使うことができる二人、ギゼーとセルは床に寝袋をしいて寝ると
いうハメとなってしまった。しかし、
「うーん・・・、クロー・・ス・・・」
「さすが旅慣れていらっしゃいますね」
リングが苦笑のような、微笑ましいといったような表情を浮かべた。
「お二人とも、固い床の上だというのに、すぐに寝入ってしまわれました」
「そうですね、五分もかかりませんでしたね」
二人の半ば冷たい視線をよそに、二人は床の上ですっかり寝入ってしまって
いる。ギゼーに至っては寝言まで言う始末だ。
「クロース・・・、ですか」
「全く、ここまでくるとこの少女愛好趣味もたいしたものですね」
ジュヴィアが冷めた瞳で言い放つ。それに、リングが乾いた笑いを返した。
彼女も、未だギゼーの少女愛好趣味の線を信じている。
コチ コチ コチ
部屋にある時計の秒針が時を刻む音が、静かな部屋に響く。
月光が、部屋の小さな窓から斜めに差し込む。
時は真夜中、この宿にとまる人間がすっかり寝入ってしまったであろう時刻
だ。
「・・・どうしてお休みになられないんですか?」
その言葉に、ジュヴィアがベッドに横たわった状態でリングのほうに顔を傾
けた。
「・・・あなたこそ」
「あはは・・・、お互い様ですね」
悪意のない素直な笑みを向けて、リングは笑った。そしてそのまま、視線を
中空に走らせる。
「・・・私、眠れないんです。今日はいろいろなことが起こりすぎて。興奮し
てしまっているのかもしれませんね。貴方もですか。ジュヴィアさん?」
「・・・ええ、まあ、そんなところです」
ジュヴィアは口では戸惑いがちにそう言ったが、本当は、違う。本当は、今
日、セルとギゼーに自分の正体を見透かされそうになったことが心に引っかか
って眠れなかったのだ。しかし、そんなことを彼女に言って何になろ
う。・・・自分の苦しみを分かち合えるのは、所詮、自分一人なのだ。だか
ら、私は誰も信じたりしない、誰も・・・。
そんなジュヴィアの心の葛藤を知ってか知らないでか、リングはくすっと笑
った。そして、ふと今日の話を思い出し。天井を見上げて、不意に表情を硬く
させた。
「ガロウズ村・・・、ですか。私はまだ行った事がありませんが・・・。なん
と言えば良いのでしょう・・・。可哀想・・・、ですよね」
「まぁ・・・」
口ではあいまいな返事をしたが、内心、ジュヴィアの心の中はリングへの不
信の念が募っていた。
「可哀想」と簡単に言えてしまう彼女は明らかに「偽善者」だ。
ジュヴィアは偽善者が大嫌いだった。たまに本気で殺してしまいたくなるほ
どに。
しかし、少し思い直した。彼女が、とても世間知らずで、天然と思われるほ
どに素直なことを思い出したからである。たぶん、言ってる本人に悪意はない
だろう。言い方が癇に障ったとはいえ、悪意も悪気もないので、ここは少し多
めに見てやろうと、ジュヴィアは思い直した。
そんなジュヴィアの思いにも気づかず、リングは極めて悲しそうな表情で話
し続ける。
「何故、罪もない人間が殺されなければならないのでしょうか・・・。悲しい
ことです。何故、人間はもっと平和に暮らせないのでしょう・・・」
「平和に?」
その言葉にジュヴィアが反応した。
「では聞きますが、あなたが前にいた世界、・・・海の中、ですか。そこは、
<平和>だったのですか?海の中に<争い>は存在しなかったのですか?」
「地上よりは存在しません・・・。間違ったやり方だと、思いますが・・・」
リングの顔がそう言って、悲しげに歪んだ。
「どういうことですか・・・?」
ジュヴィアが聞くと、リングは悲しげに言った。
「海の中は知能の高い生物が地上の数倍、いえ、数万倍少ないのです。その中
でも、魔力を持つものはごく稀で、現在は私を含めて10名ほどしか存在しま
せん。そんな者たちが、魔力と知恵を使って頭の弱い生物を思うがままに仕切
っているので、海の中はたいした争いが起こらないのです。つまり、乱暴な言
い方をしますと、その民のほとんどが、馬鹿で、操りやすいというわけです
ね。しかも、魔力を持っている者のほとんどが私の一族なので、<争い>とい
えばせいぜい身内同士の玉座争いぐらいのものです。まあ、それもけっこう派
手なものではあるんですけどね。しかし、そんな戦いも、私の父が<聖本シリ
ーズ>を手に入れてからはなくなりました」
「<聖本シリーズ>・・・。それは・・・」
ジュヴィアの視線はリングの腹にいった。その視線を見届けて、リングが言
った。
「そうです。私が今もっている本と同じ力を持つ本のシリーズです。その本の
魔力を借りて、父は一族の威圧に成功しました。でも、その本が原書でないこ
とは今日初めて知りましたが・・・」
リングの表情に一瞬影がさしたが、すぐに、何かを決意した表情になった。
「ですから、私が本のことを調べる理由は、父にぼろを出させないためです。
父は、本を購入した際、何の説明も、情報ももらえなかったといいます。今
や、「聖本」は私たちの一族と海の平和を守る要です。その要の品にもしもの
ことがあったら大変なのです。もし万が一そんなことがおこれば、一族は謀反
を起こし、海は荒れるでしょう」
「・・・」
一見能天気そうに見える彼女だが、案外大変なんだな・・・、とジュヴィア
は思った。
(でも、海の中って全然平和じゃない・・・)
心の中でツッコミを入れるジュヴィアだった。
「ですから、次の長になる私には、本のことを詳しく調べる義務があります。
お父様と、海の平和のために。・・・しかし、やはり力で力を押さえつけると
いうお父様のやり方は、間違っているとは思いますが。しかし、たかだが17
歳の私など、海を動かすことができません。だから、今は、少しでも皆が平和
に暮らせるように頑張るしかないんです」
そう言うリングの真剣な様子に、少し、ジュヴィアはリングのことを見直し
たようだった。-そしてタヌキ寝入りをしながら二人の会話を盗み聞きしてい
たギゼーも。
(へえ・・・、ああ見えて彼女、大変なんだな・・・)
17にして、彼女は「海の平和」という大きな課題を背負っているのだ。彼
女はどうやらただの世間知らずな能天気、ではなかったといえる。
「本当はジュヴィアさんのことももっとお聞きしたいのですが、何か話したく
ないような素振りをしていらしたようなので、特にお聞きしません。さて、も
う寝ましょうね。おやすみなさい。ジュヴィアさん」
言うと、ことりとリングは寝入ってしまった。その寝顔をジュヴィアはじっ
と見つめた。リングの寝顔はとても安らかで、気持ち良さそうだった。
メンバー ギゼー・ジュヴィア・リング(五十音順)
場所 <消えゆく灯火>亭二階
NPC セル
◆――――――――――――――――――――――――――――
「これでよかったんでしょうか・・・」
チラッと床を見てリングが言う。そのリングにジュヴィアはきっぱりと言い
切った。
「いいんですよ。・・・女を床で寝かせるほうがどうかしています。地上では
ね」
そういうものなのでしょうか・・・。口の中でつぶやいてリングは再びチラ
ッと床を見た。通常二人で使うはずの小さい部屋。その部屋のベッドは、半ば
