PC アロエ オーシン
場所 海猫亭
NPC ベルサリウス ウォン=リー
___________________________________
先ほどの良い天気が嘘の様に、降りしきる豪雨。
全身黒ずくめのウォン=リーという男の振る舞いは、その大胆な行動で、そ
の場にいた他の人間を圧倒し、これだけ大勢の人間の前で堂々と人を襲ったに
もかかわらず、誰もが圧倒され、誰もが地面に根を張ったように動くことがで
きなかった。
戦いに慣れた冒険者は、人目で男のA級犯罪者並みの『危険度』を感じ取
り、
そうではない一般人は、二人の船員がいともあっさり消されたことに驚き、
茫然として、その場から動けない。
「お……お父様……」
恐怖で青ざめたベルサリウスが、震える声を絞り出す。
そんなベルサリウスに、ウォンは口元は笑いながら刺すような視線を向け
た。
「よかったじゃないか、<ベルサリウス>。名前をもらって」
「お…、父様…っ…」
<ベルサリウス>。その名を強調されて、ベルサリウスがたじろぐ。
そう、それはつまり。
「お父様…っ…!」
ベルサリウスは、悲痛な表情を浮かべて声を出した。
<イヤだ…!棄てないで…!お父様…っ>
「お父様…っ!」
ウォンは涙で顔をぐしょぐしょに濡らしたベルサリウスの表情を見て、薄く
微笑んだ。
「お別れだね、<ベルサリウス>。そして無謀で勇敢な少女よ」
「お別れ…!?」
アロエがぴくりと耳を動かす。
「お別れってどういうことだ!テメェ、オーシンを離せ!この卑怯者がっ!」
そういって無謀にも、ウォンに真正面から突っ込んだアロエに、優雅に微笑
みながらウォンが例のステッキの先を向けた。ステッキの先に赤い光が溜ま
る。
バシュン!
「おわ…っ!」
もしも、『偶然』アロエがウォンの目の前で蹴躓かなかったら、その光は確
実にアロエの脳天を<直撃>していただろう。
アロエの頭スレスレの場所をすり抜けていった光は、『海猫亭』の壁を直撃
し、直撃した壁からは、真っ黒い煙がブスブスと湧き上がっていた。
「…アイツ、殺す気で……!」
一般人が思わず漏らした声無き声が、アロエの耳に入った。
思わず、アロエの全身の毛が逆立つ。
「…っ!!」
それでも。転んだ姿勢から起き上がって、アロエはウォン=リーの目を、真
っ直ぐに見据えた。金色の瞳がバチバチ燃えている。
「…っざけんな!この野郎!」
恐怖に負けないため、自分に気合を入れるために、アロエは大声で叫んだ。
「いーか、おれはテメェのふざけた取引なんかぜってぇ受けねぇ!おれは天使
だ!カヤも守る!オーシンも渡さねぇっっ!!ベルサリウスをなんて呼ぼーが
おれの勝手だクソッタレぇっ!!」
その場にいた全員が、アロエのこの行動に息を呑んだ。
真似をしようと思っても真似できない行動。
それは無謀なのか、勇敢なのか。いやきっと、その両方をこの少女は持ち合
わせているのだろう。
無謀で、勇敢な少女。
その行動にウォンは驚いて目をパチパチさせたが、やがて、実に面白そう
に、口元に手を当てて、くすくすと笑い出した。
「ふふ…、キミがここまで面白い少女だとはね。キミは実に、私とは対照的
だ。…面白いよ」
そういうと、ウォンはステッキを使って片手で自身の周りにするするっと何
か書き始めた。
もちろんステッキがチョーク状になっているわけではなく、ステッキから出
る淡い水色の光が何かの文字を模っている。
アロエが唖然としている間に、ウォンは文字を書き終え、文字が目が眩むほ
ど眩い光を放ち始めた。
「ふふ、気が変わったよ、アロエ、キミとはもう一度会ってみたいね。…そ
う、ここより静かな落ち着ける場所で」
「な…っ!」
文字の光が増していく。
もう、光の眩しさにウォンの姿はほとんど見えない。
「ふふ、もう一度キミに会えるように、居場所のヒントをあげよう。後で床を
見てみたまえ…」
最後のウォン=リーの声は、どこかに吸い込まれるかのようにかすれながら
消えていく…。
「…なろ…っ、ざ、けんな…っ」
ウォン=リーの場所を確かめるためにもう一度アロエが目を開いた時には、
すでに光は消え去り、後には赤い文字で書かれた何かの記号らしき模様が残っ
ていた。
そう、大勢の人間の目の前で、ウォンとオーシンは忽然とその姿を消してし
まったのである。
場所 海猫亭
