PTメンバー:ヴィルフリード、ディアン、フレア、リタルード
場所:宿屋(2F)
「ゴァッ!!」
自分の口から漏れた声とも吐息ともつかない微妙なそれを、俺は人事のように聞い
ていた。
目の前には、数日前に分かれたばかりのフレアが、そして見たことも無い中年の男
が、そこにいたのだ。
それだけなら、自分の中でどうにか誤魔化し歪曲して、無害な事実として捕らえる
ことが出来たかもしれない。
だが、世の中は皮肉なもんだ。
さっきのフレアの台詞、「付き合おう。私の部屋でよければ。」
フレアをおどろかそうと、あえて気配を消してしまっていたがために俺は階段のす
ぐ下で、つまり二人のすぐ背後でその言葉を聞いてしまったのだ・・・!
幾ら数日ぶりに聞くフレアの声だからといって、聞き間違いでは、ありえない。
ましてや、上物のワインと、グラスを二つ持っている男が一緒では、どう考えたっ
て友好的にまとまるわけが無い。
なぜ?
なんで、俺と別れて、フレアが他の男と一緒に居る?
頭の中で、色んな想像と妄想が入り混じり、一瞬視界が極彩色に染まる。
怒り、嫉妬・・・それらの、黒い感情の色に。
「あ、その、これは・・・」
若干の罪悪感の浮かんだ瞳で何かを言い募ろうとしたフレアを、感情のままに、俺
は拒絶した。
「悪ぃ。人違いだったみたいだ。」
それだけを言い放って、俺は真っ直ぐ自分の部屋へと向かった。
恐らく、さえぎろうとしたのだろう。
途中、軽くフレアと肩が当たったが、感情は俺の乏しい罪悪感を軽く上回った。
ためらいもせずに歩を進める。
どん、と軽い衝撃と共に、フレアがその場に尻餅をついたのが分かったが、それで
も視線は下に向けない。
見てしまうと、俺の怒りがなえてしまいそうで怖かったからだ。
すまない、と一言謝られれば、俺の怒りなどたやすく雲散霧消してしまうだろう。
それが分かっているだけに、歩みは止められなかった。
後ろで、男が動いたのが分かった。
来いよ!ぶちまけてやる・・・!
心中で、身構える。
いっそのこと、そのまま男が飛び掛ってきていれば、俺の怒りは全てそちらに向か
うことで打ち消されていたかもしれない。
だが、恐らくはフレアが止めたのだろう。
男が靴底を鳴らして踏みとどまる音が聞こえ、次いで、
「女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!」
という罵声が背中に浴びせれた。
(泣いたか・・・泣かせたのか、俺が。)
秀麗なフレアの顔を伝う涙を想像して、俺の胸は一瞬重くなったが、それもすぐに
胸中の炎に掻き消された。
なに、すぐに無き止むさ。
分かれてすぐに男を作るような女にゃ、いい薬だろうさ。
その一瞬燃え上がった激しい憎悪が、そのまま彼女に対する好意の裏返しだという
ことに俺が気づいたのは部屋に入ってから数刻が過ぎてからだった・・・
後で考えれば幼稚の極み、勘違いにもほどがある、なんとも赤面もののハナシなん
だけどな。
とにもかくにも、俺は何とか部屋を間違うことなくドアを開け、装備も取らずにそ
のままベッドに寝っ転がった。
そして、目を閉じて何も考えないように、頭の中を空っぽにしていったんだ。
このまま考え込んでしまうと、本当にろくでもない方向に進んじまうのが分かり
きってたからな。
目を閉じてちょっとしてから、ドアが鳴った。
軽い、控えめなノックの音だ。
この場合、誰が来たかは分かるだろ?
さっきまであんなに怒り狂っておきながら、その瞬間俺の中で怒りがすうっと消え
て、代わりに自分でも不思議なくらい、嬉しさがこみ上げて来たな。
やべぇ、俺はこんなにフレアを待ってたのか?
変な気持ちになりながら、俺はわざと足音を立てて扉まで行き、ドアを開けた。
場所:宿屋(2F)
「ゴァッ!!」
自分の口から漏れた声とも吐息ともつかない微妙なそれを、俺は人事のように聞い
ていた。
目の前には、数日前に分かれたばかりのフレアが、そして見たことも無い中年の男
が、そこにいたのだ。
それだけなら、自分の中でどうにか誤魔化し歪曲して、無害な事実として捕らえる
ことが出来たかもしれない。
だが、世の中は皮肉なもんだ。
さっきのフレアの台詞、「付き合おう。私の部屋でよければ。」
フレアをおどろかそうと、あえて気配を消してしまっていたがために俺は階段のす
ぐ下で、つまり二人のすぐ背後でその言葉を聞いてしまったのだ・・・!
幾ら数日ぶりに聞くフレアの声だからといって、聞き間違いでは、ありえない。
ましてや、上物のワインと、グラスを二つ持っている男が一緒では、どう考えたっ
て友好的にまとまるわけが無い。
なぜ?
なんで、俺と別れて、フレアが他の男と一緒に居る?
頭の中で、色んな想像と妄想が入り混じり、一瞬視界が極彩色に染まる。
怒り、嫉妬・・・それらの、黒い感情の色に。
「あ、その、これは・・・」
若干の罪悪感の浮かんだ瞳で何かを言い募ろうとしたフレアを、感情のままに、俺
は拒絶した。
「悪ぃ。人違いだったみたいだ。」
それだけを言い放って、俺は真っ直ぐ自分の部屋へと向かった。
恐らく、さえぎろうとしたのだろう。
途中、軽くフレアと肩が当たったが、感情は俺の乏しい罪悪感を軽く上回った。
ためらいもせずに歩を進める。
どん、と軽い衝撃と共に、フレアがその場に尻餅をついたのが分かったが、それで
も視線は下に向けない。
見てしまうと、俺の怒りがなえてしまいそうで怖かったからだ。
すまない、と一言謝られれば、俺の怒りなどたやすく雲散霧消してしまうだろう。
それが分かっているだけに、歩みは止められなかった。
後ろで、男が動いたのが分かった。
来いよ!ぶちまけてやる・・・!
心中で、身構える。
いっそのこと、そのまま男が飛び掛ってきていれば、俺の怒りは全てそちらに向か
うことで打ち消されていたかもしれない。
だが、恐らくはフレアが止めたのだろう。
男が靴底を鳴らして踏みとどまる音が聞こえ、次いで、
「女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!」
という罵声が背中に浴びせれた。
(泣いたか・・・泣かせたのか、俺が。)
秀麗なフレアの顔を伝う涙を想像して、俺の胸は一瞬重くなったが、それもすぐに
胸中の炎に掻き消された。
なに、すぐに無き止むさ。
分かれてすぐに男を作るような女にゃ、いい薬だろうさ。
その一瞬燃え上がった激しい憎悪が、そのまま彼女に対する好意の裏返しだという
ことに俺が気づいたのは部屋に入ってから数刻が過ぎてからだった・・・
後で考えれば幼稚の極み、勘違いにもほどがある、なんとも赤面もののハナシなん
だけどな。
とにもかくにも、俺は何とか部屋を間違うことなくドアを開け、装備も取らずにそ
のままベッドに寝っ転がった。
そして、目を閉じて何も考えないように、頭の中を空っぽにしていったんだ。
このまま考え込んでしまうと、本当にろくでもない方向に進んじまうのが分かり
きってたからな。
目を閉じてちょっとしてから、ドアが鳴った。
軽い、控えめなノックの音だ。
この場合、誰が来たかは分かるだろ?
さっきまであんなに怒り狂っておきながら、その瞬間俺の中で怒りがすうっと消え
て、代わりに自分でも不思議なくらい、嬉しさがこみ上げて来たな。
やべぇ、俺はこんなにフレアを待ってたのか?
変な気持ちになりながら、俺はわざと足音を立てて扉まで行き、ドアを開けた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: