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2024/05/17 05:19 |
天使と空と優しい雨~第ニ話~/レイン(魅流)
PC:レイン
NPC:露店商のオヤジ
場所:街中
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 私はそろそろ夕暮れを過ぎて暗くなり始める街を歩いていた。
 わざわざ露店を開いている人達もそろそろ店じまいをするこの時間帯をわざわざ選んで出かけてきているのは、太陽がだんだんを降りてきて夕闇色に街を染めるのを見ているのが好きだから。
 もう一つの趣味であるウィンドウショッピングには少しだけ支障がでるけど、人も少ないし、買うつもりもなく商品を吟味しないでただ眺めていくだけの私にはあんまり関係がなかったりして。
 だから、今日も私は夕方を狙って宿を飛び出し、ふらふらと店じまいのしたくを始める露店を覗いていった。

「お嬢さん、手に取ってみませんか?」

 数軒のお店を覗いて、太陽も完全に姿を消さんとしていたその時、ちょっと人の波から外れた場所にお店を開いているオジさんに声を掛けられた。
 声だけを聞くと結構若そうだったのだけれど、実際にはそれほど若くもみえない、まさにオジさんと言った風貌の人だった。帽子を目深にかぶっている所為で顔や表情が見えないのも、よりいっそう年を取ってそうにみえる原因かもしれないな、とちょっとだけ思った。
 そのオジさんが売っている小さい天使の置物にはちょっと心を惹かれたけど、建物の影にある所為で一足先に夜が来ていることなど、いかにも『私は怪しいモノです!』と絶叫しているようなその雰囲気に気圧されて、私はちょっと…どころかかなり近寄りがたいものも感じてしまった。

「どうです?これなんて見事な細工でしょう?」

 悩んでいる私に、オジさんはそう言って像の一つが差し出した。
 その像が魅力的なコトと、なにより声をかけてきてる人を無視するのも悪い気がして、私はついつい近寄ってその像を手にとってしまう。
 あぁ、情けないわ私。

「あ…確かに綺麗……」

 手の平に乗るようなちっこい銀の天使像は、シンプルだけど羽の細部までしっかりと作りこまれていたり、天使の安らかな表情が自然に表現されていたりと、かなり心が揺れ動いてしまうような出来だった。悪いけど、このオジさんが作ったとはとても思えない。

「でもゴメンなさい、今はよぶんな物を買うお金はないのよ」

 もともとウィンドウショッピングだけのつもりだったし、私はそう言って像を元の場所に戻そうとしたら、オジさんはそれを押しとどめる。
 ぽかん、としてオジさんの顔(といっても帽子でよくみえないんだけど)を見ると、首を横にニ・三回ふってオジさんはこう言った。

「じつはね、ウチはお金以外のモノでお売りしてるんで「まさか私の体が目当てッ!?」

 オジさんの言葉の語尾にカブせるように言った私のスルドイ指摘が図星だったのか、目を白黒させて口をぱくぱく開いたり閉じたり。
 よく見ると帽子の影から汗が一筋、流れてたりする。
 器用な人だなぁ……

「いえいえいえ、そうではなくて。試しに一週間交換してみませんか?」

 意外とユカイな仕草でパタパタと手を振って否定すると、オジさんはそう提案した。
 でも、一週間交換するって何とだろう?
 私がきょとん、としていると、沈黙を肯定と受け取ったのかオジさんの手が閃く。

「えっ!?」

「と、いうわけでコレは預からさせていただきますよ?――では」

 え、と言う間にもオジさんの手は私がふとももにくくりつけておいた呪符を掏り取り、一瞬で露店を片付け、路地の裏に駆け出している。
 普通の人ならそのまま唖然と見送るしかないんだろうけど、あいにく私は普通の人とは違う。古来から続く呪符師の家系の後取りを舐めてかかったのが彼の運のツキ。
 もちろん、この場合に符術師の家系も後取りもまったく関係ないのだけれど。

「こぉら、待ちなさい!!そこの変態!!」

 軽々しく乙女の太ももに触れた彼に天誅を下すべく、私は全力で後を追って走り始めたのだった。
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2007/02/10 21:05 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨

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