強引に仲間入りしてきた二人の女性に占領されていた。常識しらずのムスメ、
リングと、謎の銀髪美少女、ジュヴィアに、である。したがって、この部屋を
本来、正当に使うことができる二人、ギゼーとセルは床に寝袋をしいて寝ると
いうハメとなってしまった。しかし、
「うーん・・・、クロー・・ス・・・」
「さすが旅慣れていらっしゃいますね」
リングが苦笑のような、微笑ましいといったような表情を浮かべた。
「お二人とも、固い床の上だというのに、すぐに寝入ってしまわれました」
「そうですね、五分もかかりませんでしたね」
二人の半ば冷たい視線をよそに、二人は床の上ですっかり寝入ってしまって
いる。ギゼーに至っては寝言まで言う始末だ。
「クロース・・・、ですか」
「全く、ここまでくるとこの少女愛好趣味もたいしたものですね」
ジュヴィアが冷めた瞳で言い放つ。それに、リングが乾いた笑いを返した。
彼女も、未だギゼーの少女愛好趣味の線を信じている。
コチ コチ コチ
部屋にある時計の秒針が時を刻む音が、静かな部屋に響く。
月光が、部屋の小さな窓から斜めに差し込む。
時は真夜中、この宿にとまる人間がすっかり寝入ってしまったであろう時刻
だ。
「・・・どうしてお休みになられないんですか?」
その言葉に、ジュヴィアがベッドに横たわった状態でリングのほうに顔を傾
けた。
「・・・あなたこそ」
「あはは・・・、お互い様ですね」
悪意のない素直な笑みを向けて、リングは笑った。そしてそのまま、視線を
中空に走らせる。
「・・・私、眠れないんです。今日はいろいろなことが起こりすぎて。興奮し
てしまっているのかもしれませんね。貴方もですか。ジュヴィアさん?」
「・・・ええ、まあ、そんなところです」
ジュヴィアは口では戸惑いがちにそう言ったが、本当は、違う。本当は、今
日、セルとギゼーに自分の正体を見透かされそうになったことが心に引っかか
って眠れなかったのだ。しかし、そんなことを彼女に言って何になろ
う。・・・自分の苦しみを分かち合えるのは、所詮、自分一人なのだ。だか
ら、私は誰も信じたりしない、誰も・・・。
そんなジュヴィアの心の葛藤を知ってか知らないでか、リングはくすっと笑
った。そして、ふと今日の話を思い出し。天井を見上げて、不意に表情を硬く
させた。
「ガロウズ村・・・、ですか。私はまだ行った事がありませんが・・・。なん
と言えば良いのでしょう・・・。可哀想・・・、ですよね」
「まぁ・・・」
口ではあいまいな返事をしたが、内心、ジュヴィアの心の中はリングへの不
信の念が募っていた。
「可哀想」と簡単に言えてしまう彼女は明らかに「偽善者」だ。
ジュヴィアは偽善者が大嫌いだった。たまに本気で殺してしまいたくなるほ
どに。
しかし、少し思い直した。彼女が、とても世間知らずで、天然と思われるほ
どに素直なことを思い出したからである。たぶん、言ってる本人に悪意はない
だろう。言い方が癇に障ったとはいえ、悪意も悪気もないので、ここは少し多
めに見てやろうと、ジュヴィアは思い直した。
そんなジュヴィアの思いにも気づかず、リングは極めて悲しそうな表情で話
し続ける。
「何故、罪もない人間が殺されなければならないのでしょうか・・・。悲しい
ことです。何故、人間はもっと平和に暮らせないのでしょう・・・」
「平和に?」
その言葉にジュヴィアが反応した。
「では聞きますが、あなたが前にいた世界、・・・海の中、ですか。そこは、
<平和>だったのですか?海の中に<争い>は存在しなかったのですか?」
「地上よりは存在しません・・・。間違ったやり方だと、思いますが・・・」
リングの顔がそう言って、悲しげに歪んだ。
「どういうことですか・・・?」
ジュヴィアが聞くと、リングは悲しげに言った。
「海の中は知能の高い生物が地上の数倍、いえ、数万倍少ないのです。その中
でも、魔力を持つものはごく稀で、現在は私を含めて10名ほどしか存在しま
せん。そんな者たちが、魔力と知恵を使って頭の弱い生物を思うがままに仕切
っているので、海の中はたいした争いが起こらないのです。つまり、乱暴な言
い方をしますと、その民のほとんどが、馬鹿で、操りやすいというわけです
ね。しかも、魔力を持っている者のほとんどが私の一族なので、<争い>とい
えばせいぜい身内同士の玉座争いぐらいのものです。まあ、それもけっこう派
手なものではあるんですけどね。しかし、そんな戦いも、私の父が<聖本シリ
ーズ>を手に入れてからはなくなりました」
「<聖本シリーズ>・・・。それは・・・」
ジュヴィアの視線はリングの腹にいった。その視線を見届けて、リングが言
った。
「そうです。私が今もっている本と同じ力を持つ本のシリーズです。その本の
魔力を借りて、父は一族の威圧に成功しました。でも、その本が原書でないこ
とは今日初めて知りましたが・・・」
リングの表情に一瞬影がさしたが、すぐに、何かを決意した表情になった。
「ですから、私が本のことを調べる理由は、父にぼろを出させないためです。
父は、本を購入した際、何の説明も、情報ももらえなかったといいます。今
や、「聖本」は私たちの一族と海の平和を守る要です。その要の品にもしもの
ことがあったら大変なのです。もし万が一そんなことがおこれば、一族は謀反
を起こし、海は荒れるでしょう」
「・・・」
一見能天気そうに見える彼女だが、案外大変なんだな・・・、とジュヴィア
は思った。
(でも、海の中って全然平和じゃない・・・)
心の中でツッコミを入れるジュヴィアだった。
「ですから、次の長になる私には、本のことを詳しく調べる義務があります。
お父様と、海の平和のために。・・・しかし、やはり力で力を押さえつけると
いうお父様のやり方は、間違っているとは思いますが。しかし、たかだが17
歳の私など、海を動かすことができません。だから、今は、少しでも皆が平和
に暮らせるように頑張るしかないんです」
そう言うリングの真剣な様子に、少し、ジュヴィアはリングのことを見直し
たようだった。-そしてタヌキ寝入りをしながら二人の会話を盗み聞きしてい
たギゼーも。
(へえ・・・、ああ見えて彼女、大変なんだな・・・)
17にして、彼女は「海の平和」という大きな課題を背負っているのだ。彼
女はどうやらただの世間知らずな能天気、ではなかったといえる。
「本当はジュヴィアさんのことももっとお聞きしたいのですが、何か話したく
ないような素振りをしていらしたようなので、特にお聞きしません。さて、も
う寝ましょうね。おやすみなさい。ジュヴィアさん」
言うと、ことりとリングは寝入ってしまった。その寝顔をジュヴィアはじっ
と見つめた。リングの寝顔はとても安らかで、気持ち良さそうだった。
◆――――――――――――――――――――――――――――
PC:ギゼー、ジュヴィア、リング
NPC:セル
場所:ソフィニア“消えゆく灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――
宝を手に入れてどうするの?
