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2024/05/17 04:48 |
ゼッタイゼツメイ?/トノヤ(ヒサ)
キャスト:ワッチ・月見・トノヤ・ファング
NPC:悪人面グループ
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――
『あぎゃーーー!!』

後ろで悲惨な悲鳴がいくつも聞こえてくる。
地面から追って出てくる凶悪なトラップは、逃げられない早さではない。
しかしこのまま走り続けてもいつかは捕まッてしまうのは目に見えている。

「ど、どうすんだよファング!?このトラップ止まりそうにないぞ!!」
「どうすんだって言われても……!!どっかに止める仕掛けは絶対あるはずなんだけ
ど、こんな状況じゃ探すことも出来ないって!!」

走り始めてすぐに音を上げた月見を抱えて走るワッチにも疲労の色が見えかくれして
いる。
ファングもそろそろやばい。
ちらりと後ろを見るファング。
物凄い勢いで突き出てくる巨大な剣のスピードが衰える気配は全く無い。
走り続けて酸素の足りない脳みそをフル回転させて打開策を探すが、どうにもこうに
も浮かんでこない。
このトラップが発動したのは状況からして、ワッチにノされた男達が起きた時に仕掛
けに触ったのだろう。

「ハァハァ……大抵のトラップのオンオフの仕掛けは同じ場所にあるんだけど……こ
れじゃあ戻ッてみることも出来ないよ!」
「さっき居た場所に止める仕掛けがあるのか?」

ファングの隣をやけに涼しい顔をして走っていたトノヤが振り返る。

「あるかどうかはわからないけど、可能性はあるってコトッ」
「なるほどね」

なにを血迷ったのかトノヤは急に立ち止まり、トラップに面と向かった。
手には先程持っていた銃ではなく、ひと回り大きな銃を持っていた。

「オイ少年っ!死ぬ気か!?」

思わず足を止めるワッチにトノヤは「良いから走っとけよ!」と怒鳴り付ける。
ワッチの走りつつも止まりかけたり振り向いたりと不規則な動きに、肩上の月見はア
ウアウと泡を吹いてグロッキー状態だ。

もうトラップは目の前。
ワッチとファングが胸の奥で十字を切った瞬間。
トノヤは持っていた銃の照準を低い天井に向け、足下が割れる寸前にトリガーを引い
た。

ガチッ!!

銃口から飛び出したのは弾丸ではなくワイヤーだった。
ワイヤーの先は天井にしっかり食い付き、ターザンのように振り子でトラップの上を
通過し、綺麗に後ろに着地した。

「お、おお。すごォ……」
「ってゆーか俺にも出来たかも」

ファングは自分の鞄の中にも先に仕掛けの付いたワイヤーは入っているのに気が付い
た。
しかし,のっぺりした天井に引っ掛けるのではなく、ヒト1人が支えられる程しっか
りと刺すのは余程の力でないと無理だ。
中途半端に刺さったところで……考えただけでも痛い。
自分の実戦した所を想像してファングは背中に冷たい汗を感じた。

「仕掛け探してくっから、それまで死ぬなよ~~」

物凄い速さで遠ざかるトノヤの声。
もし見つけたところであいつが1人でトラップ解除出来るのか、とファングの頭を不
安がよぎるが、取り敢えず今は信じて走るしかなさそうだ。

「おいファング!前!前!」
「え?……ゲッ!!」

絶体絶命。……かもしれない。
こういうトラップにありがちな展開、行き止まり、だ。
目の前に広がる湿った岩壁。
そして足下には絶望感たっぷりに白骨が山になっている。
追ってくるトラップはいやらしく速度がゆるむ。
神に祈る時間でも与えているつもりだろうか。

「ここはオイラが横穴をぶちあけるッ!!」
「ちょっ……無理だとおも……」

ガチ~~ン

勢い良くンルディを降りおろすが、見事に刃は止まる。
相当の衝撃にワッチはビリビリ。ついでに担いだままの月見もビリビリ痙攣している。
そんな様子を横目にファングは壁をまさぐる。

「運が良ければこーゆーとこにスイッチが……」

左手に違和感。
ビンゴだ。1ケ所だけ軽い手触りの岩。
しかし押しても引いてもびくともしない。

「ワッチん!ここ殴ッて!!」
「おしきたぁ!!くおるぁ!!!」

ベッコン

緊張感のない音とともに地響きをあげ、横穴が出現した。
もうトラップは目の前に迫っていた。
急いで横穴に飛び込む2人と1人。
ファングが最後に飛び込んだとき、背中を冷たい風が薄く切り裂いた。
スースーするので服の後ろが割かれたようだ。

「ふー……助かった?」
「なんとか?」
「ってーか狭いよ。ワッチんもっと奥行けない?」

横は幅は大人1人入るには狭いほどしかなく、高さはワッチの長身では頭がついてし
まいそうな低さ。
実際ワッチは首が曲がってるようだ。
奥行きは、もしかしたらヒト1人分なのかもしれない。
三人だと相当圧迫感がある。ぎゅうぎゅうだ。

「助かったは良いけど……このまま圧死?」
「しょ、少年がなんとかしてくれ、る、グエッ……月見ィ!動くなよ!」
「目が覚めてみたらなんとぉ!VIVAハーレムではないですかッ★ちょっと狭いけど。
鼻から墳血しそうですぞ!!グフッグフフフ」
「つ、突っ込むスペースもない……」

横穴の出入り口は剣のトラップが止まり、塞いでしまっている。
まさに八方塞がり。

とりあえず戻ってくるかわからないがトノヤを待ってみることにした一行であった。
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2007/03/09 00:57 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖
浅葱の杖――其の六 /ファング(熊猫)
★テラロマンス★-RPG風ファンタジーリレー小説-

◆――――――――――――――――――――――――――――
メールの調子がおかしいので、千鳥ちゃんに送ってもらいます!
ありがとう千鳥ちゃん!
―――――――――――――――
キャスト:ワッチ・月見・トノヤ・ファング
NPC:悪人面グループ
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――

「おおうっ!水無河月見、17年間生きてきた中で、今日ほどうれし恥ずかし
大ハッピィな日はありませんでした隊長!ぬぅ、密室とはまたコアなセレクトを
ッ!」
「おい、なんかスゲー空気薄いんだけど。なぁ、ワッチ息止めててよ」
「できるか!」
「だってどう考えても肺が一番でけぇのはワッチだろ!?平等にしろよ平等に!」
「なにっ!?鼻の穴の大きさなら負けませんぞ★」
「なおさらダメじゃねぇかよ!」

真の闇の中でひととおり騒いでから、ファングは口をつぐんだ。
ワッチもそろそろスペース的に限界なようだ。ファングでさえ体が動かないほど
狭いと感じるのに、それより頭ひとつは違うワッチなら、よく耐えたほうである。

さらに言うなれば、月見が見えないところで何かやっているらしいのがまた怖い。

首さえも満足に回せずに、目の前の銀の壁を見る。片手で叩いてみるがもちろん
壊れるわけもなく、鈍い音しか響かない。

と、

『うわっ!?』

いきなり壁が消え、3人は文字通り炭鉱内へ倒れこんだ。

「いたたたたた!痛ぇよ重ぇよ!降りろ――ッ!」
「うひょひょっ!ファング君とオヤジ殿との間に挟まれてかなり圧迫感!
ていうかあんま状況変わってなぐぇ」

ファングは背中にワッチと月見を乗せてうつぶせに寝たまま、目の前に
見慣れない靴を見て、視線だけで上を見た。

「…何やってんだお前ら」

そこには腰に手をあてて、こちらを見下ろしているトノヤがいる。
手にはトーチらしきものを持っていて、その光のおかげで彼の呆れ顔が見えた。

「湯煙密室白昼夢情事+2」
「理性を保つべく自分との戦い」
「息止め」

即座に言われ、トノヤが顔を歪ませて何かを言いたげに口を開くが、
背中から重みが消えた勢いで、ファングはそのまま続けた。

「いや、ワッチもういいよ息止めなくて。で、トラップは止まった…んだよな?」
「あぁ、スイッチもスゲー目立つ所にあったぞ。ホラこれ、お前らの荷物」

そう言って、手渡された荷物を――混乱の中で落としたようだ――
ワッチに手渡して(彼は不服そうだったが)から、ファングは額のバンダナを親指で
いじった。

「おっかしいなぁ…ここ、炭鉱のはずだぜ?トラップなんかあってたまるかよ」
「つうことは、トラップを仕掛けたくなるほど大事なもんがここにあるって事だな」

トノヤがいきなりしゃがみ込んだ。見ると、これも横穴に飛び込んだ際に落としたら
しい
ランタンが転がっている。それを拾う彼の背を見て、はっと気づく。

「! じゃあ…」

トノヤの言葉に、ファングはぱっと顔を輝かせてワッチと月見を見た――
自分と同じような顔をしているかと思いきや、月見に絡まれたワッチが
なにやら騒いでいるだけだった。

「って話聞いてないじゃん」
「なんつーか、よくこんなメンバーでここまで来れたなお前ら」

再度ランタンに火を燈しながら、深々とうなずく。トノヤの顔は見ないでもわかっ
た。
きっと呆れ顔のままだ。

「俺もそう思う」

・・・★・・・

「ところで、あのオッチャン達はどうしたんだ?」
「ん?邪魔だったからとりあえずみんな寝かせてきた」

簡単にだが、宝のことも話してしまった。ここまで来た彼にも知る権利は
あるだろうし、何より人手はあったほうがいい。

「でも、手がかりどころか『浅葱の杖』そのものがあるかもしんないって事だよ
な!」
「物騒な詩が気になるけどなー。俺としては」

したり顔であごに手をやって、

「『欲望は闇に埋まる』…一体どういう意味だ?」

ひとりつぶやく。どうやら、ファング自身より真面目に考えてくれているらしい。
ワッチが背後から、目の前の壁を指差す。

「…でもファング。行き止まりだぜここ」
「そーなんだよな~…」

と、月見が壁をどんと叩く。

「じゃ、オヤジ殿が爆裂パワーで体当たりをば!」
「よぉし」
「本気にするなワッチ!月見のいう事は聞くな――!」

ワッチの巨体をどうにか止めようと壁に背を向けた時、月見の奇声がこだました。

「うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

同時に聞こえる、岩が崩れる音。
見れば、月見の立っていたあたりの所にぽっかりと落とし穴のような穴があいてい
る。
即座に男3人が、穴へと近づいて耳をすます。

「結構深いな」
「あ、でも意外とデカイねこの穴。ワッチでも入れるね」
「オイラ…落ちるのはあんま好きじゃねぇなあ」

3人には、どうしても月見の身を案じることができないようだった。

2007/03/09 00:58 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖
浅葱の杖――其の七/トノヤ(ヒサ)
―――――――――――――――
キャスト:ワッチ・月見・トノヤ・ファング
NPC:悪人面グループ
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――

月見の落ちた穴に1列に何故かおりこうに並んだ男三人衆。

「よぉ~し。行くぞ。いくぞッ」
「早くしてよワッチん!後ろつかえてるッて」
「あ~めんどくせーなあ!ウラッ!!」

ドンっ

一番後ろに居たトノヤが先頭のワッチの様子に痺れを切らし、前のファングごと穴に
蹴り落とした。

「ぎゃーーーー!!」
「心の準備がぁぁああ!!!」

………ズンッ

「……深いなホントに」

着地(落下)音が聞こえるまでに結構長かった。
トノヤは一瞬ためらい、ワイヤガンを片手に穴に飛び込んだ。
落下で胃が浮くような気持ち悪さを抑え、地面に近付いたところで壁にワイヤを打ち
込み、振り子の要領で真下への落下の勢いを軽くしてひらりと着地した。
瞬間。

「トノヤてめー!」
「リンチだリンチ!」
「うおおお!?」

デコにたんこぶをおそろいに作ったファングとワッチに奇襲を受けるトノヤ。
2人とも本気だ。本気で痛い。

「あひゃ★混ぜてくだされ~…ガフッ」

ワッチの振り上げた肘がウキウキと割り込んできた月見の顔面にクリティカルヒット
し、地獄のマジリンチは終了した。

「さて。どうしたもんかねぇ。すんごい暗いけど、ここが噂の『月も太陽も星もいら
ぬ。欲望は闇に埋まる……』ってトコか?」

デコのたんこぶをさすりながらワッチがあたりを見回す。
頭上から降る光も微量で、ぽっかりと口を開けた黒い横穴は一歩踏み入れるとランタ
ン程度の光では4人全員照らせない程だ。
不自然なまでに暗い。
しかし道はそこしかないので黒い横穴を進むことにした。
先頭はランタンを持ったワッチ。
残りの三人はワッチにしっかりつかまっている。

「ちょ、ちょっと歩きにくいんだけど」
「そんなことゆったって、少しでも放っれたらあっという間にはぐれちゃうよ」

月見なんか腰にガッツリしがみついている。
むしろ歩けない。

「ウヒョウ★今回は素ッ敵でおいしい展開がテンコモリですなぁ!」
「欲望は闇に埋まる……杖に喰われるぞ月見」
「おっ、うまいねぇ!ワッチん」
「杖に喰われるッてコトは杖が出てくるんじゃねーの。喰ってもらおうぜコイツ。し
たら手に入るじゃん、お宝」
「トノヤ……流石にそれは……」

先に違和感に気付いたのはワッチだった。
月見が黒い。
顔の上半分が不自然な影で覆われている。
本人は全く気付いていないのかはしゃぎっぱなしだ。

「つ、月見!顔顔!!!」
「うわっ顔が無いよ!!?」
「なんですとぉ!?どおりでさっきから何も見えないと思ッていたら、うっかり顔を
落としてしまっていたのですねぃ!」

顔のあった場所に手を当て、じたばた騒ぎ出す月見。
表情が見えないので良く解らないが、ジェスチャーを見る限りでは流石に焦っている
らしい。

「マジで闇に喰われてるジャン。すっげー」
「感心してる場合!?でもこれがアノ言葉の現象なら杖は近い・ってことかも」
「おっしゃぁ!ンルディ!!」

ワッチの抜きはなったンルディは、待ってましたと言わんばかりに光だす。
突然のまばゆい光は、暗闇に慣れてきた目に優しくはなかった。
反射的に閉じたまぶたの上から眼球に光が突き刺さる。

「ランタンより明るかったの?その剣」
「そんなカンジしなかったけどなぁ。うう、眩しい」
「あ、顔あるジャン」

黒頭巾でも被っていたように見えた月見の顔も、ンルディの光に照らされていた。
ファングは首をかしげる。

「さっきのは.錯覚?」
「みんなで同時に仲良く同じ錯覚かぁ?」
「それは……」

『その光は……まさかンルディ?』

「!?」

聞き知らない女の声。
方向はわからなかった。
声の響き方からして術で拡声しているのかもしれない。

「誰だ!?」

ワッチはンルディを握り直し、構え、叫んだ。
他の三人にも緊張が走る。
しばらくの沈黙の後、その声の主は姿を表わした。

2007/03/09 00:58 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖
浅葱の杖――其の八/ファング(熊猫)
キャスト:トノヤ・ファング
NPC:ワッチ・月見(PLさんが微妙なのでNPCに移しますた)・アイボリー
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――
現れたのは、確かに女だった。
この暗さにもかかわらず、やたら鮮明にその姿が見える。
細長い体を薄い布で包んだだけの、簡単な服。編み上げのサンダルのような靴は、
この荒々しい洞窟を歩いて来たにしてはいやに安っぽい。
ゆるく波打った金の髪は、曇り空の切れ間から差し込む光にも似ていた。

『ンルディ・・・なのですね?』

足音すらしない――
気づいた途端、さきほどのトラップのせいで裂かれた服から、凍りつくような風が入ってくる。
女は顔の上半分に影を落としながら、一歩こちらに歩んできた。

『その禍々しい光を消しなさい…』
「えぇと…っていうか消し方知らないんだけどオイラ」

腰に月見をまとわりつかせつつ、困った表情でワッチが剣をもてあそぶ。
すると女がそのまま右手をこちらに翳す。
と、すっと剣から光が消えた。同時に女も手を下げる。

闇は――落ちない。見れば、いつの間にか空洞内は薄いオレンジの光で満たされていた。
思ったより高い天井。もうそこは炭鉱などではなく、
ちょっとした礼拝堂のように整然としている。

「誰…なんだ?どうしてンルディの事を…?」
「そうだそうだ!ステキヴォイスから想像するにスペシャルビューティと見た!
ということでフーアーユー★」

もう一度問うたワッチは構えを崩していない。しっかり決めポーズまでつけた月見の
余計なちゃちゃ入れが入るが、慣れた手つきのトノヤが、一撃で沈黙させる。
それを待ってたかのようなタイミングで、女はようやく顔を上げて
全貌をこちらにさらしてきた。

『その剣は…マスターが嫌う者が作った物…私はアイボリー=ドルーウィ。
 ――マスター=ウィルドから名を受け継いだ者。』
「…でぇえ?!」

思わず大音量で叫んで、ファングは数歩後退った。そのままの勢いで月見に激突し、
思い切りすっ転んでひとしきり騒いでから、ふらふらと立ち上がると、
改めて女の顔を見る。

