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2024/11/20 18:30 |
8.プロローグvor.5/リング(果南)
◆――――――――――――――――――――――――――――
場所 とある街  
メンバー リング  
NPC フリフリスカートの女性(?)と男二人
◆――――――――――――――――――――――――――――

「ふう・・・」
雷に打たれ黒焦げになって、慌てふためいて逃げていく二人を見ながら、リングは安堵のため息をついた。
(あの二人、いい人間とは言い切れませんでしたが、「聖書」を使ってしまい、悪いことをしましたね・・・)
聖書、とはリングの体から出てきた本のことである。本の魔力で悪い人間に「天罰」を与えることを目的としたアイテムだ。リングが聖書を使い終わると、聖書はソラマメぐらいに縮む。リングはそれを指でつまむと、ぱくっと飲み込んだ。これで聖書がまた体から出せるようになる。
「あの・・・」
物陰で一部始終を覗いていたフリフリスカートの女性がおずおずとリングに声をかけた。
「助けていただいてありがとうございます」
「いえ、そんなことよりもあなたが無事でよかったです」
振り向いて女性の顔を見たリングの表情が驚いた顔になった。続いて、好奇心で表情がぱあっと輝く。
「うわあ、私初めて知りました!」
リングはきわめて無邪気な笑みを浮かべて言う。
「女の方にも、「髭」って生えるんですね」
「おほほ、いやだわ、少し剃らないでいたらもう生えちゃって」
そういって女性は口元を押さえて笑う。そのスカートから覗く足には脛毛の存在も垣間見える。
「ザンネンねー、あなたが男だったら私の店でうんとサービスしてあげるのにぃ」
「そうなんですか、なら私、男の姿のほうがよかったでしょうか?」
「え?」
「あ・・、何でもないです」
リングはあわてて手をぶんぶんと振ると、すくっと立ち上がった。
「さて、私もう行かなければ」
「え、もう行っちゃうのぉ?」
名残惜しそうに言う、オカマの方にリングは笑顔で言った。
「ええ、私行かなければならないんです。ソフィニアに」

「ふぁー、ここがソフィニアですか・・・」
リングにとって地上に出て初めての大都市、である。リングは田舎者がよくするようにきょろきょろと街の中を見渡した。たくさんの人間、本の中でしか見たことがないアイテムが売っている店。見とれているうちに本来の目的、「本の秘密を探る」ということをうっかり忘れてしまいそうになる。
(まずは情報を集めなければいけません、情報を集める場といえば)
リングの頭にチーンという一昔前の効果音が鳴った。
「ズバリ、酒場ですね!」

リングはとりあえず一番近い酒場の中に入ることにした。
「<消えゆく灯火>・・・、趣のある名前ですね」
しかし、酒場からは扉を開けてもいないのに中から喧嘩が聞こえてくる。
(しかし、こんないいお名前の酒場ですし、中にいる人はいい人たちに違いありません)
世間知らずのせいか、安易にそう思い込み、リングは酒場の中に入っていった。
がやがやがやと、あふれ出る話し声の洪水。いろいろな顔つきの人間たち。リングはそのどれもが面白く、ものめずらしく、いちいち人の顔をじろじろ見て回った。
(すごいです、すごいです、人間がたくさんいます!)
ふと、リングはある人間に目を留めた。
「おや」
銀色の髪に、紫の瞳。背中には大きな斧を背負う少女。地上では世間知らずのリングでも、この少女が普通の人間ではないことぐらいはわかった。
「美しい少女ですね、しかし何かお困りのようです」
少女はカウンターで店の主人と何かもめているようだ。リングは、何をもめているのか気になって少女のもとに行こうとした。すると、

ガタン!

今度は、栗色の髪をした冒険家風の青年が椅子を蹴倒した。驚いてリングが見ると、青年は、ひどく驚いたような顔をしている。
「いったい何事でしょう・・・?」
リングは唖然として二人を見つめた。
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2007/02/14 22:39 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
9.『出会い~“竜の爪”の情報』―竜の爪編―/ギゼー(葉月瞬)
◆――――――――――――――――――――――――――――
キャラ:ギゼー、ジュヴィア、リング
NPC:情報屋オ・セルヴォール=ヴィレィ(セル)、吟遊詩人
場所:ソフィニアの安宿兼酒場“消えゆく灯火”亭
◆――――――――――――――――――――――――――――