NPC ベルサリウス ウォン=リー
___________________________________
先ほどの良い天気が嘘の様に、降りしきる豪雨。
全身黒ずくめのウォン=リーという男の振る舞いは、その大胆な行動で、そ
の場にいた他の人間を圧倒し、これだけ大勢の人間の前で堂々と人を襲ったに
もかかわらず、誰もが圧倒され、誰もが地面に根を張ったように動くことがで
きなかった。
戦いに慣れた冒険者は、人目で男のA級犯罪者並みの『危険度』を感じ取
り、
そうではない一般人は、二人の船員がいともあっさり消されたことに驚き、
茫然として、その場から動けない。
「お……お父様……」
恐怖で青ざめたベルサリウスが、震える声を絞り出す。
そんなベルサリウスに、ウォンは口元は笑いながら刺すような視線を向け
た。
「よかったじゃないか、<ベルサリウス>。名前をもらって」
「お…、父様…っ…」
<ベルサリウス>。その名を強調されて、ベルサリウスがたじろぐ。
そう、それはつまり。
「お父様…っ…!」
ベルサリウスは、悲痛な表情を浮かべて声を出した。
<イヤだ…!棄てないで…!お父様…っ>
「お父様…っ!」
ウォンは涙で顔をぐしょぐしょに濡らしたベルサリウスの表情を見て、薄く
微笑んだ。
「お別れだね、<ベルサリウス>。そして無謀で勇敢な少女よ」
「お別れ…!?」
アロエがぴくりと耳を動かす。
「お別れってどういうことだ!テメェ、オーシンを離せ!この卑怯者がっ!」
そういって無謀にも、ウォンに真正面から突っ込んだアロエに、優雅に微笑
みながらウォンが例のステッキの先を向けた。ステッキの先に赤い光が溜ま
る。
バシュン!
「おわ…っ!」
もしも、『偶然』アロエがウォンの目の前で蹴躓かなかったら、その光は確
実にアロエの脳天を<直撃>していただろう。
アロエの頭スレスレの場所をすり抜けていった光は、『海猫亭』の壁を直撃
し、直撃した壁からは、真っ黒い煙がブスブスと湧き上がっていた。
「…アイツ、殺す気で……!」
一般人が思わず漏らした声無き声が、アロエの耳に入った。
思わず、アロエの全身の毛が逆立つ。
「…っ!!」
それでも。転んだ姿勢から起き上がって、アロエはウォン=リーの目を、真
っ直ぐに見据えた。金色の瞳がバチバチ燃えている。
「…っざけんな!この野郎!」
恐怖に負けないため、自分に気合を入れるために、アロエは大声で叫んだ。
「いーか、おれはテメェのふざけた取引なんかぜってぇ受けねぇ!おれは天使
だ!カヤも守る!オーシンも渡さねぇっっ!!ベルサリウスをなんて呼ぼーが
おれの勝手だクソッタレぇっ!!」
その場にいた全員が、アロエのこの行動に息を呑んだ。
真似をしようと思っても真似できない行動。
それは無謀なのか、勇敢なのか。いやきっと、その両方をこの少女は持ち合
わせているのだろう。
無謀で、勇敢な少女。
その行動にウォンは驚いて目をパチパチさせたが、やがて、実に面白そう
に、口元に手を当てて、くすくすと笑い出した。
「ふふ…、キミがここまで面白い少女だとはね。キミは実に、私とは対照的
だ。…面白いよ」
そういうと、ウォンはステッキを使って片手で自身の周りにするするっと何
か書き始めた。
もちろんステッキがチョーク状になっているわけではなく、ステッキから出
る淡い水色の光が何かの文字を模っている。
アロエが唖然としている間に、ウォンは文字を書き終え、文字が目が眩むほ
ど眩い光を放ち始めた。
「ふふ、気が変わったよ、アロエ、キミとはもう一度会ってみたいね。…そ
う、ここより静かな落ち着ける場所で」
「な…っ!」
文字の光が増していく。
もう、光の眩しさにウォンの姿はほとんど見えない。
「ふふ、もう一度キミに会えるように、居場所のヒントをあげよう。後で床を
見てみたまえ…」
最後のウォン=リーの声は、どこかに吸い込まれるかのようにかすれながら
消えていく…。
「…なろ…っ、ざ、けんな…っ」
ウォン=リーの場所を確かめるためにもう一度アロエが目を開いた時には、
すでに光は消え去り、後には赤い文字で書かれた何かの記号らしき模様が残っ
ていた。
そう、大勢の人間の目の前で、ウォンとオーシンは忽然とその姿を消してし
まったのである。
PR
トラックバック
トラックバックURL: