◆――――――――――――――――――――――――――――
PC:ギゼー、ジュヴィア、リング
NPC:セル
場所:ソフィニア“消えゆく灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――
宝を手に入れてどうするの?
宝を手に入れて何を願うの?
宝が、好き?
そんなに、好き?
貴方にとって、宝って何?
宝が貴方に与えるものって………いったい………。
朝―。
昨夜の喧々囂々たる有様とは打って変わって、静謐で清々しい朝である。
小鳥のさえずり、冷気を伴って張り詰めた空気、柔らかく降りそそぐ朝日。何もか
もが、パステルカラーに彩られている。その彩りの中を、誰よりも早く目覚めたギ
ゼーは、未だ夢の虜である同室の三人を起こさない様にゆっくりと、だが確実に旅支
度を整えていく。
(ったく!セルの奴、昨日ドサクサに紛れて俺の部屋で寝泊りしやがって!てめー
は、てめーの宿があんだろって!お陰で床に寝かされちまうしよう。………ま、どの
道、床か)
そう、心の中で呟きつつもチラリと半眼でジュヴィアとリングの方を見やるギ
ゼー。その面差しは、呆れ果てている風であった。
昨夜の一件で、ここは俺の部屋だと主張することも出来た。だが、それをやらな
かったのは後ろめたい部分があったのと、何処かに二人の少女を放っておけないとい
う感情が有ったからだ。
(やれやれ。二人の言う、少女嗜好ってのもあながち間違っていないのかもな。だけ
ど、困ってる奴を放って置くのが許せないってのも事実なんだよなぁ。何処かで、プ
ロに徹し切れていないのかもなぁ)
そんな事を考えながらも、手を休めなかったお陰であらかた旅支度は整った。後
は、宿の清算を済ませるだけだ。
「わりぃな。あんた等の分まで宿代、払っとくからよ。お先に失礼するぜ」
それ程大きな声を出したつもりは無かった。
だが、小さく纏めた荷物を背に扉を開けようとしたギゼーを呼び止める声に、一瞬
心臓が止まる感覚を味わう。
その声の主は、ジュヴィアだった。どうやら彼女は一晩中起きていたらしく、ギ
ゼーの一挙手一動足を窺っていたようだ。不信感を最大にして、その眼差しをギゼー
に向けている。やや、上目遣いで。
・・・・・
「何処へ行くつもりです?答えなさい」
心臓を鷲掴みにされる思いで、咄嗟に振り向く。いや、実際に鷲掴みにされたのか
もしれない。それ程、彼女の“言葉”は強力だった。顔に噴き出した脂汗を床に滴ら
せながら、考える。その間も、視線はジュヴィアから離さない。
(……一体全体、どうなってやがる!?……っく。……これは、……魔法!?…実際
に見たことは無いが……なんだってんだ…いったい…………)
苦しげに見えるギゼーをほくそえむ様に口の端を歪ませながら、ジュヴィアは再び
口を開く。
「何処へ行くつもりです?」
「いやぁ、ちょっとね。宿を出ようかと思って…」
脂汗はそのままに、笑顔の形に顔を歪ませながら答えるギゼー。何も、なす術無し
だ。
「そう。じゃあ、私達も一緒、と言うことですね?」
ジュヴィアにしてみれば、その言葉が口から発したこと自体不思議なことだった。
何故、この人と一緒にいたいのか?何故、何の為に、これ程までに人と関わってし
まったのか?自分は、人をこんなにも恋しがっていたのか?否。自分は、今まで一度
だって人を恋しいと思ったことは無かった。いや、寧ろその逆。人を、避けてすらい
た。それが、何故今頃になって、自ら進んで関わろうとしているのか?
ギゼーを見、次に未だ夢見心地なリングに視線を移すと、ジュヴィアの顔に笑みが
浮かび答えを導き出す。
―気紛れだ、こんなの。
自分は、寿命を全うするまで決して死ぬことは無いから。
唯の気紛れ。
そう考えると、何故か肩の力が抜けた。
「私達も一緒に、連れて行ってくれますね?」
不思議とその言葉が、ごく自然にジュヴィアの口をついて出た。
そのジュヴィアの変化を敏感に感じ取ったギゼーは、二つ返事で応じる。
「あ?ああ、分かった、分かった。連れて行くよ」
ごく自然な応答。ジュヴィアが肩の力を抜いたお陰で、初めて成立した会話。
こういうものもまた良いかな、とジュヴィアは思った。それは、初めて抱いた感情
で、だが不思議とごく自然に受け入れてしまった自分に、未だ気付いていないジュ
ヴィアであった。
「で?何処へ行くんです?ギゼーさん」
目覚めるなり、いきなり引き摺って来られたリングは、その事に不満も漏らさずに
ギゼーに質問する。当然、眼は期待と好奇心で光り輝いている。
ここは、ソフィニアの目抜き通り。数多の商店が軒を連ね、互いに競い合って商品
を売っている。同じ種類の商店もあれば相反する商店もあり、互いに客を取り合って
いる。
ギゼーはそんな言葉も聞こえないかのごとく、通りの両端に視線を走らせ、店先を
覗き込んでいく。まるで、何かを探して歩いているようだ。
「もう~、ギゼーさんってばぁ。無視しないでくださいよぅ」
リングは、そんな些細な事に対してはしっかりと不満を漏らすらしい。
不満を漏らしているリングの隣では、ジュヴィアが静かに歩いている。しかしその
眼は、ギゼーに対する疑念を隠すことなく彼の背中を凝視している。疑いは未だに晴
れていない様だ。
そんな視線を背中に感じつつ、それを振り払うように魔法のアイテム屋の店内に
入っていく。
「あっ!ギゼーさんっ!!」
完全に、置いてかれるかたちになってしまった二人であった。
「………あっ!出てきた!」
ジュヴィアの提案で、店の外で待っていようと言う事になった二人は、ギゼーの姿
を認めると小走りに近づく。
「何を、買ったんです?」
「んっ?ああ、今度の宝探しに必要なものをな、ちょっと……」
ギゼーはジュヴィアの方をチラリと見遣ると、語尾を濁す。先程宿で起こった出来
事―彼女の魔法(魔力?)―を気にしている風だ。
「へぇ~、魔法の宝石ですか。綺麗ですね」
「だろっ♪とっても高価なんだぜぇ~これ。それぞれ一つ一つに魔法が詰まってい
て、色によって効果が違うんだ。これを投げると、その場に魔法が発生するんだ。何
時もお世話になっているアイテムの一つさ♪」
まるで、説明を愉しんでいるかのようにスラスラとギゼーの口から言葉が出てく
る。
リングはいちいちその言葉一つ一つに、相槌を打つ。まるで好奇心を満たしている
かのようだ。
「ふんふん。人間って、大変ですねー。態々[わざわざ]そんな物を使わなきゃ、魔法
が使えないなんて」
流石に世間知らずの少女だ。どうやら、魔法使いの存在を知らないらしい。ジュ
ヴィアの使う魔法(?)にも気付いていないようだ。
「まだ他にも買わなきゃいけない物があるんだ。付き合ってくれよ?」
半分強制的なその言葉をギゼーが口走った途端、背後の人込みで女の悲鳴が上がっ
た。それも、飛びっきりの美女の。ギゼーには、なぜかそういうことが判るのだ。
「……!?なんだっ!?」
思いっきり興味を惹かれたらしい。
悲鳴の上がった方へ、走っていくギゼー。
ジュヴィアとリングがその後に続く―。
PC:ギゼー、ジュヴィア、リング
NPC:セル
場所:ソフィニア“消えゆく灯火”亭
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宝を手に入れてどうするの?
宝を手に入れて何を願うの?
宝が、好き?
そんなに、好き?
貴方にとって、宝って何?
宝が貴方に与えるものって………いったい………。
朝―。
昨夜の喧々囂々たる有様とは打って変わって、静謐で清々しい朝である。
小鳥のさえずり、冷気を伴って張り詰めた空気、柔らかく降りそそぐ朝日。何もか
もが、パステルカラーに彩られている。その彩りの中を、誰よりも早く目覚めたギ
ゼーは、未だ夢の虜である同室の三人を起こさない様にゆっくりと、だが確実に旅支
度を整えていく。
(ったく!セルの奴、昨日ドサクサに紛れて俺の部屋で寝泊りしやがって!てめー
は、てめーの宿があんだろって!お陰で床に寝かされちまうしよう。………ま、どの
道、床か)
そう、心の中で呟きつつもチラリと半眼でジュヴィアとリングの方を見やるギ
ゼー。その面差しは、呆れ果てている風であった。
昨夜の一件で、ここは俺の部屋だと主張することも出来た。だが、それをやらな
かったのは後ろめたい部分があったのと、何処かに二人の少女を放っておけないとい
う感情が有ったからだ。
(やれやれ。二人の言う、少女嗜好ってのもあながち間違っていないのかもな。だけ
ど、困ってる奴を放って置くのが許せないってのも事実なんだよなぁ。何処かで、プ
ロに徹し切れていないのかもなぁ)
そんな事を考えながらも、手を休めなかったお陰であらかた旅支度は整った。後
は、宿の清算を済ませるだけだ。
「わりぃな。あんた等の分まで宿代、払っとくからよ。お先に失礼するぜ」
それ程大きな声を出したつもりは無かった。
だが、小さく纏めた荷物を背に扉を開けようとしたギゼーを呼び止める声に、一瞬
心臓が止まる感覚を味わう。
その声の主は、ジュヴィアだった。どうやら彼女は一晩中起きていたらしく、ギ
ゼーの一挙手一動足を窺っていたようだ。不信感を最大にして、その眼差しをギゼー
に向けている。やや、上目遣いで。
・・・・・
「何処へ行くつもりです?答えなさい」
心臓を鷲掴みにされる思いで、咄嗟に振り向く。いや、実際に鷲掴みにされたのか
もしれない。それ程、彼女の“言葉”は強力だった。顔に噴き出した脂汗を床に滴ら
せながら、考える。その間も、視線はジュヴィアから離さない。
(……一体全体、どうなってやがる!?……っく。……これは、……魔法!?…実際
に見たことは無いが……なんだってんだ…いったい…………)
苦しげに見えるギゼーをほくそえむ様に口の端を歪ませながら、ジュヴィアは再び
口を開く。
「何処へ行くつもりです?」
「いやぁ、ちょっとね。宿を出ようかと思って…」
脂汗はそのままに、笑顔の形に顔を歪ませながら答えるギゼー。何も、なす術無し
だ。
「そう。じゃあ、私達も一緒、と言うことですね?」
ジュヴィアにしてみれば、その言葉が口から発したこと自体不思議なことだった。
何故、この人と一緒にいたいのか?何故、何の為に、これ程までに人と関わってし
まったのか?自分は、人をこんなにも恋しがっていたのか?否。自分は、今まで一度
だって人を恋しいと思ったことは無かった。いや、寧ろその逆。人を、避けてすらい
た。それが、何故今頃になって、自ら進んで関わろうとしているのか?
ギゼーを見、次に未だ夢見心地なリングに視線を移すと、ジュヴィアの顔に笑みが
浮かび答えを導き出す。
―気紛れだ、こんなの。
自分は、寿命を全うするまで決して死ぬことは無いから。
唯の気紛れ。
そう考えると、何故か肩の力が抜けた。
「私達も一緒に、連れて行ってくれますね?」
不思議とその言葉が、ごく自然にジュヴィアの口をついて出た。
そのジュヴィアの変化を敏感に感じ取ったギゼーは、二つ返事で応じる。
「あ?ああ、分かった、分かった。連れて行くよ」
ごく自然な応答。ジュヴィアが肩の力を抜いたお陰で、初めて成立した会話。
こういうものもまた良いかな、とジュヴィアは思った。それは、初めて抱いた感情
で、だが不思議とごく自然に受け入れてしまった自分に、未だ気付いていないジュ
ヴィアであった。
「で?何処へ行くんです?ギゼーさん」
目覚めるなり、いきなり引き摺って来られたリングは、その事に不満も漏らさずに
ギゼーに質問する。当然、眼は期待と好奇心で光り輝いている。
ここは、ソフィニアの目抜き通り。数多の商店が軒を連ね、互いに競い合って商品
を売っている。同じ種類の商店もあれば相反する商店もあり、互いに客を取り合って
いる。
ギゼーはそんな言葉も聞こえないかのごとく、通りの両端に視線を走らせ、店先を
覗き込んでいく。まるで、何かを探して歩いているようだ。
「もう~、ギゼーさんってばぁ。無視しないでくださいよぅ」
リングは、そんな些細な事に対してはしっかりと不満を漏らすらしい。
不満を漏らしているリングの隣では、ジュヴィアが静かに歩いている。しかしその
眼は、ギゼーに対する疑念を隠すことなく彼の背中を凝視している。疑いは未だに晴
れていない様だ。
そんな視線を背中に感じつつ、それを振り払うように魔法のアイテム屋の店内に
入っていく。
「あっ!ギゼーさんっ!!」
完全に、置いてかれるかたちになってしまった二人であった。
「………あっ!出てきた!」
ジュヴィアの提案で、店の外で待っていようと言う事になった二人は、ギゼーの姿
を認めると小走りに近づく。
「何を、買ったんです?」
「んっ?ああ、今度の宝探しに必要なものをな、ちょっと……」
ギゼーはジュヴィアの方をチラリと見遣ると、語尾を濁す。先程宿で起こった出来
事―彼女の魔法(魔力?)―を気にしている風だ。
「へぇ~、魔法の宝石ですか。綺麗ですね」
「だろっ♪とっても高価なんだぜぇ~これ。それぞれ一つ一つに魔法が詰まってい
て、色によって効果が違うんだ。これを投げると、その場に魔法が発生するんだ。何
時もお世話になっているアイテムの一つさ♪」
まるで、説明を愉しんでいるかのようにスラスラとギゼーの口から言葉が出てく
る。
リングはいちいちその言葉一つ一つに、相槌を打つ。まるで好奇心を満たしている
かのようだ。
「ふんふん。人間って、大変ですねー。態々[わざわざ]そんな物を使わなきゃ、魔法
が使えないなんて」
流石に世間知らずの少女だ。どうやら、魔法使いの存在を知らないらしい。ジュ
ヴィアの使う魔法(?)にも気付いていないようだ。
「まだ他にも買わなきゃいけない物があるんだ。付き合ってくれよ?」
半分強制的なその言葉をギゼーが口走った途端、背後の人込みで女の悲鳴が上がっ
た。それも、飛びっきりの美女の。ギゼーには、なぜかそういうことが判るのだ。
「……!?なんだっ!?」
思いっきり興味を惹かれたらしい。
悲鳴の上がった方へ、走っていくギゼー。
ジュヴィアとリングがその後に続く―。
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