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2024/11/01 08:00 |
琥珀のカラス19/クレイ(ひろ)
琥珀のカラス19   ひろ

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人物:カイ クレイ

場所:王都イスカーナ

NPC:クレア

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「へへへへ」



 部屋の中では男装したクレアが、はにかむようにして姿を見せる。



「どうかな? 似合う?」



 これが恋愛ものの物語なら、なかなかに嬉しハズかしの場面であろうが、



「どうでもいいがわざわざ変装してるんだから、カマっぽい動きにならないようにしろよ」



 好みの女性はときかれれば、「妖艶な貴婦人」と答える微妙なお年頃なクレイは普通に観察しただけだった。

(ちなみに、貴婦人とは当然貴族階級の人妻のかたがたを指していたりする)



 ふくれるクレアを煙にまきながら簡単に用意を済ませる。(というか、カイが戸締りとかをするのをまっていたのだが)



「でも、私結婚のこと何とかならない限りはまた逃げ出すわよ」



 いよいよ出かけようかというときになって、クレアは疑問を口にする。

 送ってくれるのはいいけど、原因が取り除かれないなら、何度でも繰り返すというのは、当然といえば当然だろう。

 そしてクレイとカイは、その言葉の意味するところを察して目をかわす。



(つまり、いつでも逃げれるってことか?)



(それだけの自信があるのだろう)



 あの妙な器用さ、はっきりいえばスリテクだけではないであろう盗賊系のスキル、そしてたぶん協力者。



(それがウルザ?)



「なによ?」



 ひそひそと話すクレイとカイに、クレアは不満そうに口を尖らす。



「ん? ああいや、これなら屋敷まで余計な邪魔もはいらずにすみそーだなってな」



「ああ。これで大公家の手の者につれていかれるんじゃ、クレアの立場が悪くなるだけだからな」



 そう、ただ家に帰すのなら追いかけてきたやつらや、それこそ隊長にでも頼めばすむ話なのだ。

 だが、事の発端がなぞのままでは何も終わらないのだ。

 かといってクレアと結婚する気はさらさらないクレイとしては、自分を犠牲にして丸く治める気もなかった。



 だいたいクレアと結婚となれば、確実に婿入りなのだ。

いかに下級とはいえ、ディアス家をたやすわけにもいかない。



「一応、スリのことはだまっといてやるし、自発的に戻る気になったってことにしといてやるからな」



「そこまで気を使ってくれるなら、お父様に婚約のあいさつぐらいしてくれてもいいのに」



「いつ婚約したんだ! あのな、そもそも俺たちはお前が家を出た理由すら聞いちゃいねーんだ。隠し事したままで信頼は生まれないんだぞ」



「えー……、女は隠し事の多さで大人になるのよ」



「……一度じっくりと大人の女について教えてやりたいところだが……」



 あいも変わらずこたえないクレアに、うめきながら半眼になっているクレイにの肩をカイがたたく。



「そろそろこう。やっかいなやつらにかぎつけられる前に、安全圏にいれておこう」



 クレアにはなんのことだかわからなかったが、クレイにはよくわかっていた。



「そうだったな。よし、夕刻までには屋敷にはいっておこう」



 もしカラスと大公家のかかわりがクレイの推測どおりで、カイの『予感』があたっているなら、遠からずクレアは幾つかの勢力に狙われることになりかねない。

 そうなる前に、とりあえずの安全は確保しておくのだ。
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2006/07/27 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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