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2024/11/01 10:33 |
琥珀のカラス21/クレイ(ひろ)

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人物:カイ クレイ

場所:王都イスカーナ

NPC:クレア

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「怪しい!」



 ビシッ! とクレアが指を刺したその先には、全身黒ずくめの服で顔まで黒布で覆い、目も黒い色眼鏡で隠した女がいた。

 その体型と声から女と予測できるものの、それ以外はこれ以上ないほどの徹底した隠しぶりから怪しさ以外の感想はもてそうにない相手であった。



「……いえ、あのね、ほかにもっと定番の言葉とかあるでしょ?」



 なぜかトホホな感じで黒ずくめが肩を落とす。



「ひょっとしてカラスか?」



「ふふ、好きによんで良いわよ」



 クレイは相手からは敵意を感じなかったが、それでも緊張を解かずにいた。

 カイをみると、さりげなくクレアをガードしやすい位置に移動している。



「待ちなさいよ。私は助けてあげたつもりなんだから」



 そういって指し示したほうをクレイが見に行く。

 まさかこんなことで油断させるつもりもないと思ったものの、万一を考えてクレアにはカイをつけ自分もカラスに目を向けたまま木々の向こう側を見る。



「銃か」



 そこには争った後があり、いくつかの血だマリとそれによごされた銃が落ちていた。



「そう、銃はそれほど一般的でないし、こんな維持費のかかるものを持つのは専門のスジ者か、そうでなければ趣味多き貴族様ぐらいってね」



 ね、とでも言いたげにカラスが説明をつける。



「事故にできる、か?」



 すぐに返したクレイに、カラスも感心したように頷く。



「へー、頭は悪くないみたいね」



 二人はたんなる情報確認ぐらいのつもりだったが、その会話でクレアの表情がこわばるのを見逃さなかった。

 カイもクレアの前にいたために表情は見えなかったものの、その緊張感が変わったのを感じていた。



「で、あんたはここのお宝をねらってるんだろ?」



 カラスは誰も傷つけずに盗む、そうはいっても盗賊は盗賊。

 伝説に語られる過去にも人助けの話はきいたこともない。



「ふふ、大人の女にはいろいろあるのよ」



 助けはしたものの事情を語るつもりはないらしい。

 賊をかたづけた後もこうして残っていたのは警告のつもりだったのだろうか。



(だがまてよ。カラスはここにいるし公女を殺す理由もないだろう。助けたってのはあの秘石の一族と大公の関わりが推測どおりなら納得もできる。だが殺しを仕組んだのはだれだ。神殿はカラス……秘石の琥珀を追っていても、公爵家のスキャンダルに関心はないだろうから、クレアをマークするとも思えないし、なにより殺す理由は皆無だ。だとすると、だれがクレアを……?)



 たんなる家で娘を拾っただけなのに、追い返すだけではすみそうにない。

 そういえば前にあった公爵家の追っ手も、単なる捜索隊にしては剣呑なやつらだった。

 もし一緒にいたのがカイでなくほかの同僚ならきられていたかも知れないのだ。



「さて、今日は警告にきただけだから大人しくかえさたてもらうわ」



「へー、俺たちが捕まえるかもって思わないの?」



「ふふ、まだ何もしてないのに?」



 あっ!とおもわずクレイとカイは目をあわす。

 確かにそうなのだ。

 カラスとクレアについていろいろやってるうちにすっかり呑めりんでいたが、いまの彼女はまだ「カラス」でないのだ。



「あなた達がどうして私のことに気がついたのは知らないし、思ったよりも腕も頭もいいのはわかった。でも、もうやめなさい。ただの下級騎士が命を張っても意味ないわよ」



 そしてクレアのほうを見つめて、こちらにも諭すようにいった。



「お嬢様。逃げていても何もならないのよ。そのせいで巻き込まれる人も出てしまった。戦う気がないのならせめて大人しくしていなさい。あなたにとっては籠の中こそが安全なのだから」



「って、もうちょっと説明してくれよ」



 そのまま向こうに歩き出しカラスを、慌てたようにクレイは呼び止めたが、やはりとまるはずもなくそのまま姿を消す。

 後を追うわけにもいかないので、仕方なし頭をかく。



「だー、もう。いいさ、とりあえず屋敷中が安全ってならまずはそこだ」



「クレイ……」



 クレアが不安そうな顔をはじめてみせる。

 カイは彼女の方を押すようにうながす。



「事情はそのあとで、だな」



「カイ!」



 あいも変わらず愛想はなかったが、カイの言わんとすることがわかってクレアは明るい表情を取り戻す。



「ま、そーいうこった。こんなわけわからんまま放り出せるかよ」



「さ、こっちに抜け道があるのだろう?」



「う、うん。こっちの道はウルザしか知らないのよ」



 元気を取り戻したクレアが再び道案内をはじめる。

 そして、先よりもさらに警戒しながら二人も続いた。



(ウルザしか、か。だが、ここに罠を仕掛けたやつも知ってたわけだ)



 まずはウルザだ。

 例え顔はわからなくても、その仕草ひとつからでも過去にあった相手なら見破る自信はある。

 暗殺は別口と思うがウルザは別で疑いがあるのだから。
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2006/07/28 19:51 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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