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2024/11/16 10:40 |
24.アロエ&オーシン 「鉛色の空」/オーシン(周防松)
PC:アロエ オーシン
場所:イノス『海猫亭』
NPC:ハボック カーチス ウォン=リー 海猫亭のマダム ベル(ベルサリウ
ス)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

――また負けた。

カーチスは重苦しいため息をつき、手元に残っていたカードをテーブルの上に投げ出
した。
見事なまでの完敗である。
負けた金額も馬鹿にならない。
次の給料日はいつだったか、と考えて、彼はひどくゆううつになった。
しばらくは貧乏を覚悟しなければなるまい。
考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。

「もう一度やるかね?」

目の前の男に尋ねられ、カーチスは「これ以上やったら破産する」と断った。
「どうだ、カーチス。調子の方は」
すっかり落ちこんでいるカーチスに、ウィスキーのグラスを片手に歩み寄ってきたハ
ボックが声をかける。
「見てわからねぇのか」
げんなりとした表情でテーブルを睨めば、ハボックも一瞬で理解したらしく、眉をピ
クリと動かした。
「……えらいことになってるな」
呟き、グラスを傾けるハボックを、カーチスはジト目で見上げた。
「しばらくはお前にたかるからな」
「無茶言うなよ。俺だって今月キツイんだぜ」
「親友を助けようっていう気持ちがねぇのかお前はっ!」
「引き際を間違えたお前が悪いんだろうがっ!」
「薄情モン!」
「うるせぇっ、だいいち俺はなぁ、お前がカードやってる間に、真面目にあの麦藁帽
の子の聞き込みをやってたんだからな! 反省しろ!」
2人の会話はやいのやいのと止まりそうにない。
まあ、ある意味仲の良い証拠であろう。
「友人かね?」
2人のやりとりを黙って聞いていた黒髪の男が、かすかに笑う。

「「誰がこんな馬鹿と!!」」

言っていることはまるきしケンカ腰だったが、その声は、ピタリと合っていた。
まあまあ、と黒髪の男はなだめるように小さく片手を上げる。
「酒場でケンカとはあまり感心しないね。まあ、今回は負けた金の支払いをナシとい
うことにしておこう。それならかまわないだろう?」
はあ……。
カーチスが、助かったと言わんばかりにため息をつく。
「カードをやるのは久々でね。実に楽しませてもらったよ。良かったら一緒に飲まな
いか? ウィスキーで良ければ、一杯おごるよ」
ハボックとカーチスは互いに顔を見合わせたものの、「それじゃあ……」と素直に
テーブルについた。

「マダム、ウィスキーを3つ」
男の注文にマダムが優雅に微笑み、応じる。

バラバラバラ……ッ。

「あら?」
頭上……正しくは屋根の上から聞こえてきた音に、ウィスキーを用意する手を止め、
マダムは顔を上げた。
「止んだと思っていたのに、また降ってきたわね」
マダムの言葉に、ハボックはちらりと窓の外を見た。


――突然の雨に降られ、3人が雨宿りのために海猫亭の軒下へと逃げ込んだのは、
ちょうどその頃だった。

「なんで降ってくるんだよっ! せっかく、人が張り切ってるっていうのに!」
軒下に逃げ込むなり、アロエは鉛色の空を睨んだ。
髪も服も、ネコミミも尻尾もびしょびしょになっている。
雨の嫌いなアロエにとっては、かなりこたえる状況だろう。
「今日はよく降るなぁ……」
その傍らで、ベルサリウスはローブのすそをしぼっていた。
オーシンはというと、特に何もせずぼーっと空を見上げている。
濡れたワンピースが素肌に張り付いているが、特に気にしていないらしい。
「……あのさ、なんとかした方がいいと思うんだけど」
見かねたらしいベルサリウスが、視線を逸らしながらぼそぼそと呟く。
その頬は、どこか赤く染まって見えた。
「……風邪、引かないから大丈夫だよ……」
「いや、そういうことじゃなくて……」
「なんだよ、ベル。言いたいことがあるんなら、はっきり言っ……」

「ぬああああーーーーーーっっ!!」

アロエの言葉を、男の叫び声が寸断する。
その声の大きいこと。
ネコミミを押さえてアロエがうめき、ベルがビクッと身をすくめ、オーシンがゆっく
りした動きで声のした方角へと顔を向ける。

「い、いたーっ!」

バタァン!と乱暴にドアが開き、金髪の男が飛び出してくる。
――ハボックである。
が、オーシンがそんなことを知るはずもない。
「君、一体どこへ行っていたんだ? 随分捜したんだよ……ああ、びしょ濡れじゃな
いか!」
ハボックはオーシンの両肩をつかむ。
途端に彼は顔をしかめた。
「こんなに体も冷えちまってる。平気なのか?」
オーシンは、ぼんやりした表情のまま、まばたきをした。
体が冷たいのは、オーシンにとては別に異常なことではない。
むしろ、アロエに指摘されて初めて知ったのだ。
自分の体温がおそろしく低いものであるらしい、ということを。
ともかく。
オーシンは平気だったので、
「……うん」
こっくり、と頷いた。
ハボックは、あまりにもあっさりとした返答にあ然とした。
こんなに冷たい体をしているのに、平気だなんてことがあるものか。
普通は震えが止まらなくなるはずなのに。
そうだ、きっと彼女は感覚を失うほどに体が冷えてしまったのだ。
――と無理矢理自分を納得させて、
「……あれ?」
そこで彼はようやく、アロエとベルサリウスの存在に気付いた。
「アロエちゃん、どうしてここにいるんだい? それにその子は……?」

ハボックはしばらく、アロエとベルサリウス、そしてオーシンの3人を交互に見てい
た。
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2007/02/12 16:41 | Comments(0) | TrackBack() | アロエ&オーシン

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