PC アロエ オーシン
場所 イノス
NPC ハボック カーチス ウォン=リー ベル(ベルサリウス) おばば
様(サラ) カヤ
___________________________________
少年がおばば様と対面していた時刻とちょうど同じ頃――。
<海猫亭>に入ったとたん意気揚々とカウンターに座りバーで飲みだしたカ
ーチスは放って置き、ハボックは真面目に、宿にいる何人もの人間に麦藁帽の
女の子の行方を尋ねていた。
「知らないね」
「さあ…、見なかったけどなぁ…」
冒険者風の男、商人風の男…いろいろな人間に尋ねたが、返ってくるのはそ
んな言葉ばかりだ。時にはじろりと睨みつけられ「麦藁帽の子なんてどこにで
もいるだろ」と冷たい言葉を返されたこともあった。
念のため、先ほどまでギルドにいたという冒険者数人に「ギルドで白い服を
着た麦藁帽の女の子を見ませんでしたか?」と尋ねてみたが、その冒険者たち
も「そんな子は見なかったけどな…」と皆一様に首を振った。
(チキショー、情報ゼロかよ)
気力を使い果たしすっかりくたびれたハボックは、バーの椅子にどっかりと
腰を下ろした。
「あー、疲れた。カーチスはさっきから飲んでんのによ」
疲れのせいで、カーチスに対する不満も高まる。
「オレだけ必死で情報聞いて、あー馬鹿馬鹿しいったらないね」
すっかりふてくされ、ハボックはバーのマダムに自分もウィスキーを注文し
た。<海猫亭>のマダムは、…彼女の妖艶な魅力がこの宿の人気の一つなのだ
が、艶のある笑顔でハボックにウィスキーを差し出す。
「はい、どうぞ。あら?船員さん、アナタも昼間からお酒?」
「…あの働かないヴァカと一緒にしないで下さいよ」
思わず、「バカ」という言葉に力が入る。そんなハボックを見てマダムがく
すくすと笑った。
「ふふっ、そういえばアナタと同じ制服のそう…髪の毛がくるくるパーマの人
がさっきから飲んでたわね」
マダムが指で髪の所の<くるくる>というジェスチャーをして言う。
「そうそう。アイツ、頭だけじゃなくて、中身も<クルクル>ですから」
それにハボックも同じジェスチャーを返した。マダムが「ふふふっ」と笑
う。
「ねぇ、アナタ、その人のお友達なんでしょう?…お金、貸してあげたら?」
「はっ?」
突然のマダムの言葉にハボックは目が点になった。
「何でオレが?」
「だってその人、さっきからそこのテーブルでカードゲームしてるけど、ずっ
と負けっぱなしなのよ。おサイフの底が尽きちゃうわ」
「へっ?」
その言葉にマダムが指差したほうを見ると、カーチスが、見知らぬ男とテー
ブルを挟んでゲームをしていた。カーチスの表情はかなり苦しそうで、しきり
に「チクショー」「次は勝つからな!」と叫んでいる。相手の男…黒髪で長い
ローブのようなものを着ているが…は、波立たない水面のように冷静で。ハボ
ックにはそれが、その男のゆるぎない自信のようにも見えた。
(カーチス…、アイツ、カードはそんなに弱くないはずなんだが…)
カーチスと男の勝負をただ茫然と見ているハボックに、マダムが囁いた。
「あの人…、さっきまでここで飲んでた人なんだけど…、植物を研究してるん
ですって。つい最近、とても珍しい種を『盗まれた』って言ってたわ」
「へぇ…、植物をねぇ…」
怪訝そうな顔でハボックはその男を見つめた。心の底に「チクリ」と引っか
かるものを感じながら――。
一方。シーカヤック号では…。
「あ…」
少年…ベルサリウスが絶句したまま立ち尽くしていた。その青灰色の目を大
きく見開いて。
「この人の顔に…見覚えある、よね?」
オーシンが静かに言う。そう、ここはカヤの寝ている船室だ。ベルサリウス
はわなわなとカヤの傍に近づくと、そっとカヤの手を握った。
「ウ、ウソだ…。こんな…」
ベルサリウスが握ったカヤの手は痩せて細く、冷たかった。
「こんなの…ウソだ!!種の所為なんかじゃない!」
「坊主、自分のしたことから逃げるんじゃないよ!」
サラが怒鳴った。
「これは正真正銘<種>の仕業だ。最初はもしや…と思っていたが、アンタの
反応を見て確信したよ。どうやらこの娘の病気の原因はアンタと、アンタのお
父様にあることは間違いないようだね!」
その時。
「う…」
カヤが苦しそうに声を漏らした。
「おい、カヤ!大丈夫かっ!」
アロエとおばば様が駆け寄る。
「苦しいのか…っ、カヤっ…」
アロエがぎゅっと、手を握ると、
「…父、さ…ん…」
カヤの目から涙がこぼれた。
「苦しいよ…、お母…さ…」
バタンっ
その様子を見ていられなくなったのだろう。ベルサリウスが部屋を飛び出し
た。
「待て、ベル!」
「待って…!」
急いでアロエとオーシンも後を追いかけた。
場所 イノス
NPC ハボック カーチス ウォン=リー ベル(ベルサリウス) おばば
