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PC:カイ クレイ
NPC:クレア デュラン・レクストン ルキア ウルザ
場所:王都イスカーナ
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「よし、コッチから仕掛けよう」
クレイが廃墟の灯りの下でぽつり。
「え?なにするのなにするの?」
じゃれ付こうとするクレアを腕一本で押しとどめながら額に手を当てた。
「はいはい、ちょっとはおとなしくしてなさいね」
ずいぶん扱いも慣れたモノである。ぷうっと頬を膨らませながらもおとなしくなるクレアを見て、カイは微笑ましく思っていた。
「なあカイ、今屋敷内で騒ぎを起こしたら回りはどうするかな?」
「カラスが気付かない間に進入したと思って、押しかけて来るだろうな」
あまり想像したくない状況だが、嫌味なくらいハッキリと想像できる。
「クレアがいるからソレは無理かぁ」
カイにはクレイの言わんとするところが分かって苦笑を噛み殺した。
騒ぎを起こす必要がある。しかし、真の敵をあぶり出すためには欠かせない騒ぎだが、その渦中にいるモノは常に危険に晒される。
そして、騒ぎの渦中にいるモノには敵の動きを把握することは難しい。
どちらかが騒ぎを起こす、それが避けることの出来ないことだとしたら、ルキアやウルザを危険に晒すよりも自分が騒ぎを起こそうと考えたのだろう。
実際、ソレはカイも考えていたコトだった。しかし、予想外のクレアの登場で、変更を余儀なくされたのだ。
ふくれっ面ながらもおとなしくしているクレアを一瞥し、カイは言った。
「彼女とご老体を連れて、空井戸から避難するんだ」
「なんでじゃ!」
「えー、どうしてぇ?!」
二人の不満は聞き流す。
「騒ぎを起こすのは任せてくれ」
「……大丈夫なのか?」
「足手まといは少ない方がいい」
短い沈黙。一旦下を向いたクレイは顔を上げると、カイの肩に手をのせた。
「信用してるぜ、相棒」
「……済んだらすぐに後を追う」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
廃屋の灯りが揺らめいて消えた。と思ったら、同時に数カ所で物音がする。
警備の面々に緊張が走った。これだけの厳重警備の網のどこから入り込んだというのか。
もうメンツも協定も関係なかった。双方入り交じって廃屋に押しかける。
袋の鼠だ。そう思っていないモノが一人だけいた。
回りの混乱を後目に、一人だけその場を離れる。男はある屋敷を目指して走った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カイは三人を逃がした後、充分時間をとってから行動に移した。
わざと外から確認できるように灯りを揺らし、吹き消す。
そして気の風を起こすと、部屋の反対側で物音を立てる。と同時にボロボロの椅子を蹴飛ばす。部屋の向こうに仕掛けて置いた紐を引くと、また別の場所でも音が鳴る。
屋敷を包む空気が変わった。あまり猶予はないだろう。
急いで隠し通路に飛び込むと、地下へと下る。後は運を天に任せるしかない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
呆気にとられたのはルキアだった。
騒ぎを起こしにこれから潜入しようとしていた廃屋から騒ぎが起こったのだから。
「あの子達、面白いコトしてくれるじゃない?」
もちろん一人だけ別方向に走り出す男を見逃すはずはなかった。
気付かれないように、慎重に後を付ける。向かった先は……。
「へぇ、そうだったんだ」
小さく呟くと、再び闇の中に姿を消した。
その頃ウルザは別のコトに呆れていた。
「クレア様……何でこんな所に」
クレイと一緒に慌てて移動する様を目撃してしまったのだ。そして何故か琥珀の持ち主も一緒。
「コレではしばらく手の出しようがないかしらね」
若干頭を抱えながらも、ルキアと同様、闇に溶けて見えなくなった。
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