忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/16 21:09 |
11.トリノコイロ/リタ(遠夏)
PTメンバー:ヴィルフリード、ディアン、フレア、リタルード
NPC:エルディオ
場所:どっかの路地
----------------------------------

宿を出て、すぐに胸騒ぎの原因はわかった。

原因は例の六本指の人物でもなければ、未知の人物でもなく----。

「うわっ」

その人物は、リタルードが路地に入ると同時に投げつけた、そのへんで拾ってきた空
の酒瓶に声をあげる。
ビンが地面にあたって割れたのを見て、リタルードはいらいらと言った。

「いったい何のようなのさ----エルディオ」

年のころは二十代半ばか。
闇の中では確認しがたいが、髪の色は茶色だったと記憶している。
リタルードの知っている限りでは、自分と血のつながった人間には茶色の髪と赤毛が
多い。

「可愛いオトウトだか従弟だかの顔を唐突に見たくなったっていうのは理由にならな
いか?」

「単に会うだけならそんなもの使う必要ないだろう?」

エルディオの右手にあるのは一枚の札。
血のつながりのある者を呼ぶのなら魔力を必要としないとか、その類のものだろう。


その手に、街道から路地に入り込むわずかな明かりを受けて光る、糸のようなものが
握られているのに気づいて、リタルードはより強い苛立ちを感じる。
あれが自分の髪の毛だとしたら、いつ採取されたなど考えたくも無い。

「あっはっは、そんなに敵意剥き出しだと頭悪そうにみえるぞ」

「別にアンタに姦計を用いようとか考えるほど僕アンタに関心ないから」

「あんまり嫌われるの、俺の精神衛生上あまりよろしくないんだが、
 もう少しこびて甘えたりしてみないか?」

「絶対嫌だ」

「あのさー、いくら馬鹿っぽいやりかたでも否定されるのって辛いんだぞ」

「帰れ」

身も蓋も無い言葉でリタルードに全面拒否されつづけるエルディオは、にやりと顔を
歪めて目を細める。

「お前…ゼクスって奴知ってるか?」

「なっ…」

「お、何だ知ってるみたいだな」

「……もう会ったよ」

リタルードは一瞬詰まって、結局正直に言った。

「会ったと言ってもちょっと見ただけどね」

「へぇ、じゃあ六本目の指持ってるのも見たのか? 
 興味持ったんだろう?」

「……」

「お前、一年ほど前、人体変成について執拗に知識集めてたよな。
 ちょっと俺らの中でも話題になってたんでだぜ」

優位にいることを自覚している者の、神経を切りつけるような口調にリタルードは奥
歯をかみ締める。
感情を叩きつける。

「お前たちには関係ないことだろっ!」

「関係? 
 あると思うぜ。だって俺らの弟のことだしな」

あ。
その言外に含まれるものを悟って、リタルードは激情がすっと冷めるのを感じた。
熱が引いて、冷たい笑いをこらえる。

こいつらは何を勘違いしているんだろう。
自分が、人体変成についてしりたがってるのは、そんなつまらない理由からじゃない
のに。

それならいい。自分が自覚している中では、一番触れられたくないと思っているもの
を理解していないのならば。
それなら、何を言われても嘲ることができる。

「ほらよ」

突然自分に向かって放られたものを受け取って、リタルードは目を丸くした。

皮でできた鞘に入った、とくに目立つ飾りも無いどこにでもあるような短刀。それに
細い鎖が幾重にも巻かれている。つまりは、見た目通りのものではないということ
だ。

「…なにコレ」

「その鎖ここでとるなよ」

「だからこれ何?」

「大した力はないらしい。だが、何故かゼクスが探してる」

「何でそんなこと知ってんのさ? というか何でここに」

リタルードのその問いに、エルディオは今までとは違う種類の笑みを浮かべて言っ
た。
いたずらを思いついてわくわくしている子どものような。

「俺が奴から盗ったから」

「はぁ?!」

人に驚かされたのは久しぶりかも知れない。

「…友達とか、言わないよね」

「昨日、初対面」

「目的は? てかどうやって?」

「まぁ、いろいろこじこじやってだなぁ。目的はアレだ。
 ”怒った顔も見たかったから”」

心底楽しそうにエルディオが言うのに、リタルードは眩暈を覚えるのを禁じえなかっ
た。

『どうやって』はまだいい。強い力を持つものは、その力に頼りすぎて思わぬスキが
生じるからとか、エルディオが本当にいろいろやったとか、あるいは彼の言葉すべて
が真っ赤な嘘だとか、いくらでも説明はつく。

しかし、理由というのは突拍子も無ければ無いほど、不思議と真実味を増すものだと
いうことを、リタルードは思い知った。

「じゃあ、用事終わったからお前もう帰れ」

「何のつもり? こんなもの人に押し付けて」

「返したいなら返してもいいんだぜ」

「…もらっとく。僕あんまり豊かな生活してなかったから、基本的にがめついんだよ
ね」

フレアはあのとき頷いてはいたけれど、本心からではないだろう。
関わらせたくない。彼女ならそう考えるはず。

ならば自分が当事者になるのが一番手っ取り早い。

そのままリタルードは踵を返す。
その後ろ姿が見えなくなってから、エルディオはかがんで、割れたビンの破片をひと
つ拾い上げる。
ぽつりとつぶやいた。

「また、嫌われたかな」

その表情は、先ほどまでの相手を傷つけるための笑みではなかったが、それでも楽し
げなものだった。
PR

2007/02/11 14:32 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
12.バニラホワイト/ディアン(光)
PTメンバー:ヴィルフリード、ディアン、フレア、リタルード
     場所:宿屋(2F)

 「ゴァッ!!」
 自分の口から漏れた声とも吐息ともつかない微妙なそれを、俺は人事のように聞い
ていた。
 目の前には、数日前に分かれたばかりのフレアが、そして見たことも無い中年の男
が、そこにいたのだ。
 それだけなら、自分の中でどうにか誤魔化し歪曲して、無害な事実として捕らえる
ことが出来たかもしれない。
 だが、世の中は皮肉なもんだ。
 さっきのフレアの台詞、「付き合おう。私の部屋でよければ。」
 フレアをおどろかそうと、あえて気配を消してしまっていたがために俺は階段のす
ぐ下で、つまり二人のすぐ背後でその言葉を聞いてしまったのだ・・・!
 幾ら数日ぶりに聞くフレアの声だからといって、聞き間違いでは、ありえない。
 ましてや、上物のワインと、グラスを二つ持っている男が一緒では、どう考えたっ
て友好的にまとまるわけが無い。
 
 なぜ?
 なんで、俺と別れて、フレアが他の男と一緒に居る?
 頭の中で、色んな想像と妄想が入り混じり、一瞬視界が極彩色に染まる。
 怒り、嫉妬・・・それらの、黒い感情の色に。

 「あ、その、これは・・・」
 若干の罪悪感の浮かんだ瞳で何かを言い募ろうとしたフレアを、感情のままに、俺
は拒絶した。
 「悪ぃ。人違いだったみたいだ。」
 それだけを言い放って、俺は真っ直ぐ自分の部屋へと向かった。
 恐らく、さえぎろうとしたのだろう。
 途中、軽くフレアと肩が当たったが、感情は俺の乏しい罪悪感を軽く上回った。
 ためらいもせずに歩を進める。
 どん、と軽い衝撃と共に、フレアがその場に尻餅をついたのが分かったが、それで
も視線は下に向けない。
 見てしまうと、俺の怒りがなえてしまいそうで怖かったからだ。
 すまない、と一言謝られれば、俺の怒りなどたやすく雲散霧消してしまうだろう。
 それが分かっているだけに、歩みは止められなかった。
 後ろで、男が動いたのが分かった。
 
 来いよ!ぶちまけてやる・・・!
 