様(サラ) カヤ
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少年がおばば様と対面していた時刻とちょうど同じ頃――。
<海猫亭>に入ったとたん意気揚々とカウンターに座りバーで飲みだしたカ
ーチスは放って置き、ハボックは真面目に、宿にいる何人もの人間に麦藁帽の
女の子の行方を尋ねていた。
「知らないね」
「さあ…、見なかったけどなぁ…」
冒険者風の男、商人風の男…いろいろな人間に尋ねたが、返ってくるのはそ
んな言葉ばかりだ。時にはじろりと睨みつけられ「麦藁帽の子なんてどこにで
もいるだろ」と冷たい言葉を返されたこともあった。
念のため、先ほどまでギルドにいたという冒険者数人に「ギルドで白い服を
着た麦藁帽の女の子を見ませんでしたか?」と尋ねてみたが、その冒険者たち
も「そんな子は見なかったけどな…」と皆一様に首を振った。
(チキショー、情報ゼロかよ)
気力を使い果たしすっかりくたびれたハボックは、バーの椅子にどっかりと
腰を下ろした。
「あー、疲れた。カーチスはさっきから飲んでんのによ」
疲れのせいで、カーチスに対する不満も高まる。
「オレだけ必死で情報聞いて、あー馬鹿馬鹿しいったらないね」
すっかりふてくされ、ハボックはバーのマダムに自分もウィスキーを注文し
た。<海猫亭>のマダムは、…彼女の妖艶な魅力がこの宿の人気の一つなのだ
が、艶のある笑顔でハボックにウィスキーを差し出す。
「はい、どうぞ。あら?船員さん、アナタも昼間からお酒?」
「…あの働かないヴァカと一緒にしないで下さいよ」
思わず、「バカ」という言葉に力が入る。そんなハボックを見てマダムがく
すくすと笑った。
「ふふっ、そういえばアナタと同じ制服のそう…髪の毛がくるくるパーマの人
がさっきから飲んでたわね」
マダムが指で髪の所の<くるくる>というジェスチャーをして言う。
「そうそう。アイツ、頭だけじゃなくて、中身も<クルクル>ですから」
それにハボックも同じジェスチャーを返した。マダムが「ふふふっ」と笑
う。
「ねぇ、アナタ、その人のお友達なんでしょう?…お金、貸してあげたら?」
「はっ?」
突然のマダムの言葉にハボックは目が点になった。
「何でオレが?」
「だってその人、さっきからそこのテーブルでカードゲームしてるけど、ずっ
と負けっぱなしなのよ。おサイフの底が尽きちゃうわ」
「へっ?」
その言葉にマダムが指差したほうを見ると、カーチスが、見知らぬ男とテー
ブルを挟んでゲームをしていた。カーチスの表情はかなり苦しそうで、しきり
に「チクショー」「次は勝つからな!」と叫んでいる。相手の男…黒髪で長い
ローブのようなものを着ているが…は、波立たない水面のように冷静で。ハボ
ックにはそれが、その男のゆるぎない自信のようにも見えた。
(カーチス…、アイツ、カードはそんなに弱くないはずなんだが…)
カーチスと男の勝負をただ茫然と見ているハボックに、マダムが囁いた。
「あの人…、さっきまでここで飲んでた人なんだけど…、植物を研究してるん
ですって。つい最近、とても珍しい種を『盗まれた』って言ってたわ」
「へぇ…、植物をねぇ…」
怪訝そうな顔でハボックはその男を見つめた。心の底に「チクリ」と引っか
かるものを感じながら――。
一方。シーカヤック号では…。
「あ…」
少年…ベルサリウスが絶句したまま立ち尽くしていた。その青灰色の目を大
きく見開いて。
「この人の顔に…見覚えある、よね?」
オーシンが静かに言う。そう、ここはカヤの寝ている船室だ。ベルサリウス
はわなわなとカヤの傍に近づくと、そっとカヤの手を握った。
「ウ、ウソだ…。こんな…」
ベルサリウスが握ったカヤの手は痩せて細く、冷たかった。
「こんなの…ウソだ!!種の所為なんかじゃない!」
「坊主、自分のしたことから逃げるんじゃないよ!」
サラが怒鳴った。
「これは正真正銘<種>の仕業だ。最初はもしや…と思っていたが、アンタの
反応を見て確信したよ。どうやらこの娘の病気の原因はアンタと、アンタのお
父様にあることは間違いないようだね!」
その時。
「う…」
カヤが苦しそうに声を漏らした。
「おい、カヤ!大丈夫かっ!」
アロエとおばば様が駆け寄る。
「苦しいのか…っ、カヤっ…」
アロエがぎゅっと、手を握ると、
「…父、さ…ん…」
カヤの目から涙がこぼれた。
「苦しいよ…、お母…さ…」
バタンっ
その様子を見ていられなくなったのだろう。ベルサリウスが部屋を飛び出し
た。
「待て、ベル!」
「待って…!」
急いでアロエとオーシンも後を追いかけた。
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