琥珀のカラス19 ひろ
――――――――――――――――――――――――――
人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
NPC:クレア
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「へへへへ」
部屋の中では男装したクレアが、はにかむようにして姿を見せる。
「どうかな? 似合う?」
これが恋愛ものの物語なら、なかなかに嬉しハズかしの場面であろうが、
「どうでもいいがわざわざ変装してるんだから、カマっぽい動きにならないようにしろよ」
好みの女性はときかれれば、「妖艶な貴婦人」と答える微妙なお年頃なクレイは普通に観察しただけだった。
(ちなみに、貴婦人とは当然貴族階級の人妻のかたがたを指していたりする)
ふくれるクレアを煙にまきながら簡単に用意を済ませる。(というか、カイが戸締りとかをするのをまっていたのだが)
「でも、私結婚のこと何とかならない限りはまた逃げ出すわよ」
いよいよ出かけようかというときになって、クレアは疑問を口にする。
送ってくれるのはいいけど、原因が取り除かれないなら、何度でも繰り返すというのは、当然といえば当然だろう。
そしてクレイとカイは、その言葉の意味するところを察して目をかわす。
(つまり、いつでも逃げれるってことか?)
(それだけの自信があるのだろう)
あの妙な器用さ、はっきりいえばスリテクだけではないであろう盗賊系のスキル、そしてたぶん協力者。
(それがウルザ?)
「なによ?」
ひそひそと話すクレイとカイに、クレアは不満そうに口を尖らす。
「ん? ああいや、これなら屋敷まで余計な邪魔もはいらずにすみそーだなってな」
「ああ。これで大公家の手の者につれていかれるんじゃ、クレアの立場が悪くなるだけだからな」
そう、ただ家に帰すのなら追いかけてきたやつらや、それこそ隊長にでも頼めばすむ話なのだ。
だが、事の発端がなぞのままでは何も終わらないのだ。
かといってクレアと結婚する気はさらさらないクレイとしては、自分を犠牲にして丸く治める気もなかった。
だいたいクレアと結婚となれば、確実に婿入りなのだ。
いかに下級とはいえ、ディアス家をたやすわけにもいかない。
「一応、スリのことはだまっといてやるし、自発的に戻る気になったってことにしといてやるからな」
「そこまで気を使ってくれるなら、お父様に婚約のあいさつぐらいしてくれてもいいのに」
「いつ婚約したんだ! あのな、そもそも俺たちはお前が家を出た理由すら聞いちゃいねーんだ。隠し事したままで信頼は生まれないんだぞ」
「えー……、女は隠し事の多さで大人になるのよ」
「……一度じっくりと大人の女について教えてやりたいところだが……」
あいも変わらずこたえないクレアに、うめきながら半眼になっているクレイにの肩をカイがたたく。
「そろそろこう。やっかいなやつらにかぎつけられる前に、安全圏にいれておこう」
クレアにはなんのことだかわからなかったが、クレイにはよくわかっていた。
「そうだったな。よし、夕刻までには屋敷にはいっておこう」
もしカラスと大公家のかかわりがクレイの推測どおりで、カイの『予感』があたっているなら、遠からずクレアは幾つかの勢力に狙われることになりかねない。
そうなる前に、とりあえずの安全は確保しておくのだ。
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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
NPC:クレア
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「へへへへ」
部屋の中では男装したクレアが、はにかむようにして姿を見せる。
「どうかな? 似合う?」
これが恋愛ものの物語なら、なかなかに嬉しハズかしの場面であろうが、
「どうでもいいがわざわざ変装してるんだから、カマっぽい動きにならないようにしろよ」
好みの女性はときかれれば、「妖艶な貴婦人」と答える微妙なお年頃なクレイは普通に観察しただけだった。
(ちなみに、貴婦人とは当然貴族階級の人妻のかたがたを指していたりする)
ふくれるクレアを煙にまきながら簡単に用意を済ませる。(というか、カイが戸締りとかをするのをまっていたのだが)
「でも、私結婚のこと何とかならない限りはまた逃げ出すわよ」
いよいよ出かけようかというときになって、クレアは疑問を口にする。
送ってくれるのはいいけど、原因が取り除かれないなら、何度でも繰り返すというのは、当然といえば当然だろう。
そしてクレイとカイは、その言葉の意味するところを察して目をかわす。
(つまり、いつでも逃げれるってことか?)
(それだけの自信があるのだろう)
あの妙な器用さ、はっきりいえばスリテクだけではないであろう盗賊系のスキル、そしてたぶん協力者。
(それがウルザ?)
「なによ?」
ひそひそと話すクレイとカイに、クレアは不満そうに口を尖らす。
「ん? ああいや、これなら屋敷まで余計な邪魔もはいらずにすみそーだなってな」
「ああ。これで大公家の手の者につれていかれるんじゃ、クレアの立場が悪くなるだけだからな」
そう、ただ家に帰すのなら追いかけてきたやつらや、それこそ隊長にでも頼めばすむ話なのだ。
だが、事の発端がなぞのままでは何も終わらないのだ。
かといってクレアと結婚する気はさらさらないクレイとしては、自分を犠牲にして丸く治める気もなかった。
だいたいクレアと結婚となれば、確実に婿入りなのだ。
いかに下級とはいえ、ディアス家をたやすわけにもいかない。
「一応、スリのことはだまっといてやるし、自発的に戻る気になったってことにしといてやるからな」
「そこまで気を使ってくれるなら、お父様に婚約のあいさつぐらいしてくれてもいいのに」
「いつ婚約したんだ! あのな、そもそも俺たちはお前が家を出た理由すら聞いちゃいねーんだ。隠し事したままで信頼は生まれないんだぞ」
「えー……、女は隠し事の多さで大人になるのよ」
「……一度じっくりと大人の女について教えてやりたいところだが……」
あいも変わらずこたえないクレアに、うめきながら半眼になっているクレイにの肩をカイがたたく。
「そろそろこう。やっかいなやつらにかぎつけられる前に、安全圏にいれておこう」
クレアにはなんのことだかわからなかったが、クレイにはよくわかっていた。
「そうだったな。よし、夕刻までには屋敷にはいっておこう」
もしカラスと大公家のかかわりがクレイの推測どおりで、カイの『予感』があたっているなら、遠からずクレアは幾つかの勢力に狙われることになりかねない。
そうなる前に、とりあえずの安全は確保しておくのだ。
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