宝を手に入れて何を願うの?
宝が、好き?
そんなに、好き?
貴方にとって、宝って何?
宝が貴方に与えるものって………いったい………。
朝―。
昨夜の喧々囂々たる有様とは打って変わって、静謐で清々しい朝である。
小鳥のさえずり、冷気を伴って張り詰めた空気、柔らかく降りそそぐ朝日。何もか
もが、パステルカラーに彩られている。その彩りの中を、誰よりも早く目覚めたギ
ゼーは、未だ夢の虜である同室の三人を起こさない様にゆっくりと、だが確実に旅支
度を整えていく。
(ったく!セルの奴、昨日ドサクサに紛れて俺の部屋で寝泊りしやがって!てめー
は、てめーの宿があんだろって!お陰で床に寝かされちまうしよう。………ま、どの
道、床か)
そう、心の中で呟きつつもチラリと半眼でジュヴィアとリングの方を見やるギ
ゼー。その面差しは、呆れ果てている風であった。
昨夜の一件で、ここは俺の部屋だと主張することも出来た。だが、それをやらな
かったのは後ろめたい部分があったのと、何処かに二人の少女を放っておけないとい
う感情が有ったからだ。
(やれやれ。二人の言う、少女嗜好ってのもあながち間違っていないのかもな。だけ
ど、困ってる奴を放って置くのが許せないってのも事実なんだよなぁ。何処かで、プ
ロに徹し切れていないのかもなぁ)
そんな事を考えながらも、手を休めなかったお陰であらかた旅支度は整った。後
は、宿の清算を済ませるだけだ。
「わりぃな。あんた等の分まで宿代、払っとくからよ。お先に失礼するぜ」
それ程大きな声を出したつもりは無かった。
だが、小さく纏めた荷物を背に扉を開けようとしたギゼーを呼び止める声に、一瞬
心臓が止まる感覚を味わう。
その声の主は、ジュヴィアだった。どうやら彼女は一晩中起きていたらしく、ギ
ゼーの一挙手一動足を窺っていたようだ。不信感を最大にして、その眼差しをギゼー
に向けている。やや、上目遣いで。
・・・・・
「何処へ行くつもりです?答えなさい」
心臓を鷲掴みにされる思いで、咄嗟に振り向く。いや、実際に鷲掴みにされたのか
もしれない。それ程、彼女の“言葉”は強力だった。顔に噴き出した脂汗を床に滴ら
せながら、考える。その間も、視線はジュヴィアから離さない。
(……一体全体、どうなってやがる!?……っく。……これは、……魔法!?…実際
に見たことは無いが……なんだってんだ…いったい…………)
苦しげに見えるギゼーをほくそえむ様に口の端を歪ませながら、ジュヴィアは再び
口を開く。
「何処へ行くつもりです?」
「いやぁ、ちょっとね。宿を出ようかと思って…」
脂汗はそのままに、笑顔の形に顔を歪ませながら答えるギゼー。何も、なす術無し
だ。
「そう。じゃあ、私達も一緒、と言うことですね?」
ジュヴィアにしてみれば、その言葉が口から発したこと自体不思議なことだった。
何故、この人と一緒にいたいのか?何故、何の為に、これ程までに人と関わってし
まったのか?自分は、人をこんなにも恋しがっていたのか?否。自分は、今まで一度
だって人を恋しいと思ったことは無かった。いや、寧ろその逆。人を、避けてすらい
た。それが、何故今頃になって、自ら進んで関わろうとしているのか?
