PC アロエ オーシン
場所 イノス北西墓地
NPC (マルチ ウォン=リー)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よし、ここから逃げるぞ」
アロエが、やや声を押さえて告げる。
辺りに注意を傾けているのだろう、ネコミミが絶えずぴくぴくと動いていた。
対するオーシンは、いつものぼけっとした表情のまま、こく、と頷く。
それから、部屋の中にてくてくと戻っていき、暖炉の前にかけておいた白いワンピー
スの布地を手でつかむ。
着替える前に着ていたものである。
……あらかた、乾いている。
オーシンは、そのことを確認すると、次の行動に出た。
「ってうわわわわ!!」
大慌てしたアロエが、奇妙な声を上げる。
無理もない。
オーシンが、いきなり服を脱ぎ始めたからである。
アロエの動揺などどこ吹く風といった具合で、隠すべき部分を隠そうともせず、もそ
もそと黒い詰襟の喪服を脱ぐと、白いワンピースの袖に腕を通す。
「オオオオオーシンッ、いきなり脱ぐなっ!」
着替えを済ませ、ワンピースのすそをはたいてめくれた部分を直すと、オーシンは
「?」という表情を返した。
その表情は、『男性』だとか『女性』だとか、そんな区別などまだ関係ない……意識
すらもしない年頃の子供を彷彿とさせるものだった。
(……ま、まあ、女どうしだから、な)
アロエは、それ以上深く考えないことにした。
オーシンの性別は見た目だけのものに過ぎないと知っていたら、別の反応もあったか
もしれないが。
さて、オーシンは元の白いワンピース姿に戻ると、借り物である黒い詰襟の喪服をク
ローゼットにしまいこみ、アロエの元へと戻ってきた。
脱出開始、である。
辺りに注意を傾けながら、薄暗い廊下を突っ走る。
やや先頭を行くのはアロエである。
オーシンは途中からしか意識がないため、出口に続く道を知っているのはアロエだけ
なのである。
「マルチとは、後で落ち合う約束をしてンだ」
走りながら、アロエが説明をする。
「おれ達が入り口まで逃げたところで、合図を出して……」
「駄目」
オーシンの声が、アロエの説明を遮る。
思わず振り返ると、オーシンはすでに立ち止まっていた。
「どうした? 足、痛いのか?」
ふるる、とオーシンは首を横に振る。
「……カラを、治す方法…まだ教えてもらってない……」
ぽつん、と呟かれた言葉が、薄暗い空気の中に溶けていく。
「カヤのことは、絶対何とかする! 絶対助ける! でも、今は……今は……」
そこから先は言いづらいのだろう、アロエの言葉はしだいに弱くなっていった。
オーシンは、ぶんぶんと首を横に振る。
まさしく、「やだ」と言い張る幼い子供のそれである。
「……カラ、かわいそう」
薄暗い中にぼんやりと浮かぶ白い色彩が、ふわりと揺れる。
タンッ。
足音が生じる。
タッタッタッタッ……。
それは、廊下の中で反響しながら、しだいに遠ざかっていく。
「オーシンッ!!」
アロエが止める間もなく、オーシンは内部へと逆戻りして行った。
おそらくは、カヤを治す方法を求めて。
場所 イノス北西墓地
NPC (マルチ ウォン=リー)
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「よし、ここから逃げるぞ」
アロエが、やや声を押さえて告げる。
辺りに注意を傾けているのだろう、ネコミミが絶えずぴくぴくと動いていた。
対するオーシンは、いつものぼけっとした表情のまま、こく、と頷く。
それから、部屋の中にてくてくと戻っていき、暖炉の前にかけておいた白いワンピー
スの布地を手でつかむ。
着替える前に着ていたものである。
……あらかた、乾いている。
オーシンは、そのことを確認すると、次の行動に出た。
「ってうわわわわ!!」
大慌てしたアロエが、奇妙な声を上げる。
無理もない。
オーシンが、いきなり服を脱ぎ始めたからである。
アロエの動揺などどこ吹く風といった具合で、隠すべき部分を隠そうともせず、もそ
もそと黒い詰襟の喪服を脱ぐと、白いワンピースの袖に腕を通す。
「オオオオオーシンッ、いきなり脱ぐなっ!」
着替えを済ませ、ワンピースのすそをはたいてめくれた部分を直すと、オーシンは
「?」という表情を返した。
その表情は、『男性』だとか『女性』だとか、そんな区別などまだ関係ない……意識
すらもしない年頃の子供を彷彿とさせるものだった。
(……ま、まあ、女どうしだから、な)
アロエは、それ以上深く考えないことにした。
オーシンの性別は見た目だけのものに過ぎないと知っていたら、別の反応もあったか
もしれないが。
さて、オーシンは元の白いワンピース姿に戻ると、借り物である黒い詰襟の喪服をク
ローゼットにしまいこみ、アロエの元へと戻ってきた。
脱出開始、である。
辺りに注意を傾けながら、薄暗い廊下を突っ走る。
やや先頭を行くのはアロエである。
オーシンは途中からしか意識がないため、出口に続く道を知っているのはアロエだけ
なのである。
「マルチとは、後で落ち合う約束をしてンだ」
走りながら、アロエが説明をする。
「おれ達が入り口まで逃げたところで、合図を出して……」
「駄目」
オーシンの声が、アロエの説明を遮る。
思わず振り返ると、オーシンはすでに立ち止まっていた。
「どうした? 足、痛いのか?」
ふるる、とオーシンは首を横に振る。
「……カラを、治す方法…まだ教えてもらってない……」
ぽつん、と呟かれた言葉が、薄暗い空気の中に溶けていく。
「カヤのことは、絶対何とかする! 絶対助ける! でも、今は……今は……」
そこから先は言いづらいのだろう、アロエの言葉はしだいに弱くなっていった。
オーシンは、ぶんぶんと首を横に振る。
まさしく、「やだ」と言い張る幼い子供のそれである。
「……カラ、かわいそう」
薄暗い中にぼんやりと浮かぶ白い色彩が、ふわりと揺れる。
タンッ。
足音が生じる。
タッタッタッタッ……。
それは、廊下の中で反響しながら、しだいに遠ざかっていく。
「オーシンッ!!」
アロエが止める間もなく、オーシンは内部へと逆戻りして行った。
おそらくは、カヤを治す方法を求めて。
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