PC アロエ オーシン
場所 イノス
NPC おばば様(サラ) シーカヤック号船員 ヤックル船長 カヤ
___________________________________
シーカヤック号の船長ヤックルは、先ほどから扉の前をウロウロウロウロし
て非常に落ち着かない様子だ。
吸っている葉巻ももう五本目である。
頭の中は、部屋の中で「魔女」サラの治療を受けている娘のことでいっぱい
だった。娘は今どうしているのだろう、どんな治療を受けているのか、と。
治療前にサラに「これは病気の進行を止めることはできるが、長い間使うと
体に毒だからね。そんなに頻繁に使える魔法じゃない」とはっきりいわれたこ
とも原因である。そして部屋の中にいるのは娘の他にサラ一人、あの魔女は治
療を始めるとき自分たちのみならず、連れてきた女の子二人も部屋から追い出
してしまった。
(しかし、あの<コスプレ>の方の女の子…。)
船長はあのよく目立つ猫耳と長いしっぽをつけた女の子の姿を思い出しなが
ら思った。
(魔女に部屋から追い出されたとき、とても悲しそうな、憤ったような表情を
していた…)
そのコスプレの子は、格好も奇抜なら、あの魔女に面と向かって堂々と文句
もいう、少し奇抜な女の子だった。
その子が魔女に「お前にできることは何もない」と言われ、部屋を出て行っ
たときの悲しそうな顔。
今は他人を同情している余裕がない船長でさえふっと思い出してかわいそう
に思ってしまうくらい、彼女は悲しんでいた。ノラ猫が雨に濡れたように、耳
も尻尾もしょんぼりとたらして。
その時、船長は息を呑んだ。
青白い顔をしたサラが、娘の部屋から出てきたのだ。
魔女のその顔色に一瞬ぎょっとした船長だったが、すぐに「あ、ああ…、娘
は…」とたどたどしく尋ねる。
「今はよく寝てるよ」
ドアの前の魔女を押しのけるようにして、すぐに船長が部屋の中に入ると、
カヤは…、今はやわらかく目を閉じて、すうすうと穏やかな寝息を立ててい
た。
「カヤ…」
そっと船長は娘の白い手を握った。こんな穏やかな表情で寝ている娘を見る
のは久しぶりだった。
サラはそんな船長にかまわず、船の中をふらふらと歩くと、ちょうどその
時、なにやら楽しそうに話している二人の船員を見つけ、声をかけた。
「おい、お前達」
『うわっ』
船員が二人同時にびくっ、として振り向いた。船員の一人がびっくりして手
に持っていた麦藁帽子をとすっ、と落とした。
「なにをそんなに驚くんだね」
「い、いや、そんないきなり声かけられたら驚くじゃないですか、なぁ?」
「お、おう」
二人とも、まさか今まで女の子をナンパする相談をしていたからだとは言え
ず、決まり悪そうににやにや笑うしかない。
サラはそんな二人を訝しげにじろりと見つめると、
「ふん、まあいい、今落としたのはオーシンの帽子だね。私の連れ…、オーシ
ンとアロエをこの船のどこかで見なかったかい」
「船というか…、その二人なら先ほど船から出てどこかへ出かけていきました
よ…?」
「なっ…!」
それを聞いたサラの顔色が変わった。
「あの馬鹿…!勝手に出かけるなとあれほど…」
そのとき、先ほどの治療の疲れとショックでサラの体がふらっ、と傾いた。
あわてて船員二人がその体を支える。
「だっ、大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ…?」
「ふん…。これくらいあの娘に比べればたいしたことないさ…。それより、お
前達、あの二人がどこに行ったか心当たりはないのかい…?」
苦しそうにサラが尋ねると、サラの右肩を捕まえている船員が左肩を支えて
いる船員の顔を見て尋ねる。
「心当たりか…、おい、お前なんかあるか?」
「あ、そういえばあのコスプレの子が『ギルドに行く』とか何とか言ってた様
な…」
「あの、馬鹿天使…、余計なこと、を…」
ショックが重なったせいだろうか、サラはそのままふっと意識をなくしてし
まった。
「あ、おい、大丈夫か、おい!」
慌てて船員二人がサラの体を揺さぶるが、サラは目を覚まさない。
「ど、どうするよ?おい?」
「と、とりあえずこの魔女をどこかのベッドに寝かせてだな…」
「それでその後は?」
「その後は…」
その時、右肩を捕まえていたほうの船員がにやり、とした。
「なぁ、俺たち二人であの二人を探しに行くっていうのはどうよ?」
「えっ?」
困惑した表情になるもうひとりの船員に、その船員はにやにやしながら言
う。
「なあに、<人助け>だよ、<人助け>。魔女のためにあの二人を連れて帰っ
てきてやるのさ。そしたら自然にあの子達に声かけられるだろ?」
「おお、いいね、それ」
もう一人の船員の目も光る。
「じゃあ、そういうことにしねぇ?行き先はわかってるし」
「だな」
魔女を挟んで、二人はにやっと笑みを交わした。
場所 イノス
NPC おばば様(サラ) シーカヤック号船員 ヤックル船長 カヤ
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シーカヤック号の船長ヤックルは、先ほどから扉の前をウロウロウロウロし
て非常に落ち着かない様子だ。
吸っている葉巻ももう五本目である。
頭の中は、部屋の中で「魔女」サラの治療を受けている娘のことでいっぱい
だった。娘は今どうしているのだろう、どんな治療を受けているのか、と。
治療前にサラに「これは病気の進行を止めることはできるが、長い間使うと
体に毒だからね。そんなに頻繁に使える魔法じゃない」とはっきりいわれたこ
とも原因である。そして部屋の中にいるのは娘の他にサラ一人、あの魔女は治
療を始めるとき自分たちのみならず、連れてきた女の子二人も部屋から追い出
してしまった。
(しかし、あの<コスプレ>の方の女の子…。)
船長はあのよく目立つ猫耳と長いしっぽをつけた女の子の姿を思い出しなが
ら思った。
(魔女に部屋から追い出されたとき、とても悲しそうな、憤ったような表情を
していた…)
そのコスプレの子は、格好も奇抜なら、あの魔女に面と向かって堂々と文句
もいう、少し奇抜な女の子だった。
その子が魔女に「お前にできることは何もない」と言われ、部屋を出て行っ
たときの悲しそうな顔。
今は他人を同情している余裕がない船長でさえふっと思い出してかわいそう
に思ってしまうくらい、彼女は悲しんでいた。ノラ猫が雨に濡れたように、耳
も尻尾もしょんぼりとたらして。
その時、船長は息を呑んだ。
青白い顔をしたサラが、娘の部屋から出てきたのだ。
魔女のその顔色に一瞬ぎょっとした船長だったが、すぐに「あ、ああ…、娘
は…」とたどたどしく尋ねる。
「今はよく寝てるよ」
ドアの前の魔女を押しのけるようにして、すぐに船長が部屋の中に入ると、
カヤは…、今はやわらかく目を閉じて、すうすうと穏やかな寝息を立ててい
た。
「カヤ…」
そっと船長は娘の白い手を握った。こんな穏やかな表情で寝ている娘を見る
のは久しぶりだった。
サラはそんな船長にかまわず、船の中をふらふらと歩くと、ちょうどその
時、なにやら楽しそうに話している二人の船員を見つけ、声をかけた。
「おい、お前達」
『うわっ』
船員が二人同時にびくっ、として振り向いた。船員の一人がびっくりして手
に持っていた麦藁帽子をとすっ、と落とした。
「なにをそんなに驚くんだね」
「い、いや、そんないきなり声かけられたら驚くじゃないですか、なぁ?」
「お、おう」
二人とも、まさか今まで女の子をナンパする相談をしていたからだとは言え
ず、決まり悪そうににやにや笑うしかない。
サラはそんな二人を訝しげにじろりと見つめると、
「ふん、まあいい、今落としたのはオーシンの帽子だね。私の連れ…、オーシ
ンとアロエをこの船のどこかで見なかったかい」
「船というか…、その二人なら先ほど船から出てどこかへ出かけていきました
よ…?」
「なっ…!」
それを聞いたサラの顔色が変わった。
「あの馬鹿…!勝手に出かけるなとあれほど…」
そのとき、先ほどの治療の疲れとショックでサラの体がふらっ、と傾いた。
あわてて船員二人がその体を支える。
「だっ、大丈夫ですか?顔色が真っ青ですよ…?」
「ふん…。これくらいあの娘に比べればたいしたことないさ…。それより、お
前達、あの二人がどこに行ったか心当たりはないのかい…?」
苦しそうにサラが尋ねると、サラの右肩を捕まえている船員が左肩を支えて
いる船員の顔を見て尋ねる。
「心当たりか…、おい、お前なんかあるか?」
「あ、そういえばあのコスプレの子が『ギルドに行く』とか何とか言ってた様
な…」
「あの、馬鹿天使…、余計なこと、を…」
ショックが重なったせいだろうか、サラはそのままふっと意識をなくしてし
まった。
「あ、おい、大丈夫か、おい!」
慌てて船員二人がサラの体を揺さぶるが、サラは目を覚まさない。
「ど、どうするよ?おい?」
「と、とりあえずこの魔女をどこかのベッドに寝かせてだな…」
「それでその後は?」
「その後は…」
その時、右肩を捕まえていたほうの船員がにやり、とした。
「なぁ、俺たち二人であの二人を探しに行くっていうのはどうよ?」
「えっ?」
困惑した表情になるもうひとりの船員に、その船員はにやにやしながら言
う。
「なあに、<人助け>だよ、<人助け>。魔女のためにあの二人を連れて帰っ
てきてやるのさ。そしたら自然にあの子達に声かけられるだろ?」
「おお、いいね、それ」
もう一人の船員の目も光る。
「じゃあ、そういうことにしねぇ?行き先はわかってるし」
「だな」
魔女を挟んで、二人はにやっと笑みを交わした。
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