ギゼーを見、次に未だ夢見心地なリングに視線を移すと、ジュヴィアの顔に笑みが
浮かび答えを導き出す。
―気紛れだ、こんなの。
自分は、寿命を全うするまで決して死ぬことは無いから。
唯の気紛れ。
そう考えると、何故か肩の力が抜けた。
「私達も一緒に、連れて行ってくれますね?」
不思議とその言葉が、ごく自然にジュヴィアの口をついて出た。
そのジュヴィアの変化を敏感に感じ取ったギゼーは、二つ返事で応じる。
「あ?ああ、分かった、分かった。連れて行くよ」
ごく自然な応答。ジュヴィアが肩の力を抜いたお陰で、初めて成立した会話。
こういうものもまた良いかな、とジュヴィアは思った。それは、初めて抱いた感情
で、だが不思議とごく自然に受け入れてしまった自分に、未だ気付いていないジュ
ヴィアであった。
「で?何処へ行くんです?ギゼーさん」
目覚めるなり、いきなり引き摺って来られたリングは、その事に不満も漏らさずに
ギゼーに質問する。当然、眼は期待と好奇心で光り輝いている。
ここは、ソフィニアの目抜き通り。数多の商店が軒を連ね、互いに競い合って商品
を売っている。同じ種類の商店もあれば相反する商店もあり、互いに客を取り合って
いる。
ギゼーはそんな言葉も聞こえないかのごとく、通りの両端に視線を走らせ、店先を
覗き込んでいく。まるで、何かを探して歩いているようだ。
「もう~、ギゼーさんってばぁ。無視しないでくださいよぅ」
リングは、そんな些細な事に対してはしっかりと不満を漏らすらしい。
不満を漏らしているリングの隣では、ジュヴィアが静かに歩いている。しかしその
眼は、ギゼーに対する疑念を隠すことなく彼の背中を凝視している。疑いは未だに晴
れていない様だ。
そんな視線を背中に感じつつ、それを振り払うように魔法のアイテム屋の店内に
入っていく。
「あっ!ギゼーさんっ!!」
完全に、置いてかれるかたちになってしまった二人であった。
「………あっ!出てきた!」
ジュヴィアの提案で、店の外で待っていようと言う事になった二人は、ギゼーの姿
を認めると小走りに近づく。
「何を、買ったんです?」
「んっ?ああ、今度の宝探しに必要なものをな、ちょっと……」
ギゼーはジュヴィアの方をチラリと見遣ると、語尾を濁す。先程宿で起こった出来
事―彼女の魔法(魔力?)―を気にしている風だ。
「へぇ~、魔法の宝石ですか。綺麗ですね」
「だろっ♪とっても高価なんだぜぇ~これ。それぞれ一つ一つに魔法が詰まってい
て、色によって効果が違うんだ。これを投げると、その場に魔法が発生するんだ。何
時もお世話になっているアイテムの一つさ♪」
まるで、説明を愉しんでいるかのようにスラスラとギゼーの口から言葉が出てく
る。
リングはいちいちその言葉一つ一つに、相槌を打つ。まるで好奇心を満たしている
かのようだ。
「ふんふん。人間って、大変ですねー。態々[わざわざ]そんな物を使わなきゃ、魔法
が使えないなんて」
流石に世間知らずの少女だ。どうやら、魔法使いの存在を知らないらしい。ジュ
ヴィアの使う魔法(?)にも気付いていないようだ。
「まだ他にも買わなきゃいけない物があるんだ。付き合ってくれよ?」
半分強制的なその言葉をギゼーが口走った途端、背後の人込みで女の悲鳴が上がっ
た。それも、飛びっきりの美女の。ギゼーには、なぜかそういうことが判るのだ。
「……!?なんだっ!?」
思いっきり興味を惹かれたらしい。
悲鳴の上がった方へ、走っていくギゼー。
ジュヴィアとリングがその後に続く―。
PC:ギゼー、ジュヴィア、リング
NPC:セル
場所:ソフィニア“消えゆく灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――
宝を手に入れてどうするの?
宝を手に入れて何を願うの?
宝が、好き?
そんなに、好き?
貴方にとって、宝って何?
宝が貴方に与えるものって………いったい………。
朝―。
昨夜の喧々囂々たる有様とは打って変わって、静謐で清々しい朝である。
小鳥のさえずり、冷気を伴って張り詰めた空気、柔らかく降りそそぐ朝日。何もか
もが、パステルカラーに彩られている。その彩りの中を、誰よりも早く目覚めたギ
ゼーは、未だ夢の虜である同室の三人を起こさない様にゆっくりと、だが確実に旅支
度を整えていく。
(ったく!セルの奴、昨日ドサクサに紛れて俺の部屋で寝泊りしやがって!てめー
は、てめーの宿があんだろって!お陰で床に寝かされちまうしよう。………ま、どの
道、床か)
そう、心の中で呟きつつもチラリと半眼でジュヴィアとリングの方を見やるギ
ゼー。その面差しは、呆れ果てている風であった。
昨夜の一件で、ここは俺の部屋だと主張することも出来た。だが、それをやらな
かったのは後ろめたい部分があったのと、何処かに二人の少女を放っておけないとい
う感情が有ったからだ。
(やれやれ。二人の言う、少女嗜好ってのもあながち間違っていないのかもな。だけ
ど、困ってる奴を放って置くのが許せないってのも事実なんだよなぁ。何処かで、プ
ロに徹し切れていないのかもなぁ)
そんな事を考えながらも、手を休めなかったお陰であらかた旅支度は整った。後
は、宿の清算を済ませるだけだ。
「わりぃな。あんた等の分まで宿代、払っとくからよ。お先に失礼するぜ」
それ程大きな声を出したつもりは無かった。
だが、小さく纏めた荷物を背に扉を開けようとしたギゼーを呼び止める声に、一瞬
心臓が止まる感覚を味わう。
その声の主は、ジュヴィアだった。どうやら彼女は一晩中起きていたらしく、ギ
ゼーの一挙手一動足を窺っていたようだ。不信感を最大にして、その眼差しをギゼー
に向けている。やや、上目遣いで。
・・・・・
「何処へ行くつもりです?答えなさい」
心臓を鷲掴みにされる思いで、咄嗟に振り向く。いや、実際に鷲掴みにされたのか
もしれない。それ程、彼女の“言葉”は強力だった。顔に噴き出した脂汗を床に滴ら
せながら、考える。その間も、視線はジュヴィアから離さない。
(……一体全体、どうなってやがる!?……っく。……これは、……魔法!?…実際
に見たことは無いが……なんだってんだ…いったい…………)
苦しげに見えるギゼーをほくそえむ様に口の端を歪ませながら、ジュヴィアは再び
口を開く。
「何処へ行くつもりです?」
「いやぁ、ちょっとね。宿を出ようかと思って…」
脂汗はそのままに、笑顔の形に顔を歪ませながら答えるギゼー。何も、なす術無し
だ。
「そう。じゃあ、私達も一緒、と言うことですね?」
ジュヴィアにしてみれば、その言葉が口から発したこと自体不思議なことだった。
何故、この人と一緒にいたいのか?何故、何の為に、これ程までに人と関わってし
まったのか?自分は、人をこんなにも恋しがっていたのか?否。自分は、今まで一度
だって人を恋しいと思ったことは無かった。いや、寧ろその逆。人を、避けてすらい
た。それが、何故今頃になって、自ら進んで関わろうとしているのか?
