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人物:カイ
場所:王都イスカーナ
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カイは一人で旅をしていた。
答えの見えない、自分の居場所を探す旅。
しかし、当てもなく旅をするにもお金はかかるモノで。
思案の果てに傭兵家業に足を踏み入れることになる。
最初に選んだ地は、ココ、イスカーナだ。
常時、他国の者でも志願兵として受け入れてもらえるという噂を聞いた。
多国籍な外国人部隊に所属するか、他へ回されるか。
腕次第で多額の報酬も可能だという。
街を歩くカイは、異国の服を着ている割に人目を引かずに済んでいた。
大きな都市だというのもあるが、うまく気配を溶け込ませているからだ。
それもこれも、以前に隠密剣士という特殊な生き方をしていたからなのだが。
美しい黒髪が揺れる。
この髪を誉めてくれた乳兄弟が自分に別れを告げて半年、自分はどうしたいのかを探してきた。自分は、自分は、自分は。
物心付いた頃から影としての人生を歩んできたカイにとって、乳兄弟であり主人でもあったセラフィナが世界のすべてだったから。彼女から切り離された今、自分を捜すしか他に道はなさそうだったから。
志願兵はどこへ行ったらいいのだろうか。
カイはとりあえず、騎士の詰め所を目指した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カイは一人、訓練場と呼ばれる更地の真ん中で待たされていた。
騎士達の詰め所と塀に四方を囲まれた空間。そう狭くもないのに圧迫感があるのは、それを意識して作られている為なのかもしれない。
詰め所沿いには練習用と思われる剣や槍が立てかけられ、組織というモノをイヤでも意識する。騎士団というのはこういうものか。カイは目を閉じる。
心を静かに。澄んだ水面のように気を静めて。
詰め所へ入っていった男が再び現れた。今から採用試験を行うらしい。
相手をつとめるのは、遅れて現れた、若い、青年。
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