◆――――――――――――――――――――――――――――――――――
人物:ライ セラフィナ
場所:ソフィニア内 ―公園
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セラフィナがそわそわと腰を浮かす。
騒ぎを聞きつけて通りを駆け抜ける人を、目が自然に追っている。
「私、やっぱり気になって」
ライはあんまり関わりたくなかった。イヤな予感に近づくというのは自分からの警
告を無視することでもあるから。
「なんだか胸騒ぎがするんです」
……それを警告と言うんだよ、お嬢さん。
そう言えば良かったのだろうか。
ここで分かれるチャンスだったのに、彼女を一人で行かせるのは予感に関わること
よりも気が進まなかった。
「……一人じゃ、危ないよ」
溜め息を一つ吐いて立ち上がるライ。
アイツの仕業だとしたら、結構ムカついてることだし。面倒だけど、これ以上面倒
起こされるともっと困るし。
にこっ
どう受け取ったのか、セラフィナは笑顔を向けた。
ライは小さく苦笑した。
駆け出したセラフィナを追うようにライが続く。
通りの人混みに近づく頃には、騒ぎの正体が分かり始めていた。
……血の、匂い……
セラフィナの顔が怒りに歪む。
人集[ひとだか]りの真ん中にある街路樹に突き刺してある死体は、さっき助けた
少女のソレだった。
目を背く人が多くいる中、彼女は目を逸らさずに見上げている。
死因は何者かに心臓を抉[えぐ]られたことによる失血死。
でも、街路樹に刺したのは死んでからだわ。何のために?……酷すぎる!
ライの方も、さっきの男を見つけていた。
騒ぎの渦中にいるかと思いきや、通りの端からこちらを見ている。
おかしい、さっき傷が塞がった奴を見たとき、あの子はまだ生きてた。
公園の向こうの芝生で、まだ遊んでいたはずだ。あいつは少なくとも二人以上に手
をかけたということか?
「ライさん、私、犯人を許せない……っ!」
厳しい形相[ぎょうそう]で下唇[したくちびる]を薄く噛むセラフィナ。
その時、通りの向こうで別の悲鳴が上がる。
きゃー!
さっきまでいたあの男がいない。とっさにライが走り出す。が、セラフィナが一瞬
早く走り出していた。
……ユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ……
セラフィナの目が鈍く光る。完全に、キレてしまっているようだ。
通りを何度か曲がり、人気のない所へ出たとき、そこには山高帽の杖を持った老人
一人とセラフィナの目には映っていないはずの幽霊が4体、待ち伏せるように立って
いた。
「ようこそ?活きのいい獲物さん」
老人がそう言ったとき、二人めがけて4体の幽霊が一斉に襲いかかってきたのだ。
ライが小さく舌打ちする。セラフィナは老人を睨[にら]み付け、銀の針を4本、
胸元に構えた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: