PC アロエ オーシン
場所 イノス
NPC おばば様(サラ)
___________________________________
その日、イノスの港町に不思議な噂が流れた。
何でも、船乗りの一人が、「空飛ぶネコ」を見たという。それは、背中に真
っ白な翼が生えていて、「飯~、飯~」といいながら、ふらふらと飛び去って
行ったそうだ。
その船乗りは、酒飲みで有名なためと、話があまりにも馬鹿馬鹿しいのと
で、「どうせ、また酒の飲みすぎで幻覚でも見たんだろ」と、本気にしない者
が多数だった。
だが、その日の船乗りの様子は、いつもとは少し違っていた。
彼は充血した眼を大きく見開いて、その姿は少し殺気立っていた。
「本当だって!嘘じゃねぇよ、俺っ、見たんだ!」
同僚の船乗りがへらへら笑いながら言う。
「で?そのマイエーンジェルは、一体どこに飛び去って行ったんだよ?」
彼は、顎鬚をこしこしと摩りながら、しばし考えた。
「うーん、あの方角は、たしか<おばば>の家のほうだったかな…」
***********************************
何度も何度も、まるで呪文のように、言うべき台詞をオーシンに教えた後、
おばば様ことサラは、やっとこ、オーシンを家から送り出した。
ため息を一つついた後、ロッキングチェアに深く沈みこむ。けれども、おばば
様には解っていた。あんだけ台詞を一生懸命教えても、またオーシンは、必ず
どこかでヘマをやらかすと。例えば、まったく関係のない本を受け取ってきた
り…。…いや、もう慣れた。
「全く…、何であんな子、世話しようと思ったんだかねぇ…」
おばば様はそう言うと、また溜め息をついた。
「全く…、あんな子にちらっとでも、同情しちまった、なんてあたしも馬鹿げ
てる…」
その時だ。
ドシャーン!!
「!?」
おばば様は思わず、座っていたロッキングチェアから立ち上がった。
おばば様の家の天井をド派手に壊して、<何か>が落ちてきたのだ。
「…何だい、こりゃ?」
近寄って、それを手に取ったおばば様は、こう漏らした。
「…ネコじゃないか。おや、羽がついてるねぇ。珍しい」
その時、ネコが口を開いた。
「…飯ぃ」
***********************************
ガツガツガツ ハグハグ んぐっ
「…全く、アンタも、よく食うねぇ」
そのネコの、豪快な食いっぷりを、おばば様はあきれて見つめていた。
空から落ちてきたそのネコは、おばば様が飯を出したとたん、一体いつ呼吸し
ているんだ、と思えるほど、ガツガツガツガツ飯を平らげ始めたのだ。飯をむ
さぼり、時々水を飲み、また飯を食う。
そのエンドレス。
「ちょっと、アンタ、口を挟むようで悪いんだけど」
ガツガツガツ
「ちょっと、あたしの話を聞きな」
ガツガツガツ ゴクッ ガツガツ
「話を聞きなって言ってるんだよ!!」
ドンっ!
「にゃっ!!」
おばば様が床に杖を思いっきりついた音で、ようやくネコは食べるのを止め
た。そして、金色の瞳をこっちに向ける。
「いいかい、あたしが、お前に聞きたいことは三つある」
「何だ?」
ネコは、きょとん、としておばば様を見つめる。
「おれ、早く食べたいんだ。何かあるんなら早く聞いてくれ」
ぷちっ、とおばば様の中で何かが切れる音がしたが、とりあえず、この馬鹿
ネコと、初めてまともに会話できるようになったので、今のはひとまず押さえ
ることにした。
「…っ。いいかい、まず、お前は一体何者なんだい」
「おれは、縞目野=アロエリーナってんだ。ま、アロエって呼んでくれ。これ
でも、天使なんだぜ。おれ」
「ほーう、天使とね」
おばば様がうさんくさそうな目を向ける。
「猫の天使なんて初めて見たが」
「おう、俺、化け猫と天使のハーフなんだ。ま、こっちのほうが解りやすいか
な、よっ…と」
そういって、ネコはくるん、と一回転、宙返りをすると、あっというまに猫
耳に猫の尻尾がついた人間の姿になった。
たしかに、こっちの姿のほうが、まだ、天使らしく見える。
「どうだ、これで解りやすいだろ?」
「ふん…、猫の天使なんて本当にいるモンなんだね。で、お前は、どーしてウ
チの屋根をこんなに『ど派手に』ぶっこわして、落ちてきたんだい」
嫌味たっぷりに言ったつもりだったが、アロエには通じなかったらしい。
アロエはへらへらと笑いながら言った。
「いや、実はさぁ、おれ、三日前からなんにも食ってねぇんだよ~、それで、
腹へってさ。ばーさん家から旨そうな匂いしたもんだから、こっちのほうに飛
んできちまったんだよな~。それで、落っこっちまったわけ」
「…『ばーさん』とな」
おばば様の中で、何かのタイマーが、カウントダウンを始めた。おばば様の
こめかみが、ピクピク波打っている。
おばば様は、怖いぐらいに静かに言った。それは何かの予兆のように。
「…最後の質問だよ。お前、この屋根の修理代、食事代…、まさか、タダだと
は思っていないだろうね…?」
3・2・1
「…へっ?」
一気に、呆然とするアロエ。そして決定的な一言を言った。
「…うぇっ、マジでっ?」
「おおマジだよっ!!こんの大馬鹿者めがっっ!!」
ドカーン!
「うみゃぁぁっ!!」
アロエは驚いて、また、猫の姿に戻ってしまった。驚くと、思わず猫の姿に
なってしまうのだ。
しかし、それはまだ予兆に過ぎなかった。これから起こる出来事に比べれ
ば…。
場所 イノス
NPC おばば様(サラ)
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その日、イノスの港町に不思議な噂が流れた。
何でも、船乗りの一人が、「空飛ぶネコ」を見たという。それは、背中に真
っ白な翼が生えていて、「飯~、飯~」といいながら、ふらふらと飛び去って
行ったそうだ。
その船乗りは、酒飲みで有名なためと、話があまりにも馬鹿馬鹿しいのと
で、「どうせ、また酒の飲みすぎで幻覚でも見たんだろ」と、本気にしない者
が多数だった。
だが、その日の船乗りの様子は、いつもとは少し違っていた。
彼は充血した眼を大きく見開いて、その姿は少し殺気立っていた。
「本当だって!嘘じゃねぇよ、俺っ、見たんだ!」
同僚の船乗りがへらへら笑いながら言う。
「で?そのマイエーンジェルは、一体どこに飛び去って行ったんだよ?」
彼は、顎鬚をこしこしと摩りながら、しばし考えた。
「うーん、あの方角は、たしか<おばば>の家のほうだったかな…」
***********************************
何度も何度も、まるで呪文のように、言うべき台詞をオーシンに教えた後、
おばば様ことサラは、やっとこ、オーシンを家から送り出した。
ため息を一つついた後、ロッキングチェアに深く沈みこむ。けれども、おばば
様には解っていた。あんだけ台詞を一生懸命教えても、またオーシンは、必ず
どこかでヘマをやらかすと。例えば、まったく関係のない本を受け取ってきた
り…。…いや、もう慣れた。
「全く…、何であんな子、世話しようと思ったんだかねぇ…」
おばば様はそう言うと、また溜め息をついた。
「全く…、あんな子にちらっとでも、同情しちまった、なんてあたしも馬鹿げ
てる…」
その時だ。
ドシャーン!!
「!?」
おばば様は思わず、座っていたロッキングチェアから立ち上がった。
おばば様の家の天井をド派手に壊して、<何か>が落ちてきたのだ。
「…何だい、こりゃ?」
近寄って、それを手に取ったおばば様は、こう漏らした。
「…ネコじゃないか。おや、羽がついてるねぇ。珍しい」
その時、ネコが口を開いた。
「…飯ぃ」
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ガツガツガツ ハグハグ んぐっ
「…全く、アンタも、よく食うねぇ」
そのネコの、豪快な食いっぷりを、おばば様はあきれて見つめていた。
空から落ちてきたそのネコは、おばば様が飯を出したとたん、一体いつ呼吸し
ているんだ、と思えるほど、ガツガツガツガツ飯を平らげ始めたのだ。飯をむ
さぼり、時々水を飲み、また飯を食う。
そのエンドレス。
「ちょっと、アンタ、口を挟むようで悪いんだけど」
ガツガツガツ
「ちょっと、あたしの話を聞きな」
ガツガツガツ ゴクッ ガツガツ
「話を聞きなって言ってるんだよ!!」
ドンっ!
「にゃっ!!」
おばば様が床に杖を思いっきりついた音で、ようやくネコは食べるのを止め
た。そして、金色の瞳をこっちに向ける。
「いいかい、あたしが、お前に聞きたいことは三つある」
「何だ?」
ネコは、きょとん、としておばば様を見つめる。
「おれ、早く食べたいんだ。何かあるんなら早く聞いてくれ」
ぷちっ、とおばば様の中で何かが切れる音がしたが、とりあえず、この馬鹿
ネコと、初めてまともに会話できるようになったので、今のはひとまず押さえ
ることにした。
「…っ。いいかい、まず、お前は一体何者なんだい」
「おれは、縞目野=アロエリーナってんだ。ま、アロエって呼んでくれ。これ
でも、天使なんだぜ。おれ」
「ほーう、天使とね」
おばば様がうさんくさそうな目を向ける。
「猫の天使なんて初めて見たが」
「おう、俺、化け猫と天使のハーフなんだ。ま、こっちのほうが解りやすいか
な、よっ…と」
そういって、ネコはくるん、と一回転、宙返りをすると、あっというまに猫
耳に猫の尻尾がついた人間の姿になった。
たしかに、こっちの姿のほうが、まだ、天使らしく見える。
「どうだ、これで解りやすいだろ?」
「ふん…、猫の天使なんて本当にいるモンなんだね。で、お前は、どーしてウ
チの屋根をこんなに『ど派手に』ぶっこわして、落ちてきたんだい」
嫌味たっぷりに言ったつもりだったが、アロエには通じなかったらしい。
アロエはへらへらと笑いながら言った。
「いや、実はさぁ、おれ、三日前からなんにも食ってねぇんだよ~、それで、
腹へってさ。ばーさん家から旨そうな匂いしたもんだから、こっちのほうに飛
んできちまったんだよな~。それで、落っこっちまったわけ」
「…『ばーさん』とな」
おばば様の中で、何かのタイマーが、カウントダウンを始めた。おばば様の
こめかみが、ピクピク波打っている。
おばば様は、怖いぐらいに静かに言った。それは何かの予兆のように。
「…最後の質問だよ。お前、この屋根の修理代、食事代…、まさか、タダだと
は思っていないだろうね…?」
3・2・1
「…へっ?」
一気に、呆然とするアロエ。そして決定的な一言を言った。
「…うぇっ、マジでっ?」
「おおマジだよっ!!こんの大馬鹿者めがっっ!!」
ドカーン!
「うみゃぁぁっ!!」
アロエは驚いて、また、猫の姿に戻ってしまった。驚くと、思わず猫の姿に
なってしまうのだ。
しかし、それはまだ予兆に過ぎなかった。これから起こる出来事に比べれ
ば…。
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