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2025/03/10 00:45 |
琥珀のカラス32/カイ(マリムラ)

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PC:カイ クレイ

NPC:デュラン・レクストン

場所:王都イスカーナ

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「あのつかまらないまま引退したって言われてた怪盗が、再び戻ってきたんだ。おかげで朝から緊急シフトの準備とかで大変さ。おれも担当に加えてもらおうと、志願届けだしにいくところさ」

 そう興奮気味に話す同僚の前で、眩暈がしそうなクレイの肩にカイが手を置いた。

「場所は?」

「ああ、ソレが妙なんだよ」

 一拍おいて、意味深に小声で続ける。

「隠居した神官の家なんだ……おっと、じゃーな!おれ行くわ」

 早く志願届けを出しに行きたくてウズウズしている彼は、それだけ言うと振り返りもせず駆け出していく。後にはクレイとカイだけが残された。

「……どういうことだよ」

「……コッチが聞きたいな」

 知らず知らずの内に溜め息が漏れるクレイ。

「……で、勤務シフトはどうなってた、いつもの特殊勤務か?」

「いや」

 驚きで顔を上げるクレイに返ってきたのは、意外な返事だった。

「デュラン・レクストン邸警備だ。恐らくは……予告が届いた家だろう」



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 急いで到着したソコは、こういっては失礼だが廃屋だった。

 屋根は半分落ち、壁は剥がれ、庭の手入れもされていない。玄関にはツタが絡みつき、扉は人一人通れるやっとの透き間を空けて固定されている。

「こんな所に本当に人が住んでいるのか?」

 先に到着したらしい同僚がぼやいているのが聞こえた。

 屋敷を取り囲む人の数は約30、そのうち半分が神職に就いているモノらしい。

 警備を巡って、責任者同士が口論になっていた。

「カラスの予告状が出ている以上、この件は神殿側に任しておくわけにはいかない」

「一度神職に就いた者は私たちの保護下にあります」

「街の治安が関わっているのだ、そう簡単に引くわけにはいかん」

「帰りなさい、神を侮るおつもりか」

「神職を辞した以上、我々は彼を一般市民として考えている」

 しかし主人の姿は見えない。

「……主人はどこだ?」

「どちらも睨み合って、まだ邸内には足を踏み入れていないようだな」

「でも、これだけ騒いでりゃ、出てくるよな普通」

「ココに済むくらいだ、普通の老人ではないのだろう」

 そうかもしれない。

 クレイはもう一度屋敷(と呼べる代物だろうか?)を仰ぎ見た。すると。

「……窓ガラスの向こうで、陰が動いたぞ」

「ああ、気付いたか」

 どうも他の人間は派閥争いに目がいって、気付いた者はいないようだった。

「……計ったようなタイミングだな」

 カイがぽつりともらす。クレイも同感だった。

「さりげなく近づいてみよう」

 カイにも異論はなかった。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「おい、警備の仕事は名指しなのか?」

 破れたガラスを背に、クレイは声を掛けてみた。

「やっときたかね色男」

 しわがれた男の声。おそらく彼がデュラン・レクストン本人だろう。

「何で出てこない」

「用があるのはあんたらだけじゃ」

「この状態じゃ俺たちも入れないけどな」

「そんなことはない」

 老人はくっくっとくぐもった笑いを漏らす。

「こんな家に人が住むと思うかね?答えは否じゃ」

「……」

「この家はダミーじゃからな。二件隣の空き家の井戸から入れ」

「……一応聞いてもイイかな」

 面倒なことになりそうだ。クレイは頭ををわしゃわしゃと掻いた。

「まだダメじゃ。地下にある書斎で待っとるよ」

「いこう、ココに長くいると怪しまれる」

 カイに声を掛けられたときには、老人の気配は消えていた。

「行くしかないのか……」

 ちょっとうんざり気味に、クレイはその場を離れた。
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2006/08/05 01:45 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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