キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――
「やめとけ・・・お前が何を持ってるんだか知らねぇが、渡す必要は無い。」
その言葉に、言われた本人より早く、魔術師が反応を見せた。
「いいんですか、そんなことを言っても?」
口ではおどけたような疑問を発するものの、視線すらディアンに向けることは無
い。
ディアンが攻撃することなど、万に一つも考えていないのだろう。
自分の力が無くては、フレアの眠りは覚めることが無い。
だから、自分に進んで協力するべきだ。
全ては、私の心一つなのだから。
明らかに、そう言外に含ませた言い方だが、ディアンは毛ほどの同様も表には表さ
ない。
むしろ落ち着いた風に、言葉を紡ぐ。
「さっき手前が言ってたろ?『自力で目覚めるか。僕が目覚めさせるか。』って
な。お前の手を借りるくらいなら、俺はフレアを信用するさ。あいつはあれで結構し
ぶとい。生きようとする意志、成し遂げようとする気力は、お前の呪縛なぞメじゃ
ねぇよ。」
さっきまでの激昂とは打って変わった穏やかな拍子に、リタルードは一瞬怪訝な顔
を見せたが、機を見るに敏な彼のことだ、その裏にあるものをすぐに感じ取ったのだ
ろう。
さっと顔色が変わった。
ゼクスに肩を掴まれて青ざめていたのが、今は完全に血の気が引いて白くなってし
まっている。
普段の饒舌さも消え、唇を噛んで次の成り行きを伺っている。
内心では何を考えているかは伺えないが、食えない所のある少年だ。
ややもすればこの表情や態度も計算ずくかもしれないが・・・
フレアを信じる、そう断ずるディアンの言葉を聞いて、一瞬、蒼面の魔術師の瞳の
奥に火が点った。
ちらりと垣間見えたその炎の色は、嫉妬・・・?
向かい合ったリタルードにのみ見ることの出来たその炎
それも束の間、一瞬見えかけた感情をすぐに消して、ゼクスは視線を横に立つ傭兵
へと向けた。
何を思ってかわざとゆっくり、問い掛ける。
「へぇ、ということはつまり・・・」
「そうだな、まぁ・・・早いハナシ、お前は用無しってことだよ。」
(この間、決して外しはしない必殺の間合いの内だ。ゼクスとか言ったな・・・出
てきてそうそうで悪いが・・・サヨナラ、だ!瞬間移動でも避けるこたぁできねぇぜ
?)
語尾の『よ』と被せるように、一筋の光がゼクスの首へと伸びた。
無拍子で打ち放った一撃は、さながら迅雷。
この場に居る誰もが認識し得ない内にゼクスの首を切り離す、ハズだった。
「ちィィ!!」
刹那、ディアンが歯を軋らせながら刀を止めた。
リタルードの顔面を断ち割る直前で止まった白刃を憎々しげに見、腕利きで知られ
る傭兵はくそったれ、と吐き捨てた。
魔術師は、自分ではなくリタルードを瞬間移動させたのだ。
自分とディアンの間に、少年を盾にするように。
そして、ディアンの刀が止まると同時に、自分も瞬間移動で逃れたのだ。
恐らく、妙にゆっくり言葉を返した、そのとき既に呪文は完成していたのだろう。
当のリタルードは何がなんだかわからない、と言った風に首を傾げているが、とに
かくゼクスに逃げられたのは確実なようだ。
「あ、あのさ・・・?」
彼が口を開こうとしたとき、空間に異変が生じた。
一本の腕が、現れたのだ。
何の前触れもなく、唐突に。
そしてその腕は、誰も反応し得ないうちに少年の懐に入り込んだ。
慌てて少年が懐を押さえようとした時には、腕はもう懐から抜け出ていた。
6本の指が、鎖に縛られた短刀を、しっかりと握っている。
「すいませんね、僕もまだ命は惜しいですから。手だけで失礼しますね。」
その声は、紛れもなくこの場から姿を消したゼクスのもの。
どうやら、腕だけを操っているようだが、その腕はと言うとリタルードの背後に隠
れるようにして浮いている。
ディアンの腕ならこの距離でも十分に攻撃は届くのだろうが、少年が間に入ってし
まっているため、うかつなことは出来ない。
そもそも、彼にしてみれば短刀などどうでもいい、用は本体さえ討てればそれでい
いのだから、そうまでして腕を狙う必要も無い。
誰も身動きしない中、ゼクスの言葉は、続く。
「それでは、また明日、お目にかかるとしようかな?」
すい、と腕が虚空へと昇っていく。
そのまま消えるか、と思われたが、がくん、と何かに引かれたかのように腕の動き
が止まった。
「!?」
「悪いな、このまま黙っていかせるにゃぁ、俺も忍耐が足りなくてな。」
先ほどから言葉を発しないと思われていたヴァルフリードは、いつのまにかリタ
ルードの背後へと回っていたのだ。
ディアンにすら容易にそれを気づかせない、見事な陰形である。
ゼクスも、まさかここまできて反撃を受けるとは夢にも思わなかったのだろう。
いささか慌てた風に、腕が暴れ出す。
「くッ、この・・・盗賊風情が!」
ヴァルフリードの拳と、腕の間は、どうやら極細の鋼線によって結ばれているらし
かった。
暴れ回る腕の力は相当なものらしく、顔を歪めるヴァルフリード。
その隙を見逃さず、ディアンが跳んだ。
リタの頭上を越え、さっきのお返しだとばかりに唐竹割りに打ち下ろす。
狙いはあやまたず、拳を両断し、ばらばらと指が床へと零れ落ちていく。
そして、真下に駆け寄ったヴァルフリードが、落ちる短剣を寸前で受け止め、リタ
ルードに投げ渡した。
「残念だったな?ま、おとといきやがれってやつだ。悪く、思うなよ?」
おどけるような白の傭兵の台詞に、答えは返ってこなかった。
ただ、床に散らばった指の断片が、現れたときと同じく、唐突に消えうせただけ。
通報で駆けつけた衛兵が宿に踏み込んでくるのと、ほとんど同じタイミングだっ
た。
この後彼らは、延々3時間もぶっ続けで尋問されることになる・・・
NPC:ゼクス
場所:宿屋
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「やめとけ・・・お前が何を持ってるんだか知らねぇが、渡す必要は無い。」
その言葉に、言われた本人より早く、魔術師が反応を見せた。
「いいんですか、そんなことを言っても?」
口ではおどけたような疑問を発するものの、視線すらディアンに向けることは無
い。
ディアンが攻撃することなど、万に一つも考えていないのだろう。
自分の力が無くては、フレアの眠りは覚めることが無い。
だから、自分に進んで協力するべきだ。
全ては、私の心一つなのだから。
明らかに、そう言外に含ませた言い方だが、ディアンは毛ほどの同様も表には表さ
ない。
むしろ落ち着いた風に、言葉を紡ぐ。
「さっき手前が言ってたろ?『自力で目覚めるか。僕が目覚めさせるか。』って
な。お前の手を借りるくらいなら、俺はフレアを信用するさ。あいつはあれで結構し
ぶとい。生きようとする意志、成し遂げようとする気力は、お前の呪縛なぞメじゃ
ねぇよ。」
さっきまでの激昂とは打って変わった穏やかな拍子に、リタルードは一瞬怪訝な顔
を見せたが、機を見るに敏な彼のことだ、その裏にあるものをすぐに感じ取ったのだ
ろう。
さっと顔色が変わった。
ゼクスに肩を掴まれて青ざめていたのが、今は完全に血の気が引いて白くなってし
まっている。
普段の饒舌さも消え、唇を噛んで次の成り行きを伺っている。
内心では何を考えているかは伺えないが、食えない所のある少年だ。
ややもすればこの表情や態度も計算ずくかもしれないが・・・
フレアを信じる、そう断ずるディアンの言葉を聞いて、一瞬、蒼面の魔術師の瞳の
奥に火が点った。
ちらりと垣間見えたその炎の色は、嫉妬・・・?
