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2025/03/10 07:52 |
11.アロエ&オーシン「挫折と勇気と」/アロエ(果南)
PC アロエ・オーシン
場所 イノス(シーカヤック号)
NPC おばば様(サラ)
________________________________________________________

 あの後、「治療の邪魔だよ!」と、おばば様に部屋を追い出されたアロエと
オーシンは、船の上で特にすることもなく、二人並んでシーカヤック号の手す
りに寄りかかってぼんやりと海を見ていた。
 ニャアニャア、とウミネコが鳴きながら頭の上を飛んでいく。
「種を管理しているヤツ…ねぇ」
 アロエがはぁ、とため息をつく。
「って言われても、おれ、そんなヤツ全然想像もつかねぇよ。大体あのばーさ
ん、直し方もわかんねぇくせにどうやって治療すんだ?」
「正体が植物だ…って解ってるから、身体の外から、植物の成長を遅くする魔
法をかけるんだって」
 オーシンが、緑色の瞳で海を見つめながら言う。
「ただ…、その魔法で完全に治せるわけじゃないし、それに、その魔法は健康
にはあまりよくない魔法らしいから…。ずっと使い続けるのは危険なんだっ
て…」
「そうか…」
 話題が途切れた後、またため息をつくアロエ。
「おれ…、できればなんとかしてやりてぇよ…」
 そういって手すりにぐったりと沈み込むアロエの猫耳としっぽは、いつにな
くションボリとしていた。
「アロエ…」
「おれ、あんなふうに誰かが苦しむの、見たくねぇんだ…。おれ…、天使だか
ら、苦しんでる人間がいたら、なるべく助けてやりてぇ…」
 落ち込むアロエの姿を見て、オーシンも心配そうな表情になる。特に、アロ
エの場合、落ち込むとすぐに耳やしっぽに、感情がわかりやすく表れるから、
余計心配を誘うのかもしれない。
(くそっ…、おれっ…。どうしたらいい…?)
 手すりに沈み込みながら、アロエは考える。
 あの時、あのばーさんが「種を管理してる奴なら、なんとかする手段を知っ
てるかもしれない」。そう言ったとき、アロエは即座に「じゃあ、おれがソイ
ツを見つけてやる!」と断言した。
 しかしおばば様は、そんなアロエに一言「お前は余計な考えをおこすんじゃ
ないよ」と言い放った。…そういえば、邪魔だと部屋を追い出されたのもあの
すぐ後だった。そんな気がする。それはすなわちばーさんに自分は役立たずだ
と、間接的に言われている気がして。
(くそっ…。おれ…、そんなに役に立たないかよ、ばーさん…)
 アロエは救いたかった。ただ、目の前にある苦しんでいる人間を救ってあげ
たかったのだ。誰かを救うべき存在、天使として。けれど。アロエはぎゅっと
目をつぶる。
 けれど事実。自分は無力だった。
 ばーさんのように、あの子の痛みを和らげてあげることもできない。種を持
っていそうな人物も知らない。
(ああ、きっとこんな自分を、おれはばーさんに見透かされたんだな…)
 そう思うと、アロエは船長の娘、カヤがかわいそうで、自分が何もできない
のが悔しくて、手すりをずるずると下に下がって、うずくまって、思わず泣き
そうになってきた。
(ああ…。おれ…、天使なのに…、おれ…)
「あの…、アロエ…」
 ふっ、と顔を上げると、緑色の瞳を心配そうに曇らせて、オーシンがアロエ
を見つめていた。
「オーシン…!」
 オーシンの瞳を見つめ、ぎょっ、とするアロエ。…心が弱っているせいだろ
うか。今回は天使のアロエのほうがパワーで押されている。不思議な力を持つ
緑色の瞳から、不思議と目がそらせない。
「アロエ…、あのね…」
 ごくっと、アロエは生唾を飲んだ。一体、今、何を言われるのだろう。た
だ、今何かを言われるとその言葉に逆らえなくなるかもしれない…、そんな予
感をぞくっ、と背中で感じた。しかし、そんな予感を裏切ってオーシンは、
「…元気、出して?」
「…う?」
 アロエはオーシンの顔をまじまじと見つめた。オーシンは念を押すように言
う。
「元気、出して…?アロエは、明るいほうが、いいから」
(…。)
 心の中に、さあっと何か明るいものが広がっていくのをアロエは感じた。何
故だろう。理由はわからないけど。なんだかいい意味で、何かに裏切られた。
そんな感覚をうっすら感じた。
 アロエはオーシンに向かってにこっ、と笑った。
「へへ、ゴメン。オーシン」
 目が覚めたときのように、アロエはうーんと伸びをした。耳としっぽが、ピ
ン、と張る。
「だよな。落ち込んでる場合じゃねぇな。おれの力でなんともできないことだ
からって、解決方法がないってわけじゃねぇ」
 アロエはぴこっ、と人差し指を立てると、くるっとオーシンの方を振り向い
た。
「そうだ!なぁ、オーシン、とりあえず、ここのギルドにでも行ってみねぇ
か?そしたら何か情報がつかめるかもしれねぇ」
「でも…」
 オーシンがとたんに伏目がちになって言う。
「勝手に出かけたら、アロエ、おばば様に怒られるかもしれないよ…?」
「いんや、おれも使えるってコトを、あのばーさんに証明してやる!」
 アロエはぐっ、とこぶしを握り締めた。
「うし!おれも協力するぞ!一天使として!」
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2007/02/12 16:35 | Comments(0) | TrackBack() | アロエ&オーシン

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