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2024/05/17 01:57 |
琥珀のカラス4~静と動~/カイ(マリムラ)

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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
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「じゃあ、ためさしてもらうぜ!」

 先に大地を蹴ったのはクレイと名乗ったまだ若い青年。
 カイは静かに呼吸を整える。
 最初の一撃。いや、連続して剣が打ち込まれた。
 少し重いか?
 手に構えた模擬戦闘用の剣を試すように、一撃を弾き、いなす。
 使い慣れた刀とは勝手が違うのだということは分かっている。
 少し、馴染む必要があるかも知れない。

「おいおい、倒すってのは口だけかい?」

 一歩も動いていないカイに向かって野次が飛ぶ。
 実際クレイが一方的に攻めているのだから、判定負けを取られかねない状況だ。
 ふむ。まぁこんなものか。
 重さが手に馴染んできたらしい。
 カイは初めて一歩踏み込んだ。

「お? ようやくやる気になったようだな、兄ちゃん」

 野次を黙殺して、カイはクレイを見据える。
 コレだけの運動量の割に息の乱れも少なく、ブレも少ない。
 どうもココで一番というのは本当らしい。
 カイは剣の構えを中段からゆっくりと脇構えに移行させる。
 受け続ける分には問題なかったのだが、立て続けに攻められると、なかなか攻めに移行できないのだ。
 流れを変える。
 カイはわざと相手の剣に向かって、剣を押し出した。

 キィィィィン!

 今まで力を逸らすようにしていたのを、直接相手に力が返るように弾いたのだ。
 ホンの一瞬の腕の痺れ。
 その一瞬で十分だった。
 カイは大きく懐に飛び込むと、剣をクレイの首にピタリとつける。
 気が付くと、野次は止んでいた。

「おい、クレイ」
「油断したのか?」
 見物していた仲間が、一斉に声をかける。
 見ている間、ずっとクレイが優勢だったのだ。納得がいかないらしい。
「いや……、彼は使えるよ」
 剣を交えた相手にしか分からないなにかがあった、のかもしれない。
 息一つ乱れていなかったことに気付いたのは、クレイだけだったのだから。
 仲間に囲まれるクレイと対照的に、一人たたずむカイは自分の手を見ていた。
 震え…?
 そう、後になってから手に残る痺れ。
 クレイの剣を受け続けた代償は、しっかり体に刻まれていたのだ。
 剣の重さというモノは甘くない。
「よろしく」
 人の輪を抜けて、クレイが手を差し出す。
「君と組むことになりそうだ。ようこそイスカーナへ」
 カイは一度手を強く握り、痺れを少しおさめてから無言で握手に答える。
 その一瞬の行為を見逃さなかったクレイは、にっこりと微笑んだ。
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2006/07/15 23:53 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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