「どうしたィ?そ~んな顔して」
 驚愕の表情を隠し切れないギゼーの顔を、不意に覗き込む中年の顔があった。無精髭を顎一杯に生やし、髭と同じく黒い色をした髪の毛をオールバックに整えている。やや後退してはいるようだが。見たところ、40歳を少し過ぎているようだ。無骨な顔に、金色の瞳が油断無く光る。笑うと歯の欠け具合が目立ってしょうがないのが玉に傷だが、見た目はいたって良さげなオジサンである。
 ギゼーがこの酒場で待ち合わせていた情報屋、その人である。
「ん…?あ、ああっ、いや、何でもない。ちぃとばかし、昔の事を思い出してな」
 先程の噂話が未だ気になっているのか、気の無い返事を情報屋に送るギゼー。
 どうやら吟遊詩人の歌声に聞き惚れて過去に想いを馳せていたようだ。過去への思惟の本流から戻らぬうちに「故郷が焼失した」という噂話を聞き入れてしまった為に、呆然自失していたらしい。
「……で?例の情報は?」
 突然声を掛けられたのが幸いしたのか、いつもの冷静さを取り戻し、気を取り直して口を開く。
 そんな時だった。
 少女に声を掛けられたのは。
「…どうか…なさいましたか?」
 声を掛けられ咄嗟に振り向いたギゼーの鳶色の瞳に飛び込んできたのは、年恰好が9歳か10歳くらいの美少女だった。
 驚愕のあまり、思わず声を上げそうになるギゼー。無理も無い。彼にとって、保護するべき対象であるクロースに酷似した容姿を、その少女は持っていたからだ。
 ランプの光に照り映えて銀色に輝く長髪を、黒いリボンで括っている。肌は、クロースと同じく透き通るように白い。だが、髪と肌の境界線が見えないほどではない。彼女の場合は、あくまでも健康的な色合いだ。全体的な印象は、黒一色に染められている。黒のワンピースに、エナメルの黒い靴は喪装を連想させる。モノトーンなその容姿の中で、唯一色を持っている瞳は紫色だ。その紫色の瞳を瞬かせて、好奇の視線をギゼーの方に向けている。
「……あっ、いや、…何でも無い。本当さ」
「…………?」
 取り繕うような、やや引き攣った笑顔で答えるギゼーの顔を、少女はその視線に好奇心を一杯に溜めこんで覗き見る。

――何か、変だ。どうも、態度が不自然過ぎる。

 そんな言葉さえ聞こえて来そうな少女の視線を一身に浴びながら、ギゼーはたじろいだ。
(うっ、それにしてもこいつぁ、クロースに似過ぎだぜ。世の中には自分に似た人が3人はいるって言うけど、本当だったのかぁ?………それにしても、やりにくいなぁ~。あくまでも他人だからな。クロースと同じには接する事が出来ないし…。それに…、なんか…、この子…、コワイ…)
 約0.1秒の、見事な思考であった。
 それにしても、ギゼーが少女を恐がるのも無理からぬ事だ。
 少女は、その小さな体躯に対して大きな戦斧を背に括り付けているからだ。
 こんな大きな得物を背負って、平気で歩いていられる者は尋常じゃないと、勘の鋭いギゼーは思った。
「どうかしたのですか?何をそんなに恐がっているのです?何か疚[やま]しい事でも、あるのですか?」
 少女はずけずけと本当の事を口から発する。まるで真実を語る為だけに、口が付いているかのごとく。少女は臆する事も無く、考えた事だけを語る。
(まるで、子供だな)
 ギゼーはそんな少女の様子を見て、自然と笑みが浮かぶ。
 決して疚しいものではなく、愛くるしい我が子を見る親の視線で。
 クロースと少女を重ね合わせて。
「何、微笑んでいるんですか?…やはり、何か疚しい事を考えていたんでしょう!?」
 最初の様子とは打って変わって、ギゼーが少女に問い詰められる形になってしまった。
 「しまった」と思った。ギゼーにしてみれば、当然不本意な結果である。
 彼の横で肝心の助け舟を出すべき人物が、ニヤニヤ笑いながら眺めて、この状況を楽しんですらいる。
 頭を抱える状況とは、正にこの事だ。と、ギゼーは思った。
「……あのな、疚しい事なんて、別に俺はやっていないし、考えてもいない。君にどうこうする、なんてことは…」
「……何かあったんですか?」
 今度は17歳くらいの少女が、横槍を入れてくる。
 ギゼーは、今度は本当に頭を抱え込んでしまった。
「疚しい事とは、いったいどう言う事でしょう?」
 状況も判らないまま、唯々微笑みながら三人の顔を交互に見やるしかない少女。横槍を入れたくせに、全然状況が理解できていない事は明白である。
(~~っ!当たり前だよ~。俺だって、解らなくなって来てんだから…)
 このややこしい状況を如何する事も出来ず、頭を抱えるしかないギゼーであった―。


