PC:アロエ オーシン
場所:イノス北西墓地
NPC:マルチ ウォン=リー 悪魔の森(目玉ちゃん)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
オーシンと、『目玉』は、長いこと見つめあっていた。
そのうち、するするする、と目玉の方の蔓(つる)が伸び、オーシンの前に移動して
くる。
目玉は、さまざまな角度に蔓をしならせて位置を変え、オーシンを観察し始めた。
……何か、危害を加えるつもりだろうか。
「オーシン、気をつけろっ!」
アロエが警戒した、まさにその時だった。
『ォおお、お前……ェェェ、好きだァあァ……っ』
後方に置き去りの口が、例の、喉に痰がからんでいるような声でオーシンに告げたの
は。
唐突な愛の告白、である。
「はぁっ!?」
突然の、しかもわけのわからない発言に驚いたのはアロエだった。
オーシンの方は、相変わらずぼーっとしているだけだ。
突然の告白の後、<悪魔の森>は恥ずかしいと言わんばかりにぐねんぐねんと蔓をく
ねらせている。
気色悪い。まったくもって気色悪い。
見ていたアロエは青ざめて冷や汗を流し、マルチは「うげ」と顔をしかめた。
ひとしきりくねった後、目玉はオーシンをひたと見据える。
『おォォ俺の…………ことッ……嫌い、かあァ……?』
なんとなく、不安そうに目玉が揺れている。
その様はどこか、愛を告白した相手の返事を待つ、けなげな少女を思わせた。
普通の感覚を持ち合わせているならば、返事は『大っ嫌い!!』あたり。
要するに拒絶というのが一般的なところだ。
しかし、どうだろう。
オーシンは、にこ、と微笑みを浮かべた。
あの、オーシンが。
いつもは、ぼーっとした目で物を見て、ぼーっとした表情を浮かべ、ぼんやりのんび
りとしゃべるオーシンが。
この時、初めて『人間』としてまともな表情を浮かべた。
オーシンは微笑みながら、そっと、目玉を両手で包み込む。
まるで、恋人の頭でも撫でるかのような手つきで。
「……オーシン」
『はあああァ……?』
「名前……オーシン」
『ォお前…………それ、お前ェ、の、名前ェェ……?』
「うん」
言うと、オーシンは目玉に頬をぺたりとつけて、うっとりと目を閉じた。
嬉しいのだろう、<悪魔の森>の口のからは、穏やかな、しかし上気した吐息がもれ
る。
グロテスクな生き物と、年若い娘の組み合わせは、あまりにもおぞましい。
一体これをどう解釈しろというのか。
いや、そもそも解釈なんてしたくもないだろう。
オーシンと<悪魔の森>以外の面々は、しばらく動けなくなっていた。
「なあ……」
「ん?」
マルチがアロエの肩に手を置く。
「あいつ、大丈夫なのか?」
あいつ、とはオーシンのことであろう。
「……たぶん……」
アロエは、なんだかぐったりした顔をしていた。
ウォンは、意外だといわんばかりの表情を浮かべていた。
年の若い娘が、<悪魔の森>を見て、怖がったり嫌がったりするどころか、微笑むな
どと。その上、両手でそっと包み込むなどと。
不気味な愛の告白までされているというのに、だ。
これが、可愛い子犬や子猫の類に対するものなら、別に驚くような話ではない。
しかし、相手は一言で言うと、目玉と口だけしかない植物の化け物、である。
「変わったお嬢さんだとは思っていたが……」
ウォンは、ピクリと片眉を動かした。
「そう……そうか、そういうことか」
ハハハハ……と、彼は声を上げて笑う。
そうだ、それ以外に考えられない。
まったく驚くべきことだが。
そのことに気付いた時、ウォンは笑わずにいられなかった。
「何がおかしいんだよ!」
その態度に食って掛かるアロエと、
「やめろ馬鹿っ!」
実力もわからない相手を挑発しかねないと、いさめるマルチ。
「知らなかったのかね。これは傑作だ!」
ばっ、とウォンは両手を広げる。
「アロエ。君は彼女と共に行動しているね?」
唐突な質問に、アロエはまばたきをした。
「それが、一体どうしたんだよ」
……警戒することを、怠らないまま。
「本当に、ただの一度も、怪しんだことはなかったのかね?」
ウォンの目が、ぎらりと光った。
「彼女は、私達と同じ次元の住人さ。――その正体は、おぞましい、魔物だよ」
目玉にうっとりと頬を寄せていたオーシンは、ふっ、とまぶたを上げた。
場所:イノス北西墓地
NPC:マルチ ウォン=リー 悪魔の森(目玉ちゃん)
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オーシンと、『目玉』は、長いこと見つめあっていた。
そのうち、するするする、と目玉の方の蔓(つる)が伸び、オーシンの前に移動して
くる。
目玉は、さまざまな角度に蔓をしならせて位置を変え、オーシンを観察し始めた。
……何か、危害を加えるつもりだろうか。
「オーシン、気をつけろっ!」
アロエが警戒した、まさにその時だった。
『ォおお、お前……ェェェ、好きだァあァ……っ』
後方に置き去りの口が、例の、喉に痰がからんでいるような声でオーシンに告げたの
は。
唐突な愛の告白、である。
「はぁっ!?」
突然の、しかもわけのわからない発言に驚いたのはアロエだった。
オーシンの方は、相変わらずぼーっとしているだけだ。
突然の告白の後、<悪魔の森>は恥ずかしいと言わんばかりにぐねんぐねんと蔓をく
ねらせている。
気色悪い。まったくもって気色悪い。
見ていたアロエは青ざめて冷や汗を流し、マルチは「うげ」と顔をしかめた。
ひとしきりくねった後、目玉はオーシンをひたと見据える。
『おォォ俺の…………ことッ……嫌い、かあァ……?』
なんとなく、不安そうに目玉が揺れている。
その様はどこか、愛を告白した相手の返事を待つ、けなげな少女を思わせた。
普通の感覚を持ち合わせているならば、返事は『大っ嫌い!!』あたり。
要するに拒絶というのが一般的なところだ。
しかし、どうだろう。
オーシンは、にこ、と微笑みを浮かべた。
あの、オーシンが。
いつもは、ぼーっとした目で物を見て、ぼーっとした表情を浮かべ、ぼんやりのんび
りとしゃべるオーシンが。
この時、初めて『人間』としてまともな表情を浮かべた。
オーシンは微笑みながら、そっと、目玉を両手で包み込む。
まるで、恋人の頭でも撫でるかのような手つきで。
「……オーシン」
『はあああァ……?』
「名前……オーシン」
『ォお前…………それ、お前ェ、の、名前ェェ……?』
「うん」
言うと、オーシンは目玉に頬をぺたりとつけて、うっとりと目を閉じた。
嬉しいのだろう、<悪魔の森>の口のからは、穏やかな、しかし上気した吐息がもれ
る。
グロテスクな生き物と、年若い娘の組み合わせは、あまりにもおぞましい。
一体これをどう解釈しろというのか。
いや、そもそも解釈なんてしたくもないだろう。
オーシンと<悪魔の森>以外の面々は、しばらく動けなくなっていた。
「なあ……」
「ん?」
マルチがアロエの肩に手を置く。
「あいつ、大丈夫なのか?」
あいつ、とはオーシンのことであろう。
「……たぶん……」
アロエは、なんだかぐったりした顔をしていた。
ウォンは、意外だといわんばかりの表情を浮かべていた。
年の若い娘が、<悪魔の森>を見て、怖がったり嫌がったりするどころか、微笑むな
どと。その上、両手でそっと包み込むなどと。
不気味な愛の告白までされているというのに、だ。
これが、可愛い子犬や子猫の類に対するものなら、別に驚くような話ではない。
しかし、相手は一言で言うと、目玉と口だけしかない植物の化け物、である。
「変わったお嬢さんだとは思っていたが……」
ウォンは、ピクリと片眉を動かした。
「そう……そうか、そういうことか」
ハハハハ……と、彼は声を上げて笑う。
そうだ、それ以外に考えられない。
まったく驚くべきことだが。
そのことに気付いた時、ウォンは笑わずにいられなかった。
「何がおかしいんだよ!」
その態度に食って掛かるアロエと、
「やめろ馬鹿っ!」
実力もわからない相手を挑発しかねないと、いさめるマルチ。
「知らなかったのかね。これは傑作だ!」
ばっ、とウォンは両手を広げる。
「アロエ。君は彼女と共に行動しているね?」
唐突な質問に、アロエはまばたきをした。
「それが、一体どうしたんだよ」
……警戒することを、怠らないまま。
「本当に、ただの一度も、怪しんだことはなかったのかね?」
ウォンの目が、ぎらりと光った。
「彼女は、私達と同じ次元の住人さ。――その正体は、おぞましい、魔物だよ」
目玉にうっとりと頬を寄せていたオーシンは、ふっ、とまぶたを上げた。
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