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PC:カイ クレイ
NPC:クレア
場所:王都イスカーナ
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結局デュラン・レクストンの書斎から大事な琥珀が見つかることはなかった。
「……そうじゃ、カラスに盗られんように隠し場所を何回も変えて……はて、何処に変えたんだったかのう?」
本棚の本を殆どひっくり返し、埃と本まみれになりながら元神官の老人がそういったのは、太陽が真上に昇って少し傾き始めた頃だった。
「……どうする?」
「……どうしようか?」
カイとクレイは顔を見合わせる。狭い中で待たされる苦痛から逃げ出したいのと、埃だらけの空気じゃない新鮮な空気が吸いたいのと、腹が減ったのはどれが一番なんだろうとか思いながらも、二人の気持ちはココを後にすることに決まっていた。
「あー……腹が減っては戦も出来ぬ、というわけで」
「満月今日じゃないし、また来るから見つけておいて」
話も聞かずに捜索に戻る老人を後にして、清々しい太陽の下へと帰還した。
「イスカーナの空気がこんなに綺麗だなんて、知らなかったなぁ」
思い切り深呼吸したクレイがしみじみと呟く。カイも伸びをして空を見上げた。
「外で食べるか」
「しばらく狭い部屋はゴメンだよ」
顔を見合わせて一緒に肩を竦める。
そうだ、噴水のある公園でホットドックを食べよう。飲み物は太陽をいっぱいに浴びたオレンジジュースがいいな。なんて想像を膨らませつつ、クレイは唾液を飲み込んだ。
もちろん様子が気になっていたので、屋敷(というよりも廃墟?)の前の状況を確認してから行くことにしたのだが、なんだか思いの外静かで拍子抜けすることになる。
「何だ?アレは」
睨み合ったまま座り込みに入っているのだ。どっちも譲る気はないらしく、炎天下の中、応援がせっせと水やタオルを差し入れている。
「……見なかったことにしよう」
「……さわらぬ神にたたりなし」
他の顔見知りに気付かれないように、そそくさと退散する。見つかると昼飯どころではなさそうだったからだ。
そしてそれはどうにか成功したようで、誰にも邪魔されることなく、公園に着いたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ホットドックを売る屋台にどこかで見たような後ろ姿を見つけ、イヤーな予感に歩速が早まる。クレイもカイも無言のままだが、二人とも同じ考えに行き着いたらしい。眉間に皺を寄せ、半ば駆けるように近づいていく。
「だからおじさん、ケチャップはたっぷりにしてね?」
聞き覚えのある声。
「あ!ココのマスタード、粒じゃなーい」
言いながら振り返り、二人に気付いて脱兎のごとく逃げ出すクレア。
「やっぱりオマエか!」
「……だぁーってー」
「謹慎中なんだから、ちょっとは我慢しろよ」
足の速さではクレイに敵うはずもなく、首根っこを捕まれた子猫のようにカイの元へ連れてこられる。
「さて、事情を話してもらおうか?」
「……だって、みんなヘンなんだモン。いつも絶対やらないのに、ルキアとウルザが一緒にお休みもらうなんて絶対ヘン!それに、昨日までウチに派遣されてたハズのクレイ達が来ない日に休むなんて。ね?おかしいよね?」
クレイとカイが顔を見合わせる。
「しかもお休みがいつもよりも長いんだよねー……いつもは一日で帰ってくるのに」
「で、どっちかをつけてきたのか?」
「ううん、私じゃすぐばれちゃうモン。だから、二人が屋敷を出てたっぷり時間をおいてから出てきた」
にぃっと笑うクレア。クレイは座り込んで頭を抱えた。
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