PC アロエ オーシン
場所 海猫亭→イノス北西墓地
NPC マルチ
___________________________________
勢いよく「海猫亭」のドアを開けると、通りを突っ走っていく少女。
その勢いは、傍をすり抜けられた人々が疾風と間違えて思わず振り返るほど
である。
その少女の腕を、メガネの少年が捕まえた。
「おい、コラ待て」
はぁはぁと、荒い息を継ぎながらマルチが問う。
「テメェ、どこ行く気だよ?」
「ドコって?」
アロエがけろっと言う。
「墓地に決まってんだろーが」
「で?」
マルチが眉間に思いっきりしわを寄せて、不機嫌そうに問う。
「場所は?」
「ん…。あっち…じゃねぇの?」
そういってアロエが指差した方角は北西…墓地のある方角だった。
どうせバカなアロエのことだ。後先考えず突っ走って行ったんだろう、と考
えていたマルチは少し驚いた。何の作戦も立てずに突っ走っていくのはいかに
もいつものバカ姉らしいが、自分の行くべき場所、それも方角までちゃんと解
った上で走って行ったというのはこの姉にしては大きな進歩である。
「へぇ…。なんで知ってるんだ、場所?」
少し驚いてマルチが聞くと、アロエは何かを考えるように少し空を見上げて
答えた。
「ええと、おれがばーさんの家に墜落する前にハラペコで空を飛んでた時に
よ、上から墓地も見たんだ。なんか薄気味悪りぃトコでよぉ、ミョーに印象に
残ってたからどうも場所も覚えちまってな」
「そっか、そういやオマエ<天使>だもんな」
昔から、アロエと、生粋の天使である彼の母は「墓」のある方角には決まっ
て敏感に反応していたことを彼は思い出した。
どうやら天使は「墓」から漂うオーラを敏感に感じ取るらしい。
『向こう側から嫌な感じがするわ』
そう微かに母が呟いた時には、決まってその方角には墓があった。
そしてその能力は確かにこのバカ姉にも受け継がれている。
そしてその時、いつもマルチは感じていたのだ。
自分と、姉との役割の違い。『血』の違いを。
「…って、オマエ、ホントに無謀だな!何の作戦も立てずに行く気かよ!」
一瞬、自分の<思い>に呑まれそうになったマルチだが、駆け出そうとする
アロエの腕をもう一度捕まえた。
「大体、アイツどうするんだよ」
「アイツ?」
「あのベルってヤツだよ!」
「ベルは置いていく」
アロエはそうきっぱりと言い切った。
「だってアイツ…。今すごく疲れてるだろ?だからしばらく休んだ方がいいと
思うんだ。大体、おれはアイツの父親とこれから決着つけに行くんだし」
「まあ、そうだけどよ…」
「だから、マルチはベルのところに残れよ」
アロエはマルチの目をしっかりと見つめた。
「しばらくベルの様子見てやってくんねぇか?アイツ一人にしとくの心配なん
だ」
マルチは…少し考えた後、きっぱりと言った。
「ヤダね」
「んなっ」
のけぞるアロエにマルチもアロエをしっかり見つめてこう言った。
「大体、無謀だけがとりえのバカが突っ込んで行ったところであの男に勝てる
とは思えないし。オマエみたいなバカがみすみすやられるのを傍観しているっ
てのはできねぇんだよ。ほら、オレって善人だから」
「んなっ…!おまっ…」
二の句が告げないでいるアロエに、マルチははっきりこう宣言した。
「うるせぇ、四の五の言うな。オマエがイヤだって言ってもオレはついてく」
***
それから10分後。
アロエとマルチはイノス北西の墓場に到着した。
先ほどのにわか雨は二人が「海猫亭」を出た頃にはすでに上がっていたが、
空にはまだ鉛色の雲が張り詰め、昼間だというのに墓場は夕暮れのように薄暗
い。
「うー、なんか気味悪りぃトコだなぁ」
アロエは辺りを見回す。周りには白い十字架が立ち並び、上空には気味悪い
声で鳴くカラスが飛んでいる。
「こんなところで会いたいなんて…、アイツってかなり悪趣味だな」
「そうやってぼーっとしてる暇はねぇんじゃねぇの?こっちはヤツの指定の場
所まで来ちまったんだ。ヤツがこれからどんな手を使って、何を仕掛けてくる
か解らねぇ」
そう言いつつ、マルチは自分のウェストポーチをチェックしたり、袖口の辺
りに仕込まれた『何か』を確認している。
「何してんだ?」
「ん、戦闘準備。アロエ、オマエ何か武器は持たなくていいのか?」
「いや、持たねぇ。だっておれは…」
「はいはい。<天使は基本的に人を傷つけてはいけない>だろ」
天使は人を助ける存在、他人を傷つける行為は極力行ってはいけない、とい
うのが母から教えられたアロエの「天使としての心得」である。
「でも、いいのか?そんな甘いこと言って、何かあった時にどうすんだよ」
アロエは前を見据えてこういった。
「大丈夫だ。おれはおれのやり方で何とかしてみせる」
「その自信はどこから沸いてくるのかねぇ…」
マルチはふぅ、と息を吐くと少し肩をすくめた。
場所 海猫亭→イノス北西墓地
NPC マルチ
___________________________________
勢いよく「海猫亭」のドアを開けると、通りを突っ走っていく少女。
その勢いは、傍をすり抜けられた人々が疾風と間違えて思わず振り返るほど
である。
その少女の腕を、メガネの少年が捕まえた。
「おい、コラ待て」
はぁはぁと、荒い息を継ぎながらマルチが問う。
「テメェ、どこ行く気だよ?」
「ドコって?」
アロエがけろっと言う。
「墓地に決まってんだろーが」
「で?」
マルチが眉間に思いっきりしわを寄せて、不機嫌そうに問う。
「場所は?」
「ん…。あっち…じゃねぇの?」
そういってアロエが指差した方角は北西…墓地のある方角だった。
どうせバカなアロエのことだ。後先考えず突っ走って行ったんだろう、と考
えていたマルチは少し驚いた。何の作戦も立てずに突っ走っていくのはいかに
もいつものバカ姉らしいが、自分の行くべき場所、それも方角までちゃんと解
った上で走って行ったというのはこの姉にしては大きな進歩である。
「へぇ…。なんで知ってるんだ、場所?」
少し驚いてマルチが聞くと、アロエは何かを考えるように少し空を見上げて
答えた。
「ええと、おれがばーさんの家に墜落する前にハラペコで空を飛んでた時に
よ、上から墓地も見たんだ。なんか薄気味悪りぃトコでよぉ、ミョーに印象に
残ってたからどうも場所も覚えちまってな」
「そっか、そういやオマエ<天使>だもんな」
昔から、アロエと、生粋の天使である彼の母は「墓」のある方角には決まっ
て敏感に反応していたことを彼は思い出した。
どうやら天使は「墓」から漂うオーラを敏感に感じ取るらしい。
『向こう側から嫌な感じがするわ』
そう微かに母が呟いた時には、決まってその方角には墓があった。
そしてその能力は確かにこのバカ姉にも受け継がれている。
そしてその時、いつもマルチは感じていたのだ。
自分と、姉との役割の違い。『血』の違いを。
「…って、オマエ、ホントに無謀だな!何の作戦も立てずに行く気かよ!」
一瞬、自分の<思い>に呑まれそうになったマルチだが、駆け出そうとする
アロエの腕をもう一度捕まえた。
「大体、アイツどうするんだよ」
「アイツ?」
「あのベルってヤツだよ!」
「ベルは置いていく」
アロエはそうきっぱりと言い切った。
「だってアイツ…。今すごく疲れてるだろ?だからしばらく休んだ方がいいと
思うんだ。大体、おれはアイツの父親とこれから決着つけに行くんだし」
「まあ、そうだけどよ…」
「だから、マルチはベルのところに残れよ」
アロエはマルチの目をしっかりと見つめた。
「しばらくベルの様子見てやってくんねぇか?アイツ一人にしとくの心配なん
だ」
マルチは…少し考えた後、きっぱりと言った。
「ヤダね」
「んなっ」
のけぞるアロエにマルチもアロエをしっかり見つめてこう言った。
「大体、無謀だけがとりえのバカが突っ込んで行ったところであの男に勝てる
とは思えないし。オマエみたいなバカがみすみすやられるのを傍観しているっ
てのはできねぇんだよ。ほら、オレって善人だから」
「んなっ…!おまっ…」
二の句が告げないでいるアロエに、マルチははっきりこう宣言した。
「うるせぇ、四の五の言うな。オマエがイヤだって言ってもオレはついてく」
***
それから10分後。
アロエとマルチはイノス北西の墓場に到着した。
先ほどのにわか雨は二人が「海猫亭」を出た頃にはすでに上がっていたが、
空にはまだ鉛色の雲が張り詰め、昼間だというのに墓場は夕暮れのように薄暗
い。
「うー、なんか気味悪りぃトコだなぁ」
アロエは辺りを見回す。周りには白い十字架が立ち並び、上空には気味悪い
声で鳴くカラスが飛んでいる。
「こんなところで会いたいなんて…、アイツってかなり悪趣味だな」
「そうやってぼーっとしてる暇はねぇんじゃねぇの?こっちはヤツの指定の場
所まで来ちまったんだ。ヤツがこれからどんな手を使って、何を仕掛けてくる
か解らねぇ」
そう言いつつ、マルチは自分のウェストポーチをチェックしたり、袖口の辺
りに仕込まれた『何か』を確認している。
「何してんだ?」
「ん、戦闘準備。アロエ、オマエ何か武器は持たなくていいのか?」
「いや、持たねぇ。だっておれは…」
「はいはい。<天使は基本的に人を傷つけてはいけない>だろ」
天使は人を助ける存在、他人を傷つける行為は極力行ってはいけない、とい
うのが母から教えられたアロエの「天使としての心得」である。
「でも、いいのか?そんな甘いこと言って、何かあった時にどうすんだよ」
アロエは前を見据えてこういった。
「大丈夫だ。おれはおれのやり方で何とかしてみせる」
「その自信はどこから沸いてくるのかねぇ…」
マルチはふぅ、と息を吐くと少し肩をすくめた。
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