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2024/11/07 12:33 |
「パラノイア 第九章 夕日へ向かって 」/オルレアン(Caku)
PC:オルレアン・ルフト・ベアトリーチェ
NPC:ウィンドブルフ・白熊アメリア・賊長アドルフ
場所:スズシロ山脈中腹~盗賊の砦

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




『この男、いかがしますか?』


そりゃあもう、文章では言い切れないあーんなことやそーんな悪辣獰悪非道惨
い攻撃の後、精神、いや魂までも破壊されたアドルフの片足を掴んだ黒騎士は
無情な問いかけを主であるオカマに問うた。
アドルフはまるで、打ち上げられた魚のように痙攣している。

「ぶっちゃけ今殺したいけど、それはいいわ。
あぁ、あとそいつをぶち込む際に名誉毀損と軍事妨害罪追加なさいな。
それとそうね、適当に国家反逆罪もつけておいて。二桁の禁固刑にして二度と
歩けないようにしてやるわ」

確実に権力の横暴である。
こんな男(オカマ)が少佐という地位が非常に謎だ。いずれ正統エディウスが
崩壊する日も近かろうと思う気がするが、彼にとって国家よりも忠誠すべきは
愛しい我が子なのである。もはや娘こそ絶対君主である。

「さて★と、後は………」

笑顔で振り返ると、向こうも察したのか笑顔で返してきた。
笑顔と共に、先ほどとは輝きの違う武器を装着して。あきらかにどちらもが殺
る気満々の、穏やかで優しげな微笑みだった。




「旅賊の生き残りども、あたしの娘の誕生日プレゼントを返しなさいな。
そうすれば来世の転生条件だけ助けてあげるわ」

「どこをどう見たらあたし達が旅賊に見えんのよ。オカマの神経って謎、つい
でに馬鹿?身も心もっつうけど本当に視力とかまで影響すんだへぇー」

「いい度胸してんじゃない、胸もないくせに。ガキが国家権力に歯向かって生
きていけるとお思い?片目しか見えないから平衡感覚と常識さえわからないの
ねぇ可哀相、あたしの娘はああは育てたくないわね」

「胸はないわけじゃないわ、少ないだけよ。あんたと違ってね。
軍だかなんか知らないけど、フリルのついたオカマに怯えるほどあたし達阿呆
でもないのよ?言葉通じてるかしら、だってオカマなんて社会不適合者だから
常識人の言葉もわからないものね」


ぴしり


世界に亀裂が入った。
ルフトの瞳に見えたのは、七つの鎌首を持ち上げた邪龍と、太陽を八つ裂きに
せんとする四つの足をもつ異形の鷹。


「軍に歯向かって五体満足で帰しゃしないわよこのガキども。
子供だろうが大人だろうと老人だろうが公平平等にすべからく皆殺しにしてや
る」

「最低ね、あ、ゴメン。最低とか最悪って人間の価値基準だから、あんたみた
いな人類以前の両生類にふさわしくないわね。
もうこの世界に呼吸してちゃいけないわよそこのキモ蛾・軍人」


ばきん


世界の均衡が崩れてしまう。
ルフトはどうすることも出来ないまま、囚われの姫君のように天にただ祈りを
捧げるだけだった。白熊淑女ことアメリアはウィンドブルフを食べようとして
いる。
誰も助けない、助けれない。世界の滅亡は、もう決定されている。




「…(笑顔)」

「…(微笑み)」



「「死ねやこのガキ&オカマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー
ー」」





チュどーーーーーーーーーーーーーーん

音は、眩い閃光の後に聞こえてきた。
音速を超えてぶつかり合う彼ら。ここに伝説の邪神同士の対決が始まった。










ところで。
アドルフは、重傷を負いつつもまだかろうじて体を動かすことが出来た。

『ま、まだだ…まだ終らんよ!!』

朦朧とする意識の中、最後まで残っていたのは人間としての誇り。小さな蝋燭
の火。
その灯火は、オカマという人類を滅ぼす化け物に叩きのめされてもなお燃え続
けている。
逃げなければ、と彼はあらん限りの力で自分を抱えていた騎士の手を捻って投
げ飛ばした。

