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2025/03/10 12:25 |
銀の針と翳の意図 16/セラフィナ(マリムラ)

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――

人物:ライ セラフィナ

場所:ソフィニア ―夜の市街地

―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 セラフィナは老人の言葉を頭の中で反芻した。



「放っておこうと思ったが、目撃者はちゃんと消せと怒られたのだよ」



 ……ソレはつまり、彼の後ろにまだ厄介な御仁が控えていることを物語っている。

一瞬だけ眉根を寄せると、セラフィナは構えを崩さないままライの目線を探った。見

ているのは例の死霊使いだと思われる老人ただ一人。他の付き従う死霊達は今回は来

ていないのか。それとも、これから増えてゆくのか。

 もしかしたらチャンスは今なのかもしれない。一番の窮地に一点の光が見いだせた

ら、ソレが逆転の鍵になる。



「消す対象は私一人ですか?」



 心なしか口角が上がる。この状況を楽しむ余裕など無いはずなのに、落ち着いてい

く自分がソコにいる。



「私は貴方を許さないと言ったはずです」



 にっこり。自然に笑みが漏れる。構えを解いた刹那、セラフィナは自分に針を突き

立てていた。



「セラフィナさん?!」



 ライから驚きの声が漏れる。どう考えてもおかしい行動に見えたに違いない。殺さ

れるくらいならいっそ自らの手で……と見えなくもない。が。



「さあ、行きましょう」



 セラフィナは男に向かって走り出す。体を低くし、針を構え、さっきまで息を切ら

していたのとは別人のような動きで突進する。



 セラフィナは限界までの力を引き出そうとしていた。リミッターオフ。簡単に言っ

てしまえばそんなところだ。普段無意識に制限をかけている能力から枷をはずす。

 火事場の馬鹿力なんて言うのが分かり易い例かもしれない。普段から限界まで引き

出していたら体が持たないために秘められた、本来の力。ソレを意図的に引き出す。



「破っ!」



 銀の針が空を舞う。針は二重外套に払いのけられる、が。



(宙で止まらない!いける!)



 狙うは山高帽の下、影に覆われた死霊使いの目。

 ライがダートを投げ、払いのけるその一瞬を狙う。

 外套のひらめきがダートをうち払う。



「そんな……」



 銀の針は、確かに影に覆われた山高帽の下で消えた。

 普通の人間なら無事で済むはずがない。そう、普通の、ニンゲン、なら。



「おやおや、困ったお嬢さんだ」



 山高帽を悠々と被り直す死霊使いが、一瞬見せた顔は。

 白く硬質な、ガイコツ。

 射抜かれたはずのソコには、光を受け入れない完全な闇があった。
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2006/09/20 12:23 | Comments(0) | TrackBack() | ●銀の針と翳の意図

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