 場所は変わって、ここはギゼーが取った宿屋の一室。
 あのままあの場所で話し込むのは何かとまずかろうと、ギゼーの主張もあって、急遽場所を移動したのだ。それだけではない。ギゼーにとってはあの場所で話せない話なども、この後に控えていたからだ。無関係な二人を巻き込んでしまったのは、不本意ではあったが…。
 そういう理由から、今この部屋にいる人間は四人しか居ない。
 ギゼーと、彼に宝の情報を提供している情報屋のオ・セルヴォール=ヴィレィ、先程の少女が二人、と言う顔触れだ。
 少女のうち一人は、モノトーンに紫の瞳が印象的な黒い少女、もう一人が、何も知らずに横槍を入れてきた世間知らずな少女だ。
 世間知らずとはいえ、知能指数は高そうに見える。目が悪いのか、はたまた単なるアクセサリーとして身に着けているだけなのか、細いフレームの眼鏡を掛けている。その眼鏡の奥で、黒い瞳を知的に光らせている。髪は、黒い髪を肩口で切り揃えている。
 一口に言って、知的美人である。ギゼーの好みの女性。
 何時の間にかギゼーは、その知的美人に見惚れてしまっていた。セルに声を掛けられていることすら気付かぬほどに。
「………ぉぃ!……おいっってばっ!…ギゼー!!」
「……おわっ!なんだよぉ、セル、びっくりさせんなっ!」
 呼び掛けられ、驚いた事により、自分が見惚れてしまっていた事など棚に上げ、情報屋セルを攻め立てるギゼー。セルは暫く、呆れて物も言えないというような目でギゼーを見つめ、口を開く。
「……………………どーでも良いが、俺はともかく、なんで彼女達まで連れて来たんだ?」
「……………………どーでも良いなら、言うなよ。……取り敢えず、あの場であのまま誤解されたままでいるのが嫌だったんでな…」
 “誤解されたまま”でいるのは、彼にとって非常に都合が悪い。
 何しろ、彼の今まで培って来たイメージというものが崩れてしまうからだ。どうせ生きていくならば、周囲に与えるイメージは良い方が良いに決まっている。その方が、都合が何かと良いからだ。人生とは、自己と周囲の人間との双方向の遣り取りから始まるものだからだ。そしてギゼーは、それを大切にしている。
 “誤解されたまま”とは、何を誤解されたのか、という思惟を滲ませ、セルは視線を逸らせる。

 その場に流れた重苦しい沈黙を破るように、ギゼーが口を開いた。
「……………あの、さぁ。せっかく知り合ったんだし。自己紹介でもしよっか」
 苦肉の策だった。

「あ、俺、ギゼーって言うんだ。よろしく」
 最初に口火を切ったのは、ギゼー本人だった。
 人に名前を尋ねるには、まず自分から、というやつだ。
 彼の言葉を受けて、情報屋のセルが名乗りを上げた。
「俺は、ギゼーの友達で、オ・セルヴォール=ヴィレィという者だ。セルで良い」
 親指を立てて、自分を主張する。
 次に世間知らずの少女が、時流に乗り遅れんとして慌てて口を開く。
「あ、私は、リングと言います。リング=オーシャン。よろしくおねがいします」
 そう言って、頭を下げる。ちゃんと腰を45度に屈折し、妙に丁寧で礼儀正しいお辞儀をする。
 まるで、貴族のような違うようなそんな印象を受ける。
「…………………私は、ジュヴィア…。…ニグデクト………」
 最後に、黒い少女がその重い口を更に重々しく自身の名を告げる。まるで、それを告げると不幸が舞い込んで来てしまうかのように…。
 彼女の周りに、黒い何かが見えるようなそんな気配を醸し出している。
(こっ、こえー…)
 ギゼーは、密かにビビっていた―。

 自己紹介が一通り終わり、話が一段楽したところで、セルが再び話をぶり返した。

「で?誤解を解くってどうやんだ?ギゼー」
「………!?う~ん。そうだなぁ。とりあえず、俺は怪しい者じゃないとだけ、伝えておこう。君達には何もしないし、しようとも思わない。解るよね?言ってること?」
 両手を広げて、今までに起こった誤解の鎖を必死で解こうとしているようにその仕草に表す。
 二人が了解の意思を表さないうちから、手を打ち、そこでその問題を終わりにするギゼー。
「解ったね?はい、じゃあ二人とも、下に降りて行って良いよ。俺達はこれから、大事な話があるんだ」

――お前が無理やり、二人を此処に連れて来たんだろが。

 セルはそう、突っ込みたいのを堪えるので必死だった。

 二人を部屋から出した後、ギゼーとセルは要の話をしだした。
「で?例のお宝の話はどうなんだ?」
「……そう急かすなって、ギゼー。お宝って、あれだろ?“竜の爪”だろ?だぁ~いじょぶだって。全て俺に任せてりゃな。しっかり仕入れて来たぜ。……ガセじゃねぇ、本物をな」

 夜は更けていく。
 そして、二人の話もまた長く掛かりそうだ。

     ☆☆★☆☆

そのもの七つの光を抱き
七つの日を数え
七つの王国にて眠らん
七つ目の王国の主
七つの言葉を残し
七つ目の竜の背びれに
神殿を築かん
七人目の王
そこに七つの魔法を掛け
七つの扉の向うに
竜の爪を隠さん

 宿屋の一室で、吟遊詩人が歌を歌っている。
 その歌は、“竜の爪”に関する詩歌だった――。


2007/02/14 22:40 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
10.DUBIOUS GIRL /ジュヴィア(微分)
◆――――――――――――――――――――――――――――
人物 ジュヴィア、リング、ギゼー
場所 ソフィニア"消えゆく灯火"亭
NPC  
◆――――――――――――――――――――――――――――

  何もかも捨てるためなら何でもする、というのは矛盾していようか?

 パン、と男は手を打った。
「解ったね?はい、じゃあ二人とも下に降りて行って良いよ」
今までの会話の流れで一体何が解るというのか。結局この男―――ギゼーと名乗っていたが―――は、自分が何故ジュヴィアを含蓄のある目で見ていたのかについて弁解をするでもなく、強引に部屋まで連れて来て、また強引に話を収束させようとしているようだ。
…怪しい。怪しすぎる。
 だが、ジュヴィアには解っていた。何時ものことなのだから。
―――私は、化け物だから。
 背中に背負った斧を――ずっと一緒に旅をして、片時も離したことのない戦友を少し疎ましく思うのはこんな時だった。
 そんな彼女の感傷には全く気づいていないギゼーという男は、何でも良いからといった風に言った。
「俺たちはこれから、大事な話があるんだ」
彼は無理やりにでも部屋から追い出すべく、ジュヴィアともう一人の女性―リングといった筈だ―の背を押す。いや、背を押されたのはリングだけで、ジュヴィアは無意識のうちにその手から逃げていた。彼女の生来の男嫌いの産物である。
 どの人も同じ。私は化け物で―そして、淫魔の血が流れているのだから―。
 男に近寄ってはいけない。否、人に近寄ってはいけない。
ジュヴィアはいつもの結論を反芻した。


 廊下にぽつねんと追い出されてしまったジュヴィアは、仕方なく階段を降りる事にした。この宿には泊まれそうもない。だが、ソフィニア中探せば、金さえあれば何も言わずに泊めるような宿もあることだろう。それを見つけるまでは野宿も致し方ない。
 ふと、スカートが何かに引っかかっているのに気が付いた。見ると、謎の手が裾を引っ張っている。手の主は先ほどの女性、リングだった。知的な薫りのする黒い瞳が微笑んでいるように見えた。
「…何でしょうか」
 彼女の言葉に、リングは驚いたようにため息をつくと、こう言った。
「何でしょうかって、あなたはお困りだったのではないんですか?この宿のご主人と揉めてらしたようですけど」
 どうやらリングは先ほどの泊める泊めないの言い合いを見ていたようだ。
「…その通りですけれど、それが何か」
 リングが、今度は心外だという風にため息をつく。
「こう言った場合、私のような者は手助けをするものだと本で読みました」
 まるでジュヴィアが手助けを求めないのが不思議だといった風の口調である。本で読んだというのがちょっと引っかかったが、ジュヴィアは目を伏せて言った。
「私のような者には、関わらないのが道理です。手助けは要りませんから…」
 だから、手を離してください、という彼女の言葉を待たずにリングが言った。
「そんなことはありません。ほら、言うでしょ?ええと…何でしたっけ。袖が何とか…するがどうとか…」
「袖擦り合うも他生の縁、ですか…?」
「そうそうそれです。だから、きっとこう知り合ったのも他生の縁というのです」
 リングがにっこりと微笑む。だが、ジュヴィアには手助けを受ける気はない。
「でも」
「あ、そうだ!」
 ぽん、とリングが手を打った。なぜかジュヴィアには彼女の頭上に裸電球の幻影が見えた気がした。
「あなたが手助けを受けたくないなら、私が手助けを受けましょう!」
 …一体何のことか?
 ジュヴィアが尋ねる必要はないようだった。リングが言葉を継ぐ。
「ですから、あなたが私に手助けされる代わりに、私があなたに手助けされるんです。私、ソフィニアでいろいろ調べものがあるんですけど、こんな大きな街に来るのは初めてで、どうしたら良いのか解らなくて。それで、あなたに手助けして欲しいんです」
 ね?といった風にリングが会心の表情を浮かべる。
「あの…」
「これなら、あなたも私に手助けされることなく宿に泊まれるでしょう?」
 ジュヴィアが言葉を選んでいるうちに、リングは彼女の手を取った。
「よろしくお願いします!」
――ようやく浮かんだ言葉を、ジュヴィアは口に出さなかった。ここまで言っているのだし、それにこちらが損をするわけでもないし、あえて異を唱える事もないだろう。
「…こちらこそ…よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げる。何年ぶりにした行動か、すぐには思い出せない。リングはニコニコしながら見ていたが、やがて階段のほうへと足を向けた。
「さて、そうと決まれば部屋を取らなければなりません」
「あ、待って下さい」
 ジュヴィアの呼びとめに、リングは不思議そうな顔をして振り向いた。
「どうしました?」
「部屋を取ることはありません…この人を使いましょう」
ジュヴィアは今出てきたドアを手で示した。中ではきっと「大事な話」とやらが繰り広げられているのだろう。だが、構うことはない。
「ギゼーさんを使うって?どういうことですか?」
「…つまり…先ほどの視線は少女嗜好者のモノだった、おまけに部屋に連れ込まれたと当局に訴えるぞ、と脅せばよいのです…そうしたら多分相手は焦りますから…部屋を共同で使わせろ、と言えば部屋代を三折半…もう一人いましたから、四折半にすることができます」
 すらすらと脅迫の計画を並べるジュヴィアに、リングが言う。
「でも…それって、悪いことじゃないのですか?」
「そんなことありません…私もあの人の目で傷つけられました…それに、邪念は無くとも部屋に連れ込まれたのは事実です。それを考えれば、私たちの申し出は、むしろ軽すぎるくらいです…」
「そうなんですか?」
 リングにはまだ思うところがあったようだが、ジュヴィアは彼女をドアの前に連れて来た。
「さ、どうぞ…私は被害者本人だからいえませんので…」
ジュヴィアの促しに、リングは意を決したようにノブを回した。

2007/02/14 22:40 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
11.リングの弱点其の一/リング(果南)
◆――――――――――――――――――――――――――――
メンバー リング ギゼー ジュヴィア
場所 <消えゆく灯火>亭
NPC オ・セルヴォール=ヴィレイ
◆――――――――――――――――――――――――――――

 カチッ
 
 それはリングがドアを開いた音ではなく、一度回したドアノブをリングが再び元に戻した音だった。
「おい、今、ドアが開きそうじゃなかったか?」
「さあな、案外さっきのお譲ちゃんたちが戻ってきてたりしてなぁ」
「はははっ、そりゃないだろ」
ドアの向こうではギゼーとセルがこんな会話を交わしている。
「どうしたのですか?」
 不振そうな表情でジュヴィアが聞く。
「早く、ドアを開けて、彼らに話をして下さい」
「でっ・・・、できませんよっ・・・」
リングは手をわたわたさせながら必死に説明した。
「あのっ、だってこれはその・・・、彼らを脅すということになるではありませんかっ!私・・・、そういうの得意じゃありませんし・・、それに、彼らも特に悪い人というわけじゃ・・・」
「・・・じゃあ、私を野宿させてもいいんですね」
挙動不振なリングを冷静に観察しつつも、リングの瞳をひたと見つめてジュヴィアは言う。
「私を、この宿に泊めてくれるというのは嘘だったのですか。この宿に私が泊まれない以上、貴方だけが頼りだというのに。・・・貴方は、私を見捨てるんですね」
そんな風に言われ、その紫色の瞳で見つめられると明らかに自分より年下の少女に、リングはたじろいてしまう。なにより、その紫の瞳は見かけの年齢より大人びていて、なにか、逆らえなくさせるような力を持っているのだ。まるで、魔力でも含んでいるかのような。
「う・・・っ」
「さあ、早く話をして下さい」
しかし、いくら言われても人を脅すなんてことがリングにできるはずがない。・・・敵を倒すときでさえ、ためらってしまうリングが。
 そのとき、
「おおいっ、ネーチャン、なんだなんだぁ、オドオドしちまって、ウサギか?てめぇはよぉ!」
 この宿に泊まっている客の一人だった。しかも、この客、かなり出来上がってしまっている。この客はリングの肩をパンパンっとたたくと、いきなりリングの方に手をまわしてきた。
「なっ・・・、ちょっと・・!」
「ネーチャン、そういう時はよぉ、酒でも飲め飲め、そうすりゃ度胸がつくぜぇ」
そう言って男は手に持っているブランデーのビンを、リングの目の前にぶらぶらさせた。ブランデーの中身はまだ半分ぐらい残っている。
「ほら、今日は景気がいいから特別に分けてやるよぉ!さあ、ぐいっといけい!ぐいっと!」
 リングは困って、ジュヴィアのほうにオドオドとした目を走らせた。しかし、ジュヴィアのほうは何の助け舟を出すでもなく、ただ黙ってリングを見つめている。
(うう・・・、ジュヴィアさん・・・)
 本当は今すぐにでもリングはジュヴィアに助けを求めたかった。しかし自分より年下の人間に助けを求めるというのはさすがにためらいがあった。それに、ジュヴィアは少女だ。変にこの客に話しかけて一緒に絡まれてしまっては大変だ。
(仕方ありません・・・)
 リングは覚悟を決めるといった。
「わかりました、飲みましょう!・・・ええ、飲んで見せますとも!」
半ばやけになってリングは叫んだ。
(ジュヴィアさんを巻き込まないためです!仕方ありません!)
 言うなりリングはブランデーのビンをひったくり、一気にがぶがぶっと飲み込んだ。
「おお、いい飲みっぷりじゃねえか・・・」
 酔った客が半ば放心状態で感心している。客の隣では、ジュヴィアが不思議な生物でも見るような目でリングを見つめている。ブランデーなんて、普通ビンごと一気飲みするものではないのだ。しかし、そんな無茶をしてしまったのも、地上文化を知らないが故である。・・・海底には、酒など存在しないのだから。
「・・・ヒック」
 見る間にリングの顔が赤くなり。目がうつろになる。さすがに、これにはジュヴィアも心配になった。
「あの・・・、大丈夫ですか・・・?」

「どうしたどうした?」
 一通り話も済み、下の酒場に戻ってきたギゼーとセルは、酒場が異様に騒然としているのに気がつき、その場にいた客の一人を呼び止めた。
「それがその・・・」
 その客が困ったように目を伏せた。
「女の子が一人・・・、悪酔いしてるんですよ・・・」
「ほぉう、女の子がねぇ」
 セルの目が好奇で輝いた。
「その子、どんな子なんだい?」
「黒い髪で・・、眼鏡をかけていて・・・、一見知的っぽい・・・」
 ギゼーの目が点になった。
「まさか・・・、ねぇ・・・」
目線で隣にいるセルに相槌を求める。
「あのリングって子・・・、じゃ・・、ねぇよなぁ?」
「あ、あなたは先ほどのっ!」
 突然、カウンターのほうから大声が聞こえた。いやな予感を感じながら、ギゼーがカウンターを見ると、そこにいるのは紛れもなくリングだった。しかも、顔が赤い。そしてその隣には怪訝そうな表情のジュヴィアが。
「あの子だよ・・・」
 ギゼーは先ほどのリングの知的なイメージがガラガラと崩れていくのを感じながら、ため息をついた。そして、即座に決意した。
「セル・・・、逃げよう。やっかいごとは御免だ」
 そうして、くるりときびすを返し逃げようとしたそのとき、
 ひゅるり、と何かが腕に巻きついてきた。それを払おうとしたギゼーは唖然とした。
「な・・・っ、酒っ!」
 腕に巻きついてきたのは明らかに、酒、だった。液体のみの。その酒はギゼーをぐいぐいとリングのほうに引き寄せていく。
「どこいくんですかぁ?逃がしませんよぉ!」
 液体の酒はリングの手のひらにつながっていて、それを操る主がリングだということを明白にしていた。唖然としているギゼーの耳に、かすかに、先ほどの客がセルに話している声が聞こえる。
「・・・ああやって、次から次へと客を引き寄せては自分の愚痴を語るんです。一度つかまったらしばらくは放してもらえませんよ・・・」
「なっ・・・、じょうだんじゃねぇっ!」
 それを聞いたギゼーはあわてて酒から腕を振り解こうとした。が、時すでに遅し、ギゼーの抵抗もむなしく、ギゼーはリングたちのいるテーブルにみごと引き寄せられてしまった。
「・・・こんにちは、6人目の犠牲者さん」
 ジュヴィアが冷めた目でギゼーに言う。
「けれど、私よりはましですよ。私なんて、ずっとここにつかまりっぱなしです」
「・・・それはまた大変だな」
 もはや、ギゼーはジュヴィアに作り笑いを浮かべることしかできなかった。
「ギゼーさんっ!」
 突然、リングがギゼーのほうを向き、がばっと立ち上がった。
「おっ・・・、おう、何だ・・?」
「私とジュヴィアさんに部屋を提供してください!」
 いきなりの申し出にギゼーはたじろいた。しかし、この危険なヨッパライ相手に何も言い返せない。続けてリングは熱く語る。
「あのですね、ジュヴィアさんの話によりますと、何でも、あなたがジュヴィアさんを見る目つきが少女愛好者、・・・つまり、地上でロリコンと呼ばれているものですね。それに似ていたそうです。ですから、もし私たちの頼みをきいてくれない場合、当局に訴えるそうです。ですから、部屋を共同でもかまいませんので一緒に使わせてください!」
「はぁ・・・」
 ギゼーは不審な目をジュヴィアに向けた。ジュヴィアは憤然として、自分はグレープジュースを飲んでいる。心の中はさぞかしリングへの不満でいっぱいだろうとギゼーは推測した。
「あのっ、ですからっ!」
「ああ、分かった分かった!」
 思わず、ギゼーは両手をぶんぶんと目の前で振り、こう答えてしまった。
「訴えられたら大変だからなっ、分かった、一緒に使おうじゃねぇか。な、セルも、それでいいだろ?」
 セルは向こう側で肩をすくめている。それはOKの証でもあった。
「ほら、OKだってよ」
「あ、有難う御座いますぅーーーー」
 突然、リングの目から涙が溢れ出した。リングはギゼーの手をぎゅうっと握り締めると何度もお礼を言う。
「有難う御座います、有難う御座いますっ!やはり、人間は優しい方が多いですねっ!有難う御座いますぅーーーーー!!!」
 ぽかんとしているギゼーにジュヴィアが言った。
「・・・この人、泣き上戸みたいなんです。何でも泣き出す理由になるらしいですよ」
「はあ・・・」
 ギゼーは唖然としてリングを見つめた。この先、この人物がトラブルメーカーになりそうな予感がしてならなかった。そして、自分がその波にのまれる予感も。


