キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――
いつからかわからないが、床に座っていた。
倒れた椅子の向こうにカウンターが見える。そこには誰もいない。
誰も。
突如、自分の喉が震えた。息が漏れる。それは悲鳴と呼べるほど
澄んだ音ではなかったが、悲鳴より激しく鼓膜を叩いた。
座っている床が、すがるようにもたれている漆喰の壁が。
染みの浮いた天井でさえ。
すべてが揺れている。
いや――
揺れているのは、自分。
(止めないと!)
そう思って手に力を入れるが、壁に爪が立たない。
仕方なく、フレアは座ったまましっかり壁に背を預けた。
すると。
突如、両肩ごしに手が伸びてきた。
驚くと同時、その痩せた6本の指が顔を包むのを待ってしまう。
その体温の低さに愕然とし、背中にあたった壁の硬さに戦慄する。
「言っただろ。また会おうって」
視界が暗転した。
・・・★・・・
ざぁあああああ……。
雑音に近い、不安定なリズムが闇を支配している。
心地よいものではないが、どこかで聞いた事のある懐かしい響き。
(雨…?)
首をかしげる。ふ、と肩口にそろった髪がむき出しの肩をなでた。
変化に驚いて首に手をやろうとするが、鎖に繋がれてでもしているのか
重くて動かせない。
裸足の下に、砂を感じる。硬いのは石か、貝か。
頭の上で、誰かが自分を前にして口論している。話し合いの度を越して、
ただの怒鳴りあいである。
この子ひとりと俺ら全員、どっちが大事なんだ――
そう苦しまないようにやるから――
これは運命だ――
意外と大勢がいるらしい。豪雨だというのに、傘に当たる雨粒の出す、
あの特有な音は聞こえない。
お願いだから――
昔からやってきたことなんだ――
こんな酷い事をして本気でどうにかなるとでも――
視界が開けた。
目の前は、まるで色味のない世界だった。
上が空で、下が海。
灰色の紙に横線を引いただけの、どうしようもない光景。
色を探して上を見上げる。
消し炭色の空から大量の雨が降っている。
まともにそれを浴びながら、落胆してぐるりと周囲を見渡す。
一言で言えば岬である。
海があり、その上に崖があり、
斜下には小さな砂浜と茂み。
今は荒れているけれど、そこが晴れたら驚くほど綺麗なのをなぜか知っている。
自分が立っているのは、その岬の尖端。
着ているのは麻でできた白っぽいワンピースだった。
そこから出ている肩は異常に小さい。手も、足も。
お前ひとりで、みんなが助かるんだよ――
崖から放り投げだされて、フレアは絶叫した。
NPC:ゼクス
場所:宿屋
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いつからかわからないが、床に座っていた。
倒れた椅子の向こうにカウンターが見える。そこには誰もいない。
誰も。
突如、自分の喉が震えた。息が漏れる。それは悲鳴と呼べるほど
澄んだ音ではなかったが、悲鳴より激しく鼓膜を叩いた。
座っている床が、すがるようにもたれている漆喰の壁が。
染みの浮いた天井でさえ。
すべてが揺れている。
いや――
揺れているのは、自分。
(止めないと!)
そう思って手に力を入れるが、壁に爪が立たない。
仕方なく、フレアは座ったまましっかり壁に背を預けた。
すると。
突如、両肩ごしに手が伸びてきた。
驚くと同時、その痩せた6本の指が顔を包むのを待ってしまう。
その体温の低さに愕然とし、背中にあたった壁の硬さに戦慄する。
「言っただろ。また会おうって」
視界が暗転した。
・・・★・・・
ざぁあああああ……。
雑音に近い、不安定なリズムが闇を支配している。
心地よいものではないが、どこかで聞いた事のある懐かしい響き。
(雨…?)
首をかしげる。ふ、と肩口にそろった髪がむき出しの肩をなでた。
変化に驚いて首に手をやろうとするが、鎖に繋がれてでもしているのか
重くて動かせない。
裸足の下に、砂を感じる。硬いのは石か、貝か。
頭の上で、誰かが自分を前にして口論している。話し合いの度を越して、
ただの怒鳴りあいである。
この子ひとりと俺ら全員、どっちが大事なんだ――
そう苦しまないようにやるから――
これは運命だ――
意外と大勢がいるらしい。豪雨だというのに、傘に当たる雨粒の出す、
あの特有な音は聞こえない。
お願いだから――
昔からやってきたことなんだ――
こんな酷い事をして本気でどうにかなるとでも――
視界が開けた。
目の前は、まるで色味のない世界だった。
上が空で、下が海。
灰色の紙に横線を引いただけの、どうしようもない光景。
色を探して上を見上げる。
消し炭色の空から大量の雨が降っている。
まともにそれを浴びながら、落胆してぐるりと周囲を見渡す。
一言で言えば岬である。
海があり、その上に崖があり、
斜下には小さな砂浜と茂み。
今は荒れているけれど、そこが晴れたら驚くほど綺麗なのをなぜか知っている。
自分が立っているのは、その岬の尖端。
着ているのは麻でできた白っぽいワンピースだった。
そこから出ている肩は異常に小さい。手も、足も。
お前ひとりで、みんなが助かるんだよ――
崖から放り投げだされて、フレアは絶叫した。
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