ギゼーを見、次に未だ夢見心地なリングに視線を移すと、ジュヴィアの顔に笑みが
浮かび答えを導き出す。
―気紛れだ、こんなの。
自分は、寿命を全うするまで決して死ぬことは無いから。
唯の気紛れ。
そう考えると、何故か肩の力が抜けた。
「私達も一緒に、連れて行ってくれますね?」
不思議とその言葉が、ごく自然にジュヴィアの口をついて出た。
そのジュヴィアの変化を敏感に感じ取ったギゼーは、二つ返事で応じる。
「あ?ああ、分かった、分かった。連れて行くよ」
ごく自然な応答。ジュヴィアが肩の力を抜いたお陰で、初めて成立した会話。
こういうものもまた良いかな、とジュヴィアは思った。それは、初めて抱いた感情
で、だが不思議とごく自然に受け入れてしまった自分に、未だ気付いていないジュ
ヴィアであった。
「で?何処へ行くんです?ギゼーさん」
目覚めるなり、いきなり引き摺って来られたリングは、その事に不満も漏らさずに
ギゼーに質問する。当然、眼は期待と好奇心で光り輝いている。
ここは、ソフィニアの目抜き通り。数多の商店が軒を連ね、互いに競い合って商品
を売っている。同じ種類の商店もあれば相反する商店もあり、互いに客を取り合って
いる。
ギゼーはそんな言葉も聞こえないかのごとく、通りの両端に視線を走らせ、店先を
覗き込んでいく。まるで、何かを探して歩いているようだ。
「もう~、ギゼーさんってばぁ。無視しないでくださいよぅ」
リングは、そんな些細な事に対してはしっかりと不満を漏らすらしい。
不満を漏らしているリングの隣では、ジュヴィアが静かに歩いている。しかしその
眼は、ギゼーに対する疑念を隠すことなく彼の背中を凝視している。疑いは未だに晴
れていない様だ。
そんな視線を背中に感じつつ、それを振り払うように魔法のアイテム屋の店内に
入っていく。
「あっ!ギゼーさんっ!!」
完全に、置いてかれるかたちになってしまった二人であった。
「………あっ!出てきた!」
ジュヴィアの提案で、店の外で待っていようと言う事になった二人は、ギゼーの姿
を認めると小走りに近づく。
「何を、買ったんです?」
「んっ?ああ、今度の宝探しに必要なものをな、ちょっと……」
ギゼーはジュヴィアの方をチラリと見遣ると、語尾を濁す。先程宿で起こった出来
事―彼女の魔法(魔力?)―を気にしている風だ。
「へぇ~、魔法の宝石ですか。綺麗ですね」
「だろっ♪とっても高価なんだぜぇ~これ。それぞれ一つ一つに魔法が詰まってい
て、色によって効果が違うんだ。これを投げると、その場に魔法が発生するんだ。何
時もお世話になっているアイテムの一つさ♪」
まるで、説明を愉しんでいるかのようにスラスラとギゼーの口から言葉が出てく
る。
リングはいちいちその言葉一つ一つに、相槌を打つ。まるで好奇心を満たしている
かのようだ。
「ふんふん。人間って、大変ですねー。態々[わざわざ]そんな物を使わなきゃ、魔法
が使えないなんて」
流石に世間知らずの少女だ。どうやら、魔法使いの存在を知らないらしい。ジュ
ヴィアの使う魔法(?)にも気付いていないようだ。
「まだ他にも買わなきゃいけない物があるんだ。付き合ってくれよ?」
半分強制的なその言葉をギゼーが口走った途端、背後の人込みで女の悲鳴が上がっ
た。それも、飛びっきりの美女の。ギゼーには、なぜかそういうことが判るのだ。
「……!?なんだっ!?」
思いっきり興味を惹かれたらしい。
悲鳴の上がった方へ、走っていくギゼー。
ジュヴィアとリングがその後に続く―。
◆――――――――――――――――――――――――――――
PC :ギゼー・リング・ジュヴィア
NPC:女性、悪漢AOV
場所 :ソフィニア
◆――――――――――――――――――――――――――――
君を守るためなら君を殺したって良いんだよ?
全力疾走(本当にそうかは図りかねたが…)するギゼーを追いながらリングが
息を荒げて言った。
「はぁ、はぁ、ま、待ってくださいぃ~…お二人とも奇妙に速いですよぉ~」
すでに息が上がっているのか、スピードも今ひとつ出ていない。走るのに慣れて
いないのか――何しろ海底では地面を蹴って進む必要などないのだし。
「もたついてる訳にはいかねえ!絶世の美女がピンチだ!」
「――差し詰め貴方のお好きな美少女ですね」
「くどいぞジュヴィアちゃんっ!」
だが、苦しそうなリングとは裏腹に余裕で掛け合いをするギゼーとジュヴィア。
そうこうしている内に目的とするべき場所、つまり悲鳴を上げたギゼー曰くの
「美(少)女」がいる場所にたどり着く。リングは肩で息をしながら追い縋った。
「はああああ…待って~…」
漸く追いついたリングは、見たことのあるような光景を目にした。即ち――
「オイこらぁ、ねえちゃん!わかってんのかコノォ?」
「アンタのオヤジがおれたちに何したか知らねぇたぁ言わせねえぞ!」
女性にからむ悪漢3人、である。この前と違うのは「女性」の方がフリフリの
服を着ておらず、脛毛・髭も生えていないということだった。
「これはまた…解り易い図ですね」
ジュヴィアが皮肉混じりに言った。実際、ごつくていかにもな連中となかなかの
美女…と言う取り合わせであれば、誰でもどちらに非があるかという問題について
同じ答えをはじき出すに違いない。
「アンタのオヤジはなぁ!おれらに依頼をしときながら、必要経費すら払わなかっ
たんだぜぇ!?」
悪漢A(頭が尖っていたのでなんとなくそう名づけた)が担いだ棍棒をずん、と美
女の足元に落とす。ムゴ、と地面にめり込む音がした。
「ヒッ…!」
美女が息を飲む。
「払われてませんと言ったらなあ、あのくそオヤジ、あんたらに払う金などないと
こう抜かしたんだぞ!?」
悪漢O(ハゲで太っていたのでなんとなくそう名づけた)が美女の腕を掴んで引い
た。
「こうなったらてめえを売り飛ばしてやらぁ!心配するこたねえ、品のいい店に売っ
てやるからよ!」
「や、やめてください…!」
「…訂正します。解り易いを通り越して何かの寸劇ですね」
ひんやりとジュヴィアが言い放つ。だが、ギゼーの心境はひんやりとはしていない
ようだった。
「てめえらっ!」
そう叫ぶなり悪漢と美女の間に割り込んだ。リングもつられて飛び出す。ジュヴィア
はつられなかったが、こう呟いた。
「どうして面倒事に進んで関わるんでしょうね…」
だが、そんな呟きをよそにギゼーは怒鳴った。
「お前等の言い草はおかしいじゃねえか!文句があるならそのオヤジに言うべきだ
ろ!彼女は関係ないぞ!」
それが建前や上辺の伊達からくるものでないことは、怒りに燃える鳶色の瞳が示
していた。だが、如何せん分が悪すぎる。それはまさに火を見るより明らかだった。
「うるせえ!セコンドは黙ってろこのチビが!」
悪漢V(見事なまでに逆三角体型なのでなんとなくそう名づけた)がそう凄みを利
かせた、が――
「今なんつった!!!!」
額に血管が卍型に浮かび上がりそうな迫力で、ギゼーが怒鳴り返した。そう、彼
にとってチビとは――禁句なのだ。
「今何つったっつってんだよ!!!!」
あまりの迫力に悪漢AOVはたじろいだように見えた(気のせいかもしれないが)。
だが…
「ギゼーさん、武器も持っていないのにどうするんでしょうね…」
喧嘩を買うにあたって、重要なポイントがギゼーにはない。ましてや相手は棍棒
を持った男に大剣を持った男、武器こそないがどこからどう見ても格闘家に見える
男のトリオである。リングの「聖書」を使えばどうにかなるかもしれないが、こん
な道の往来で彼女の腹が伸びるのを見せてはどうなることか知れたものではない。
「うるせー!チビにチビっつって何が悪い!つべこべ抜かしてっとブッ殺すぞ!!」
悪漢トリオはそれぞれ身構えた。ギゼーの背後で美女が身を強張らせる。リング
はと言えば、今ひとつ状況を把握していない様子だ。まあ、無理もないと言えたが。
「…ああ…不条理の連続です…」
ジュヴィアの発した呟きは、雑踏に紛れて儚くなった。
PC :ギゼー・リング・ジュヴィア
NPC:女性、悪漢AOV
場所 :ソフィニア
◆――――――――――――――――――――――――――――
君を守るためなら君を殺したって良いんだよ?
全力疾走(本当にそうかは図りかねたが…)するギゼーを追いながらリングが
息を荒げて言った。
「はぁ、はぁ、ま、待ってくださいぃ~…お二人とも奇妙に速いですよぉ~」
すでに息が上がっているのか、スピードも今ひとつ出ていない。走るのに慣れて
いないのか――何しろ海底では地面を蹴って進む必要などないのだし。
「もたついてる訳にはいかねえ!絶世の美女がピンチだ!」
「――差し詰め貴方のお好きな美少女ですね」
「くどいぞジュヴィアちゃんっ!」
だが、苦しそうなリングとは裏腹に余裕で掛け合いをするギゼーとジュヴィア。
そうこうしている内に目的とするべき場所、つまり悲鳴を上げたギゼー曰くの
「美(少)女」がいる場所にたどり着く。リングは肩で息をしながら追い縋った。
「はああああ…待って~…」
漸く追いついたリングは、見たことのあるような光景を目にした。即ち――
「オイこらぁ、ねえちゃん!わかってんのかコノォ?」
「アンタのオヤジがおれたちに何したか知らねぇたぁ言わせねえぞ!」
女性にからむ悪漢3人、である。この前と違うのは「女性」の方がフリフリの
服を着ておらず、脛毛・髭も生えていないということだった。
「これはまた…解り易い図ですね」
ジュヴィアが皮肉混じりに言った。実際、ごつくていかにもな連中となかなかの
美女…と言う取り合わせであれば、誰でもどちらに非があるかという問題について
同じ答えをはじき出すに違いない。
「アンタのオヤジはなぁ!おれらに依頼をしときながら、必要経費すら払わなかっ
たんだぜぇ!?」
悪漢A(頭が尖っていたのでなんとなくそう名づけた)が担いだ棍棒をずん、と美
女の足元に落とす。ムゴ、と地面にめり込む音がした。
「ヒッ…!」
美女が息を飲む。
「払われてませんと言ったらなあ、あのくそオヤジ、あんたらに払う金などないと
こう抜かしたんだぞ!?」
悪漢O(ハゲで太っていたのでなんとなくそう名づけた)が美女の腕を掴んで引い
た。
「こうなったらてめえを売り飛ばしてやらぁ!心配するこたねえ、品のいい店に売っ
てやるからよ!」
「や、やめてください…!」
「…訂正します。解り易いを通り越して何かの寸劇ですね」
ひんやりとジュヴィアが言い放つ。だが、ギゼーの心境はひんやりとはしていない
ようだった。
「てめえらっ!」
そう叫ぶなり悪漢と美女の間に割り込んだ。リングもつられて飛び出す。ジュヴィア
はつられなかったが、こう呟いた。
「どうして面倒事に進んで関わるんでしょうね…」
だが、そんな呟きをよそにギゼーは怒鳴った。
「お前等の言い草はおかしいじゃねえか!文句があるならそのオヤジに言うべきだ
ろ!彼女は関係ないぞ!」
それが建前や上辺の伊達からくるものでないことは、怒りに燃える鳶色の瞳が示
していた。だが、如何せん分が悪すぎる。それはまさに火を見るより明らかだった。
「うるせえ!セコンドは黙ってろこのチビが!」
悪漢V(見事なまでに逆三角体型なのでなんとなくそう名づけた)がそう凄みを利
かせた、が――
「今なんつった!!!!」
額に血管が卍型に浮かび上がりそうな迫力で、ギゼーが怒鳴り返した。そう、彼
にとってチビとは――禁句なのだ。
「今何つったっつってんだよ!!!!」
あまりの迫力に悪漢AOVはたじろいだように見えた(気のせいかもしれないが)。
だが…