 心中で、身構える。
 いっそのこと、そのまま男が飛び掛ってきていれば、俺の怒りは全てそちらに向か
うことで打ち消されていたかもしれない。
 だが、恐らくはフレアが止めたのだろう。
 男が靴底を鳴らして踏みとどまる音が聞こえ、次いで、
 「女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!」
 という罵声が背中に浴びせれた。
 
 (泣いたか・・・泣かせたのか、俺が。)
 
 秀麗なフレアの顔を伝う涙を想像して、俺の胸は一瞬重くなったが、それもすぐに
胸中の炎に掻き消された。
 なに、すぐに無き止むさ。
 分かれてすぐに男を作るような女にゃ、いい薬だろうさ。
 その一瞬燃え上がった激しい憎悪が、そのまま彼女に対する好意の裏返しだという
ことに俺が気づいたのは部屋に入ってから数刻が過ぎてからだった・・・
 後で考えれば幼稚の極み、勘違いにもほどがある、なんとも赤面もののハナシなん
だけどな。
 とにもかくにも、俺は何とか部屋を間違うことなくドアを開け、装備も取らずにそ
のままベッドに寝っ転がった。
 そして、目を閉じて何も考えないように、頭の中を空っぽにしていったんだ。
 このまま考え込んでしまうと、本当にろくでもない方向に進んじまうのが分かり
きってたからな。

 目を閉じてちょっとしてから、ドアが鳴った。
 軽い、控えめなノックの音だ。
 この場合、誰が来たかは分かるだろ?
 
 さっきまであんなに怒り狂っておきながら、その瞬間俺の中で怒りがすうっと消え
て、代わりに自分でも不思議なくらい、嬉しさがこみ上げて来たな。
 やべぇ、俺はこんなにフレアを待ってたのか?
 変な気持ちになりながら、俺はわざと足音を立てて扉まで行き、ドアを開けた。
 

2007/02/11 14:32 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
13.アカネ/フレア(熊猫)
キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:なし
場所:宿屋
―――――――――――――――

尻餅をついて――その振動で、なのだろうか。一粒だけ涙が落ちた。
瞳は大きく見開いたまま、ただ呆然と、頬に水のあとを感じている。
もう雫は落ちてこず、既に乾こうとしていた。

悲しみでもない。
怒りでもない。
今感じているこの感情に、先人は名前はつけていない。

――強いて言うなら、喪失感。

その、どの感情に押し出されたのかわからない、たった一筋の
涙の跡をみとって、ヴィルフリードが歯噛みした。
ぎし、と安っぽい宿の床が軋む。見れば、目の前にある彼の足が
肩幅ぶんほど開いている。視線はディアンの背中。

「っ!」

瞬間、フレアは尻餅をついたまま、がばと両手でヴィルフリードの足に
とりすがっていた。
数歩、彼がたたらを踏む。複雑な表情でこちらを見下ろしてくる彼に、
かぶりを振った。

ヴィルフリードは舌打ちをすると、そのまま苛立ちを吐き出すようにして、
彼の消えた廊下に向かってなにやら毒づいた――
が、何を言ったかは聞いていなかった。

・・・★・・・

ヴィルフリードに簡単に事情を説明してから、その足で、フレアはディアンの
消えた部屋の前に立っていた。
ノックをしようと軽く握ったこぶしを胸の高さまで上げて――ためらう。

(なんて言えばいい?)

そもそも、なぜ彼はあんなに怒っていたのだろうか。
男と一緒に酒を飲もうとしていたから嫉妬した?それはまずありえない。
絶世の美女だというならまだしも、ディアンがこんな自分に気をかけるわけがない。

わからない。
わからないが、彼が不快に感じたことは確かだ。
ここで別れるというならそれでいいだろう。一人には慣れている。
ゼクスの事もある。
だが、誤解があれば解き、こちらに非があるのなら謝りたい。