2007/02/14 22:41 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
12.『無理矢理パーティー結成!』/ギゼー(葉月瞬)
◆――――――――――――――――――――――――――――
PC:ギゼー、リング、ジュヴィア
NPC:情報屋セル
場所:ソフィニア“消えゆく灯火”亭2階
◆――――――――――――――――――――――――――――

 人は誰でも、他人に寄り掛かって生きていくもの。それが、社会を形成していく。
 そして人一人は、その大きな流れの中の極一部でしかない。
 それは、人ならざる者達も同じである―。


「はふぅ~」
 此処は宿屋の一室、ギゼーの取った部屋である。
 部屋に一つしかないベッドには、先程リング=オーシャンと名乗った知的美人が横臥していた。額に水で濡
らした布を乗せて。
 飲酒が過ぎて倒れてしまった彼女は今、世話好きのギゼーにより看病を施されていた。
 当然、成り行き上、ジュヴィアとセルも共に部屋に詰めている。
 ――あの後、ギゼーから同室の許可を取ったリングは安堵の為か、はたまた飲み過ぎの為か、その場にくず
折れてしまったのだった。彼女にどやし付けられていたギゼーの耳に聞こえて来たのは、彼女の小さな寝息
だった。
 溜息を吐き、他に同室する者達の顔を交互に見やるギゼーに答えるかのごとく、セルもジュヴィアもそれぞ
れ肩を竦ませる。
 協議の結果、酔い潰れたリングをギゼーの部屋に運び込む事にしたのだった。
「ううっ(泣)。な~んで、俺がこんな目に…」
 水分が蒸発して乾き切った布に再び水分を含ませ、額に置く。その動作をしつつもギゼーが泣き言を言っ
た。
 そのギゼーを諭すように、口を開くセル。
「お前ね…、ぼやかないの。自分で蒔いた種でしょうが…。……ったく、何でもかんでも誰でも彼でも、美女
と見るや手ェ出しやがって…。だいたい、メディーナちゃんの時だって……」
「あのなぁ、セル。人聞きの悪い事言わないでくれる?後にも先にも女に手ェ出したのは、メディーナちゃん
唯一人なんだからさ」
 セルの、事情を知っているだけに尤もな言を遮り、ギゼーが自身の弁護をする。
――メディーナちゃん?
 誰もが抱くであろう疑問を、ジュヴィアは思った。だが、思っただけで口には出さなかった。
「……う~ん?」
 不意にあがった呻き声に、よもやリングの意識が回復したか、と皆一様にそちらを見遣る。
 その三つの視線の先には、とぼけた顔したリングの姿があった。
「………はいっ?」
「さてっと。それじゃ、大所帯になったところで、改めて自己紹介といきますか。…さっきのは、簡潔すぎた
からなっ。俺はセル。今はチンケな情報屋をやっている。昔はそうじゃなかったんだが…、ま、色々と事情が
あってな、話すと長くなるんでそこんとこはなるべく話したくはない。で、こいつが…」
 と言って、相棒であるギゼーの首の後ろに腕を回し、引き寄せると勝手に他己紹介などを始めてしまうセ
ル。
「先程無理矢理あんた等を部屋に連れ込んだ挙句に、あんた等に熱っぽい視線を送っていたこいつが、俺の相
棒でトレジャーハンターの、ギゼーだ」
 首の後ろに回された腕を取り払おうと、何度ももがいた結果拳の一撃で何とか脱出したギゼーが不満気に後
を継ぐ。
「……だぁらっ!そういう誤解を招くような事を言うなよなっっ!セルっ!……ったく!人を何だと思ってん
だ……」
 そう言って、暫くぼやいた後に気を取り直したのか、一つ咳払いをすると自分に向けられた誤解を極力解こ
うと、言葉を選びつつも口を開くギゼー。
 何としても、不名誉な噂話だけは広められない様にしなければ。…もう遅いかもしれないが。
「あー、俺の名前は、ギゼー。さっき、セルの奴が言ったとおり、しがないトレジャーハンターなんぞをして
いる。(なんか、偉そうだな)で、さっきジュヴィアちゃんだっけ?…を見ていたのは、君が俺の知り合いの
女の子に似ていたからなんだ。クロースって言う……。まっ、娘みたいなもんだな。あんまりにも似過ぎてい
たんで、ちょっと驚いちゃったんだな。……だから、ぜんぜん疚しい事なんてない」
 ギゼーが言い終わると同時に、周囲には「そう言うこと自体、疚しい事なんじゃないかな」と言う意味合い
の溜息と、殆ど驚きにも似た溜息とが流れた。
 驚いていたのは、ジュヴィア本人だった。
 
――やはり、自分と同じような境遇の子が他にもいるのだろうか?自分と同じ血脈同族の…。いや、それはと
もかく、問題なのは………。
「……………矢張り貴方は、幼女嗜好者だったのですね?」
 数秒の後、ジュヴィアの驚きが解かれたころ、彼女の口から出て来たのは意見としては尤もな言葉だった。
「だあぁぁらっ!なんでそーなる!!」
「だって、幼女を誘拐して自分の娘にするなんて、幼女嗜好者以外の何者でもありませんよ」
 ジュヴィアはギゼーの予想通りの反応を見て、不敵に笑いながらそう言った。
「だから、誘拐したわけじゃないって!遺跡で見つけたんだよっ!い・せ・き・でっっ!」
 不意にジュヴィアの顔が曇る。「いせき」の三文字に敏感に反応したのだ。
――……!?遺跡で?じゃあ、自分とは違うんだ。
 自分は、母親と淫魔の間で交わした契りで生まれたもの。遺跡で発見された者ならば、己とは違うだろう
と、ジュヴィアは賢しく勘繰り気落ちしたのだった。
 暗くなってしまった場を持ち直そうと、リングが出来る限り明るい声で後を続ける。
「あっあのぉ~、確か、自己紹介でしたよね?私は、リング=オーシャンと言います。海竜族で、海の中から
来ました。えっと、ソフィニアに来たのは、実はこの“聖書”の出典を調べに来たのですぅ」
 そう言って、リングは自分の攻撃手段である、“聖書”を皆に見せた。
 その神々しいまでに光り輝く書物を見た途端に、ギゼーの顔色が変わった。
 その取り出し方に驚いたのではない。少なくともギゼーはそのようは不思議は、見慣れている筈だ。では、
何に対して驚きを露わにしたのか。その、神々しいまでに光り輝く美しい様に?否。彼は、その書物その物に
目を見張っていた。
 ギゼーのそんな様子に、気が付かない振りをしてセルがリングに訊ねる。
「ふぅん。するってぇと、リングちゃんはその、“聖書”とやらの出典を調べるためにわざわざ地上のソフィ
ニアまで足を運んだ…と?」
「えっ!?ええ、まあ、そんなもんです」
 何かを誤魔化すかのような笑顔で答えるリング。本当の理由は別な所にあるようだ。
「ソフィニアに来れば、何か手掛かりが有る、と聞いたものですから……」
 そして、言葉が足りなかった事に気付いて、慌てて後から付け足す。事実は事実だが、単なる物見遊山で地
上に出て来たことを包み隠すかのような理由の様だ。
 一方、何も解っていないセルは心配がちにだが、やや社交辞令っぽく尋ねる。
「ふうん。で、何か解ったのか?」
「いいえ。今日辿り着いたばかりですから」
 リングの即答ぶりに、何か思うところがあるらしく長考の姿勢に入るセルであった。何か、手助けでもして
やろうと言う気が何処かから湧いて来たようだ。
「俺、知ってる」
 不意に、ギゼーが真面目腐った顔で妙なことを口走る。眼差しは、“聖書”の表紙のある一点―紋章らしき
物があしらわれている部分に向けられている。
「俺、知ってるよ。その“聖典”。それは、写しだ。原本じゃない。……原本はもっとでかいからな
…………」
 最後の呟きは、殆ど独り言に近く、普通に聞いていたら聞き流してしまうものだった。
 その場を沈黙が支配した。

2007/02/14 22:45 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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