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2025/03/10 00:42 |
琥珀のカラス20/カイ(マリムラ)

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人物:カイ クレイ

場所:王都イスカーナ

NPC:クレア

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 通りを三人が歩いていた。

 先頭を足早に歩く男、それにじゃれつくような少年、数歩後ろに従う男。

 これがクレイ・クレア・カイであると知っているのは当人達だけである。

「よお、クレイじゃねーか」

「わりぃ、仕事中」

「またメシ食いに寄んな」

 ちょっと訂正。

 クレイを見知っている人は、まぁ、そこそこ居る。

 だが、一緒に歩いている人物を知る人は少ない。

「おや、新しい相棒かい?」

「今度ヒマな時、紹介するよ」

 新入りのカイは、まだ覚えられていないし、

「迷子のおもりも大変ねぇ」

 クレアが大公のお嬢様だと気付く人も居ない(気付かれては困るのだが。



「クレイって人気者ねぇ」

 ちょっと羨ましそうにクレアが呟いた。

 大公家に近付き、人気がまばらになった頃だった。

「誰が聞いてるか分かんないから、喋るなって言ったろ?」

 クレイがぶっきらぼうに、でも声を抑えて話しかける。

「どうやって帰りたい?正面から行くか?」

 少し歩速を緩めたモノの、相変わらず前を向いたままだ。

「うーん、私のこと、門兵は知らされてないと思うよ」

「表向きには、家出の事実はありませんってか」

「そう。クレア姫はか弱い乙女だから、きっと床に臥せっておられるのよ」

「おいおい、他人事みたいに」

「いつもそうよ。……いつだってそう」

 少し遠い目をして、足を止める。暫く下を向いたかと思ったら、屋敷を左手に、川沿いの小道へ入っていく。目的の場所はコッチにあるらしい。

(……な、泣いたのかと思った……)

(あのお嬢さんのすることはわからん……)

 クレイとカイのアイコンタクトを余所に、どんどん小道を進んでいくクレア。

 二人も慌てて後を追った。



「何処まで行く気だ?」

 クレイが声をかけたのは、木々に遮られて屋敷が見えなくなってからだった。

「……もうすぐ」

 それだけ言うと、クレアは先を急ぐ。

 見えるのは、小川のせせらぎと大きめの砂利、涼しげに立ち並ぶ木々と木漏れ日。

 森林浴には絶好の場所かも知れないが、屋敷を目指すには不釣り合いな道である。

「待て」

 カイが鋭い声で二人の足を止めた。

「どうした!」

「火薬の匂いがする」

「そんな匂い、しないわよ?」

「我々よりも少し前に、誰かが通ったようだ」

 クレイとクレアが見ても、なんの痕跡もないように見える。

「で、どうする?」

「敵意や殺気は感じない。もう去った後なのか、それとも……」

『……それとも?』

 突然聞こえてきたのは、知らない女の声だった。
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2006/07/27 23:47 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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