PC アロエ オーシン
場所 イノス
NPC シーカヤック号船員二名(ハボック・カーチス)
___________________________________
「オーシン!」
突然、ふっ、と何かに憑かれたかのように走り出したオーシンを、あわてて
アロエは追いかけた。アロエにはなぜオーシンが突然走り出したのか、その理
由が解らない。『匂い』をかぎわける力は魔物であるオーシンには本能的にあ
るようだが、化け猫のハーフとはいえ、天使であるアロエにはそれは備わって
いなかった。
あわてて二三歩踏み出すが、そこでふ…、と意識が揺らぐ。まださっきの日
射病が治っていなかったようだ。
(やべえ、このままだとネコになっちまう…)
体が弱ったり、気が緩んだりすると、アロエは人間の姿に近い『天使型』の
姿でいられなくなり、猫の姿に近い『化け猫型』になってしまうのだ。単細胞
のアロエでも、いきなり公衆の面前でネコに変身してしまうことがマズイこと
ぐらいは解る。
そんなことをアロエが考えてるうちに、オーシンは暗い路地に姿を消してし
まった。
「オー…シン…っ」
後を追って同じ路地に入ろうとするアロエ。
しかし、
がしっ
「おわっ!?」
突然両腕を何者かに捕まれ、おどろいたアロエが横を見ると、
「よかった。やっと見つけたぜ。なあ、カーチス」
「おう、ハボック。けっこう歩いたよなぁ」
アロエは思わず目を丸くする。シーカヤック号の制服を着た船員二人が自分
の両腕をがっしりと捕まえて、ニヤニヤ自分を挟んで笑いあっているのだ。
「なんだ、お前ら!放せよ!おれ、今急いでるんだ!」
じたばたアロエは男達に捕まれながらもがくが、海で鍛えた男達の腕の力は
強く、いっこうに抜け出せない。
「お嬢ちゃん、そんな暴れんなよ。オレ達、あの魔女に言われて来たんだ」
自分の右腕を掴んでいる男…ハボックと呼ばれた金髪の方がそう言う。
「魔女?あのばーさんのことか?」
「そう、あの魔女にお嬢ちゃんともう一人の連れの子を連れ戻して来いって、
頼まれたんだよ、オレ達」
左腕を掴んでいる男…カーチスと呼ばれた黒髪ドレットヘアーの方が困った
ような顔を作りながら言う。
ちなみにそんなのは全くのウソである。あの後、魔女を船医に預けこの二人
が勝手に探しに来ただけなのだ。もしかしたら魔女からなにか報酬がもらえる
かもしれないという淡い期待と、かわいい女の子に話しかけられるという下心
を持って。
そして二人の期待通り、二人は今、女の子の一人、アロエを見つけ、その腕
をがしっと捕まえることが出来る幸運(?)に恵まれたわけだ。
「だからさ、アロエちゃん…、だっけ?何をしようとしてるか知らないけど、
今はひとまず船に戻らない?」
と、ハボック。
「そーさ、魔女カンカンだぜ?二人が勝手に船を抜け出した、って。早く戻っ
て謝ったほうがいいんじゃない?」
と、カーチス。
アロエは…唖然とした顔をしていた。
第一に、自分が「お嬢ちゃん」だの「アロエちゃん」だの呼ばれたことが初
めてだったからだ。
そして自分たちが船を抜け出してきたことがもうバレたことにも、驚きを感
じていた。自分たちが抜け出してきて、おばば様が気づいて、追っ手を差し向
けて…。まだ一時間も経っていない。
その二つのショックでアロエはしばらくぽかーんとしていたが、すぐにはっ
と気を取り直した。
「そーだ、それどころじゃねぇんだ、今は、オーシンが!」
「オーシン?」
ひょっ、とした顔で聞き返すハボックにアロエはうなづく。
「おれの連れだよ、ほら、麦藁帽被った!」
「ああ、あの美人なあの子ね。その子が、どうかしたの?」
「今、何あったか知らねぇけどさ、この路地の奥に走って行っていなくなっち
まったんだ!だから、今すぐ追いかけねぇと、ますます見失っちまう。だから
放してくれ」
「ダメだよ」
カーチスが言う。
「そんなことしたらキミのことまで見失っちまう。この奥がどんな場所だかキ
ミは知ってるのかい?」
「えっ?」
驚くアロエに、カーチスは神妙な顔をして言う。
「この奥は、このイノスのワルどもが溜まっているスラム街なんだ。だから、
ここに入ればオレたち二人でもキミのことを守りきれるかどうか…」
「じゃあ、尚更だ!オーシンを探さねぇと!おれのことは天使だから、守らな
くったっていいから!」
「どっちにしたって無理だ。キミ、体がふらふらしていただろ?ムリしないほ
うがいい」
「んなの…!」
(おれは天使だから平気だ!)と叫びたかったが、そのときにはもう、アロエ
は二人に抱えられたまま回れ右をしていた。
「何するんだよ!放せ!」
「ダメだよ、とりあえず今はひとまず船に戻るんだ。そうしないと魔女が怒る
し」
「ダメだ!放せ!オーシンがっ…!」
いくらアロエがもがいても、この二人の腕から抜け出せない。今ここでネコ
に変身すればもしかしたら抜け出せるかもしれないが、人間として船員に通し
ている以上、さすがにそれは出来ない。変化も同じ理由だ。
(オーシンっ…!!)
努力も空しくアロエはシーカヤック号に強制的に連行されていった。
場所 イノス
NPC シーカヤック号船員二名(ハボック・カーチス)
___________________________________
「オーシン!」
突然、ふっ、と何かに憑かれたかのように走り出したオーシンを、あわてて
アロエは追いかけた。アロエにはなぜオーシンが突然走り出したのか、その理
由が解らない。『匂い』をかぎわける力は魔物であるオーシンには本能的にあ
るようだが、化け猫のハーフとはいえ、天使であるアロエにはそれは備わって
いなかった。
あわてて二三歩踏み出すが、そこでふ…、と意識が揺らぐ。まださっきの日
射病が治っていなかったようだ。
(やべえ、このままだとネコになっちまう…)
体が弱ったり、気が緩んだりすると、アロエは人間の姿に近い『天使型』の
姿でいられなくなり、猫の姿に近い『化け猫型』になってしまうのだ。単細胞
のアロエでも、いきなり公衆の面前でネコに変身してしまうことがマズイこと
ぐらいは解る。
そんなことをアロエが考えてるうちに、オーシンは暗い路地に姿を消してし
まった。
「オー…シン…っ」
後を追って同じ路地に入ろうとするアロエ。
しかし、
がしっ
「おわっ!?」
突然両腕を何者かに捕まれ、おどろいたアロエが横を見ると、
「よかった。やっと見つけたぜ。なあ、カーチス」
「おう、ハボック。けっこう歩いたよなぁ」
アロエは思わず目を丸くする。シーカヤック号の制服を着た船員二人が自分
の両腕をがっしりと捕まえて、ニヤニヤ自分を挟んで笑いあっているのだ。
「なんだ、お前ら!放せよ!おれ、今急いでるんだ!」
じたばたアロエは男達に捕まれながらもがくが、海で鍛えた男達の腕の力は
強く、いっこうに抜け出せない。
「お嬢ちゃん、そんな暴れんなよ。オレ達、あの魔女に言われて来たんだ」
自分の右腕を掴んでいる男…ハボックと呼ばれた金髪の方がそう言う。
「魔女?あのばーさんのことか?」
「そう、あの魔女にお嬢ちゃんともう一人の連れの子を連れ戻して来いって、
頼まれたんだよ、オレ達」
左腕を掴んでいる男…カーチスと呼ばれた黒髪ドレットヘアーの方が困った
ような顔を作りながら言う。
ちなみにそんなのは全くのウソである。あの後、魔女を船医に預けこの二人
が勝手に探しに来ただけなのだ。もしかしたら魔女からなにか報酬がもらえる
かもしれないという淡い期待と、かわいい女の子に話しかけられるという下心
を持って。
そして二人の期待通り、二人は今、女の子の一人、アロエを見つけ、その腕
をがしっと捕まえることが出来る幸運(?)に恵まれたわけだ。
「だからさ、アロエちゃん…、だっけ?何をしようとしてるか知らないけど、
今はひとまず船に戻らない?」
と、ハボック。
「そーさ、魔女カンカンだぜ?二人が勝手に船を抜け出した、って。早く戻っ
て謝ったほうがいいんじゃない?」
と、カーチス。
アロエは…唖然とした顔をしていた。
第一に、自分が「お嬢ちゃん」だの「アロエちゃん」だの呼ばれたことが初
めてだったからだ。
そして自分たちが船を抜け出してきたことがもうバレたことにも、驚きを感
じていた。自分たちが抜け出してきて、おばば様が気づいて、追っ手を差し向
けて…。まだ一時間も経っていない。
その二つのショックでアロエはしばらくぽかーんとしていたが、すぐにはっ
と気を取り直した。
「そーだ、それどころじゃねぇんだ、今は、オーシンが!」
「オーシン?」
ひょっ、とした顔で聞き返すハボックにアロエはうなづく。
「おれの連れだよ、ほら、麦藁帽被った!」
「ああ、あの美人なあの子ね。その子が、どうかしたの?」
「今、何あったか知らねぇけどさ、この路地の奥に走って行っていなくなっち
まったんだ!だから、今すぐ追いかけねぇと、ますます見失っちまう。だから
放してくれ」
「ダメだよ」
カーチスが言う。
「そんなことしたらキミのことまで見失っちまう。この奥がどんな場所だかキ
ミは知ってるのかい?」
「えっ?」
驚くアロエに、カーチスは神妙な顔をして言う。
「この奥は、このイノスのワルどもが溜まっているスラム街なんだ。だから、
ここに入ればオレたち二人でもキミのことを守りきれるかどうか…」
「じゃあ、尚更だ!オーシンを探さねぇと!おれのことは天使だから、守らな
くったっていいから!」
「どっちにしたって無理だ。キミ、体がふらふらしていただろ?ムリしないほ
うがいい」
「んなの…!」
(おれは天使だから平気だ!)と叫びたかったが、そのときにはもう、アロエ
は二人に抱えられたまま回れ右をしていた。
「何するんだよ!放せ!」
「ダメだよ、とりあえず今はひとまず船に戻るんだ。そうしないと魔女が怒る
し」
「ダメだ!放せ!オーシンがっ…!」
いくらアロエがもがいても、この二人の腕から抜け出せない。今ここでネコ
に変身すればもしかしたら抜け出せるかもしれないが、人間として船員に通し
ている以上、さすがにそれは出来ない。変化も同じ理由だ。
(オーシンっ…!!)
努力も空しくアロエはシーカヤック号に強制的に連行されていった。
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