――美しい女ではあった。うすい唇、白い肌。淡い空色の瞳は確かにこちらを見ているが、
視線がどうしても合わない。
年齢は20歳前後だろうか。もっと若いかもしれないし、もっと年を重ねているかもしれない。
幻に向かって話しているような気分がどうしても拭えないまま、ファングは聞き返した。

「マジで?」
「――おい、どういう事だ?誰だよウィルドって」

気短に、トノヤが肩を掴んでくる。首だけで振り向いて、ファングは鋭くささやいた。

「ウィルドは俺のオヤジだよ!」

2007/03/09 00:58 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖
浅葱の杖――其の九/ファング(熊猫)
キャスト:トノヤ・ファング
NPC:ワッチ・月見・アイボリー
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――
「おっ…!?」

やぶ睨みだった双眸を珍しく開いて、トノヤが言葉に詰まる。
もう剣を鞘に収めているワッチと、やたら騒いでいる月見は
状況がわかってないのか、あまり反応はない。
じゃあ、とさらにたたみ掛けるトノヤをさえぎって、ファングは続けた。

「そうだよ…あるんだよここに。『浅葱の杖』が!そうだろ!?」

ばっと、振り向く。アイボリーは答えるかわりに横に体をずらすと、
死角になっていて見えなかった、洞窟の奥を指差した。

ここからでは良く見えない―――ファングは待ちきれず、犬のように奥へ走り出していた。

(やっと見れる…!今度はどんな宝だ!?)

笑みを消せない。顔が火照る。うれしくてしょうがない!

祭壇かと見まごうほど立派な台座に、それは突き立っていた。
長さは、台座から下ろせば一メートルくらいだろうか、『杖』とは言えない、ただの棒。
しかし――

「ガラ…ス?」

氷のような、浅葱色。
これだけの量のガラスを見るのは初めてだった――そしてこれだけ透明度が高く、
しかも滑らかな出来のは。

「なんだよ。ただのガラスじゃねーか」

いつの間に来ていたのか、トノヤが興ざめだと言わんばかりにぼやく。
ファングが反論しようと口を尖らせた時、アイボリーの声が響いた。

『マスターの作ったトラップを抜けてきたなら向こうから来るはずなのに…
どうして上から来たのです?』
「え?」

振り向くと――

やたら豪華な門の向こうに、明らかに殺傷を目的とした巨大な歯車や針が
通路いっぱい、複雑に入り組んでいる。どうやら動力部は上に突き出ているようだが…。

「おい…」
「うん…」

ワッチが額にしわを寄せて、すがるようにこちらを見てくる。同じ空気を感じて頷くと、
腕を組んだトノヤがぽつりと上を見上げて、続けた。

「…さっきのトラップはこの仕掛けの一部だったよーだな」
「う…うひょうっ!ファング君のパパンったらオチャメさんv」
「てゆーか俺ら…入り口間違えて…た?」

頭をかかえてしゃがみ込むファングの後ろで、アイボリーが聞いているのかいないのか、

『製作者のウィルドですら脱出するのに一週間を要したというのに…。あなた、名は?』
「それってただのバカじゃ…いや、俺、ファングっていうんだけど。一応そのウィルドって
俺のオヤジなんだけどさ」

その言葉でようやく、女に表情らしい表情があらわれる。

『そうですか、あなたがファング…。いいでしょう、では最後の謎です。
この謎を解かない限り…『浅葱の杖』はお渡しできません。そしていくらあなたでも、
謎が解けなければここから出すなと、マスターから命じられております』
「え…?な、謎?なんだよそれ!」

わけがわからず目をしばたかせるが、ほかの3人の声が無理やり後押しをする。

「ファング、責任重大だなぁ」
「でも…vこのままここにいてもパラダーイス♪」
「解けなかったらブッ殺すからなマジで」
「お前ら、実は俺を手伝う気ゼロだろ!?」

たまらず立ち上がったファングの背後で、滑るようにアイボリーが声を放った。

『この杖に喰らわれないうちに、この杖をここから運び出してください』

・・・★・・・

 月も太陽も星もいらぬ。欲望は闇に埋まる―――闇を食らう浅葱の杖

2007/03/09 00:59 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖

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