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2024/11/01 08:03 |
銀の針と翳の意図 6/セラフィナ(マリムラ)

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――
人物:ライ セラフィナ
場所:ソフィニア内 ―公園
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ごめんなさい、ちょっと」

 セラフィナがそわそわと腰を浮かす。
 騒ぎを聞きつけて通りを駆け抜ける人を、目が自然に追っている。

「私、やっぱり気になって」

 ライはあんまり関わりたくなかった。イヤな予感に近づくというのは自分からの警
告を無視することでもあるから。

「なんだか胸騒ぎがするんです」

 ……それを警告と言うんだよ、お嬢さん。
 そう言えば良かったのだろうか。
 ここで分かれるチャンスだったのに、彼女を一人で行かせるのは予感に関わること
よりも気が進まなかった。

「……一人じゃ、危ないよ」

 溜め息を一つ吐いて立ち上がるライ。
 アイツの仕業だとしたら、結構ムカついてることだし。面倒だけど、これ以上面倒
起こされるともっと困るし。

  にこっ

 どう受け取ったのか、セラフィナは笑顔を向けた。
 ライは小さく苦笑した。




 駆け出したセラフィナを追うようにライが続く。
 通りの人混みに近づく頃には、騒ぎの正体が分かり始めていた。

 ……血の、匂い……

 セラフィナの顔が怒りに歪む。
 人集[ひとだか]りの真ん中にある街路樹に突き刺してある死体は、さっき助けた
少女のソレだった。
 目を背く人が多くいる中、彼女は目を逸らさずに見上げている。

 死因は何者かに心臓を抉[えぐ]られたことによる失血死。
 でも、街路樹に刺したのは死んでからだわ。何のために?……酷すぎる!

 ライの方も、さっきの男を見つけていた。
 騒ぎの渦中にいるかと思いきや、通りの端からこちらを見ている。

 おかしい、さっき傷が塞がった奴を見たとき、あの子はまだ生きてた。
 公園の向こうの芝生で、まだ遊んでいたはずだ。あいつは少なくとも二人以上に手
をかけたということか?

「ライさん、私、犯人を許せない……っ!」

 厳しい形相[ぎょうそう]で下唇[したくちびる]を薄く噛むセラフィナ。
 その時、通りの向こうで別の悲鳴が上がる。

   きゃー!

 さっきまでいたあの男がいない。とっさにライが走り出す。が、セラフィナが一瞬
早く走り出していた。

 ……ユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ……

 セラフィナの目が鈍く光る。完全に、キレてしまっているようだ。
 通りを何度か曲がり、人気のない所へ出たとき、そこには山高帽の杖を持った老人
一人とセラフィナの目には映っていないはずの幽霊が4体、待ち伏せるように立って
いた。

「ようこそ?活きのいい獲物さん」

 老人がそう言ったとき、二人めがけて4体の幽霊が一斉に襲いかかってきたのだ。

 ライが小さく舌打ちする。セラフィナは老人を睨[にら]み付け、銀の針を4本、
胸元に構えた。
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2006/09/09 23:53 | Comments(0) | TrackBack() | ●銀の針と翳の意図

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