――――――――――――――――――――――――――――
PC:カイ クレイ
NPC:クレア カシュー
場所:王都イスカーナ
――――――――――――――――――――――――――――――――
「で、どうする?」
カイの言わんとすることはクレイにもよくわかっていた。
このままクレアを一人で返すのは論外だし、一緒にもどったとしたら現場に戻るのが遅れてしまう。
なにより戻したところでまた抜けてこられてはたまったもんではない。
(ってか、ウルザはどーしたんだよ)
視線の先にいるクレアはというと、
「なに? クレイも食べる?」
幸せそうにかぶりついていたホットドックを差し出す。
「こら、お姫様がはしたない……じゃなくて!」
なにやら真剣に悩んでいるほうがおかしいのかと、疑わずにはいられないクレイだった。
「しかたない……か」
「そうだな」
カイもクレイに同意を返すところを見ると、やはり選択肢は限られているようだった。
「じゃあ、俺たちも昼食かってくるからちょっとまってろよ」
そうクレアにいいながら、クレイは腰元のポケットから小銭をまさぐりながら屋台の若い店員にカイと二人分の注文をたのんだ。
「え、じゃあいいの?」
のんきそうにしててもやはり返されると思っていたクレアは、同行を了承してるとも取れるクレイの言葉に思わず聞き返す。
「こうなったら俺たちと一緒のほうが安全だろからな」
「クレイならそういってくれると思った!」
クレアの満面の笑みをみると、本気でそう思っていたんじゃなかろーかと、クレイは自分の想像に頭を痛めた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
(参ったな、俺もなんか用意しときゃよかったぜ)
昔は数日物が食えない事もざらだったというのに……。
そう思うと空腹感に辛さを感じる自分に情けなさを感じずにはいられないカシューであった。
ルキアから事前に計画を知らされたカシューは、ウルザにのせられていることを承知で、クレアをそれとなく護衛していた。
ウルザがカシューを当て込んだのは、一つにはクレアを任せられる実力者としての信頼があったからだが、同時に現時点でクレアの危険度は低いと判断した事もあって、かつての師にたいする、保険程度には頼らせてよという軽い甘えだったのだろう。
だからこそカシューはギルベルトにも黙って、屋敷周りで警戒していたのだが……。
(話が違う……。大公の姫君ともなれば『深窓の』ってのが相場なのに)
母親がいないとはいえそこはお姫様、ウルザをはじめ教育係には事欠かなかったはずがなぜこうなったのかカシューは愚痴半分に首を傾げてしまうものだった。
もちろん、スリ技術をはじめ、ウルザが教えないことをせっせと教えたルキアが原因であることを考えれば、ウルザ・ルキア姉妹の養い親をしていたカシューが大本なのだから因果応報といえるかもしれないのだが。
とにもかくにも不平不満は言いつつも、距離をとりつつしっかりとクレアの気配を捉え続けていたカシューは三人に案内されるがごとく、一軒の廃屋(そうとしか見えない)に誘われてきた。
(ここは?)
三人が抜け穴から入っていくのを確認した後、何気なく周りを見回してみれば、なにやら妙な感覚に首をかしげる。
(……まさかな。あれからもう何年もたつのだし、彼が生きていたとしてももういい年のはず)
思い出しかけた人物を首を振って頭から追い出すと、思わず苦笑をしてしまう。
思い出を呼び起こすなら、もう少し色気のある相手にするべきだ。
PR
トラックバック
トラックバックURL: