――――――――――――――――――――――――――
人物:(カイ) クレイ
場所:王都イスカーナ
NPC:サイアス
----------------------------------------------------------------
サキと話しているうちに、だいぶ時間がたったらしい。
史料課をでて外に出るために王宮の中央にもどると、きる時とは打って変わって、けっこうな人の流れができていた。
(政務官はともかく、役職の貴族まで出てきてるって事は、昼少し前か)
忙しく動き回るにたような長衣を羽織った人や、一般人にまぎれて、そろいの家紋をつけた数人の集団がいくつかまぎれている。
名前だけの役職についた貴族の直参であろう。
かれらは仕事らしいことをしないので(こなす能力がないともいう)、だいたい昼になる前に、主だった有力者にあいさつだけしに城に上るのだ。
ある意味憧れともいえる彼らの姿を、クレイはついつい目ざとく見つけてしまうのだ。
「よう、こっちに顔出してるとはめずらしいなぁ」
なるべく邪魔にならないように壁沿いに出口に向かうクレイは、聞き覚えのある声に振り返った。
「サイアスか。……飲み屋以外で顔を合わすと変な気分だな」
「おいおい、それはこっちの台詞だろう」
良くいく酒場で知り合ったサイアスは、実のところかなりのエリートで、上級職からの直接の指示で動く監察官の地位にいる。
家柄もそうだが、実務の多いこの役職は能力がなくては勤まらない。
仕事上ではクレイとはかすりもしないはずの男、それがサイアスであった。
サイアスは現在は王太子派の貴族の下に入っているため、中立、というかどこの派閥にも影響力ゼロのクレイは、イスカーナ貴族の仲では数少ない気の許せる友人でもあることから、姿を見かけたときは必ず声をかけるようになっていた。
「クレイがこっちにくるなんて、なにか失敗でもしたのか?」
「ばかいえ、たまには過去の資料とかをしらべて捜査にやくだてよーってな」
「おいおい、せいぜい見回りぐらいしかしねーお前が捜査とは、昇進でもねらってんのかよ?」
「まあどーだろうな。 厄介ごとに巻き込まれてるのは確かなんだが……」
軽口をたたきながら連れ立って出口へと向かう。
そして人並みが切れたとき、ふいにサイアスが方に手を回し、声を潜めてささやいた。
「おめー、カラスのこと探ってるらしいな。理由はきかねえが、気をつけろよ」
「?」
「俺たちにも命が下った。それもあのサウディオの入れ知恵みてーなんだ」
「神殿がかかわってんのか?」
「ああ、裏まではわからんがな。だが神殿のほうも俺たち任せのはずがない」
神殿では表と裏があるとうわさされていることをクレイも知っていた。
裏で飼われているやつらが出てくるとなると、命にかかわる。
なにしろ謎のままのわけが、関係者は必ず殺すからといわれているのだから。
(カイならともかく、俺に勝てる相手じゃねえな)
そしてサキのところで仕入れた歴史の真実。
神殿はまだあきらめてなかったのだろうか。
サイアスはいうことをいうと、元の快活な声に戻りクレイとは別の方向へと離れだした。
「また今度暇ができたらのみにいこーぜ」
その声に軽く手を振ってこたえると、クレイは早足で週者のある区画へと歩き出した。
(とりあえずカイと相談して、どこまで踏み込むかきめねーとな。クレアにすべてを話して完全に踏み込むか、適当にあしらって家に追い返すか)
すでに悩んでいる時点で答えは出ているような気もするのだが、とにかく急いで戻ることにしたのだった。
PR
トラックバック
トラックバックURL: