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2025/03/10 06:56 |
11.トリノコイロ/リタ(遠夏)
PTメンバー:ヴィルフリード、ディアン、フレア、リタルード
NPC:エルディオ
場所:どっかの路地
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宿を出て、すぐに胸騒ぎの原因はわかった。

原因は例の六本指の人物でもなければ、未知の人物でもなく----。

「うわっ」

その人物は、リタルードが路地に入ると同時に投げつけた、そのへんで拾ってきた空
の酒瓶に声をあげる。
ビンが地面にあたって割れたのを見て、リタルードはいらいらと言った。

「いったい何のようなのさ----エルディオ」

年のころは二十代半ばか。
闇の中では確認しがたいが、髪の色は茶色だったと記憶している。
リタルードの知っている限りでは、自分と血のつながった人間には茶色の髪と赤毛が
多い。

「可愛いオトウトだか従弟だかの顔を唐突に見たくなったっていうのは理由にならな
いか?」

「単に会うだけならそんなもの使う必要ないだろう?」

エルディオの右手にあるのは一枚の札。
血のつながりのある者を呼ぶのなら魔力を必要としないとか、その類のものだろう。


その手に、街道から路地に入り込むわずかな明かりを受けて光る、糸のようなものが
握られているのに気づいて、リタルードはより強い苛立ちを感じる。
あれが自分の髪の毛だとしたら、いつ採取されたなど考えたくも無い。

「あっはっは、そんなに敵意剥き出しだと頭悪そうにみえるぞ」

「別にアンタに姦計を用いようとか考えるほど僕アンタに関心ないから」

「あんまり嫌われるの、俺の精神衛生上あまりよろしくないんだが、
 もう少しこびて甘えたりしてみないか?」

「絶対嫌だ」

「あのさー、いくら馬鹿っぽいやりかたでも否定されるのって辛いんだぞ」

「帰れ」

身も蓋も無い言葉でリタルードに全面拒否されつづけるエルディオは、にやりと顔を
歪めて目を細める。

「お前…ゼクスって奴知ってるか?」

「なっ…」

「お、何だ知ってるみたいだな」

「……もう会ったよ」

リタルードは一瞬詰まって、結局正直に言った。

「会ったと言ってもちょっと見ただけどね」

「へぇ、じゃあ六本目の指持ってるのも見たのか? 
 興味持ったんだろう?」

「……」

「お前、一年ほど前、人体変成について執拗に知識集めてたよな。
 ちょっと俺らの中でも話題になってたんでだぜ」

優位にいることを自覚している者の、神経を切りつけるような口調にリタルードは奥
歯をかみ締める。
感情を叩きつける。

「お前たちには関係ないことだろっ!」

「関係? 
 あると思うぜ。だって俺らの弟のことだしな」

あ。
その言外に含まれるものを悟って、リタルードは激情がすっと冷めるのを感じた。
熱が引いて、冷たい笑いをこらえる。

こいつらは何を勘違いしているんだろう。
自分が、人体変成についてしりたがってるのは、そんなつまらない理由からじゃない
のに。

それならいい。自分が自覚している中では、一番触れられたくないと思っているもの
を理解していないのならば。
それなら、何を言われても嘲ることができる。

「ほらよ」

突然自分に向かって放られたものを受け取って、リタルードは目を丸くした。

皮でできた鞘に入った、とくに目立つ飾りも無いどこにでもあるような短刀。それに
細い鎖が幾重にも巻かれている。つまりは、見た目通りのものではないということ
だ。

「…なにコレ」

「その鎖ここでとるなよ」

「だからこれ何?」

「大した力はないらしい。だが、何故かゼクスが探してる」

「何でそんなこと知ってんのさ? というか何でここに」

リタルードのその問いに、エルディオは今までとは違う種類の笑みを浮かべて言っ
た。
いたずらを思いついてわくわくしている子どものような。

「俺が奴から盗ったから」

「はぁ?!」

人に驚かされたのは久しぶりかも知れない。

「…友達とか、言わないよね」

「昨日、初対面」

「目的は? てかどうやって?」

「まぁ、いろいろこじこじやってだなぁ。目的はアレだ。
 ”怒った顔も見たかったから”」

心底楽しそうにエルディオが言うのに、リタルードは眩暈を覚えるのを禁じえなかっ
た。

『どうやって』はまだいい。強い力を持つものは、その力に頼りすぎて思わぬスキが
生じるからとか、エルディオが本当にいろいろやったとか、あるいは彼の言葉すべて
が真っ赤な嘘だとか、いくらでも説明はつく。

しかし、理由というのは突拍子も無ければ無いほど、不思議と真実味を増すものだと
いうことを、リタルードは思い知った。

「じゃあ、用事終わったからお前もう帰れ」

「何のつもり? こんなもの人に押し付けて」

「返したいなら返してもいいんだぜ」

「…もらっとく。僕あんまり豊かな生活してなかったから、基本的にがめついんだよ
ね」

フレアはあのとき頷いてはいたけれど、本心からではないだろう。
関わらせたくない。彼女ならそう考えるはず。

ならば自分が当事者になるのが一番手っ取り早い。

そのままリタルードは踵を返す。
その後ろ姿が見えなくなってから、エルディオはかがんで、割れたビンの破片をひと
つ拾い上げる。
ぽつりとつぶやいた。

「また、嫌われたかな」

その表情は、先ほどまでの相手を傷つけるための笑みではなかったが、それでも楽し
げなものだった。
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2007/02/11 14:32 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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