『何っ!?』

目前の神々の戦いに、命令式を貰えない騎士は完全に不意打ちされて投げ飛ば
された。
アドルフは騎士の馬を奪うと、全身の筋肉を総動員して手綱を振るった。
炎の灯火は、潰えるまえにと激しく心に勇気を灯す。
ぶっちゃけ、まあすぐに潰えそうな気もしたが。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー


「あ、あの人。逃げちゃいましたよ」

ぴたり。
ルフトの呟きで二人の動きは同時に止まった。
あと少しで鎌の刃はベアの首筋を掻き切り、オルレアンの顎下の銃口は彼の顔
面を食い破ろうとしていた最中であった。
ルフトは何故か雰囲気のせいか、申し訳なそうに向こうを指差す。


「アドルフさんでしたっけ…あの人逃がすと僕ら賞金額もらえなくないです
か?」




ベアは顔面蒼白になった。
なぜなら、まだ新しい武器のために手入れ道具を揃えたかったし何より今夜の
ご飯が食えるほどの路銀がなくなるのだから。
オルレアンも表情が抜け落ちた。
ていうか白熊が戻ればあんな屑などどうでもいいが、そうすると事後処理を全
て自分でしなければならなくなる。罪を着せる人材がいなくなると娘のための
時間が無くなる。
さも無念と、それぞれの刃を引く二人。

「くっ…仕方ないわね。あんたたちは見逃してやってもいいかもしれないわ
よ?」

「ちっ…冗談じゃないわ。アイツ、よりによってあたしの武器先に触ったの
よ?」

それぞれが己の利益を最優先した結果。

「わかった?そこのオカマ、あんたを殺さないであげるんだからアイツを軍に
あげる。
その代わり賞金額よこしないさいよ、即金で」

「いいこと?あんたらだったら死んでもアイツを捕まえるのよ?
そうしたら今回の事件で軍の賞金首のリストには載せないであげるんだから」

それぞれ、頷きあう。





「犬!鷹!アイツ追うわよっ!晩飯欲しいなら絶対捕まえなさいなっ!!!!!」

「全員続け!あの男を捕まえらんないならお前ら容赦なくゴミ豚の処理施設に
放り込んでやる!!」






夕日に向かい、駆け出す三人(&とその他付属物)
同じくその先には、夕日に救いを求めるかのように逃げるアドルフ。


夕日の光は三人の影を長く長く引かせていた。
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2007/02/10 17:35 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア
天使と空と優しい雨~第一話~/シエル(マリムラ)
PC:エンジュ シエル レイン
NPC:露店商のオヤジ
場所:酒場
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 夜。客足も遠のき始めた酒場の一角。
 待ち合わせに遅れてきたエンジュは、明らかに気分を害していた。
 どかっと椅子に腰掛け、骨付き肉のローストとシーフードサラダとピラフを頼む。

「……遅刻」
「知ってるわよ」

 一気にコップの水を飲み干すと、大きな胸が揺れるのも構わず髪を掻き上げる。
 同じテーブルに先についていたシエルは、いつものように紅茶をすすった。

「聞いて?!冗談じゃないわよあのオヤジ」
「はいはい」
「ちょっとコレ、見てよ」

 差し出されたのは小さな、掌に乗るほどの銀製の天使像。

「……で?」
「ちょっと露店覗いてたら、目を引いたから手に取ったんだけど」
「ん……」
「ウチはお金以外のモノでお売りするんですよって言い出して」
「……」
「お試しに一週間交換してみませんか?って」

 注文の料理来たためにいったん会話が中断される。が、シエルが顎に手をあて、な
にやら考え込んでいる間にも、大人数用の料理の山が消費されてゆく。
 一息ついてエンジュが口元を拭く頃には、料理の大半が消費されていた。

「返事もしてないのにあのオヤジ!」

 バン!テーブルを強く叩き付けて。

「私の魔力、奪われちゃった!!」


  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 どの店も店じまいを始めた頃、エンジュから逃げ切った露店商が性懲りもなくまた
店を開いていた。

「さぁ、もう少し材料が足りないな」

 声を聞くと、見た目よりもずっと若い印象を与える。
 目深に被った帽子のせいで、表情はよく見えない。

「お嬢さん、手に取ってみませんか?」

 声を掛けたのは、ツインテールが印象的な中華服の女の子。
 今日最後の客は彼女だ。オヤジは小さくほくそ笑んだ。


  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ちょっと、私の話、聞いてくれる?」

 いやそーうな口振りで、シエルが切り出す。

「ああ、そうね。今日はシエルの話聞くはずだったんだっけ?」

 エンジュが本来の用件をやっと思い出したかのように答える。

「ちょっと相談があったのよね」
「何?」
「さっきの話、関係がありそうですごくイヤなんだけど」
「どういうこと?」
「コレ」

 差し出されたのは六枚の銀の羽根飾り。

「綺麗ね」
「……代わりにアルジャン取られたわ」
「?!」
「多分同じヤツだと思うんだけど」

 カップに残った紅茶を飲み干すシエル。
 ちなみにアルジャンというのは風をあらかじめ装填することで使用可能になる魔法
銃だ。

「行くわよシエルっ」
「……見失ったんでしょ?」
「私の魔法を辿るのよ、アナタが!」

 カップを置いて、立ち上がる。

「寝たら後、おねがい」
「分かってるわよ」
「頼りにしてるわ」

 二人が酒場を後にする。ドコかで新たなターゲットが被害に遭う前に。

2007/02/10 21:04 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨
天使と空と優しい雨~第ニ話~/レイン(魅流)
PC:レイン
NPC:露店商のオヤジ
場所:街中
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 私はそろそろ夕暮れを過ぎて暗くなり始める街を歩いていた。
 わざわざ露店を開いている人達もそろそろ店じまいをするこの時間帯をわざわざ選んで出かけてきているのは、太陽がだんだんを降りてきて夕闇色に街を染めるのを見ているのが好きだから。
 もう一つの趣味であるウィンドウショッピングには少しだけ支障がでるけど、人も少ないし、買うつもりもなく商品を吟味しないでただ眺めていくだけの私にはあんまり関係がなかったりして。
 だから、今日も私は夕方を狙って宿を飛び出し、ふらふらと店じまいのしたくを始める露店を覗いていった。

「お嬢さん、手に取ってみませんか?」

 数軒のお店を覗いて、太陽も完全に姿を消さんとしていたその時、ちょっと人の波から外れた場所にお店を開いているオジさんに声を掛けられた。
 声だけを聞くと結構若そうだったのだけれど、実際にはそれほど若くもみえない、まさにオジさんと言った風貌の人だった。帽子を目深にかぶっている所為で顔や表情が見えないのも、よりいっそう年を取ってそうにみえる原因かもしれないな、とちょっとだけ思った。
 そのオジさんが売っている小さい天使の置物にはちょっと心を惹かれたけど、建物の影にある所為で一足先に夜が来ていることなど、いかにも『私は怪しいモノです!』と絶叫しているようなその雰囲気に気圧されて、私はちょっと…どころかかなり近寄りがたいものも感じてしまった。

「どうです?これなんて見事な細工でしょう?」

 悩んでいる私に、オジさんはそう言って像の一つが差し出した。
 その像が魅力的なコトと、なにより声をかけてきてる人を無視するのも悪い気がして、私はついつい近寄ってその像を手にとってしまう。
 あぁ、情けないわ私。

「あ…確かに綺麗……」

 手の平に乗るようなちっこい銀の天使像は、シンプルだけど羽の細部までしっかりと作りこまれていたり、天使の安らかな表情が自然に表現されていたりと、かなり心が揺れ動いてしまうような出来だった。悪いけど、このオジさんが作ったとはとても思えない。

「でもゴメンなさい、今はよぶんな物を買うお金はないのよ」

 もともとウィンドウショッピングだけのつもりだったし、私はそう言って像を元の場所に戻そうとしたら、オジさんはそれを押しとどめる。
 ぽかん、としてオジさんの顔(といっても帽子でよくみえないんだけど)を見ると、首を横にニ・三回ふってオジさんはこう言った。

「じつはね、ウチはお金以外のモノでお売りしてるんで「まさか私の体が目当てッ!?」

 オジさんの言葉の語尾にカブせるように言った私のスルドイ指摘が図星だったのか、目を白黒させて口をぱくぱく開いたり閉じたり。
 よく見ると帽子の影から汗が一筋、流れてたりする。
 器用な人だなぁ……

「いえいえいえ、そうではなくて。試しに一週間交換してみませんか?」

 意外とユカイな仕草でパタパタと手を振って否定すると、オジさんはそう提案した。
 でも、一週間交換するって何とだろう?
 私がきょとん、としていると、沈黙を肯定と受け取ったのかオジさんの手が閃く。

「えっ!?」

「と、いうわけでコレは預からさせていただきますよ?――では」

 え、と言う間にもオジさんの手は私がふとももにくくりつけておいた呪符を掏り取り、一瞬で露店を片付け、路地の裏に駆け出している。
 普通の人ならそのまま唖然と見送るしかないんだろうけど、あいにく私は普通の人とは違う。古来から続く呪符師の家系の後取りを舐めてかかったのが彼の運のツキ。
 もちろん、この場合に符術師の家系も後取りもまったく関係ないのだけれど。

「こぉら、待ちなさい!!そこの変態!!」

 軽々しく乙女の太ももに触れた彼に天誅を下すべく、私は全力で後を追って走り始めたのだった。

2007/02/10 21:05 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨
天使と空と優しい雨~第三話~/エンジュ(千鳥)
:エンジュside【1】  
--------------------------------------------------
『被害者友の会』
--------------------------------------------------
PC:エンジュ シエル レイン
NPC:酒場の外
場所:商人
--------------------------------------------------

 生誕を祝う言葉。
 揺り篭の音。
 女が歌う子守唄。

 空気のように自然で、大切で。
 ソレを奪われた私は、
 まるで翼をもがれた鳥のように
 空から、奈落へと――――。

 ☆  ☆  ☆

 酒場を出ると、そこは既に闇だった。
 エンジュの脇にいる美しい友人は、珍しくその秀麗な顔を覆う仮面を外していた。
 白い肌と白い髪が、月光に照らされ真珠のように柔らかな輝きを放っていた。

「エンジュ?聞いてるの?」
「ん?ゴメン、聞いてなかった。シエルに見惚れてたから」 
「…それ、言う相手間違ってるんじゃない?」
「じゃあ誰に言うのよ?」

 慣れているのか、諦めたのか、シエルはため息をひとつ吐くと、エンジュを相手に
することなく、その長い睫を伏せる。シエルが呼んだ≪風≫が、エンジュの髪を軽く
揺らした。
 心地よい夜風に混じって、精霊の囁きが聞こえてエンジュは小さく舌打ちした。
 知らぬ間に、口に呪文を乗せている自分に気がついたからである。
 今までと、感覚自体は何一つ変わっていないのに、まるで手ですくった水のように
魔法が漏れていく。
 飲む間もなく、消えて行く―――。魔力は、確かに奪われていた。   

「あ」
 
 シエルが小さく声を漏らす。
 エンジュの手からすり抜けていった魔法の流れを辿るように、シエルは一度エンジ
ュの方を振り返ると、すぐさま前を向いて走り出した。

「辿れる!?」
「分からないわ」

 道は、次第に入り組んだ小道へと変わる。
 比例するように掠れていく魔法の気配にシエルの表情は厳しくなっていった。
 近くで、少女の声がする。
 急にシエルが立ち止まった。

「居たわ!」
「おやおや、今日のお客さんはシツコイですねぇ」

 エンジュたちの足元に向かって、対峙する二つの長い影が延びていた。
 そのうちの一つがニヤリと口元だけで笑った。
 皮肉げな声色は艶をおび、月夜の下で見ると、ますます年齢不祥の男である。

「返品だって言ってるでしょう!さっさと奪ったものを返しなさいよ!」
「心外ですねぇ。私はけっして不当な取引なぞいたしませんよ。モノには価値があ
る。それを偽ったりしない」

 男の言葉には意外にも信念が感じられた。しかし、勝手にとられたエンジュたちが
納得できる内容ではない。

「ちょっと、それじゃあ冗談にもなってないわよ!!」 
「それまでは、どうぞ商品をお試しください」

 体を覆っている膜が、一枚一枚剥がれるように男の存在が透き通ってく。
 最後の一枚がめくれると、影すら引きつれて男は姿を消した。

 それは、間違いなくエンジュの魔法だった。


 ★ ★ ★

「まったく、忌々しい商人ねッ!」

 崩れ落ちそうになったシエルを支えて、エンジュは虚空を睨んだ。
 シエルは穏やかな寝息を立てている。
 やはり、魔法の気配を辿る作業は、彼女の精神に大きな負担をかけたようだ。
 エンジュのような大雑把な性格では頼まれたってできやしない。

「あのー…」

 シエルの顔を覗きこんでいたエンジュに、若い女の声がかかる。
 先ほど、あの商人と対峙していた少女だ。 
 活動的に大きく開かれたスリットから覗く太腿が悩ましい、ツインテールのなかな
か魅力的な娘であった。
 この少女もエンジュたち同様、被害者のようだ。

「もしかして…」
「もしかしなくても、そーよッ」

 戸惑いがちの少女の声に対し、エンジュは口の端を上げて笑った。

「まったく、女なら騙せるとでも思ったのかしら。被害者友の会でも作れそうな勢い
ね」

2007/02/10 21:05 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨
天使と空と優しい雨~第四話~/シエル(マリムラ)
PC:エンジュ シエル レイン
NPC:なし
場所:宿屋の一室
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 エンジュはシエルをそっとベッドへ寝かせた。
 熟睡している友人は以前一日半寝ていた強者なので、揺すり起こすワケにもいかな
かったし、するつもりもなかったから。

 部屋の中にはもう一人、レインと名乗った女性。
 ツインテールにチャイナ服のなかなかかわいらしい彼女は、やっぱりあの露店商に
騙された(というか、陥れられた?)らしいので、つい連れてきてしまったのだが。

「あの、これからどうするつもりですか?」

 なんだかちょっぴり警戒されているような気もする。
 エンジュはぽりぽりと頭を掻いた。

「朝になったら情報屋に当てがあるから取りあえずあたってみるわ」

 せめてもう少し手掛かりが残っていれば良かったのに。
 無意識に使おうとして零れる魔法に舌打ちをする。
 そういえば彼女は何を取られたのだろう?

「あの胡散臭い露店商のオヤジに何を取られたか聞いてもイイかしら」

「……呪符を、取られてしまって」

 思い出すだけでムカついてきたらしい。小刻みに震えだしたと思ったら、握り拳に
だんだん力が込められていく。

「あの変態!!軽々しく乙女の太ももに触れた罪は重いわよ!!」

 面白いわ、と思ってしまうエンジュさんだった……。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

「……どのくらい寝てた?」

「まだ半日も経ってないわよ……平気?」

 シエルが予想以上に早く目覚めたことに、エンジュはほっとした。
 情報屋に、ユークリッドに連絡を取ろうと思っていたところだったから。

「置いていくのも不安だったのよね。一緒に行ける?」

 仮面をつけながら、シエルは当たり前のように答える。

「行くわ。私が必要でしょ?」

 彼女が自信過剰なワケではなく、ただ純粋に力になりたいのだとエンジュは知って
いる。こういう言葉の使い方が敵を作りやすいというのに、一向に直す気配がないの
も知っている。

「ほんっとにもう、可愛いんだから」
「何がよ」

 シエルの頭をエンジュがぐりぐり撫でる。されるがままのシエル。
 二人は部屋の外で待つレインの元へ急いだ。


2007/02/10 21:06 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨

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