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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
NPC:クレア
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通りを三人が歩いていた。
先頭を足早に歩く男、それにじゃれつくような少年、数歩後ろに従う男。
これがクレイ・クレア・カイであると知っているのは当人達だけである。
「よお、クレイじゃねーか」
「わりぃ、仕事中」
「またメシ食いに寄んな」
ちょっと訂正。
クレイを見知っている人は、まぁ、そこそこ居る。
だが、一緒に歩いている人物を知る人は少ない。
「おや、新しい相棒かい?」
「今度ヒマな時、紹介するよ」
新入りのカイは、まだ覚えられていないし、
「迷子のおもりも大変ねぇ」
クレアが大公のお嬢様だと気付く人も居ない(気付かれては困るのだが。
「クレイって人気者ねぇ」
ちょっと羨ましそうにクレアが呟いた。
大公家に近付き、人気がまばらになった頃だった。
「誰が聞いてるか分かんないから、喋るなって言ったろ?」
クレイがぶっきらぼうに、でも声を抑えて話しかける。
「どうやって帰りたい?正面から行くか?」
少し歩速を緩めたモノの、相変わらず前を向いたままだ。
「うーん、私のこと、門兵は知らされてないと思うよ」
「表向きには、家出の事実はありませんってか」
「そう。クレア姫はか弱い乙女だから、きっと床に臥せっておられるのよ」
「おいおい、他人事みたいに」
「いつもそうよ。……いつだってそう」
少し遠い目をして、足を止める。暫く下を向いたかと思ったら、屋敷を左手に、川沿いの小道へ入っていく。目的の場所はコッチにあるらしい。
(……な、泣いたのかと思った……)
(あのお嬢さんのすることはわからん……)
クレイとカイのアイコンタクトを余所に、どんどん小道を進んでいくクレア。
二人も慌てて後を追った。
「何処まで行く気だ?」
クレイが声をかけたのは、木々に遮られて屋敷が見えなくなってからだった。
「……もうすぐ」
それだけ言うと、クレアは先を急ぐ。
見えるのは、小川のせせらぎと大きめの砂利、涼しげに立ち並ぶ木々と木漏れ日。
森林浴には絶好の場所かも知れないが、屋敷を目指すには不釣り合いな道である。
「待て」
カイが鋭い声で二人の足を止めた。
「どうした!」
「火薬の匂いがする」
「そんな匂い、しないわよ?」
「我々よりも少し前に、誰かが通ったようだ」
クレイとクレアが見ても、なんの痕跡もないように見える。
「で、どうする?」
「敵意や殺気は感じない。もう去った後なのか、それとも……」
『……それとも?』
突然聞こえてきたのは、知らない女の声だった。
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