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2025/03/10 07:32 |
24.サードニクス/フレア(熊猫)
キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――


瞳を白が焼く。


あまりの白さに目に痛みを感じ、まばたきをして身を起こす――
そこは暗い海の底ではなかった。しかし、息苦しさは拭えない。

周囲は一面、白。

白、という色を知覚できるものの、壁も天井も見当たらない空間。
ふと、手を見下ろす。白の中で切り抜かれた、16歳の自分の手が
くっきり色を持っている。
その向こうには、投げ出された足。服もいつも通りである。

「…ここは?」

心底不思議そうな、自分の声を他人事のように聞く。
ないと思った答えはあった。

「夢の中さ」

普段そのせりふを聞いたならば、笑い飛ばしただろう――
だが、妙に納得した面持ちでフレアは振り向いていた。

眩暈がするほどの白さの中に、六本指の男が影も落とさず立っている。
不意に、彼の背後に、鮮やかな色彩が浮かんだ。

いぶかしんで完全にゼクスに向き直る。
見えたのは、赤。


首すじに細い跡をつけて倒れているヴィルフリードが見える。
腹を完全に薙がれて、リタが目を見開いたまま頬を床に置いている。
完膚なきまでに全身に火傷を負ったディアンが、煙一つ上げずに
じっと体を横たえて――


肺が震える。息が止まる。


完全に錯乱して、フレアは座り込んだままゼクスを見上げた。

「君の反応が見たくてね。少しいじらせてもらったけど…確かに夢の中だよ。
 でも正夢という言葉もあるからね」
「貴様ぁっ!」

感情が立ち上がると同時、体を投げ出すようにして走る。しかしゼクスは
笑みを消そうともしない。
上背があるが細い体躯に迷わず突き当たって、そのまま見えない床に
フレアはゼクスごと倒れこんだ。

それでも、音は一切ない。

「どうして…なんでっ…!」

ゼクスの、青白い首筋を掴んでいる。
両手に渾身の力を込めて締め上げているのに、目の前の男は
床に薄い色素の髪を振り乱したまま、薄ら笑いを浮かべていた。

そのまま、抵抗する様子もなく、全く変わらない声量で笑いかけてくる。

「なんだ。元気じゃないか。」
「うるさい!」
「狂ったり、泣き出すとかすると思ったのに…まぁ、これだけ興奮しているんじゃ
 狂っているのと同じかな」
「うるさい……黙れ…!」

自分の首を絞めているような息苦しさの中、囁くようにして叫ぶ。

「君があまりにも生きるとか死ぬとか考えているのを“読んだ”からさ。
 何か昔あったんじゃないかと思ったんだけど、忘れてしまったようだね」
「黙れと言っているんだ!」

絶叫して、さらに力を込める。
と、ゼクスが笑うのをやめた。
ひどく冷徹に目を細めて、首を絞められたまま体を起こしてくる。

「――僕を殺すかい?」

静かな声音の中に、甘さはない。そのセリフに怯えたが、
それでも両手を離さない。
力を込めている限り、彼の背後に3人の死体がある限り、
この両手は絞めるのをやめない。

「そんな事したら君の仲間が哀しむよ。フレア?」


たとえ自分の名を呼ぶ者がいなくなっても――
目覚めた場所がこの白い世界であったとしても――


「もういい。失うくらいなら全部いらない」


白が弾けた。

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2007/02/11 14:39 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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