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2024/11/01 10:06 |
1.故郷/ギゼー・クロース(葉月瞬)
◆――――――――――――――――――――――――――――
登場人物(キャラ):クロース、ギゼー
場所:ポポル付近の遺跡群(11年前)
◆――――――――――――――――――――――――――――

 今から、11年ほど前―。
 ポポル―。
 深い森に囲まれ、古の街が沈む場所。
 新緑が映える深き森の一隅を占める遺跡群の片隅で、幼き少女は発見された。
 奇妙な箱に入れられて。
 実際それは、奇妙奇天烈だった。楕円を象った箱の表面にはこの時代において珍しい硝子が嵌められており、透明なそれの表面には霜が付いていた。それも、中が見通せないほどに。
 トレジャーハンターを自称するその男は、少年と言ってもいい容姿を持っていた。彼自身気にして止まない丈の無さと、多少わんぱくさが残る顔を持ち合わせていた。その風貌から察するに、年齢は16歳だと推察できる。くりくりと良く動く鳶色の大きな瞳孔で、周囲の壁や天井を好奇心一杯で視線を這わせる。短く刈った栗色の髪の毛が、数少ない光源の光を受け天井にその影を躍らせる。
 初めての遺跡。トレジャーハンターとしての、初めての仕事。実際彼は、多少上気していた。夢にまで見た遺跡の中の探索行に、興奮すら覚えていた。父親と約束した事が頭をちらつく。
――前人未到の遺跡を探索し、宝を持って帰ること。それが、お前を一人前と認める条件だ。
 具体的な何かを指定された訳ではない。己が宝と認める物ならば良いのだ。
「へへっ!楽勝だぜィ」
 少年っぽいあどけない笑みを満面に浮かべ、軽口を叩く。
 今目の前にあるものは、楕円を象った箱―不可思議な装置―だった。少年が、宝箱と目する物体だ。思わず鼻歌も混じるというものだ。
 そっと、その箱に触れてみる。
 チャリッ。
 未だ幼さの残るその指に、何か―金属性のプレートが触れる。
「……?何だ?」
 覗き込んだその金属板には、何か文字のようなものが彫り込まれていた。
「…?古代文字?……へへっ、こんな事も有ろうかと、勉強しておいて正解だったぜっ!今じゃ、古代文字は俺の得意分野さ。…………………え~と、なになに~?C・L・O・S・E………?クロース?密着している?なんのこっちゃ」
 その時、プレートに彫られていた文字を読み違えた事に、彼はずっと気付く事は無かった。当然この文字C・L・O・S・E―クローズ―の本当の意味に思い至る事は無かったという。
「ふんふん~♪あれ?この箱、どうやって運べば良いんだろう?」
 少年の指が箱の他の部分をなぞって行く。程なく何やら難い突起物にぶつかり、力を入れると同時に箱の表面を覆っている硝子の部分が上に持ち上げられていった。真っ白い冷気が足元を覆って行き、硝子に張った霜が溶け始める。中から愛くるしい幼女が顔を覗かせる。といっても、彼女は未だ眠ったままだったが。一目見て、色素が薄い子だと解る。銀色の長髪を横たえた体の下敷きにし、透き通るような白磁の肌
との境目が良く見えない。瞳の色は、眼が閉じたままなので見ることは出来ないが、おそらくこれも薄い色なのだろうと想像をめぐらす事ぐらいは出来る。見たところ、3歳前後と言ったところか。
「うわぁ!なんっじゃこりゃぁ!!」
 なんっじゃこりゃー、なんっじゃこりゃー、わーん、わーん、わーん。
 少年の驚愕の叫び声が、周囲の壁という壁、天井という天井に反響してドルビー効果を生み出す。
 驚くのは無理も無い。箱の中に少女が入っていたなどとは、露ほども考えなかったからだ。ましてや、宝だとばかり思っていた物が人間の、それも女の子だったとは…。驚いて、三十センチばかり飛び上がってもおかしくは無い。
 その大きな声に驚いた少女は、愛くるしい瞳をゆっくりと開き、少年の方にその寝呆け眼を向ける。
「あふっ?」
 頭の中身は、未だに眠ったままのようだが。
 驚いて1歩も動けない少年が次に発した言葉は、
「あっ、きっ、君だれ?俺、ギゼーって言うんだけど」
 だった。体は驚いていても、頭は正常に働いているらしい。まずは自己紹介、と言ったところか。ところが、少女の反応は無愛想極まりないものだった。
「………?」
 もともと3歳なのだから言葉などあまり知り得ないものだが、それにしたって自分の名前くらいは言えるはずだ。だが、答えなかった。彼女は。
 ところが少年は、その沈黙を勝手に解釈し、勝手に想像をめぐらし、先程見つけた銘板の文字と少女の名前とを結び付けて考えようとした。 
「……?あっ、そうだ!さっきその箱見たとき、クロースって銘打っていたけど、それって君の名前かなぁ?なぁ~んちゃって」
「……………」
「何とか言ってよ…不安になるじゃん…」

 かくして、卵の殻は割られ、雛鳥が世に放たれたのだった―。
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2007/02/14 22:36 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
2.『トレジャーハンターの勘』―ギゼー編―/ギゼー・クロース(葉月瞬)
◆――――――――――――――――――――――――――――
登場人物(キャラ):ギゼー、クロース(11年前)
エキストラ(NPC):ギゼーの父親チグリと母親ユーフラ、“消えゆく灯火”亭の主人
場所:ガロウズ村(11年前)~ソフィニアの安宿兼酒場“消えゆく灯火”亭(現在)
◆――――――――――――――――――――――――――――

「親父ィ!俺を、一人前と認めてくれィ」
 扉を勢い良く開け放つなり開口一番そう言ったのは、数日前少女をこの世に解き放った張本人、トレジャーハンターを自称する少年ギゼーだった。
 ここはガロウズ村の外れに建っている、ギゼーとその両親の住まう家だ。
 ガロウズ村―かつての英雄、ガロウズの作りし小さな村は、ガロウズの再来を信じ、明日の英雄を夢見る者達で構成されていた。創立当初、ガロウズがかつて生きていた頃の村人達は期待と憧れに満ち満ちていた。そしてそれは、ガロウズ没後50年を過ぎた今も見事に受け継がれている。村の規模こそさして大きくないものの、人々の期待と憧れがそのまま活気へと繋がっている、良い村と言えた。
 村が活気付いているのにはもう一つ理由があった。特産品の評判が良いのだ。英雄ガロウズを記念して売り出した、“ガロウズ・グッズ”の美術品としての価値の高さが噂となり世界中を駆け巡り、衆知の事実となっているのだ。それだけではない。村の周辺に群生している天然のアラウネと言う果実を蒸留酒に漬込むアラウネ酒という名物も風の便りに乗って、広められているのだ。その為、グッズコレクターや、酒飲が良く観光がてらここガロウズ村を訪れるようになり、そのお陰で、村やその近辺が活気付いているのだ。
 ギゼーの両親チグリとユーフラは、ギゼーが生まれる1年前にこの村に越して来たばかりだった。越してきて早々、直ぐに村人達と打ち解け、井戸端会議や仕事帰りの酒盛りにも参加する仲になった。村人達は「まるで昔からこの村に居たかのようだ、不思議な夫婦だ」と噂しあっても、彼等の過去や職業などを詮索するまでには至らなかった。対してチグリとユーフラの方も、村人達が詮索しないのをこれ幸いとばかりに自分達の過去―ここへ来る前の事など一切話さなかった。特にチグリは自分の本当の職業、“トレジャーハンター”の事が村人達に知られるのを避けたがっている風であった。
 そう言う事も有ってか、村人達はチグリとギゼーの本当の職業、トレジャーハンターの事は知る由も無かった。

「なんだ?お前、そんなに血相変えて。またな~んか、面白い物でも拾ったか(笑)」

 ギゼーの開口一番に言った台詞を受け、豪快に笑い飛ばす父チグリ。未だ現役のトレジャーハンターらしく、褐色の血色の良い肌をこれ見よがしに露出している。黒のタンクトップにやや幅広のだぶついた白いパンツという、実にシンプルないでたちだ。家の中に居るときは、いつもこう言う格好で居るのだこの男は。鳶色の、息子と同じ色の瞳を息子自身に向けている。だが、笑いに乗じて揺れ動く髪の毛は息子と違って赤毛だ。
 台所の方では母ユーフラが夕食の支度に精を出しつつ、息子と父親の会話に注意を向けている。母はいつもそうだ。何時如何なる時でも余裕を忘れない。栗色の髪を肩まで揃えて伸ばし、青紫色の瞳が印象的だ。今だってそうだ。満面の笑みを湛えながら、野菜を切りつつ二人の会話に聞き入っている。ギゼーの位置からでは後姿しか見えないが。
「拾ってねぇっ!……って、そんな事より!!親父、俺を今すぐ、一人前と認めろ!」
 父親の冗談に突っ込みを入れながらも、自分の主張は忘れない。この父親に育てられたからこそ、如何なる時でも冷静さを保っていられる。その上、明朗快活で…良い息子に育ったものよと母は密かに微笑む。その間も、会話は続けられていた。
「…一人前に…だぁ?なんだお前、もう自分のお宝見つけて来ちまったのかぁ?……どれどれ、見せてみろィ」
 そう言われて、ギゼーは今まで自分の後に隠れて様子を覗っていた3歳くらいの幼女―名をクロースと言う―を父親の前に押し出す。見ず知らずの人を見て弱気が表に出ているクロース。そのクロースを見て驚きを隠せないチグリ。母親も夕食を準備する手を休め、こちらを振り返って様子を見ている。やはり驚きを隠せない様子だ。
「………なんだ?こいつは…?」
 チグリがやっとの思いで言葉を紡ぎ出す。その様子を見て取ったギゼーは、得意を満面に浮かばせる。
「何って?へへっ、当然っ、俺のお宝さっ!」
「…おいっ。幾らなんでも人間がお宝なんてぇ、ちょっと無理が過ぎねぇか?さしずめ、遺跡の内部で見つかった…なんて能書きたれるんだろうが、そ~んな嘘っぱち、俺には通じねぇぜ。…………!?まっ、まさかっ!?お前、他所様んとこで子種を…」
「大きく、違う!!」
 何処から出したのか、ハリセンで思いきり突っ込みを入れるギゼー。このやり取りももうそろそろ板に付いてきた頃だ。
 ともすると後に引っ込もうとするクロースをもう1歩父チグリの方に近付けつつ、自己紹介の準備に取りかかるギゼー。引っ込み思案なクロースの為に気を揉んでいるのが、良くわかる。
「……まっ、とにかくよっ、紹介するぜ親父。この子はクロースって言うんだ。正真正銘遺跡の中で見つけた子だ。…クロース、ほらっ」
「あっ、あのっ……ワタシ…クロースって言います。…よろしくです」
 色素の薄い子、一目見てそんな印象を受ける。長い銀髪を腰まで伸ばし、青灰色の瞳を宿した眼を瞬かせている。肌の色は白く、青みが差している。どちらかと言うと病気勝ちで室内に閉じ篭りっきり、と言う感が強い。遺跡で発見したというギゼーの証言も、あながち間違ってはいないのでろう事が色白の肌を見れば推測できる。眉目秀麗なその顔の造形は、将来を期待させると共に他人の警戒心や猜疑心を解く効果も得られるらしい。多少オドオドしてはいるが、その愛くるしい微笑を目にしたチグリは相好を崩した。
「あっ、ああ、クロースちゃんよろしくな。こちらこそ」
「……!?うそっ、あの頑固親父が、ヘラヘラしてらぁ…」
 信じられない物を見た、と言うショックでよろめきそうになるギゼーであった。

「で?親父。俺の事を、一人前と認めてくれるんだろうな?」
 食事が終わり一家団欒の様相を呈したとき、ギゼーが先程の話を掘り返した。
「クロースちゃん、今日の食事はどうだった?……ん?何の事だ?」
 対してギゼーの問いかけに、あくまで白を切り通す糞親父ことチグリ。
「だっだからっ!俺がお宝を見つけて持って帰ってきたら、一人前と認めるって話だよ!!…呆けるには未だ早いぜ、糞親父」
「だれが糞親父だ!礼儀もわきまえぬ、糞ガキが!……ああ、あの話か。いいか?アホなお前の事だから、何か勘違いしているようだがな、俺は宝物を持って来いって言ったんだ。子宝を持って来いって言った覚えはねぇ!」
 そう、捲し立てた後チグリはクロースに笑顔を向け、遊び相手になってやっている。人見知りがちなクロースも、何故だかチグリに対しては懐いている様だ。
「なっ!子宝って…!?…おいっ、親父!」
 子宝のその一言に反応し、ギゼーは顔を紅潮させ言葉に詰まる。今だ少年然とした確たる証拠だ。彼の、純な一面が除いた瞬間だった。

 クロースを寝かしつけた後、今だ納得いかず憮然としている息子に対し、チグリは諭す様に口を開いた。
「なあ、お前には、トレジャーハンターなんてもンは未だ早過ぎる。お前が成るようなしろもんじゃねえんだ、トレジャーハンターなんてものはな。トレジャーハンターなんて常に危険と隣り合わせなんだぞ。お前にもしもの事が有っちゃ、俺は……母さんに申し開きがたたねぇだろう。それにお前は、一人前ってものがどう言う事か知らなさ過ぎる。一人前って者がどう言うものか、お前が自分自信の中で答えを見出せねぇうちはまだまだ半人前だってことだ。逆に答えを見つけられれば、もう一人前ってことだ。誰に認められなくてもな」
 酒を煽りながらしみじみと語った父親の、その翳りのある顔を少年は一生忘れることなくその言葉と共に胸に刻むのだった―。


 11年後、ソフィニアの安宿兼安酒場“消えゆく灯火”亭―。
 ギゼーは酒場の一隅にて、己の過去へと思いを馳せていた。
 手元には、ラム酒と豪勢な料理の数々。それらの美味なるものに舌鼓を打ちつつも、思惟は止まらずただ流れるのみだ。
 村に残して来たクロースの先行きに行き付いた時、今まで室内に響いていた楽曲は終わりを告げ長い長い物語が終わった事を知らされた。
 大体、吟遊詩人がこのような安酒場に来る事自体稀である。大抵はもっとギャラの良い中級か上級の酒場に行き、演奏するものだ。その吟遊詩人の美声を、この様な安酒場で聞けた事自体が極めて稀で、幸運に恵まれている事なのだ。
 いくつか酒場の主人と親しく会話を交わしているところを見ると、酒場の主人と吟遊詩人とはどうやら知り合いらしい。彼はどうやらここ―“消えゆく灯火”亭―の二階に宿を取っているようだ。
 吟遊詩人の弾き語りが終わった途端に、周囲の他愛も無い噂話がギゼーの耳にねじ込まれてくる。
(…噂話など…聞きたくも無い…)
 そう思って、ラム酒に口をつけるが、ある噂で動きを止める。
 そして、その話が聞こえて来た方向に耳を傾ける。

―なあ、その話本当か?
―ああ、確かな情報だ。向うに行っていた俺の友達が話してた事だからな。ガロウズ村の連中が一番で全滅したってな…。
―ひでぇ話だ。
―ああ、全くだ。なんでも、何処からとも無く現れた炎で焼かれたらしい…。

(ガロウズ村が…焼かれた!?……親父!母さん!…クロース!!)
 その話を聞いた途端、無意識の内に椅子を蹴倒し立ち上がるギゼー。大きな音が辺り一面に響き渡り、酒場にいた数人の飲んだくれがギゼーの方を振り向く。
 彼等の目に移ったのは、ギゼーの驚愕に引きつった顔だった―。

2007/02/14 22:36 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
3.プロローグ /リング(果南)
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キャラ:リング・オーシャン
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ここは小さな田舎町。この町にはこの世界ではめったに見られない和風な「茶店」なるものが存在した。
はぐはぐはぐはぐ・・・。
ごっくん。
「はぁー」
茶店の店先で、おいしそうに団子をほおばり、お茶を飲み干す一人の女性がいた。女性は、この上ない至福の表情を浮かべている。
女性は細いフレームの眼鏡が似合う知的美人で、黒髪の黒い瞳。さらりと肩にかかる髪がほのかにシトラスの香りを漂わせた。
「おばあさん、ここにお勘定置いておきますね」
「はい、まいどー」
店を去る際、見送ってくれるお婆さんに女性はにっこりと笑いかけた。
(やっぱり、地上の「クシダンゴ」は、美味しいですね)
女性は海底で何度も読んだ「地上文明全集5 地上の神秘」の一節を思い出していた。
ー地上にはたくさんの食べ物が存在し、そのなかでもクシダンゴは最高の美味しさを誇るー実はこの話、「地上文明」の作者の勝手な思い込みなのは言うまでもないが、(この作者、よほどクシダンゴに感動したらしい)彼女は本気でこの話を信じていた。-無理もないだろう、彼女、地上に出てきてまだ三日も立っていないのだから。
「さて、まずは私の「本」の秘密を探るために、お父様が本を買った街にでも行ってみたいですね」
そう思い、彼女がうーんとのびをしたその時、背後で女性の悲鳴が聞こえた。

2007/02/14 22:37 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
4.プロローグvor.2/リング(果南)
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場所 とある町  メンバー リング=オーシャン
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「何事でしょう!」
彼女があわてて、悲鳴の聞こえた場所に行くと、
「お助けください!」
いきなり、フリフリスカートの女性が彼女の後ろに隠れた。
「え・・・、あ・・・」
いまいち状況がつかめていない彼女の前に、ずんと、強面の男二人が現れた。この方たち、どことなく私を威嚇しているみたいですね・・・、と彼女が思っていた矢先、
「ちょっとネーチャン、後ろに隠れているそいつ、渡しやがれ」
「え・・・」
「その気色悪いスカートはいたソイツだよ」
その言葉に、彼女は背後の女性を見た。女性は彼女の背で震えている。
「あの、この方、何か悪いことを・・・」
「うるせー、俺はこーゆーやつが目障りでしょうがないんだよ!」
「お、オマエよく見りゃいい女じゃん。でも、その細い腕じゃーろくな抵抗できなさそうだなー」
そういって二人はニヤニヤと笑う。そんな態度に、彼女は少しむっとした。
「なんですか、貴方達は、こんな無抵抗な人に乱暴して。それに、私にはちゃんとした名があります。ネーチャンや、オマエなどと馴れ馴れしく呼ばないで下さい」
「ほー、どんな名だ?」
彼女は男たちをきっと見つめて言った。
「リング=オーシャンです!それに、私、見かけより弱くありませんよ。自分で言うのもなんですが、水があれば最強に近いですし」

2007/02/14 22:37 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
5.プロローグvor.3/リング(果南)
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メンバー リング=オーシャン  場所 とある町
NPC フリフリのスカートの女性と悪そうな男二人
◆――――――――――――――――――――――――――――

そういってリングは辺りをきょろきょろと見回した。
(えっと、水、水)
見渡したリングの目の端に、初老の女性が、竹製のベンチに腰掛けて、湯飲みで飲んでいるお茶が目に入った。
「お婆さん!そのお茶を貸してください!」
「ほえ?」
「あの、よろしいですか?」
「まあ、ええがのー」
「有難うございます!」
リングがいうなり、湯飲みからお茶の液体のみ、が飛び出し、開いたリングの手のひらにすわっと緑色の槍となって片手に三本ずつ並んだ。
「水でできていて何の害もなさそうですが、刺さると、痛いですよ。血も出ますし。さあ、痛い目にあいたくなければこの女性のことは諦めてください」
リングはきっと男たちを見つめるが、男たちは余裕の態度を崩さない。
「おおっ、ねーちゃん、やるなぁ・・・」
「やっぱ、俺たちの邪魔をするんだったらこれくらいやらなくっちゃなぁ」
「なんたって俺たち、ここらでは名の知れた賞金稼ぎなんだぜ」
「おまえみたいなちょっと珍しい能力なんて、腐るほど見てきたんだぜ」
その言葉を聞いてリングは内心「くっ・・」と思った。リングは、この男たちと戦う気なんてさらさらなかったのだ。水を操って見せたのも、脅しのためで、実際、たいていの人間はこの力を見せられるとびびって逃げ帰る。しかし、それはリングが小心者なわけではなくて、リング自身が戦いを好まない性質だからだ。
(仕方がありません・・・、少しはこの方たちを傷つけなくてはならないでしょうね)
リングはくっと唇を噛むと言った。
「いうことを聞いてくれないのでしたら・・・、戦います」
「面白い、俺たちもちょうど腕がなまってたところだ、一戦交えようぜ!」

2007/02/14 22:38 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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