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人物:ライ セラフィナ
場所:デルクリフ⇔ルクセン ―港町
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引きつった少年の後ろにライを見つけ、声をかけようとしてセラフィナは思い留ま
った。
(いま、もしかしてタイミング悪かったのかしら)
バツが悪そうに目を細めたライが、後頭部をポリポリと掻き、一拍置いて苦笑す
る。
引きつった表情がなかなか抜けない目の前の少年は、目が明後日の方向を向いてい
る。
なんとなく場違いな空気を感じながらも、話しかけておいて無視するわけにもいか
ず。
(まいりましたねぇ)
セラフィナは曖昧な笑みを浮かべた。
「さっきもね、猫を探している人に遭ったの」
「へ、へぇ……、そうなんだ」
少年の態度は明らかにオカシイ。
「似たような猫をたくさん見かけたんだけど……どの猫がどの猫か、分かるかな?私
も猫を探しているの」
「あー…っと、ビミョウに違う、んだよ。分かるから大丈夫」
何とか平静を装うとする少年。
(なんかの冗談みたいに答える言葉が一緒なんだから)
さっきの少年と姿がダブる。
「違いを教えてくれるかな?間違えたら困るよね」
「そうだ。ソッチの猫も一緒に探してあげるよ。船に乗ってた人だろ?出航までには
連れていくからさ」
「一緒に探す方が早いと思うな」
「えーと、ほら、土地勘ないでしょ?」
一緒に探すのは都合が悪いらしい。ココまでわかりやすい態度も珍しいくらいだけ
ど。
再び視界の端に猫の影。
コレ幸いと少年は動いた。
「あ、行かなきゃ!じゃあね」
少年はセラフィナの横を駆け抜けていく。
「ライ、先行くぞ!」
網を持って先を急ぐ少年を、ライが首を竦めて追いかける。
「あ……」
「あとでね」
通り過ぎる一瞬に、小声で耳打ち。
セラフィナが振り返っても、ライは何事もなかったかのように少年の後について走
り去ってしまった。
「……もう、仲間外れ?」
取り残され、二人が去った先を見ていると、なんだか寂しいような悔しいような気
がしてくる。
「……なにして時間をつぶせばいいのかしら」
途方に暮れて空を見上げると、ソコには紅く色づき始めた薄紫に染まる雲があっ
た。
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