向かい合ったリタルードにのみ見ることの出来たその炎
それも束の間、一瞬見えかけた感情をすぐに消して、ゼクスは視線を横に立つ傭兵
へと向けた。
何を思ってかわざとゆっくり、問い掛ける。
「へぇ、ということはつまり・・・」
「そうだな、まぁ・・・早いハナシ、お前は用無しってことだよ。」
(この間、決して外しはしない必殺の間合いの内だ。ゼクスとか言ったな・・・出
てきてそうそうで悪いが・・・サヨナラ、だ!瞬間移動でも避けるこたぁできねぇぜ
?)
語尾の『よ』と被せるように、一筋の光がゼクスの首へと伸びた。
無拍子で打ち放った一撃は、さながら迅雷。
この場に居る誰もが認識し得ない内にゼクスの首を切り離す、ハズだった。
「ちィィ!!」
刹那、ディアンが歯を軋らせながら刀を止めた。
リタルードの顔面を断ち割る直前で止まった白刃を憎々しげに見、腕利きで知られ
る傭兵はくそったれ、と吐き捨てた。
魔術師は、自分ではなくリタルードを瞬間移動させたのだ。
自分とディアンの間に、少年を盾にするように。
そして、ディアンの刀が止まると同時に、自分も瞬間移動で逃れたのだ。
恐らく、妙にゆっくり言葉を返した、そのとき既に呪文は完成していたのだろう。
当のリタルードは何がなんだかわからない、と言った風に首を傾げているが、とに
かくゼクスに逃げられたのは確実なようだ。
「あ、あのさ・・・?」
彼が口を開こうとしたとき、空間に異変が生じた。
一本の腕が、現れたのだ。
何の前触れもなく、唐突に。
そしてその腕は、誰も反応し得ないうちに少年の懐に入り込んだ。
慌てて少年が懐を押さえようとした時には、腕はもう懐から抜け出ていた。
6本の指が、鎖に縛られた短刀を、しっかりと握っている。
「すいませんね、僕もまだ命は惜しいですから。手だけで失礼しますね。」
その声は、紛れもなくこの場から姿を消したゼクスのもの。
どうやら、腕だけを操っているようだが、その腕はと言うとリタルードの背後に隠
れるようにして浮いている。
ディアンの腕ならこの距離でも十分に攻撃は届くのだろうが、少年が間に入ってし
まっているため、うかつなことは出来ない。
そもそも、彼にしてみれば短刀などどうでもいい、用は本体さえ討てればそれでい
いのだから、そうまでして腕を狙う必要も無い。
誰も身動きしない中、ゼクスの言葉は、続く。
「それでは、また明日、お目にかかるとしようかな?」
すい、と腕が虚空へと昇っていく。
そのまま消えるか、と思われたが、がくん、と何かに引かれたかのように腕の動き
が止まった。
「!?」
「悪いな、このまま黙っていかせるにゃぁ、俺も忍耐が足りなくてな。」
先ほどから言葉を発しないと思われていたヴァルフリードは、いつのまにかリタ
ルードの背後へと回っていたのだ。
ディアンにすら容易にそれを気づかせない、見事な陰形である。
ゼクスも、まさかここまできて反撃を受けるとは夢にも思わなかったのだろう。
いささか慌てた風に、腕が暴れ出す。
「くッ、この・・・盗賊風情が!」
ヴァルフリードの拳と、腕の間は、どうやら極細の鋼線によって結ばれているらし
かった。
暴れ回る腕の力は相当なものらしく、顔を歪めるヴァルフリード。
その隙を見逃さず、ディアンが跳んだ。
リタの頭上を越え、さっきのお返しだとばかりに唐竹割りに打ち下ろす。
狙いはあやまたず、拳を両断し、ばらばらと指が床へと零れ落ちていく。
そして、真下に駆け寄ったヴァルフリードが、落ちる短剣を寸前で受け止め、リタ
ルードに投げ渡した。
「残念だったな?ま、おとといきやがれってやつだ。悪く、思うなよ?」
おどけるような白の傭兵の台詞に、答えは返ってこなかった。
ただ、床に散らばった指の断片が、現れたときと同じく、唐突に消えうせただけ。
通報で駆けつけた衛兵が宿に踏み込んでくるのと、ほとんど同じタイミングだっ
た。
この後彼らは、延々3時間もぶっ続けで尋問されることになる・・・
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