「ギゼーさん、武器も持っていないのにどうするんでしょうね…」
喧嘩を買うにあたって、重要なポイントがギゼーにはない。ましてや相手は棍棒
を持った男に大剣を持った男、武器こそないがどこからどう見ても格闘家に見える
男のトリオである。リングの「聖書」を使えばどうにかなるかもしれないが、こん
な道の往来で彼女の腹が伸びるのを見せてはどうなることか知れたものではない。
「うるせー!チビにチビっつって何が悪い!つべこべ抜かしてっとブッ殺すぞ!!」
悪漢トリオはそれぞれ身構えた。ギゼーの背後で美女が身を強張らせる。リング
はと言えば、今ひとつ状況を把握していない様子だ。まあ、無理もないと言えたが。
「…ああ…不条理の連続です…」
ジュヴィアの発した呟きは、雑踏に紛れて儚くなった。
◆――――――――――――――――――――――――――――
メンバー ジュヴィア・ギゼー・リング
場所 ソフィニアの街角
NPC 美女と悪漢(O,A,V)
◆――――――――――――――――――――――――――――
-うみの そこに にんぎょの おしろが ありました。
おしろでは うつくしい にんぎょが くらして いました-
「はい、じゃあ後はよろしくなっ」
そういって、ぽんとギゼーがリングの肩をたたいた。
「はい?」
当然、リングは訳がわからないという顔をする。
「あの、何を・・・」
「何って」
ギゼーはさも当然そうな顔をする。
「見てわかんねぇかなぁ?俺の手には武器がないな?」
「ええ」
「そして君は酒に酔ったとき、水を使って俺の手を捕まえた。覚えてるか?」
「ええ・・・、ぼんやりとなら」
「じゃあ、答えはカンタン。君がその力と、聖書、だっけ?それを使ってあの
悪漢三人をやっつけるんだ。俺は武器がない。よって君が戦う。カンタンな事
だろ?」
「はあ・・・」
何の悪意もない笑みで、ニコニコと笑うギゼー。リングはぽりぽりと頭を書
いた。
「では、ギゼーさん。水を出してください」
「えっ?」
ギゼーの顔に冷や汗が出た。たしかに、今までの話の流れから言うと、水が
必要なのはあきらかで、言い出したからにはギゼーは水を所持してなければな
らない。しかし、水のことなどギゼーは全く考えてはいなかった。・・・何し
ろ、今とっさに思いついて言い出したことなのだから。
「あ、あと、今、聖書はつかえませんよ?」
リングがさらに追い討ちをかける。
「聖書の攻撃は間が長いですし、攻撃が広範囲に及ぶんです。私、まわりの建
物を雷撃で攻撃して弁償するお金など所持していませんし、無関係な人々に危
害を加えたくありません」
「あ・・う・・・」
何が起こってもリングが何とかしてくれると思っていたギゼーにとって、こ
れは絶体絶命のピンチだった。視線をふらふらと動かし、足取りもおぼつかな
い。
「よぉ、兄ちゃん。何だ?俺たちに文句があるんじゃなかったのかい?」
情況が好転したのを察知し、悪役0が強気になってギゼーに迫る。ギゼー
は、たじたじと後ろに下がった。
「う・・・」
「たしか、チビって言われるのが気に食わないんだよな・・・?」
悪漢Aのセリフとともに、三人がギゼーに詰め寄る。
(どうするよ、俺!なんかこの図はカッコ悪いぞ・・・。ってゆーか、ピンチ
だよ、俺!)
今や三人はギゼーの目と鼻の先で、ぬうんとギゼーを見下ろしている。リン
グはといえば、この状況に何の危機感も覚えないらしく、(前に一度自分が体
験したくせに)ぽやっと四人を観察していた。
(何だか、えっと・・・、これってピンチなんでしょうか・・・?)
ギゼーがピンチにあせり、リングがぽやっとしていた、そのとき、
「はぁ・・・」
群衆の中からジュヴィアが、いかにもしんどそうな顔をして現れた。
「全く・・・、いくら馬鹿のしたことでも見ていられないですよ・・・」
(ジュヴィア「ちゃん」「さん」!)
そのとき、ギゼーの目には斧を背負うジュヴィアが天使に見えた。
(ジュヴィアちゃんっ、きっと、その大きな斧でずばっと男どもを片付けてく
れるに違いないっ!)
しかし、自分からケンカを仕掛けた割に、なかなか情けない考え方である。
「あ?なんだテメェは?」
悪漢Vがジュヴィアをギロッとにらむ。しかし、そんな男にたじろぐことも
なく。ジュヴィアは軽蔑したような視線を悪漢Vに向けた。
「たしかにこの青年は向こう見ずの馬鹿ですが、あなたたちのしていることも
相当幼稚ですよ。と、いうか芸がありませんね。あなたたち、悪者の王道パタ
ーンにはまっている自覚はないんですか?」
「う・・・」
一瞬男たちは言葉が詰まった。が、
「何だよテメェは!いきなり出てきてうるせぇんだよ!!」
こうして少女にむきになって怒る様子からして、どうやら三人にもそれなり
の自覚はあるようだ。
「それが何だってんだ、生意気な口きいたテメェからつぶすぞ!」
「はぁ・・・」
ジュヴィアの表情から、全くしょうがないことに巻き込まれた・・・と思っ
ていることがありありと解った。
「リングさん」
「はいっ!」
ジュヴィアはしょうもないという表情を崩さないまま、男たちを見据えてい
った。
「・・・二秒で片付けますから」
「ええ!?」
リングが訳がわからないという表情を浮かべている間に、ジュヴィアはその
大きな斧をひゅんと振り下ろした。
「お強いですね、ジュヴィアさん・・・」
ギゼーといえば、ぽかんとして目の前に倒れている男たちを見つめていた。
三人の男が、ジュヴィアの斧の一振りで倒れてしまった。しかも、
(俺・・・、見えなかったぜ、ジュヴィアちゃんが斧を振った手・・・)
リングはといえば、純粋にジュヴィアの腕に感心している。
「すごいですジュヴィアさん、斧の後ろを使って、すばやくみねうちをくらわ
せましたね!すばやい動きです!」
(ええっ!こいつ見えてたのかよ!)
さすが人間じゃないヤツだけあって、侮れないな・・・、と思うギゼーだっ
た。そんな二人を、ジュヴィアは冷たく見つめて言う。
「この程度ならば、誰でもできます。あなたたちこそ、その程度の腕と対応の
仕方でよく、今まで旅が続けられましたね」
「う・・・、俺はっ、基本的に戦いを好まない性質なんだよっ!」
「・・・おかしいですね。あなたから、この喧嘩に割って入ったように見えま
したが?」
「あのぅ・・・」
そんな二人の会話に、助けられた女性が遠慮がちに割って入った。
「あの、助けていただいたお礼を言いたいのですが・・・」
そのおろおろとした様子は、そこはかとなくリングに似ていた・・・。
メンバー ジュヴィア・ギゼー・リング
場所 ソフィニアの街角
NPC 美女と悪漢(O,A,V)
◆――――――――――――――――――――――――――――
-うみの そこに にんぎょの おしろが ありました。
おしろでは うつくしい にんぎょが くらして いました-
「はい、じゃあ後はよろしくなっ」
そういって、ぽんとギゼーがリングの肩をたたいた。
「はい?」
当然、リングは訳がわからないという顔をする。
「あの、何を・・・」
「何って」
ギゼーはさも当然そうな顔をする。
「見てわかんねぇかなぁ?俺の手には武器がないな?」
「ええ」
「そして君は酒に酔ったとき、水を使って俺の手を捕まえた。覚えてるか?」
「ええ・・・、ぼんやりとなら」
「じゃあ、答えはカンタン。君がその力と、聖書、だっけ?それを使ってあの
悪漢三人をやっつけるんだ。俺は武器がない。よって君が戦う。カンタンな事
だろ?」
「はあ・・・」
何の悪意もない笑みで、ニコニコと笑うギゼー。リングはぽりぽりと頭を書
いた。
「では、ギゼーさん。水を出してください」
「えっ?」
ギゼーの顔に冷や汗が出た。たしかに、今までの話の流れから言うと、水が
必要なのはあきらかで、言い出したからにはギゼーは水を所持してなければな
らない。しかし、水のことなどギゼーは全く考えてはいなかった。・・・何し
ろ、今とっさに思いついて言い出したことなのだから。
「あ、あと、今、聖書はつかえませんよ?」
リングがさらに追い討ちをかける。
「聖書の攻撃は間が長いですし、攻撃が広範囲に及ぶんです。私、まわりの建
物を雷撃で攻撃して弁償するお金など所持していませんし、無関係な人々に危
害を加えたくありません」
「あ・・う・・・」
何が起こってもリングが何とかしてくれると思っていたギゼーにとって、こ
れは絶体絶命のピンチだった。視線をふらふらと動かし、足取りもおぼつかな
い。
「よぉ、兄ちゃん。何だ?俺たちに文句があるんじゃなかったのかい?」
情況が好転したのを察知し、悪役0が強気になってギゼーに迫る。ギゼー
は、たじたじと後ろに下がった。
「う・・・」
「たしか、チビって言われるのが気に食わないんだよな・・・?」
悪漢Aのセリフとともに、三人がギゼーに詰め寄る。
(どうするよ、俺!なんかこの図はカッコ悪いぞ・・・。ってゆーか、ピンチ
だよ、俺!)
今や三人はギゼーの目と鼻の先で、ぬうんとギゼーを見下ろしている。リン
グはといえば、この状況に何の危機感も覚えないらしく、(前に一度自分が体
験したくせに)ぽやっと四人を観察していた。
(何だか、えっと・・・、これってピンチなんでしょうか・・・?)
ギゼーがピンチにあせり、リングがぽやっとしていた、そのとき、
「はぁ・・・」
群衆の中からジュヴィアが、いかにもしんどそうな顔をして現れた。
「全く・・・、いくら馬鹿のしたことでも見ていられないですよ・・・」
(ジュヴィア「ちゃん」「さん」!)
そのとき、ギゼーの目には斧を背負うジュヴィアが天使に見えた。
(ジュヴィアちゃんっ、きっと、その大きな斧でずばっと男どもを片付けてく
れるに違いないっ!)
しかし、自分からケンカを仕掛けた割に、なかなか情けない考え方である。
「あ?なんだテメェは?」
悪漢Vがジュヴィアをギロッとにらむ。しかし、そんな男にたじろぐことも
なく。ジュヴィアは軽蔑したような視線を悪漢Vに向けた。
「たしかにこの青年は向こう見ずの馬鹿ですが、あなたたちのしていることも
相当幼稚ですよ。と、いうか芸がありませんね。あなたたち、悪者の王道パタ
ーンにはまっている自覚はないんですか?」
「う・・・」
一瞬男たちは言葉が詰まった。が、
「何だよテメェは!いきなり出てきてうるせぇんだよ!!」
こうして少女にむきになって怒る様子からして、どうやら三人にもそれなり
の自覚はあるようだ。
「それが何だってんだ、生意気な口きいたテメェからつぶすぞ!」
「はぁ・・・」
ジュヴィアの表情から、全くしょうがないことに巻き込まれた・・・と思っ
ていることがありありと解った。
「リングさん」
「はいっ!」
ジュヴィアはしょうもないという表情を崩さないまま、男たちを見据えてい
った。
「・・・二秒で片付けますから」
「ええ!?」
リングが訳がわからないという表情を浮かべている間に、ジュヴィアはその
大きな斧をひゅんと振り下ろした。
「お強いですね、ジュヴィアさん・・・」
ギゼーといえば、ぽかんとして目の前に倒れている男たちを見つめていた。
三人の男が、ジュヴィアの斧の一振りで倒れてしまった。しかも、
(俺・・・、見えなかったぜ、ジュヴィアちゃんが斧を振った手・・・)
リングはといえば、純粋にジュヴィアの腕に感心している。
「すごいですジュヴィアさん、斧の後ろを使って、すばやくみねうちをくらわ
せましたね!すばやい動きです!」
(ええっ!こいつ見えてたのかよ!)
さすが人間じゃないヤツだけあって、侮れないな・・・、と思うギゼーだっ
た。そんな二人を、ジュヴィアは冷たく見つめて言う。
「この程度ならば、誰でもできます。あなたたちこそ、その程度の腕と対応の
仕方でよく、今まで旅が続けられましたね」
「う・・・、俺はっ、基本的に戦いを好まない性質なんだよっ!」
「・・・おかしいですね。あなたから、この喧嘩に割って入ったように見えま
したが?」
「あのぅ・・・」
そんな二人の会話に、助けられた女性が遠慮がちに割って入った。
「あの、助けていただいたお礼を言いたいのですが・・・」
そのおろおろとした様子は、そこはかとなくリングに似ていた・・・。