顔を上げて、ノックをする。
一拍ののち、数歩の足音がして、ドアが開いた。

ディアンはいつも通りだった。白で統一された装備、眼鏡、相変わらずの長身。
そのてっぺんから、目だけでこちらを見下ろしている。

「…話がしたい」

心臓が痛いほどに縮む。
とにかく眉の動きひとつでも見逃さまいと、ディアンの顔を見る。
それでも特に表情を作らないまま、彼は一歩下がって道を開けた。

視線で促されて、彼の部屋に足を踏み入れる。
おそらく到着したばかりなのだろう。備品も使った様子がない。

ばたん、と後ろでドアの閉まる音を聞いた。続いて、近づいてくる彼の足音。
ディアンの足音はそのままフレアの横を通り過ぎ、一脚しかない椅子を
持ってくると、背もたれに片肘を置いて、腰掛ける。

フレアは立ちすくんだまま、口を開いた。

「先程の人はヴィルフリード。今日、出会ったばかりだ…もう一人、
リタという人にも会った」

あいづちを打つでもなく、ディアンはこちらを見ている。

「さっきは…私が下の酒場に行こうとしたら、ヴィルフリードがちょうど来て、
 一緒に飲まないかって誘ってくれたんだ。酒場はもう閉まっていたから」

目を伏せ、左の肘あたりを右手で掴む。
ディアンは足を組んだだけで、やはり返事は返ってこない。

「ただ、それだけの事だ…。ディアンを嫌な気持にさせてしまったなら、謝る」

答えを待つ――のは無駄か。
顔を上げて、小さく会釈してからドアに歩み寄る。
ドアノブに手をかけたとき、意識せずに言葉が出た。

「――できることなら」

顔だけで振り返る。

「できることなら、ディアンとはもう少し一緒にいたかった…けれど、どうするかは
 ディアンに任せる。ここで別れるのなら、私は明日発つ」

後半はもう、顔はドアに向けていた。
ドアを開けて、廊下に出る。

ドアが閉まる音を聞くと同時、フレアは胸に強烈な痛みを覚えてうずくまった。


これでいい。


2007/02/11 14:32 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
14.ダークスレートグレイ dark slate gray/ヴィルフリード(フンヅワーラー)
ャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:なし
場所:宿屋
---------------------------------------

「すまなかったな……」

 どうしたらよいのか、分からず、半ば硬直しているヴィルフリードに、フレア
は目を赤くしながらそう言った。

「………大丈夫か?」

 ヴィルフリードは、自分でも、何が大丈夫なんだ、と思うのだが、このような
場面ではお決まりの台詞しか出てこない。
 そして、彼女も、お決まりの返しをするんだ。ヴィルフリードはそう確信す
る。なんていったって、わかりやすい、彼女のことだ。

「ああ……」

「アイツは……フレアのいい人か何かかい?」

「……違う。が、大切な、仲間なんだ。ディアンというんだが…。
 ちょっとあって……少しだけ別行動してて、すぐに落ち合うはずだったんだ」

「……じゃぁ……なんでアイツが」

「それでも」

 ヴィルフリードの語尾に重ね、強く、フレアの言葉が塞ぐ。

「それでも、私は謝らなければならない。不快な思いをさせてしまったのなら
ば」

 意外であった。
 彼女の場合、自分に非が無ければ、謝る必要の無いことをしない性格だと、
ヴィルフリードは思っていた。

 あぁ。そうか。
 あの白尽くめの男が、別れを極度に怖れる原因であり、……更に言ってしまえ
ば、フレアの弱さであり、強さである源なのだろう。

 フレアが立ち上がる。

「……今日は、本当にすまなかった。こんなことにもなってしまって……。
 ヴィルフリードは、気にしないでくれ。後は、私がすることだから」

 目の端が赤いまま、少し微笑むフレアを見て、ヴィルフリードは謂れも無く、
なんだか悲しくなった。
 だが、ヴィルフリードは、「そうか」と、一言だけ言い、それ以上何も言わ
ず、部屋に戻った。



 部屋に設置されているランプに火も灯さず、月明かりだけで、ヴィルフリード
は部屋で酒を飲んでいた。

「不味い……酒だ」

 折角、外に繰り出してまで買ってきたというのに、台無しだ。酔いもしない。
が、そのまま飲み続ける。

『女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!』

 あの時、怒りというよりも、苛立ちが身を焦がしていた。
 勘違いしているディアンとか言う男の頭の悪さにも。
 弁護もせず、それどころか崩れ落ちるフレアの脆さにも。
 自分の、つまらないからかいの混ざった言動が発端だということにも。

 だから、八つ当たりのように奴を振り向かせたかった。
 ディアンに、涙を流しているフレアを見せつけ、その顔が更に歪むのが見た
かった。
 しかし、それをフレアに止められ、ヴィルフリードは、相手の傷つく言葉を、
わざと選んで吐き捨てた。
 それでも、ディアンは振り返らなかった。
 今思うと、振り向かないで良かったと思う。

「どっちがクソ野郎だ……」

 あぁ。早く明日にならないだろうか。
 明日も、リタと無意味な掛け合いをして、何も考えずに楽になりたい。

 そう、祈るように、ヴィルフリードは机に倒れこみ、目を閉じた。

2007/02/11 14:33 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors
15.サンライズイエロー/リタ(遠夏)
PTメンバー:ヴィルフリード、ディアン、フレア、リタルード
NPC:なし
場所:宿屋
-------------------------------

空は薄い青に染まり、星の姿も可視でなくなるころ。

「おっはよーございまーす!」

リタルード・ルーマは今日も無駄に元気だ。

「ねー、朝だよ。起きようよ僕が暇だから」

カーテンの隙間からわずかに差し込む弱々しい光は、まだ太陽が顔を覗かせていない
証拠。
うぐぐ、とうめき声をあげた犠牲者はもちろん。

「……なんでいるんだよ」

「僕がヴィルフリードさんの部屋の位置チェックして無かったとでも思ってるの? 
起きようよ」

「…男の寝室に自分から進んで入ってくるのってものすごく感心しねぇぞ」

ヴィルフリードはぶつぶつ言いながらも身を起こす。寝起きはいいらしい。

「朝だからいいんだよ。それに僕気にしないし」

「俺は気にするんだ」

「リクエストあるなら添い寝くらいはするけど」

「いらん!」

リタルードがカーテンを開けると、東向きだったらしく空の端に赤みがさすのが見え
た。
窓を開けて冷たい清浄な空気を取り入れたい思いにかられたが、寝起きの人間のこと
を考慮して我慢する。

「アンタもまだ寝てればいいだろうに…」

「んー、実は僕徹夜しちゃってさ。今妙に頭冴えてて寝れないんだよねー」

「寝ろよ…」

「だって本買いだめしちゃったんだもん」

「俺は眠いんだ」

「『ブンツカ=ドンドンと子猫たち』って面白いね」

「知らん」

「昨日なんかあった?」

なにげなく差し込まれた一言にヴィルフリードは言葉に詰まる。

「…フレアの仲間とかいう男に会った」

「へぇ?」

意外だった。
リタルードは、ただ単に六本指の人物がもう一度現れたとか、自分の兄がもしかした
ら自分の接触した人物に興味を持ったのではなどの可能性を思いついて尋ねてみたの
だけれど。

しかも、どうやらただ会っただけではないらしい。

「…もう少し寝かせてくれ」

不機嫌な人間をつついて喋らせても、別に差し迫った必要が無いのならば、特に利益
はない。
しばしの沈黙のあと絞りだされたその言葉に、リタルードは従うことにする。

「ん、じゃあ朝ご飯は来てよね」

そのまま立ち去ろうとして、ふいに眩暈を感じた。
完全に健康体の自分には珍しく、寝不足で貧血を起こしたのか-----。

つんのめり、近くにあった椅子に足を引っ掛ける。そのまま倒れた先はあまり広くは
無い宿のこと。

「なっ」

開いたままのドアの外から聞こえた驚きの声に、リタルードがヴィルフリードを下敷
きにして振り向いた先にいたのは、白い装束の見知らぬ人物だった。


2007/02/11 14:34 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

<<前のページ | HOME | 次のページ>>
忍者ブログ[PR]