ャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:なし
場所:宿屋
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「すまなかったな……」
どうしたらよいのか、分からず、半ば硬直しているヴィルフリードに、フレア
は目を赤くしながらそう言った。
「………大丈夫か?」
ヴィルフリードは、自分でも、何が大丈夫なんだ、と思うのだが、このような
場面ではお決まりの台詞しか出てこない。
そして、彼女も、お決まりの返しをするんだ。ヴィルフリードはそう確信す
る。なんていったって、わかりやすい、彼女のことだ。
「ああ……」
「アイツは……フレアのいい人か何かかい?」
「……違う。が、大切な、仲間なんだ。ディアンというんだが…。
ちょっとあって……少しだけ別行動してて、すぐに落ち合うはずだったんだ」
「……じゃぁ……なんでアイツが」
「それでも」
ヴィルフリードの語尾に重ね、強く、フレアの言葉が塞ぐ。
「それでも、私は謝らなければならない。不快な思いをさせてしまったのなら
ば」
意外であった。
彼女の場合、自分に非が無ければ、謝る必要の無いことをしない性格だと、
ヴィルフリードは思っていた。
あぁ。そうか。
あの白尽くめの男が、別れを極度に怖れる原因であり、……更に言ってしまえ
ば、フレアの弱さであり、強さである源なのだろう。
フレアが立ち上がる。
「……今日は、本当にすまなかった。こんなことにもなってしまって……。
ヴィルフリードは、気にしないでくれ。後は、私がすることだから」
目の端が赤いまま、少し微笑むフレアを見て、ヴィルフリードは謂れも無く、
なんだか悲しくなった。
だが、ヴィルフリードは、「そうか」と、一言だけ言い、それ以上何も言わ
ず、部屋に戻った。
部屋に設置されているランプに火も灯さず、月明かりだけで、ヴィルフリード
は部屋で酒を飲んでいた。
「不味い……酒だ」
折角、外に繰り出してまで買ってきたというのに、台無しだ。酔いもしない。
が、そのまま飲み続ける。
『女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!』
あの時、怒りというよりも、苛立ちが身を焦がしていた。
勘違いしているディアンとか言う男の頭の悪さにも。
弁護もせず、それどころか崩れ落ちるフレアの脆さにも。
自分の、つまらないからかいの混ざった言動が発端だということにも。
だから、八つ当たりのように奴を振り向かせたかった。
ディアンに、涙を流しているフレアを見せつけ、その顔が更に歪むのが見た
かった。
しかし、それをフレアに止められ、ヴィルフリードは、相手の傷つく言葉を、
わざと選んで吐き捨てた。
それでも、ディアンは振り返らなかった。
今思うと、振り向かないで良かったと思う。
「どっちがクソ野郎だ……」
あぁ。早く明日にならないだろうか。
明日も、リタと無意味な掛け合いをして、何も考えずに楽になりたい。
そう、祈るように、ヴィルフリードは机に倒れこみ、目を閉じた。
NPC:なし
場所:宿屋
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「すまなかったな……」
どうしたらよいのか、分からず、半ば硬直しているヴィルフリードに、フレア
は目を赤くしながらそう言った。
「………大丈夫か?」
ヴィルフリードは、自分でも、何が大丈夫なんだ、と思うのだが、このような
場面ではお決まりの台詞しか出てこない。
そして、彼女も、お決まりの返しをするんだ。ヴィルフリードはそう確信す
る。なんていったって、わかりやすい、彼女のことだ。
「ああ……」
「アイツは……フレアのいい人か何かかい?」
「……違う。が、大切な、仲間なんだ。ディアンというんだが…。
ちょっとあって……少しだけ別行動してて、すぐに落ち合うはずだったんだ」
「……じゃぁ……なんでアイツが」
「それでも」
ヴィルフリードの語尾に重ね、強く、フレアの言葉が塞ぐ。
「それでも、私は謝らなければならない。不快な思いをさせてしまったのなら
ば」
意外であった。
彼女の場合、自分に非が無ければ、謝る必要の無いことをしない性格だと、
ヴィルフリードは思っていた。
あぁ。そうか。
あの白尽くめの男が、別れを極度に怖れる原因であり、……更に言ってしまえ
ば、フレアの弱さであり、強さである源なのだろう。
フレアが立ち上がる。
「……今日は、本当にすまなかった。こんなことにもなってしまって……。
ヴィルフリードは、気にしないでくれ。後は、私がすることだから」
目の端が赤いまま、少し微笑むフレアを見て、ヴィルフリードは謂れも無く、
なんだか悲しくなった。
だが、ヴィルフリードは、「そうか」と、一言だけ言い、それ以上何も言わ
ず、部屋に戻った。
部屋に設置されているランプに火も灯さず、月明かりだけで、ヴィルフリード
は部屋で酒を飲んでいた。
「不味い……酒だ」
折角、外に繰り出してまで買ってきたというのに、台無しだ。酔いもしない。
が、そのまま飲み続ける。
『女を泣かす男なんざ、クソ野郎だ!』
あの時、怒りというよりも、苛立ちが身を焦がしていた。
勘違いしているディアンとか言う男の頭の悪さにも。
弁護もせず、それどころか崩れ落ちるフレアの脆さにも。
自分の、つまらないからかいの混ざった言動が発端だということにも。
だから、八つ当たりのように奴を振り向かせたかった。
ディアンに、涙を流しているフレアを見せつけ、その顔が更に歪むのが見た
かった。
しかし、それをフレアに止められ、ヴィルフリードは、相手の傷つく言葉を、
わざと選んで吐き捨てた。
それでも、ディアンは振り返らなかった。
今思うと、振り向かないで良かったと思う。
「どっちがクソ野郎だ……」
あぁ。早く明日にならないだろうか。
明日も、リタと無意味な掛け合いをして、何も考えずに楽になりたい。
そう、祈るように、ヴィルフリードは机に倒れこみ、目を閉じた。
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